神経痛ってなに?妊娠期間中に、腰から太ももにかけてしびれを感じたり、心臓の周りにピリッとした痛みが出たりするといった症状が現れることがあります。そういった痛みやしびれは、神経痛の可能性があります。神経痛とは、病名ではなく症状そのものを指します。全身に張り巡らされている運動や感覚を伝えるための連絡網である末梢神経が、なんらかの原因で刺激を受けることによって、痛みやしびれといった症状として現れます。・妊娠による、ホルモンや体型の変化ママの体内では妊娠初期から、卵巣や子宮、胎盤などからリラキシンというホルモンを分泌します。リラキシンには、出産に向けて赤ちゃんが狭い骨盤を通れるようにするため、骨盤などの関節や周辺のじん帯をゆるめる作用があります。骨盤が緩むことで体を支える力が弱くなり、背骨などにもゆがみが生じます。また、妊娠後期は胎内でどんどん大きくなる赤ちゃんによって、ママの重心や姿勢の変化にともない、骨や関節の位置がずれやすくなります。これらの理由から、おしりや下肢に伸びる神経が圧迫され、痛みやしびれなどといった症状が引き起こされます。・血行不良による冷え赤ちゃんが胎内で成長すると共に、子宮は大きくなります。このことで、お腹や骨盤内の血管が圧迫され、下半身に冷えやむくみが起きやすくなります。これが痛みに対する感受性を高めてしまい、神経痛の発症を促したり、すでに症状がある場合は悪化させたりする原因の一つとなります。・ストレスや不安妊娠による生活面での制限や体型の変化は、ママの心の戸惑いをはじめ、親になるための不安やプレッシャーなどストレスの要因になることが多く、精神的な負担が増えます。これらのストレスも冷えと同様に、神経痛の発症を促したり、すでに症状がある場合は悪化させたりする原因の一つとなります。妊娠後期の神経痛はいつからいつまでになるの?妊娠28週以降は体型の変化や血行不良といった理由から、神経痛を感じ始めるママも多いようです。出産することで治る人もいますが、骨盤や筋肉は長期間同じ状態でいることで固定されてしまうために慢性化し、出産後も続く可能性があります。神経痛の症状が現れたら、妊娠中に放置しないことが大切です。神経痛が現れる妊娠時期とは骨盤をゆるませ神経痛の一因となるリラキシンの分泌は妊娠2ヶ月頃から起こります。またママが妊娠初期に感じる精神面の不安やストレスなども加わり、妊娠4週~15週頃という早い時期から発症する場合があります。お腹の赤ちゃんが成長し、子宮が大きくなることでママの体内の臓器が神経を圧迫することで起きる神経痛に関しては、妊娠中期~後期にわたり症状が現れる場合があります。 神経痛の種類と、痛みやすい場所は?妊娠期間中に発症しやすい神経痛には、座骨神経痛と肋間神経痛があります。・座骨(坐骨)神経痛(ざこつしんけいつう)お腹が大きくなることで姿勢の変化や重心の変化が起こります。座骨神経が圧迫されたり刺激されたりし、お尻や太ももの後ろやすね、足先などに痛みやしびれが現れます。また腰痛を放置しすぎると、悪化して座骨神経痛につながることもあります。・肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)妊娠によるストレスで筋肉が緊張したり、子宮が大きくなったりすることで内臓が内肋間神経を圧迫します。それに伴い、肋間(肋骨と肋骨の間)周りに痛みやしびれを引き起こすことがあります。妊娠後期の神経痛予防と対策神経痛の痛みは独特で、痛みの頻度は天気や気温に左右されることがあります。痛みの強さによっては眠れないこともあるため、あらかじめ予防対策を行うことが大切です。・心の安静を保つ妊娠期間中の生活は制限しなければならないことも多く、ストレスを感じやすくなります。またママの体内で分泌される流産を防ぐはたらきを行うプロゲステロンというホルモンは、気分の落ち込みやイライラなどを引き起こします。落ち込みやイライラを感じたら気分転換を行ったり、体そのものを休めるなど、気持ちの切り替えをこまめに行いましょう。・体を温める血行が良くなることで、冷えの原因となるストレスをやわらげることができます。湯船にお湯を張って入浴したり、足湯などの時間を設けたりして、しっかりと体を温めましょう。・就寝時の体位を工夫する仰向けの状態で寝ると、腰やおしりの筋肉が座骨神経を圧迫することになります。下半身に痛みやしびれを感じるママは抱き枕などを利用し、横向きで体を曲げた体勢で眠りにつきましょう。体の重みを分散させることで、神経への刺激をやわらげることができます。・簡単なストレッチをするお腹に負担がかからず、無理なく行えるストレッチを行い、筋肉の緊張をほぐしましょう。腰椎椎間板ヘルニアがある方や、切迫早産と診断されている方の運動はママとおなかの赤ちゃんの健康に影響が出る可能性があります。必ず、健診医または分娩医に相談の上行いましょう。
2016年04月04日こんにちは。医療カウンセラーのyoshiです。人の体には自律神経というのがあります。これは文字通り、自律している神経、自動的に体の機能を整えてくれる神経になります。副交感神経、交感神経と呼ばれることもあり、人の本能や生きようとする機能に直結している部分があると言えます。今現在、この自律神経について、自律神経失調症という症状が注目されています。“失調”という言葉がついている通り、自律神経の働き、バランスが悪くなってしまう症状です。この自律神経失調症というのは、言葉として、症状として存在していることになりますが、言ってしまえば、“見えない症状”と考えてしまうことができます。もっと言ってしまうと、これは症状としての現象を示しており、病名ではありません。●自律神経失調症には診断基準がない体に起こる現象に対して『自律神経失調症』 という名前がつけられているため、実は、自律神経失調症に関して診断基準というのはないことになるのです。なぜ『自律神経失調症』と診断されているのか、と疑問に感じてしまう人は当然いると思います。これは、他に考えられる原因がない、症状が当てはまらない場合に『自律神経失調症』と判断されることが大きく影響しています。つまり、専門家でも「これだ」と思える材料、診断基準を把握しているわけではない ということです。気をつけなければいけないのは“本当に原因がないのか” ということです。不調がある部分をしっかりと医師に伝え、考えられる原因、病気に関する検査を受けることがなければ『自律神経失調症』とはわからないのです。そのため、万が一、検査をしっかりとされない状態で『自律神経失調症』と診断されてしまった場合には、その診断に疑問を持っておくことは大切です。----------自律神経の乱れは、ストレスなどによっても引き起こされていきますが、下手に自己判断をしてしまうのではなく、信頼できる医師に相談をしてみることをオススメします。相談をするということが、ストレス発散につながる場合もあります。【参考リンク】・自律神経失調症 | e-ヘルスネット()●ライター/yoshi
2016年03月12日ユニバーサルロボットは3月10日、スマートフォンやタブレットのカメラで連続的に人体表面を撮影した画像から交感神経や副交感神経の優位を測定し、自律神経の状態を推定する技術を開発し、特許庁から特許査定を受けたことを発表した。心拍は、交感神経および副交感神経の影響を受け、一拍ごとに速くなったり遅くなったりすることが知られており、この特性を利用することで、心拍の変動から自律神経の状態が推定できるとされている。また、人体表面に張り巡らされている毛細血管には、心臓から血液が送られると、一定の周期でヘモグロビン量の変化に起因する微細な色成分の変化が起こるといわれている。同技術では、この微細な色成分の変化を読み取るため、肌表面を連続して撮影したカラー画像から、肌の色成分に共通する特徴(画像の基底)を求め、この基底とカラー画像の実データとの間の色成分の差分を測定する。これにより、心拍由来の微細な波形のみを抽出、心拍間隔の変動を計測し、自律神経の状態を判定する。同社は同技術について、自律神経の状態をチェックできるアプリなどの一般向け用途のほか、自動車ドライバーの興奮・ストレス状態、眠気の検知や、職場のストレスチェックとして活用するなどの企業向け用途も想定しているとしている。
2016年03月10日新潟大学は2月3日、多発性硬化症および視神経脊髄炎の神経変性に関わる新たな仕組みを発見したと発表した。同成果は、同大学 脳研究所 神経内科 河内泉 講師、西澤正豊 教授、穂苅万李子 大学院生、横関明子 医師らの研究グループによるもので、2月2日付けの米科学誌「Annals of Neurology」に掲載された。多発性硬化症(MS)および視神経脊髄炎(NMO)は、視神経や脊髄、脳に炎症が起こることで、視力の障害、手足の麻痺、しびれや認知機能障害などの症状が現れる神経難病。異常な免疫反応により、MSでは神経軸索を覆うミエリンが破壊され、NMOでは神経細胞・軸索に隣接しサポートするアストロサイトが破壊される。この結果、神経機能が重度に障害される神経変性が起こる。MSとNMOでは異なる免疫制御治療が開発されており、異常な免疫因子をある程度制御することが可能となっているが、神経を保護する治療法は未だ開発されていない。今回、同研究グループは、MSとNMOでは視力障害がしばしば起こるが、NMOではMSに比較して、より重度で回復が不良な視力障害に進展すること、MSのミエリン障害、NMOのアストロサイト障害に加え、MS・NMOともに、視神経軸索と網膜の神経細胞が強く変性していることを明らかにした。また、MSでは「未知の異常な免疫因子」によるミエリンの破壊に引き続き神経変性が起こる一方で、NMOでは「アクアポリン4抗体」によるアストロサイトの破壊に引き続き神経変性が引き起こるが、MSとNMOで障害された神経軸索には、変性したミトコンドリアや陽イオンチャネル「transient receptor potential cation channel subfamily M member 4 (TRPM4)」が異常に集積しており、MSとNMOの神経軸索減少に関与していることがわかった。さらに神経軸索の障害は、網膜の神経細胞にも変化を及ぼすことがわかった。特にNMOではMSと比較してより多くの異常なミトコンドリアが、変性した神経軸索に含まれるため、疾患の早期から免疫制御治療を行うことに加え、神経保護治療を追加する必要があることが示唆された。同研究グループは、異常な免疫分子を制御する「免疫制御治療」と「神経保護治療」の組み合わせにより、患者のQOL向上が期待されるとしている。
2016年02月04日カラダのだるさや、イライラ、冷え性、便秘などの不快な症状に悩んでいる女性が急増していると聞きます。コレ、自律神経の乱れによるものかも……。自律神経とはホルモン、免疫機能などをコントロールしている大事なシステム。呼吸や体温調節など毎日私たちが意識しなくてもできるのは、自律神経のおかげです。しかし、現代人はストレスを抱えやすく、とくに女性は、ホルモンが複雑なことも関係して自律神経が乱れがちなんです。そこで今回は、自律神経のリズムを整える簡単な方法をご紹介します。■自律神経の仕組み自律神経には交感神経と副交感神経があります。カラダを活動させる昼間に活発になるのが交感神経、リラックス時や夜に活発になるのが副交感神経です。この2つの神経バランスがうまく保たれることで私たちは、快適な生活を送ることができます。しかし、先ほども申し上げた通り、自律神経が乱れる原因を現代女性は多くもっています。なので、自分で意識的に整えることが大切!それでは自律神経を整える簡単テクニックを厳選して3つご紹介します。■自律神経が整う!簡単テクニック3選☆足首ゆらゆら体操足首をゆらゆらさせると、背中や股関節、仙骨や腰椎に振動が伝わり、自律神経が刺激され、副交感神経の働きが優位になります。実際に冷え性や肥満、便秘、肌荒れ、不眠、膝痛、腰痛が一挙に解消したという報告もたくさん!【やり方】1全身の力をぬいて、あおむけに寝る。足は肩幅にひらく。2足先を外側、内側とゆらゆらさせる。1日3分を目安に行いましょう。☆ モーツァルトを聞くモーツァルトの音楽は副交感神経を活性化することがわかっています。がんやアレルギー症状の改善も報告されているんです!効果を高めるために、余計な騒音や刺激をさけることのできるヘッドホンを使うのがおすすめ。1回30分、1回~2回程度を目安に聞いてくださいね。☆ ビタミンB12を摂取ビタミンB群には神経系を正常化させる働きがあります。中でもビタミンB12は、赤血球をつくったり、糖質や脂肪の代謝にも関係している栄養素。他にも、精神バランスの安定、集中力や記憶力を高める効能もあります。ビタミンB12が不足すると神経過敏、イライラ、突然のふさぎ込み、運動機能失調、手足のしびれなども引き起こされる恐れも!【ビタミンB12を多く含む食べ物】カキ、アサリ、しじみ、レバー、いわし、たまご、チーズ、のりなど。筆者もこれらを意識するようになってから不眠や偏頭痛が解消されてきました。是非みなさんも参考にして、自律神経バランスを改善!ハッピーな毎日を送ってくださいね。
2015年10月07日マキノ出版は9月30日、「自律神経を整えて超健康になるCDブック~CD2枚付録 イギリスの特殊音響&名医が奏でる癒し音~」を発刊した。同書は、聴くだけで自律神経のバランスが整うCDが2枚ついたCDブック。CDを再生すると流れる特殊音響の振動が、全身の60兆個の細胞を活性化させ、自律神経の異常によいという。自律神経は全身の機能を維持し、体と心の健康を守る大切な神経で、バランスが崩れると体や心にさまざまな病気や不調が現れるとのこと。同社は「体がいつもだるく、疲れている人」「感情が不安定な人(イライラする・うつっぽい)」などに購入を勧めている。価格は税別920円。
2015年10月02日「自律神経」という言葉を聞いたことがありますか?自律神経は体内を正常に働かせるために24時間働き続けている神経です。通常、自然に沿った生活をしていれば特に乱れることはありませんが、夜更かしや運動不足など、不規則な生活を送っていると乱れてしまい、結果的に不眠症、肥満、病気、老化につながります。これらの症状はすぐに現れるわけではありませんが、身近な例としては老けてシワが増える、眠れず肌がボロボロになる、過食になるなど女性として気になる症状の原因にもなります。そこで今日は、ヨガインストラクターの資格を持つ著者が自律神経を整える方法についてご紹介します。■1.朝、太陽の光をあびる自律神経には日中に優位になる交感神経と夕方から夜に優位になる副交感神経の2種類があります。この2つのバランスが乱れると不調につながります。まず大切なのが朝の時間の過ごし方。眠っている間は副交感神経が優位になっているので、日中活動するのに必要な交感神経を優位にする必要があります。交感神経を優位にしてくれるホルモン、セロトニンは寝起きに一番多く分泌されると言われているため、起床直後30分以内に窓をあけて、しっかりと太陽光を浴びることで脳や身体に「朝ですよ」を教えてあげることができます。曇っている日でも、部屋の光よりも十分な光の強さがあるので、起きて30分以内に太陽光を浴びることを意識しましょう。■2.夜にするならランニングよりウォーキング朝、交感神経が優位になったら、日中テキパキと活動できますが、夕方から夜にかけては副交感神経を優位にしてあげる必要があります。現代では、一日中PCに向かっているためPCやスマホの電磁波の影響により交感神経の高ぶりがおさまらず、いつまで経っても副交感神経が優位にならず寝つきが悪い方も多いようです。夜には激しい運動やスマホから離れて生活するのが大切。仕事後にダイエットのためランニングをしている人もいますが、自律神経を整えるためにはランニングよりのウォーキングがオススメ。ランニングは運動能力や筋力をアップさせることができますが、どうしても激しい運動なため、ウォーキングに比べると呼吸が浅く早くなり交感神経が高まってしまいます。ダイエットのために夜に身体を動かすなら、深い呼吸を意識しながらできるウォーキングにしておきましょう。■3.就寝前にはリラックスしてしっかり休む自律神経を整えるためには睡眠の質も大切です。「寝よう」と思ってもなかなか寝付けず、睡眠の質が浅くいくら寝ても寝足りないという状況が続くようなら、睡眠の質が悪くなっている可能性があります。良質な睡眠を得るために、就寝前にはしっかり副交感神経を優位にしておきましょう。そのためには、PCやスマホから離れる、ぬる目のお湯にゆっくりつかる、あたたかい飲み物を1杯飲むことがオススメ。■4.深い呼吸をおこなう呼吸は身体や気持ちの表れと言われています。緊張している時やあせっているとき時、怒っている時には浅い呼吸になり、落ち着いている時やリラックスしている時には深い呼吸になっています。逆に、呼吸をコントロールすることで感情をコントロールすることもできます。あえて緊張している時に深呼吸をすることで、緊張の高ぶりを抑え、リラックスする方法は日常的に使われていますよね。今日は疲れたという時、イライラしていると感じる時には、深い呼吸を意識して、意識的に呼吸を使って副交感神経を優位にするようにしましょう。■おわりに自律神経の乱れはすぐには気づきにくいものなので、自分では意識していなくても身体がストレスを感じて乱れていることもあります。「なんだか不調を感じる」という時には、「自律神経のバランスが乱れているのかも?」と疑ってみてください。(栢原 陽子/ライター)
2015年09月11日慶応義塾大学(慶応大)は5月27日、小児神経発達障害であるレット症候群患者からiPS細胞を樹立し、神経発生過程における異常を明らかにしたと発表した。同成果は慶大医学部生理学教室の岡野栄之 教授、山梨大学大学院総合研究部環境遺伝医学講座の久保田健夫 教授、順天堂大学大学院医学研究科ゲノム・再生医療センターの赤松和土 特任教授の共同研究グループによるもので、5月27日付(現地時間)の英医学雑誌「Molecular Brain」オンライン版に掲載された。レット症候群は女児の1万5000人に1人の確率で発症する疾患で、6カ月~18カ月は通常の発達経過をたどるものの、徐々にそれまでに獲得した言語・運動能力を失うとともに特徴的な手もみ運動やてんかん、自閉症といった症状が現れる。この疾患の患者の約90%以上が2本のX染色体上にあるMECP2遺伝子のどちらかに変異を有していることがわかっている。現在は根本的治療法がないものの、自閉症状を示す疾患のなかで原因遺伝子がわかっている数少ない疾患であることから、レット症候群の研究が進めば自閉症全体の治療法の解明にもつながることが期待されている。これまでの研究では、患者の脳から神経系の細胞を入手することは不可能なため、MECP2遺伝子に変異を加えたマウスを用いてレット症候群の解析を行っていたが、実際の患者の症状は再現出来ていなかった。今回の研究では、MECP2遺伝子に同じ遺伝子変異を持つ2名の患者の皮膚細胞を使用した。女性の細胞は2本のX染色体を有し、ランダムに片方のX染色体の遺伝子発現が抑制されるため、正常MECP2遺伝子発現細胞と変異MECP2遺伝子発現の2種類の細胞が混在している状態からiPS細胞を作成した。その結果、正常MECP2遺伝子が発現しているiPS細胞と変異MECP2遺伝子が発現しているiPS細胞の2種類が得られた。作成した2種類のiPS細胞から誘導した神経幹細胞と神経細胞を比較したところ、変異MECP2遺伝子をもつ細胞では、細胞外のイオン濃度調整や血流調整、神経伝達物質の調節を担うグリア細胞の一種であるアストロサイトが、正常な細胞に比べてに比べて多く存在していることが判明した。研究グループは、今後の研究で、グリア細胞の発生異常がレット症候群の諸症状とどう関連しているか明らかにする必要があるとしている。
2015年05月27日理化学研究所(理研)は5月22日、皮膚感覚を知覚する脳の神経回路メカニズムを解明したと発表した。同成果は理研脳科学総合研究センター行動神経生理学研究チームの村山正宜 チームリーダーらの国際共同研究グループによるもので、米国の科学雑誌「Neuron」に掲載される。皮膚感覚の情報は脊髄や視床を経由し大脳新皮質の第一体性感覚野(S1)に到達することが知られている。S1に到達した情報はより高次な脳領域に伝えられ、これを「ボトムアップ入力」と呼ぶ。また、反対に高次領域から低次領域への入力を「トップダウン入力」と呼ぶ。従来の仮説では、皮膚感覚を知覚するためには皮膚からの外因性ボトムアップ入力が、注意や予測といった脳内活動による内因性トップダウン入力と融合することが必要だと考えられていた。この場合「何かに注意しなければ何も感じない」とうことになるが、人間は特に何も注意していなくても皮膚感覚の知覚は可能であり、この仮説では実体験を説明できていない。このように、皮膚感覚の知覚を形成するための基本神経回路とそのメカニズムについては詳しくわかっていなかった。同研究グループは、マウスの肢を刺激した時に脳内で起こる神経活動を細胞レベルから回路レベルまで包括的に測定した。また、マウスが皮膚感覚を識別する課題を行っている最中の行動を解析した。その結果、内因性トップダウン入力と外因性ボトムアップ入力が同じタイミングで連合する神経活動は観測されなかった。一方、皮膚感覚の情報が外因性ボトムアップ入力としてS1から高次脳領域に送られた後、再度S1へ「外因性のトップダウン入力」として自動的にフィードバックされる反響回路を発見した。また、外因性トップダウン入力は、従来提唱されてきた内因性トップダウン入力と外因性ボトムアップ入力の連合入力と同等の機能を担っていることがわかった。この外因性トップダウン入力を抑制したところ、マウスは皮膚感覚を正常に知覚できなくなったという。今回の研究成果は、脳が2つの神経回路を状況によって使い分けている可能性を示唆するもので、今後、外因性トップダウン入力のメカニズムを解明することで、老齢による五感の知覚能力の低下予防・改善につながることが期待される。
2015年05月22日大阪市立大学は3月18日、iPS細胞と人工神経を組み合わせて、マウスの坐骨神経損傷部に移植し、神経再生の長期有効性と安全性を実証したと発表した。同成果は同大学医学研究科整形外科学の中村博亮 教授、上村卓也 病院講師らのグループによるもので国際細胞組織学誌「Cells Tissues Organs」オンライン版に掲載される予定。外傷などによる末梢神経損傷に対しては自家神経移植が行われるが、神経を採取した部分に新たなしびれが生じてしまう。そのため、人工神経の臨床応用が進められているが、現在市販されているものは材質が硬く、移植場所が限られる、人工神経の神経再生が乏しいなどの課題がある。同研究グループが開発した人工神経は二層構造となっており、内層をポリ乳酸とポリカプロラクトン、外層をポリ乳酸のマルチファイバーメッシュで構成することで強度を保つと同時に、高い柔軟性を実現した。研究では、マウスiPS細胞から分化誘導した神経前駆細胞を人工神経に充填し、培養したものを坐骨神経損傷マウスの損傷部に移植し、48週間にわたり知覚機能の回復を調査した。その結果、iPS細胞を付加した人工神経を移植したマウスでは、人工神経のみを移植したマウスに比べて有意な神経再生が確認された。また、iPS細胞移植による腫瘍形成は認められず、iPS細胞と人工神経の併用によって長期的に安全かつ有効な神経再生が得られることがわかった。今回の成果によって今後、iPS細胞の移植再生医療が実現すれば、末梢神経領域へのiPS細胞の応用も可能になる。また、将来人工臓器や人工の手足が作成されるようになった場合、それらを神経でつないで動かすことに応用できる技術であると考えられるという。
2015年03月19日金沢大学は3月5日、アルギニンバソプレシン(AVP)という神経ペプチドを産生する神経細胞が体内時計の機能に重要な役割を果たし、概日リズムの周期や活動時間の長さを決定すると発表した。同成果は金沢大学医薬保健研究域医学系の三枝理博 准教授、同 櫻井武 教授と北海道大学、理化学研究所の研究グループによるもので、3月4日の米科学誌「Neuron」のオンライン版に掲載された。ヒトを含む哺乳動物のさまざまな身体機能は約24時間周期リズム(概日リズム)を刻んでおり、視床下部の一部である視交叉上核に存在する体内時計により制御されている。同研究グループは、視交叉上核を構成する約2万個の神経細胞の中から、最も多いとされる(約40%)AVPを生み出す神経細胞に目を付け、AVPだけで細胞時計を破壊した変異マウスを作成し、実験を行った。その結果、常に光を遮断した環境でマウスを飼育し、ケージ内を自発的に動き回る行動の概日リズムを解析すると、正常なマウスは24時間弱の周期を示すのに対し、変異マウスは周期が約1時間長くなっていた。1日の活動時間と休息時間を比べると、変異マウスは正常マウスに比べて活動時間が約5時間長くなった。また、明暗サイクルを8時間早めて時差を起こすと、変異マウスは正常マウスに比べ約5日早く新たな環境に対し行動リズムが順応し、体内時計の機能が弱まっていると考えられた。この変異マウスの視交叉上核を調べると、神経細胞間コミュニケーションに重要な遺伝子の中で、AVP産生神経細胞が激減していたほか、各AVP産生神経細胞が刻む概日リズムが弱く不安定で、周期が長くなっていた。これらの結果から、AVP産生神経細胞の細胞時計がきちんと機能することで、神経細胞間コミュニケーションに重要な分子が作られネットワーク機能が高まり概日リズムが安定し、適切な周期および活動時間帯で行動するように調節されることが確認された。これまでAVP産生神経細胞は体内時計のリズムに関与していないと考えられていたが、今回それを覆す結果が得られたことで、同細胞を新しくターゲットとした体内時計を調節する技術の開発につながる可能性が期待される。
2015年03月09日なんだか落ち着かない、手に汗をかく、寝付けない、途中で起きてしまう、このような症状に悩まされている方はいませんか? もしかしたら、それは自律神経失調症かもしれません。原因と予防法を探っていきます。自律神経のバランス、乱れていませんか?自律神経のバランスが乱れているかどうか、なんて自分ではサッパリわかりませんよね。まずは自律神経失調症になると、どのような症状が出るのかみていきましょう。不眠や倦怠感、無気力、頭痛、耳鳴り、多汗、口の渇き、目の疲労、立ちくらみ、食欲不振、吐き気、頻尿などさまざまな症状があるようです。ただ、これだけ幅広く症状があると自分が自律神経失調症かどうかの判断は素人にはとても難しいものだと思います。そこで今回は、自律神経の働きと自律神経失調症を予防する方法を紹介していきます!自律神経失調症は未知の病気自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、これらは自分の意志で調整することはできない神経と言われています。交感神経は興奮系の働き、副交感神経はリラックス系の働きを担います。これらがバランスよく働くことで、私たちの体は正常に保たれているのです。このバランスが崩れてしまう一番の理由は、ストレスと考えられています。ただ、自律神経失調症についてはまだ完全に判明していないことも多く、治療法が確立していないとも言われています。そのため私たちは、まずは予防を心がけるべきかもしれません。睡眠時は副交感神経を優位に睡眠時にはリラックス系の副交感神経が優位に働いている必要があります。逆に交感神経が優位な状態だと、興奮したままでなかなか眠りにつくことはできません。副交感神経を優位にする方法はいくつかあります。深呼吸したり、寝る前に照明を暗めにしたり、ストレッチをしたり……。好きな小説を読んだり、静かな音楽を聴きながら入眠するのも良いでしょう。睡眠時間が短かったり、起床・食事の時間がいつもバラバラだと自律神経のバランスが乱れやすいと言われています。副交感神経をコントロールして睡眠時間を確保し、生活リズムを整えていきましょう。Photo by Josh Angehr
2015年03月03日朝、目を覚ましたら、布団の中で身体をこすったり叩いたりしてみましょう。夜のおやすみモードが一挙に活動モードに変わります。体が活動モード(交感神経活性化)になることで代謝が上がり、痩せやすい体質に変わっていきます。■自律神経って何?皆さんも、「自律神経」という言葉を聞いたことがあると思います。少し説明させていただくと、人の神経系統を大きく分けると、自分の意志で動かすことができる「体性神経系」と自分の意志で動かすことのできない「自律神経系」の2つに分けられます。そしてさらに自律神経は、身体や精神を活動モードにする「交感神経」と、身体や精神を休止、リラックスモードにする「副交感神経」の2つに分かれます。つまり、夜は、副交感神経が優位になって身体や脳が休止モードになり、朝になると交感神経神経が優位になって、活動モードになるのです。太っている人は自律神経が乱れていて、副交感神経から交感神経への切り替えが上手くいきません。その結果、日中の代謝が低く「ぼーっと」した状態が続き、太りやすい体質のままでいることが多いのです。■なぜこすったり叩いたりするのか?ではなぜこすったり叩いたりするのでしょうか?これらの行動には、1擦る:身体を目覚めさせる2叩く:身体を戦闘モードにするという効果があります。1で交感神経優位に切り替え、さらに2で戦闘モードに切り替えることで、脂肪燃焼ホルモンの“ノルアドレナリン・アドレナリン・ドーパミン”の分泌を促します。■具体的な方法身体の末端、手先の甲から身体の中心に向かってこすります。そして裏側を通って手の末端に戻ります。他の部分も同じように表から始め、裏を通って末端に戻ります。手・足・お腹の順番でこすりましょう。叩く場合も同様に、身体の末端から中心部に向かってこすりましょう。ここで、注意点があります。優しくなでたり叩いたりしてはいけません。発生学的に皮膚は脳と同じ受精卵の外胚葉から作られていますから、優しくなでられると眠くなります。つまり脳を優しく撫でられているのと同じだからです。アロマオイルで身体を優しくマッサージをされると眠くなるのも同じ理由です。ですから、必ず痛くない程度の強さで擦って・叩いてくださいね。■最後にダイエットの王道は、どこまでいっても運動と食事療法です。でもそれだけだと辛いですね。そこでノウハウが必要なのです。そして、王道とノウハウが組み合わされて始めて、楽なのに綺麗に無理なく痩せていけるのです。(林田玲子/ハウコレ)
2014年12月08日理化学研究所(理研)は10月21日、無汗症患者の原因遺伝子を発見したと発表した。同研究成果は理研脳科学総合研究センター 発生神経生物研究チームの御子柴 克彦チームリーダー、久恒智博 研究員とスウェーデンのウプサラ大学との共同研究グループによるもの。10月21日付け(現地時間)の米科学雑誌「The Journal of Clinical Investigation」オンライン版に掲載される予定。人間は汗をかいて体温を調節するが、汗をかくことができないと熱中症やめまいを発症しやすく、重症化すると意識障害やけいれんなどを起こすことがある。このような無汗症の原因として、これまでに汗腺の形成不全や交感神経の異常などが報告されているが、その他の原因は明らかになっていなかった。同研究チームは、パキスタンで先天性無汗症を発症する家系を発見。この先天性無汗症患者は、汗腺の形成不全や交感神経の異常が見られず、発汗の異常以外は健常者と変わらなかった。また、家族全員には症状が出ていないことから、この先天性無汗症の原因遺伝子は常染色体劣性遺伝子であると推測された。そこで近親婚家系のDNAサンプルを用いてさらに詳しく解析を行ったところ、細胞内のカルシウム濃度に関わる「2型IP3受容体」の発現する遺伝子のDNA配列に変異があることが判明。その患者においては細胞外の刺激に応じてカルシウムイオンを放出する機能が完全に欠落していたという。また、マウスを使った実験を行い、「2型IP3受容体」を欠損したマウスでは、汗腺の細胞内カルシウム量が低下し、汗の分泌量が減少することが確認された。これらの発見から、ヒトやマウスで「2型IP3受容体」が発汗に重要な機能を果たしていると結論付けられた。同研究チームによると、今回の研究成果は無汗症だけでなく、多汗症の治療法確立にもつながることが期待されるという。
2014年10月21日小学校時代を振り返ると、必ずクラスに運動神経がずば抜けてよい男の子がいたと思います。言い換えれば、運動神経の良い子と悪い子の差がすごく歴然としていましたよね。運動能力は、生まれ持ったものがベースにはなっていますが、もともとの運動神経がそれほど良くない子でも、適切な時期に適切な運動をすれば改善できるといわれていることをご存じでしたか? ■子どもの運動神経を伸ばすなら、小学2年生までが勝負! 数年前に、井筒紫乃先生(当時は帝京科学大学准教授。現在は日本女子体育大学准教授)による講座を受講したことがあります。講座の内容は、運動生理学に基づいた、子どもの運動能力についてでしたが、その中でこんなお話しがありました。「運動神経を良くしたかったら、小学校2年生までに運動経験をたくさん積むこと」というものです。実は、子どもが運動能力を伸ばす時期というのは、あらかじめ決まっているものだそうです。今は、幼稚園や小学校のうちからサッカーや野球などを習う子どもたちも増えていますが、「大半の子どもが本格的に運動に取り組む時期は中学生の部活!」というイメージがあった私は、「そんなに早く決まるの?」と驚いた記憶があります。■子どもの運動神経を伸ばすなら、2歳がポイント! その後、興味があっていろいろ調べてみたところ、「2歳」という年齢がひとつのポイントになっていることがわかりました。2歳頃は、運動能力と自立心が飛躍的に発達し、個人差が出てくる時期のようです。たしかに、走ったり、ジャンプしたり、手を使わずに階段を降りたりなど、いろいろできるようになる時期ですね。この頃に積極的に体を動かす機会を作ることで、運動をコントロールする神経が発達し、筋肉や関節の動きがよりスムーズになり、身体のバランスをとることも上手になってくるそうです。■どんな運動が効果的? 最近では、幼稚園や保育園などで運動プログラムを取り入れているところも増えてきました。専門家や先生の指導のもと、子どもたちはさまざまな運動に取り組んでいます。しかし、「そうしたプログラムを行ったからといって、必ずしも運動神経が伸びるわけではない」という研究結果も出ています。東京学芸大学の杉原隆名誉教授による研究チームは2012年に、25m走や立ち幅跳びなど、6つの種目について、9,000人の幼稚園児の運動能力を調べました。比べたのは、マット運動や体操などの体育指導を受けていない子どもと、指導を受けている子どもです。すると、受けていない子どもは30点満点で19点台だったのに対し、指導を受けている子どもの平均は18点台。指導を受けていない子どものほうが、点数が高かったのです。だからと言って、運動プログラムがまったく意味をなさないというわけではありませんが、前出の杉浦名誉教授は、「小さいうちは特定の運動をやることだけでなく、遊ぶことも大事」と提言しています。たとえば遊具を使って登ったり降りたり、手や足を使って逃げる鬼ごっこなどをしたりすることで、バラエティに富んだ運動能力が身につくとも言っています(NHK生活情報ブログより)。■外遊び、うち遊びをたくさん経験しましょう! つまり、運動神経を伸ばすためには、外でいろいろな場所をたくさん歩く、走る、転ぶ、何かに登る、降りるなどの運動を積極的に行います。また、家の中ではパパの体に登ってぐるっと回る、風船を使ってバレーボールするなどの、体を使った何気ない遊びこそが、運動神経を伸ばすにはもっとも効果的なのではないでしょうか。小さいうちからたくさんの筋肉を使って、バランス感覚を養ったり、体の部位を動かしたりすることで、脳がその動きを記憶し、いざ本格的に運動をする時に蘇る、それが運動能力の高さのポイントとなるそうです。子どもにはぜひ、小さい頃からたくさん体を動かす機会を作ってあげてください。
2014年10月04日オムロン ヘルスケアは8月18日、神経障害の診断機器、治療用機器の開発を行う米ニューロメトリックス(NM)と、日本市場におけるNM製「神経伝導検査装置DPNチェック」の独占販売契約を締結。同契約に基づき、8月25日より、「糖尿病性末梢神経障害(DPN)」のスクリーニング検査が可能な「神経伝導検査装置DPNチェック HDN-1000」の発売を開始すると発表した。国内の糖尿病患者は、その可能性が強く疑われる人も含めると約950万人おり、さらにその予備軍が1100万人いると言われている。糖尿病の3大合併症は網膜症・腎症・神経障害といわれているが、中でも初期から進行する神経障害は、糖尿病患者の4割が発症することがわかっており、そのうち、両手両足の末端の神経より障害が進行する糖尿病性末梢神経障害(DPN)は、自覚症状を伴わない場合も多く、足の潰瘍や壊疽など重篤な事態にもつながることが懸念されている。DPNの検査法としては、アキレス腱反射やタッチテストなどの簡便な方法があるが、いずれも客観性に欠けることが課題で、より詳細な検査であり、有効な筋電計などを用いた神経伝導検査もあるが、検査装置が高価であるほか、正確な検査には熟練の技術も必要であることから、神経伝導検査を行える施設は限定的であり、糖尿病治療の現場での制限となっていた。同製品は、末梢の感覚神経の1つである腓腹神経に電気刺激を与え、神経に興奮が伝わる速度(神経伝導速度)と大きさ(活動電位振幅)を測定し、DPNの程度を簡便に検査する検査装置で、くるぶしの付近に本体を当てて、操作ボタンを押し、10~15秒待つことで、測定結果を知ることができるようになっている。また、本体とパソコンをUSBケーブルで接続し、付属の「コミュニケーターソフトウェア」を使うことで、より詳細な検査結果を見ることも可能だ。なお、同製品の販売は、医療機器販売会社であるオムロン コーリンが担当し、メーカー希望小売価格は68万8000円(税別)、初年度で350台の販売を目指すとしている。
2014年08月18日東京大学(東大)は、ショウジョウバエを用いて、正常な老化に伴い嗅覚神経細胞死が生じると、特定の匂いを感じることができず、異常な行動をとる原因となることを発見したと発表した。同成果は、同大大学大学院薬学系研究科 薬科学専攻の千原崇裕 准教授、同 三浦正幸 教授、米カリフォルニア大学サンディエゴ校のJing Wang教授、米スクリプス研究所のRonald Davis教授らによるもの。詳細は「PLOS Genetics」に掲載された。老化に伴って記憶学習や認識などの脳機能が低下することの要因の1つとして、老化に伴う神経細胞の細胞死が挙げられるが、正常な老化と神経変性疾患の双方において起きており、神経変性疾患における細胞死の研究は行われてきたものの、正常な老化の過程における細胞死の研究はこれまで、ほとんど研究されていなかった。今回、研究グループはショウジョウバエをモデル動物として用いて、正常な老化における脳内の細胞死の観察を試みた。その結果、老化したショウジョウバエの神経細胞のうち、特に匂いを感知するのに重要な神経細胞「嗅覚神経細胞」で細胞死に必要な酵素「カスパーゼ」が活性化していることを確認した。ショウジョウバエには約50種類の嗅覚神経細胞があり、それぞれの神経細胞ごとに感知する匂いが異なるが、カスパーゼの活性は、「リンゴ酢や酵母の匂い」を感知する「Or42b神経細胞」に見られ、実際に老いたショウジョウバエでは、同神経細胞の数が減少していることも確認したほか、嗅覚中枢の活性化とショウジョウバエのリンゴ酢に対する行動の調査では、老化したショウジョウバエではリンゴ酢を与えても嗅覚中枢がほとんど活性化せず、リンゴ酢がある場所に集まらない(誘引されない)ことを確認したとする。また、Or42b神経細胞でカスパーゼが活性化できないようにしたショウジョウバエでは、たとえ老化してもリンゴ酢の方向へ誘引されることも確認したとする。一般に、老化に伴って匂い感覚能(嗅覚機能)は低下するほか、パーキンソン病を含む神経変性疾患においても運動機能障害に先だって嗅覚機能低下が現れることが知られている。そのため研究グループでは今回の成果について、正常な老化における神経細胞の細胞死の意義、分子機構に迫るとともに、神経変性疾患時における神経細胞の細胞死の原因、ひいてはその発症機序の理解にもがることが期待されるとコメントしている。
2014年07月03日