携帯電話を封印して、通常は入れない夜の島を巡る。島に点在するアート作品を体験し、眠っていた感覚を呼び覚ます。そんな東京湾最大の無人島、横須賀の猿島を舞台にした芸術祭『Sense Island -感覚の島-暗闇の美術島 2022』(以下、『Sense Island』)が開催中だ。横須賀中央駅徒歩15分の「三笠ターミナル・猿島ビジターセンター」からフェリーで約10分。島の名は、「日蓮上人が安房国から鎌倉へ戻る際に嵐に遭い、白猿によって島に導かれた」という伝説に由来する。幕末から明治時代、さらに第二次世界大戦時には東京湾の軍事要塞だった歴史遺産であり、現在も煉瓦造りの兵舎や弾薬庫、隧道(トンネル)、発電所などの史跡を残す。はるか遡れば、縄文・弥生時代の遺物も出土しており、折り重なる時間の層を想像させる。日中の猿島。島の周囲は約1.7キロメートル。2019年にスタートした『Sense Island』は、テクノロジーや時間の概念を取り払い、猿島の自然や自身と向き合うアート体験を通じて、もともと持っていた感覚を取り戻すことをコンセプトとしてきた。初回からプロデューサーを務める齋藤精一(パノラマティクス主宰)は、「3回目となる今回は『Behave(感覚行動)』をテーマに掲げました。より感覚を研ぎ澄ませて自然やアートを体験した後、パンデミックの時代に人間は何をすべきか考えてほしい」と語る。島から横須賀の夜景も見えるジャンルも広がり、中村公輔(プロデューサー、レコーディングエンジニア)+中村寛(文化人類学者)+原田祐馬(アートディレクター、デザイナー)のユニットや、アーティストコレクティブ「TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH」などが参加。横須賀の街や猿島でのフィールドワークをベースとした写真や映像、インスタレーションなどが展開されている。齋藤精一(右)と参加アーティスト戦跡と豊かな自然が交錯する異空間長い切り通しの道、両サイドに続く石積みやレンガ積みの壁、天空を覆うように茂る樹木。森でカモフラージュされた要塞島であったことが実感されると同時に、森の生命力にも圧倒される。そうした戦跡と植生の交錯を多重露光で撮影した川島崇志の《暗黙の学習》は、見えない気配を浮かび上がらせる象徴的な作品だ。川島崇志《暗黙の学習》 ©️ naomi circusもと弾薬庫だったトンネルでは、石毛健太の音作品《コウモリの会話》を聴きながら、作品の声や自分の足音が反響するなかを歩く。傾斜してなかなか出口が見えず、異空間にいるようだ。また、オウ・シャオハンは、北西端の砲台跡をスクリーンとして、博物館の標本を撮影した写真を投影。「標本にも生きているような美しさがある。光と影のなかで表情がよく見えるように撮影した」と語る。約90mの長いトンネル ©️ naomi circusオウ・シャオハン《Life in the Moonlight》 ©️ naomi circus「オイモノ鼻広場」と呼ばれる岬に設置された、中山ゆめおの《彼らのすみか、私たちのすみか》には目を凝らしてほしい。夏にリサーチした際、人間のいない夜間に出会ったノネズミをモチーフとして、いきものの存在に気づかせるようなキネティックアートを展示している。中山ゆめお《彼らのすみか、私たちのすみか》写真には作品の光の残像が写っている。©️ naomi circus横浜や千葉方面の沿岸も見える。 ©️ naomi circus樹木の間にたたずむ森田友希の映像インスタレーション《裏庭》は3作品からなる。そのひとつは、2006年、祭りの夜に失踪し、1か月半後に裸同然で帰ってきた19歳の兄の記憶の断片を、ある男を主人公にイメージ化したショートムービーだ。「どこにいたの?と聞くと、横須賀の海にも行ったと。どんな旅をしてきたのか。当時の僕にとって兄はよくわからない存在だったのですが、大人になってから理解できるようになった」と語る。社会から離れて純粋な感覚を取り戻そうとする姿が『Sense Island』のコンセプトとも重なる。森田友希《裏庭》 ©️ naomi circus揺らぎを感じる小山泰介の映像作品は、水面を照らす太陽光をアウトフォーカスで撮影することから始めて制作されている。小山泰介《NONAGON PHOTON YOKOSUKA》(島内の展示)。小山の作品は三笠ターミナルにも展示。 ©️ naomi circus島を一周しながら、暗闇の中で自ずと視覚だけに頼らず、聴覚や嗅覚、触覚など五感を働かせて鑑賞することができる『Sense Island』だが、今回はさらに島内に留まらず、市街地での展示も実現したので、島歩きと街歩きの両方を楽しみたい。山本華《Dub》(ホテルニューポートヨコスカの展示) ©️ naomi circusまた、島内で繰り広げられる舞踊家の梅川壱之介によるパフォーマンス、ermhoi(エルムホイ)、七尾旅人の音楽ライブもある。鑑賞は全日フェリーを含む完全予約制のため、事前に公式ホームページをチェックしてから出かけよう。取材・文:白坂由里【開催情報】『Sense Island-感覚の島-暗闇の美術島 2022』2022年11月12日(土)~12月25日(日)※会期中の金土日及び祝日のみ開催※三笠桟橋から猿島へのフェリーを含め完全予約制公式サイト:
2022年11月16日東京湾に浮かぶ無人島「猿島(さるしま)」。こちらの島は現在アクティビティスポットとして広く知られていますが、実は歴史が古く、人が作り上げた史跡と自然美がいっぱいで、フォトジェニックスポット満載のロマンが溢れる島なのです。そんな猿島の魅力をご紹介していきます!無人島「猿島」の概要今回ご紹介する無人島「猿島」の所在は、神奈川県横須賀市。東京湾に浮かんでいて、夏になると海水浴場やBBQを目的にする人たちで賑わう、人気の観光スポットに♪しかし、猿島の魅力は夏だけではありません!猿島は江戸時代から太平洋戦争が終戦するまで、砲台などをもつ要塞として使用されていました。今でも島内には多くの史跡が残っています。史跡と自然が織りなす絶景は、一見の価値ありですよ。東京湾の無人島「猿島」へのアクセス船乗り場である〔三笠桟橋〕という場所に行くには、京急線の横須賀中央駅で降りるのがおすすめ。駅から徒歩でも行ける距離にあります。猿島行きのフェリーは約1時間ごとに1本出ているので、都合がいい時間帯を狙って行きましょう。ただし、冬場は本数が少なくなるのでご注意ください。フェリーに乗っている間は東京湾の海を眺めながら、潮風に当たって楽しみましょう♪どんどん近づいてくる島を見ていると、気持ちが高ぶってきますよ!フェリーに乗ると10~15分ほどで猿島に着くので、船酔いが心配な人も少しの我慢で済みそうです。無人島探検をスタートしよう!猿島に到着するとかわいい看板がお出迎えしてくれます。ご友人やご夫婦で行ったら、ぜひ記念写真を撮りたいスポットの1つ。この桟橋を抜けると砂浜が広がっており、側にはレンタルショップや売店があるので、猿島土産を購入するのもいいかもしれません。おすすめお土産は《猿島ビール無人島》。ビール好きの方はぜひゲットしてみてくださいね!猿島の見どころ① 要塞として歴史を感じる史跡猿島の魅力のひとつは、歴史を感じる史跡の数々――。太平洋戦争時代に砲台が置かれていた砲台跡などがあり、2015年には「国史跡」に指定されました。要塞島ならではの遺跡はなかなか見られないので、ぜひ歴史を辿ってみてください。猿島の見どころ② レンガ造りのトンネルが醸し出す神秘的な空気島にあるレンガ造りのトンネルは、国内に残るレンガ造りのトンネルとしては、とても古い建造物の1つなんだとか(※『無人島猿島パンフレット』より)。精巧に作られた赤レンガ調のトンネルは美しく、時間が止まったかのよう。この島が要塞として機能していた時代は、トンネル内に弾薬庫や司令部などが置かれ、この島の要でした。島の中でも90mのレンガ造りのトンネルは、「愛のトンネル」とも呼ばれています。赤いレンガで作られたトンネル内に日差しが差し込んでいる様子は、とても幻想的。そんな空間の中、ご夫婦やカップルで手を繋いで歩けば、2人の仲がさらに深まるかもしれません。猿島の見どころ③ 人工物と自然が織り成すロマン溢れる〔ジブリ〕のような切通し♪人が作りあげた赤レンガ調の建築物と自然が作りあげた緑溢れる自然美は、『天空の城ラピュタ』のよう。トンネルの入り口は『千と千尋の神隠し』も彷彿とさせますね。切通しには、かつて実際に使用されていた兵舎も残っています。どこか神々しい雰囲気が漂うこの空間へ、カメラを片手に訪れてみてはいかがでしょうか。体力に自信がない方でも安心な散策ルートがある♪猿島には、観光客が迷わないよう散策ルートが整備されているので、安全に観光を楽しめます。また、島を1周するのにあまり時間もかかりません。じっくり見学したい場合でも2時間ほどで回れるので、体力に自信がない人でもあまり疲れることなく楽しめますよ。猿島の北側の突端には、〔オイモノ鼻広場〕と呼ばれるスポットがあります。こちらは、4人掛けテーブル席がある休憩場所なのですが、天気がいい日には、房総半島が一望できる絶景スポットでもあるのです。休憩がてら、目の前に広がるオーシャンビューを楽しんでみませんか。カメラを持って「猿島」へ行こう!今回は、どの時期でも楽しめる猿島の魅力をご紹介しました。東京湾に浮いた無人島「猿島」には多くの見どころが詰まっています。東京都心からのアクセスも抜群で、都心近郊に住む方は思い立った日に行けるのもうれしいところ♪日々の生活にストレスを感じている方、ご友人やご夫婦と一味違った旅行をしたい方などは、猿島にぜひ一度足を運んでみてください!〔猿島〕の詳しい情報はこちら猿島周辺の宿を楽天トラベルで探す
2019年09月14日「Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島」が、横須賀の離島・猿島にて、2019年11月3日(日)から12月1日(日)までの夜間に開催される。「Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島」は、猿島全体を夜間開放して行われる、初のアートイベント。猿島は、砲台跡や弾薬庫跡といった人工的な痕跡と自然が融和した東京湾に浮かぶ無人島。会期中は、猿島ならではの独特な景観と、歴史、島の近くで暮らす人々の営みなどから着想を得たアートプロジェクトを、国内外のアーティストとともに展開する。参加アーティストは、本イベントのプロデューサーも務めるライゾマティクス・アーキテクチャーの齋藤精一をはじめ、場所に即したインスタレーションや新たな体験を作り出し、オノ・ヨーコなど数多くのアーティストとコラボレーションを行ってきたクリエイティブユニット・ワイルドドッグス、佐野文彦、後藤映則、鈴木康広など。アートプロジェクトを通じて、現代社会に生きる鑑賞者1人1人が「恐らく忘れかけているであろう感覚や感情」を呼び覚まし、想像力をもって自らの生活や個人のあり方を見つめなおす機会を創出する。【詳細】Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島会期:2019年11月3日(日)~12月1日(日)開場時間:17:00~21:00(予定) ※日没以降会場:猿島公園住所:神奈川県横須賀市猿島1番料金:3,500円前後(往復乗船料、夜間乗船料、入園料、観覧料含む) ※予定※詳細はウェブサイトにて順次告知。公式サイト:
2019年08月24日