福島県は、東日本大震災後の同県を描くアニメーション制作プロジェクト「みらいへの手紙~この道の途中から~」を発表した。公開は2月中旬を予定。同プロジェクトは、東日本大震災以後の同県にまつわる、実話に基づいたオムニバス形式のドキュメンタリーアニメーションを制作するというもの。制作記者発表会には内堀雅雄福島県知事、 福島県クリエイティブディレクターを務める箭内道彦氏、福島ガイナックス代表取締役の浅尾芳宣氏が登壇した。内堀知事は、プロジェクトの目的は「東日本大震災から5年経とうとする現在の福島にある「光と影」の両面を伝える」ことであり、世代や国境を越えて直感的に伝わるアニメという手法を選んだ理由を説明。 箭内氏からは、「光と影」の要素を表現するコンセプトに基づき、当初あがっていた2案を組み合わせプロジェクト名を生んだ経緯などを明かした。そして、浅尾氏が各エピソード制作の参考に取材で訪れた際に感じた、福島県各地に溢れるエネルギーへの驚きなどについて言及。アニメーションのイメージボードとロゴも公開された。なお、2月中旬に東京都・秋葉原での完成披露会が行われ、その後全国での試写会が行われる予定。今後のイベントの予定や制作されたエピソードは、同プロジェクトのWebサイトにて公開されるということだ。
2016年01月12日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月18日、金星探査機「あかつき」に搭載された波長2μm付近に感度を持つ赤外線カメラ(IR2)の画像を公開した。公開された画像は12月11日に撮影されたもの。画像では雲頂の高低が明暗で現れており、南北半球ともに緯度50度付近よりも極側で雲頂が低くなっていることがわかった。低緯度の縞模様や南北に延びる構造は、今回初めて捉えられた構造で、今後の観測と解析によって、金星雲層と大気のダイナミクスを解明する手がかりになることが期待されている。「あかつき」にはIR2のほかに3つのカメラが搭載されており、すでに画像が公開されている。IR2は観測のために検出器をマイナス200度以下まで冷却する必要があったため、他の3カメラより立ち上げに時間を要していた。
2015年12月21日本連載の第1回と第2回では、日本初の金星探査計画である「あかつき」がどのようにして生まれ、打ち上げられ、5年前の金星周回軌道への投入失敗が起きたのか。そしてそこからどのようにして再挑戦ができる道筋が見つかったのか、について紹介した。また第3回では、「あかつき」のプロジェクト・マネージャーを務める中村正人さんに、「あかつき」の計画がどのように立ち上がったのか、そして第4回では「あかつき」が完成するまで経緯、また人工衛星のプロマネというのがどういう仕事なのかについてお聞きした。第5回では、5年前の金星周回軌道への投入に失敗したときの状況と、そして原因調査で焦点となったセラミック・スラスターについてお聞きした。今回は金星周回軌道投入の再挑戦に向けた苦闘と、「あかつき」と中村さんの今後ついて伺った。(このインタビューは2015年11月19日に行われたものです)中村正人さん1959年生まれ。理学博士。JAXA宇宙科学研究所 教授。1982年、東京大学理学部地球物理学科卒業。1987年、東京大学理学系研究科地球物理学専攻博士課程修了。ドイツのマックスプランク研究所研究員、旧文部省宇宙科学研究所助手、東京大学大学院理学系研究科助教授を経て、2002年より現職。惑星大気とプラズマ物理学が専門。金星探査機「あかつき」では、計画の立ち上げから先頭に立ち、プロジェクト・マネージャとして開発から運用、5年前の失敗事故への対応、再挑戦に向けた計画策定を率いてきた。○姿勢制御用のスラスターで軌道に入れよう--その後、セラミック・スラスターは推力が出せないことがわかり、姿勢制御用のスラスター(RCS)[*13]で金星周回軌道に入れるということになりました。この案はどういう経緯で出てきたものなのでしょうか。中村: 言い出したのは稲谷さん[*14]でした。しれっ、として言うから、最初は「何言ってるんだ」と思いましたが、今になってみると彼が正しかったですね。理学の人間には思いもつかなかったです。でもよく考えてみると、RCSで軌道を変えることに使うというのは、天文衛星を打ち上げたときにやっていたんですね。「あかつき」は軌道投入用のエンジン(セラミック・スラスター)と姿勢制御用のエンジン(RCS)を別にもっていますが、たとえばX線天文衛星「すざく」では、RCSで打ち上げ後の軌道修正を行っています。だからRCSを使って軌道の制御もするというのは、そんなに不思議なことではないんですね。--RCSでも金星周回軌道に投入できるということがわかったのは、いつごろのことだったのでしょうか。中村: 軌道が見つかったのは1年ちょっと前だったんですよ。それまでは軌道が確定していなかったんです。だんだん僕らも焦りはじめていていました。一応、入れられる軌道はあったんですね。でもその軌道は、軌道投入時のエンジン噴射にプラスマイナス2%の誤差が出ただけでも、金星にぶつかっちゃうか、どっかに飛んで行っちゃうという、危ないものだったんです。はじめはその軌道を取ろうとしたんですが、NECの人から「そんな危険なことはやるもんじゃない」って言われて反対されたんです。宇宙研とNECの関係ってそういうものなんです。僕も若いころ、NECの人から「中村さん、そういうことはやるもんじゃありません」って怒られたりしたんですけど、そのときも石井君が「石井先生、そういうことはやるもんじゃありません」って言われていました。それで計算をやり直して、新しい軌道を探したんだけど、意外と見つからない。そのあとで、衛星側の観測の条件を少し緩和したんですね。僕が今村君に「観測できる時間が短くなるけど、衛星が長生きするほうがいいよね」と言って、今村君が納得してくれて。そうやって観測する時間を少し犠牲にしたことで、やっと解が見つかったんです。だいたい行けると思ったのは2013年8月ぐらいだったかな。そのあと計算を追及して、最終的な軌道ができあがったのが2014年1月ぐらいでした。--それは大変でしたね。中村: 最初は極軌道[*15]に入れようか、という話もありました。極軌道だと太陽の重力に引っ張られることがなかったから、こんなに難しくはなかったんですね。でも極軌道に入れると科学観測ができない。「あかつき」に搭載されているカメラの向きは固定されているから、極軌道に入るとそっぽを向いちゃうんですね。それに熱構造上、衛星を傾けてカメラを金星に向けてやる、ということもできない。だから僕からは必ず科学観測ができる軌道に入れてくれと要請をして、それを実現するために、みんなさんざん苦労しました。まぁ、そんな簡単に入れられたらおもしろくないですよ(笑)。○研究者の本能として、別の新しい研究課題を探す--ところで、「あかつき」の後継機の検討などは始まっているのでしょうか。中村: 今のところまだないですね。科学衛星なので、「あかつき」の科学的な成果を見て「『あかつき』でここまで分かった、では次は何を知らないといけないか」というところからスタートしないといけないですからね。惑星探査というのは時間がかかりますから、若い連中には「先を考えておけよ」とか「結果を見てから考えるなよ」と教えているんですが、まぁ金星は近くて行きやすいしね。とりあえずは「あかつき」の結果を見てから考えることになると思います。--そこには中村先生も何らかの形で関わられるのでしょうか。中村: いやいや、僕はもう定年ですからね。後任の人に任せます。--ちなみに中村先生は、「あかつき」にはどのあたりまで関わられる予定なのでしょうか。中村: 12月の金星軌道投入の成果が出るまで……だから、2016年3月ごろまでかな。実はこの前、ここ(JAXA東京事務所)で老後の生活プランみたいなセミナーがあって、3月で退職すると退職金がいくらで、みたいなことを計算したんですよ。でも年金がもらえるのはまだ先だから、これはやばいかもしれないなぁ、と(笑)。まじめな話をすると、僕はもともと宇宙研に勤めていて、東京大学に行って、また宇宙研に戻ってきてと、10年ぐらいごとに職場を移っています。でも研究者というのは、ひとつの仕事をやったら別のところにいって別の研究をするというのが普通なんですよ。いつまでも僕が宇宙研にいたら、あとの人たちが仕事できないじゃないですか。だから僕が別のところに行って、すると僕のいたところには新しい人が入ってくれるから、新しい計画が始まる。だから冗談ではなくて、これは研究者の本能として、別の新しい研究課題を探したいとは考えています。【取材協力:JAXA】
2015年12月10日本連載の第1回と第2回では、日本初の金星探査計画である「あかつき」がどのようにして生まれ、打ち上げられ、5年前の金星周回軌道への投入失敗が起きたのか。そしてそこからどのようにして再挑戦ができる道筋が見つかったのか、について紹介した。また第3回では、「あかつき」のプロジェクト・マネージャを務める中村正人さんに、「あかつき」の計画がどのように立ち上がったのか、そして第4回では「あかつき」が完成するまで経緯、また人工衛星のプロマネというのがどういう仕事なのかについて話しを伺った。今回は中村さんに、5年前の金星周回軌道への投入に失敗したときの状況と、そして原因調査で焦点となったセラミック・スラスターについてお聞きした。(このインタビューは2015年11月19日に行われたものです)中村正人さん1959年生まれ。理学博士。JAXA宇宙科学研究所 教授。1982年、東京大学理学部地球物理学科卒業。1987年、東京大学理学系研究科地球物理学専攻博士課程修了。ドイツのマックスプランク研究所研究員、旧文部省宇宙科学研究所助手、東京大学大学院理学系研究科助教授を経て、2002年より現職。惑星大気とプラズマ物理学が専門。金星探査機「あかつき」では、計画の立ち上げから先頭に立ち、プロジェクト・マネージャとして開発から運用、5年前の失敗事故への対応、再挑戦に向けた計画策定を率いてきた。○打ち上げ、そして金星周回軌道投入の失敗--2010年5月21日の打ち上げから同年12月7日の金星到着までは何も不安なところはなかったのでしょうか。中村: 何もなかった。本当に順調でした。今考えると不気味な話ですね。--2010年の金星周回軌道投入は、もう確実に成功するだろうと思っていらっしゃったのでしょうか。中村: そうですね。だから「どうしたんだろう」と思ったんです。不思議でした。「これはもしかしてエンジンが爆発して吹っ飛んじゃったんじゃないか」って推進系の人たちには言ってたんだけど、今から考えると当たらずと雖も遠からずでしたね。セラミック・スラスターが途中で千切れてくれたから良かったようなものの、あれが大爆発していたら衛星が壊れていましたから、あの程度で済んで良かったですよ。そのあと、NASAのマドリード局のアンテナにつなぎかえて探して、通信が切れてから2時間ぐらいで再補足できたんですが、臼田宇宙空間観測所で山本善一先生がずっとオシロスコープで探していたんです。それで捕捉できて「あっ、あった」という声が聞こえてきたんですね。そのあと、セーフ・ホールド・モードに入ってることがわかりました。爆発した痕跡はないんだけど、生きてたということが不思議で、逆に「何が起きているんだろう」と思いました。--その2時間ぐらいの間というのはどういうお気持ちだったのでしょうか。中村: 「俺、こんな運悪かったかなー」と思ってたかなぁ。こんなはずないぞ、と。落ち込む余裕もなかったかなぁ。どうなっているか状況が分からないからね。ほら、女の子に確実にフラれたと思っても、まだ完全に「アンタ嫌いよ」と言われたわけじゃないなら、諦めきれないものじゃないですか。それと同じですよ(笑)。--運用に関わっておられた、他の皆さんの反応というのはどういうものだったのでしょうか。中村: 軌道の計算はすぐにでき、このまま行けば6年後には金星のそばを通るということはわかっていたので、先がないという状況じゃなかったですね。集まった人たちに「今は何もしない。6年先にまたみんな集まってください」というようなことを言ったような記憶があります。そのときみんなはうなずいていたかな。まぁ、うなずくしかないですよね。各人それぞれ気持ちはあったでしょうが、ほとんどの人は「そうは言ってもたぶん駄目だよね」と思ってたんじゃないかな。と言うのも、6年先に金星のそばに近付けたとしても、エンジンがぜんぜん噴けなかったら入れないじゃないですか。燃料が残っているかどうかもわからないし。だから単に金星のそばをもう1回通るチャンスがある、という期待だけで希望をつないだんです。人間ってそういうときには藁にもすがるものですね。--海外の研究者からの応援や励ましなどはあったのでしょうか。中村: いっぱい来ました。応援というよりは、我々と欧州のグループとは一心同体なんです。「ヴィーナス・エクスプレス」[*10]と「あかつき」は、関わっている人間が入れ子になってますから、他人事ではなくて「自分たちが衛星をロストした」という気持ちだったんじゃないかな。ヴィーナス・エクスプレスのプロジェクト・サイエンティストは、僕がESAのオランダの研究所に勤めていたときの同僚ですからね。あと米国のNASAに行って、この事故について説明したときに、ジム・グリーンというNASAの科学部門の部長に「それはとても貴重な情報だ」と言われたんですよ。でもよくよく顔を見ると「これはNASAは過去に同じ失敗をやったことがあるな」という気がしました。NASAとはずっと以前から、僕らはNASAのアンテナ[*11]を毎日タダで使ってて、その見返りとしてNASAの科学者を受け入れて「あかつき」のデータを見せる、という協定を結んでいるんですね。だから同情というよりは、自分自身の問題と捉えていたと思います。○セラミック・スラスターは悪くない--その後の調査で、セラミック・スラスターが壊れたのではないかという可能性が出てきます。ただ、セラミック・スラスターが悪い、というわけではないのですよね。中村: そう、誤解している人が多いのですが、配管の中の弁で閉塞が起きて、燃料の供給量が少なくなり、理論的に最適な混合比率になってしまい、それで燃焼温度が上がって壊れてしまったんですね。だからニッケル合金製のスラスターだったらもっと早く、1分ぐらいで壊れていたでしょうね。セラミック・スラスターは三菱重工と京セラが造ったんだけど、大変にきちんと開発されていて、非常に性能は良いものです。--そもそも、「あかつき」にセラミック・スラスターを搭載するという話はいつごろ、どういう経緯で出てきたのでしょうか。中村: 僕もよく知らないんですよ。最初は手堅い設計で行こうということで、そういう新技術の話はありませんでした。高利得アンテナも検討時はパラボラでしたしね。スラスターはニッケル合金製が普通で、それで行くんだと思っていたら、いつの間にかセラミック・スラスターになってたんです。これは最後まで揉めたんですよ。なにが問題になったかというと、小さなデブリ(宇宙ごみや宇宙塵など)が当たったときに「パーン」と割れちゃうんじゃないか、という心配があったんです。それでデブリの衝突確率を一生懸命計算して、「まず起こりえない」という結果を出して、採用することになったんです。--従来型のスラスターでは性能不足だった、ということではなかったのですね。中村: 今のスラスターは、燃焼温度を落とすために、酸化剤と燃料を理論的に効率が一番良い比率では燃やしていないんですね[*12]。今回は故障によって図らずも理論的に最適な燃焼になってしまって壊れましたが。セラミック・スラスターは耐熱性が高く、燃焼温度を高く設定できるので、エンジンの効率を上げられるという点はありました。でも、その可能性は探りはしましたが、「あかつき」では従来どおりの比率で噴いていると思います。だからセラミック・スラスターを積んだのは、試験的な要素が大きかったと思いますね。--しかし、セラミック・スラスターのような新技術は、本来であれば工学試験衛星で試験したいところだったのではないでしょうか。中村: 「あかつき」は科学衛星ではありますが、工学的なチャレンジをやるという面もありました。他の惑星の周回軌道への投入ということ自体がチャレンジなことでしたから、その要となるエンジンを新しい技術でやるということに、精神的な抵抗というものはまったくなかったですね。【取材協力:JAXA】
2015年12月10日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月9日、2日前に実施した金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入について、成功したことを発表した。すでに噴射自体は予定通り行われていたことが分かっていたが、探査機の位置や速度を2日間計測し、周回軌道に入っていることを確認。同日開催した記者会見で、JAXAの中村正人・あかつきプロジェクトマネージャが「あかつきは金星の重力圏に捉えられ、衛星になった」と宣言した。あかつきは2010年5月21日に打ち上げられた日本初の金星探査機。半年後、金星周回軌道への投入に挑んだものの、メインエンジンが破損したことで失敗、金星を通過して太陽を周回することになり、これが再挑戦だった。一度軌道投入に失敗した惑星探査機が再挑戦し、成功した前例は無かったというが、諦めずに運用を続け、快挙に結びつけた。中村プロマネは会見で、あかつきが打ち上げられた当時に作られたポスターを紹介し、「今回軌道に投入したときは、まさにこのポスターの構図の通りだった。大変感慨深いものがある。あれから5年が経ってしまったが、ついに我々の夢が実現した」と喜びを語った。軌道投入を実施した12月7日の午後から、早速金星の観測を開始。予定通り、「中間赤外カメラ(LIR)」「紫外イメージャ(UVI)」「1μmカメラ(IR1)」による撮影に成功した。いずれも世界最高レベルの画像とのことだが、特にLIRの画像については南北に弓状の模様が見られ、今村剛プロジェクトサイエンティストは「全く想像もしていなかった。早速宿題を突きつけられた」と、興奮が隠せない様子だった。あかつきは現在、遠金点高度44万km、近金点高度400kmの楕円軌道を周回。今後、来年3月中に遠金点高度を32万kmまで下げ、4月より定常観測を開始。それから1年後くらいにさらに31万kmまで下げる計画だという。今回の軌道投入前の計画では、遠金点高度48~50万kmの軌道に投入する予定だったが、噴射に使った姿勢制御エンジン(RCS)の能力が予想よりも良かったとのことで、それよりも低い高度に投入することができた。つまり次回の軌道制御では、当初の予定よりも燃料を節約できるわけで、あかつきを工学面で支えた廣瀬史子主任研究員によれば、2年を予定していた観測期間が長くなる可能性もあるという。廣瀬主任研究員は、あかつきの軌道計算が担当。5年前の失敗以降、何年もの間、なるべく当初の観測軌道(遠金点高度8万km)に近づけられるよう、何万ケースも軌道計算を繰り返したという。これについて、廣瀬主任研究員は「この31万kmが本当にミニマム。今回の軌道投入のタイミングは12月7日しかなかった。これ以前だと探査機が金星に落下するし、以降ではここまで接近できない」とし、計算結果に自信を見せた。1998年に打ち上げた日本初の火星探査機「のぞみ」も火星周回に失敗。5年前のあかつきで、惑星周回は2回連続の失敗となっていたが、今回のリカバリーにより、日本初の惑星周回がついに実現した。中村プロマネは「これで惑星探査の世界の仲間入りができた。日本が世界にデータを供給できるようになる。これが一番大きい」と喜びの表情を見せる。また中村プロマネは、小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトマネージャの川口淳一郎・JAXAシニアフェローが世界初を重視していることに言及。「私の考えは少し違う」とした上で、「世界ですでにやっていることであっても、自分でやってみないと分からないことがある。一歩一歩、歯を食いしばり、たとえ人がやったことを繰り返してでも、習得することが大事」と、日本初であることの意義を強調した。
2015年12月10日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月9日、金星探査機「あかつき」を金星周回軌道に投入することに成功したと発表した。同探査機は12月7日に姿勢制御用エンジンを噴射し軌道投入を実施。探査機軌道の計測と計算の結果、「あかつき」が金星周回周期約13日14時間、金星に最も近いところで高度約400km、金星から最も遠いところでは高度約44万kmの楕円軌道を、金星の自転と同じ方向に周回していることがわかった。今後、搭載している2μmカメラ(IR2)、雷・大気光カメラ(LAC)、超高安定発振器(USO)の立上げおよび機能確認を行い、すでに機能確認済みの1μmカメラ(IR1)、中間赤外カメラ(LIR)、紫外イメージャ(UVI)と合わせて約3カ月間の初期観測を行うとともに、軌道制御運用を行って徐々に金星を9日間程度で周回する楕円軌道へと移行し、2016年4月ごろから定常観測を実施する予定だ。
2015年12月09日連載の第1回では、日本初の金星探査計画がどのようにして立ち上がり、そして「あかつき」と命名されて宇宙に飛び立つに至ったのかについて、第2回では5年前の金星周回軌道への投入失敗と、そこからどのようにして再挑戦ができる道筋が見つかったのか、この5年間の「あかつき」と運用チームの苦闘を紹介した。今回、「あかつき」のプロジェクト・マネージャを務める中村正人さんに、「あかつき」の計画立ち上げのころのお話を伺った。(このインタビューは2015年11月19日に行われたものです)中村正人さん1959年生まれ。理学博士。JAXA宇宙科学研究所 教授。1982年、東京大学理学部地球物理学科卒業。1987年、東京大学理学系研究科地球物理学専攻博士課程修了。ドイツのマックスプランク研究所研究員、旧文部省宇宙科学研究所助手、東京大学大学院理学系研究科助教授を経て、2002年より現職。惑星大気とプラズマ物理学が専門。金星探査機「あかつき」では、計画の立ち上げから先頭に立ち、プロジェクト・マネージャとして開発から運用、5年前の失敗事故への対応、再挑戦に向けた計画策定を率いてきた。○「あかつき」の夜明け--まず最初に、「あかつき」の計画がどのようにして立ち上がり、そして中村先生はどのような経緯でそれに関わられたのかについてお聞かせください。中村: 20世紀の終わりに、当時僕は東京大学の助教授だったんですが、指導教官だった宇宙研の鶴田先生[*1]に呼びつけられまして、「金星に行きたいんだが、赤外線のカメラを造ってほしい」と言われたんですね。そのころ僕の研究課題は極端紫外線といって、X線と紫外線の間の光を使って、宇宙空間に広がっているプラズマの様子を調べるという仕事をしていたんです。なので「僕には極端紫外線の仕事がありますから」と言ったら、鶴田先生からは「いや中村君、極端紫外線はもう古いから学生に任せなさい」と言われたんです。その当時の学生が今ではもう東大教授ですよ。「ひさき」[*2]に関わっているのは、当時の学生や、さらにその学生です。でも私はその成果を見ずに赤外線のほうに行って、そのうちに「中村君、衛星本体のほうも頼むね」と言われて、1年で提案書をまとめあげました。そして、2000年12月に宇宙科学研究所の理学委員会に対して提案書を提出しました。そのあと、2001年1月に「宇宙科学シンポジウム」[*3]というのがありまして、その初日の最初の講演で、僕が「あかつき」の提案をしたんですね。そのシンポジウムをやった日の夕方に宇宙理学委員会[*4]を開いていただいて、そこから科学衛星24号「PLANET-C[*5]」の計画の評価や審査が始まりました。--ええっ、わずか1年ですか。ところで、そもそもどういう経緯で「日本も金星に探査機を送ろう」という話が出てきたのでしょうか。中村: なんで金星かというと、やはり地球に近い火星や金星は行きやすいんですね。それで、当時すでに火星探査機「のぞみ」があったので、だから次は金星だろう、ということになりました。あまり遠いところに行くと、通信回線が細くなるので、送れるデータが限られるんですよね。観測ではたくさんのデータを取りますから、それは辛い。あと、我々は重力のある天体の周回軌道に衛星を投入した経験がないので、いきなり難しいことやるのは止めたほうがいいですからね。金星、火星以外は、あまり選ぶ余地がなかった。実は「のぞみ」の計画(PLANET-B)を立ち上げるときに大議論があって、火星に行くか、金星に行くかで揉めたんです。結局火星に決めて「のぞみ」になったのですが、それなら次は金星だろうと。でも今までソヴィエトや米国がやってきたようなことと同じテーマで探査をやっても、それも意義はあるのですが、違うことをやろうということになりました。金星は雲に覆われているので中が見えないんです。だから、金星の中でどういう風に大気が動いているかは調べられていなかった。その後、1980年ぐらいに「金星の大気は熱くて赤外線を発しているから、赤外線の観測機器を使って見ると雲の中を覗けるぞ」ということがわかったんですが、ソヴィエトや米国が金星を探査したのは、それがわかるより前の1960~70年代のことですから、彼らはやっていなかったんですよ。だから赤外線を使えば金星の雲の中の様子がわかる、やろうじゃないか、ということにはなったんですが、日本には赤外線の観測機器を造れる人がいなかった。だから鶴田先生は僕に「日本で赤外線の機器が造れるやつがいないから君がやれ」って言ったんですね。僕は磁気圏物理屋さんで、気象学はぜんぜんど素人で、なんの関係もないんです。でも光のセンサー機器の開発をやっていたということもあって、「やってくれ」と言われたわけです。ただ、「やってくれ」と言われても、まずはその提案を通さなきゃならない。それで1年間一生懸命やって提案書を作って提案して、他の先生方も説得して、提案が通ったのが、2001年でした。そのときは2007年に打ち上げて、2008年か2009年に金星到着という計画だったんですが、M-Vロケットの4号機が失敗したんですね。それの手当てをするのにお金が必要で、PLANET-Cを立ち上げる予算がなかったんです。結局、2004年まで立ち上げることができなくて、それから造り始めたので、打ち上げが2010年になったというわけです。ただ、2004年に立ち上がってからはスケジュールの遅延はありませんでした。一度、打ち上げロケットがM-VからH-IIAに変わったときにかなりすったもんだしましたが、それでも遅延を起こさずやってこられました。--つまり中村先生が関わられる前から、科学者の方の間では金星探査をしたいという土壌があったのでしょうか。中村: ありました。あったんですけど、「やりたい」という人はいっぱいいても、「できる」という人はあんまりいなかったんですよ。なぜかというと、たとえば「あかつき」の場合だと2000年に検討が始まって、今が2015年。つまり15年かかるんです。研究者人生の半分をつぶすことになるんですよ。だから「やる」って人はあんまりいないんです。でも僕は「コミュニティのために人生を捧げなさい」という教育を受けてきたんです。同じ教育を受けたのが早川基さん[*6]で、彼は今、水星探査計画「ベピコロンボ」のプロジェクト・マネージャをやっていますね。そして僕に「金星をやれ」と言った鶴田先生は、「のぞみ」のプロジェクト・マネージャでした。この3人は同じ研究室にいて、鶴田先生が助教授で、早川さんが助手で、僕が学生だったんです。この3人はずっと磁気圏物理をやってたんだけど、どこからか道を誤って惑星探査機のプロマネになってしまったんです。水星探査なんてものすごく難しいから、だから比較的簡単な金星は中村君で、難しい水星は早川君で、ということになったんじゃないですか(笑)。--先ほど、「やりたい」という人はいっぱいいた、とおっしゃいましたが、その発端はどなただったのでしょうか。中村: それはね、「あかつき」のプロジェクト・サイエンティストをやっている今村君[*7]が「行きたい」って言ったんですよ。あとそれ以前に、当時に東京大学にいて、今は東京学芸大学で教授をやっている松田先生という方がおられるんですが、この方が金星の気象の大気力学の専門で、金星に対する素地はあったんですね。今村君もそういう勉強して、さらに彼は雲が好きなんです。すごく好きなんですよ。地球の雲も好きなんですけど、金星の雲はもっと好きで、「どうやってできるのか」といったことを知りたかった。だから鶴田先生に「金星をやれ」と言われたときのことを正確に言うと「今村君が金星に行きたがってるんだけど、君が助けてやってくれないか」ということだったんです。--金星の大気というと、分野としてはすごく限られていると思うのですが、惑星や気象をやっている研究者の方々の間での反応はどのような感じだったのでしょうか。中村: 始めはね、日本の気象学の分野では「金星探査なんてやってもね」と言われていたんですよ。それで、2000年の検討時に、僕と今村君は全国の大学に行って、気象学教室に赴いてはセミナーをやって、「金星の大気探査をやれば気象学が発展しますよ」と話をしたんですよ。もうたくさんやりましたよ。そうして合意を取り付けた上で、2001年の宇宙科学シンポジウムに臨んだので、そこで反対意見が出るとは思っていませんでした。みんなね、話を聞くのが面倒な人は「中村さんのおっしゃることは大変すばらしい」と言うし、反対しようという人も、それ以前に今村君に論破されちゃってるから。そういう意味では、我々はコミュニティを切り開きつつあると言っても良いと思いますね。気象学をやっている人全員が金星に興味があるわけじゃないんですけど、「あかつき」でデータが取れることによって、日本の気象学の先生たちが大挙して、金星大気という分野に乗り込んでくると思うんですよ。今はまだこの分野はすごく小さなコミュニティですが、かなり大きくすることができる。みんなが合意することをやるんじゃなくて、やりたいことをやって、それをみんなに納得させることが大事だと思いますね。【取材協力:JAXA】
2015年12月09日連載の第1回では、日本初の金星探査計画がどのようにして立ち上がり、そして「あかつき」と命名されて宇宙に飛び立つに至ったのかについて紹介した。第2回となる今回は、5年前の金星周回軌道への投入失敗と、そこからどのようにして再挑戦ができる道筋が見つかったのか、この5年間の「あかつき」と運用チームの苦闘を紹介したい。○2010年12月7日2010年5月21日に打ち上げられた「あかつき」は、順調に航行を続け、6月28日にはセラミック・スラスターの噴射が行われた。この噴射は、金星への接近条件を調整することと同時に、新技術であるセラミック・スラスターを金星周回軌道投入で使うため、その出力特性を把握するためにも不可欠なものだった。噴射は成功し、軌道変更とセラミック・スラスターの技術実証のふたつを成し遂げた。その後も「あかつき」は順調に飛行を続けた。11月19日には、金星への到着日を12月7日と決定したことが発表された。12月5日、6日と7日に行う動作を記したプログラムが送られた。6日にはそのプログラムにしたがい、探査機は自分の姿勢を変え、スラスターのついている探査機後部を前に向けた。軌道に入るためには、エンジンを進行方向の前に向けて噴射し、減速しなければならないためだ。そして12月7日8時49分、「あかつき」はあらかじめ送られたプログラムどおりにエンジンを噴射した。噴射時間は約11分間。その直後の8時50分43秒には、「あかつき」は地球から見て金星の裏側に入るため、通信はできなくなる。計画では9時1分にエンジンが自動で止まり、9時12分3秒に金星の裏側から出てきて、「あかつき」との通信が再開されるはずだった(地球と金星との距離が離れているため、厳密にはこの時点で3分半ほどのタイムラグがある)。しかし、その通信は来なかった。アンテナは探査機が飛んでいるであろう空間に向けられている。にもかかわらず通信がこなかったということは、その空間に探査機がいないか、機体が回転しているか、あるいは壊れていることを意味していた。最終的に「あかつき」からの電波を地球で捉えることができたのは、10時26分前後のことだった。翌日には、NASAのジェット推進研究所(JPL)による軌道計算の結果が伝えられた。それによると、計画の約2割の減速しかできていないことがわかった。この時点で、たとえ探査機が正常でも、すぐに再度エンジンを噴射して金星周回軌道に入ることはできないことがわかった。「あかつき」は以前と同じ、太陽を周回する軌道にいた。減速が足らなかったこということは、スラスターの噴射が途中で止まったということを意味していた。エンジンが壊れたのか、あるいは何か別の問題が起きてスラスターが自動停止することになったのか、この時点ではまだわからなかった。ただ、まったく光明がないわけではなかった。事故後に「あかつき」が乗った軌道を計算すると、6年後に再び金星のそばを通過することがわかった。もしスラスターが生きていれば、再挑戦できるかもしれない。ただ、それを裏付けるものは、このときは何もなかった。中村さんはこのときのことを「人間ってそういうときには藁にもすがるものですね」と振り返る。単に「金星のそばをもう1回通るチャンスがある」という期待だけで、希望をつないだのだった。○疑われたセラミック・スラスター12月7日に何が起きたのかを調べるため、そして6年後に再挑戦ができるのかを知るため、事故原因を解明すべく調査が始まった。真っ先に疑われたのは、新開発のセラミック・スラスターだった。「あかつき」にはいくつかの新しい技術が投入されていたが、その中でも最も大きなものがセラミック・スラスターだった。そして実際にセラミック・スラスターの噴射が途中で止まったことは間違いなく、疑われたのは仕方がないことではあった。噴射時の探査機のデータを受信して分析したところ、噴射開始から152秒前後に、探査機の姿勢が乱れたことがわかった。探査機はある程度の乱れであれば、自律制御によって姿勢を正常に戻すことができる。しかし、ある一定を超えると、スラスターを噴射したまま戻すことは不可能と判断し、やはり自律制御によってスラスターを止めるようになっている。そして噴射開始から158秒のところでこれが働き、スラスターが止まることになった。さらに噴射開始から375秒後には、セーフ・ホールド・モードとよばれる、緊急時に探査機を守るための、待避姿勢に入ったこともわかった。軌道に入れなかったのは、こうしてスラスターが途中で停止したためだった。では、それを引き起こした姿勢の乱れは何が原因だったのだろうか。12月27日にJAXAは、事故の原因が、スラスターに燃料を供給する配管にあるバルブ(弁)にあった可能性が高いと発表した。スラスターは燃料のヒドラジンと酸化剤の四酸化二窒素とを混ぜ合わせて燃やし、そのガスを噴射することで推進力を得る。この推進剤をスラスターに送り込むのには高圧のヘリウムが使われており、そのためヒドラジン・四酸化二窒素のタンクと、ヘリウムのタンクとは配管でつながっている状態にある。そこで、ヒドラジンや四酸化二窒素がその配管を逆流しないように、専用の弁(逆止弁)が入っている。ところが、この逆止弁にあるほんの少しの隙間から酸化剤の四酸化二窒素が漏れ出し、この弁のところでヒドラジンと反応し、結晶を作ってしまった。ちょうどヘリウムの通り道に邪魔者が現れたことになる。そのため十分な圧力のヘリウムでヒドラジンを押し出すことができなくなり、その結果エンジンに送り込まれるヒドラジンと四酸化二窒素の量が変わってしまった。実は、ヒドラジンと四酸化二窒素を完全燃焼させると温度が高くなりすぎてスラスターが壊れてしまうので、本来は燃料を少し多めに足して燃やすことで、わざと燃焼温度を下げている。しかし、こうした経緯でスラスターに送り込まれる燃料の量が減ったことで、図らずも理論的に最適な燃焼に近くなってしまい、異常燃焼が起き、探査機の姿勢が乱れ、そしてスラスターが停止することになったと考えられている。またこの時点で、異常燃焼の結果、スラスターが壊れている可能性もあった。○6年後に希望をつないで2016年に再び金星には近づける、けれどもセラミック・スラスターは使えないかもしれないという状況の中で、運用チームには姿勢制御用の小型スラスター(RCS)を使うという案があった。RCSは姿勢制御に使うものなので推力は小さく、また本来は細かく「プシュ」と噴くことにしか使われていない。「あかつき」には探査機の各所に合計12基のRCSをもっている。そのうち、上面(ハイゲイン・アンテナがある面)、もしくは下面(壊れたセラミック・スラスターがある面)にはそれぞれ4基ずつRCSがあり、そのどちらかの面の4基を同時に、そして長時間にわたって噴射することで軌道投入しようというのだ。運用チームはまず、セラミック・スラスターの状況を確認するため、2011年9月7日と14日に試験噴射を行なった。その結果、推力が本来の10%ほどしか出ないことが確認された。やはり、姿勢が乱れる原因となった異常燃焼によって高熱になったせいで、セラミック・スラスターは壊れてしまったのでないかと考えられた。壊れた状態で噴射し続けることで、さらに破損が広がることも懸念されたため、これ以降セラミック・スラスターは使わないこととなり、RCSによる軌道投入の可能性を追求することになった。10月には酸化剤の四酸化二窒素も投棄された。RCSは燃料のヒドラジンを、触媒と反応させて発生したガスを噴射するため、酸化剤が不要であるためだ。これで探査機をいくらか軽くすることができた。2011年11月には、軌道を調整するためのRCS噴射が行われた。噴射は3回に分けて行われ成功。これにより金星との再会は、2016年から2015年に早まることになった。○見つかった軌道この時点で、金星に到着する日は2015年11月22日とされた。しかし、検討を進める中で、このタイミングで金星周回軌道に投入すると、金星にすぐに落下してしまうことが判明した。では、1回目の金星接近時には金星をスウィングバイし、2回目の会合で金星周回軌道に投入するとどうだろうという検討もされたが、やはりすぐに落下することが判明。1回目のスウィングバイ条件を変更して2回目の会合時に投入してもやはり落下。金星を2回スウィングバイし、3回目の接近時に投入しても落下と、軌道が見つからない日々が続いた。これはひとえに、太陽重力摂動のせいだった。たとえば欧州宇宙機関(ESA)の金星探査機「ヴィーナス・エクスプレス」は、大気の成分観測が主目的であるため、金星を南北に回る極軌道に入っている。極軌道だと太陽重力摂動の影響は少なく、「あかつき」も極軌道であれば楽に投入することができ、すぐに落下することもなかった。しかし、「あかつき」は大気の動きを連続的に観測する探査機であるため、金星の自転と、スーパーローテーションの回転と同じ向きに回る軌道に入らなければ意味がなかった。けれどもその制約により、金星にたどり着けても、数十日で金星に落下してしまう軌道しか見つからなかったのだ。軌道計算チームは、文字通り昼夜を問わず計算にあたった。そして2013年8月ごろにようやく光明が見え、さらに計算を追及した結果、ついに2014年1月ごろ、最終的な軌道ができあがった。○太陽光にもあぶられて金星にたどり着ける軌道は見つかったが、あとは探査機が耐えられるかが問題だった。「あかつき」の設計寿命は4.5年とされている。半年は地球から金星への航行で経過するため、金星に到着してから4年は動けばいい、もっと動いてくれれば御の字、という想定だった。しかし、再挑戦までに5年の歳月が過ぎ、その間にこの設計寿命を超えてしまうことになった。さらに悪いことに、「あかつき」は太陽の熱にも耐えなければならなかった。金星は地球よりも太陽に近いため、もともと「あかつき」はその熱に耐えられるようには造られている。しかし、2010年に金星周回軌道への投入に失敗したことで、当初想定していなかった距離にまで太陽に近付く軌道を回ることになり、最も近付くところ(近日点という)を9回も通過しなければならなくなった。さらに、探査機の全体に貼られている金色の断熱材が、放射線の影響で劣化していることもあり、近日点通過のたびに想定を超える熱にさらされた。それでも大きな問題は起きず、2015年8月30日2時ごろに最後の近日点を通過。それ以降も「あかつき」は穏やかな状態を保ったまま航行を続けた。○「あかつき」、最後のチャンス金星周回軌道投入への再挑戦の日は2015年12月7日に設定された。12月7日というのは、奇しくも5年前に失敗した日と同じである。何の星のめぐり合わせかと思いたくもなるが、実際のところこれは、金星と太陽、そして「あかつき」という衛星による、比喩ではない本当の意味での星のめぐり合わせによる単なる偶然である。この5年間、ある人は原因調査に奔走し、ある人は再挑戦に向けて知恵を絞った。さらにある人は「あかつき」の観測データを解析するプログラムを改良し、またある人は欧州のヴィーナス・エクスプレスのミッションに参加して論文を書いたりと、それぞれがさまざまな形で過ごしてきた。多くの人々の想いを載せ、「あかつき」は、再びの、そして最後のチャンスとなる軌道投入に挑んだ。【取材協力:JAXA】
2015年12月08日2010年12月7日。日本初の金星探査機「あかつき」が、約半年間の航海を経て、いよいよ目的地である金星に到着しようとしていた。「あかつき」の運用室がある宇宙航空研究開発機構(JAXA)の相模原キャンパス(神奈川県相模原市)には、関係者や報道陣、そして「あかつき」を応援するために宇宙ファンが集まっていた。8時49分00秒。「あかつき」は金星をまわる軌道に入るためのエンジン噴射を開始した。この噴射中、「あかつき」は地球から見て金星の裏側に入る。「あかつき」と再び通信ができるのは9時12分ごろの見込みだった。ところが通信は再開されず、「あかつき」は行方不明になった。約1時間半後に見つかったときには、まったく予想外の方向を飛んでいた。エンジンが途中で止まり、金星の周回軌道に入れなかったのだ。その後、運用チームの懸命の努力により、再び金星にたどり着くことができる道筋が見つかり、2015年12月7日に金星軌道への投入に再挑戦することが決まった。本連載の第1回と第2回ではまず、「あかつき」の検討から打ち上げ、そして5年前の失敗と、再挑戦に向けた歴史を振り返る。そして第3回と第4回では、「あかつき」のプロジェクト・マネージャーの中村正人さんへのインタビューを掲載する。その後、12月7日の金星周回軌道投入の再挑戦の顛末を紹介し、「あかつき」が拓く金星のサイエンスについても紹介していきたい。○「あかつき」の誕生日本が金星探査をやろうという話は、20世紀の末に持ち上がった。2000年当時、日本も金星探査をやりたいという機運はあったものの、金星の分厚い大気を見るために必要な、赤外線を使う観測機器を造れる人がおらず、また金星探査という大きなプロジェクトを率いることができる人もいなかった。そこで当時、東京大学にいた中村正人さんに白羽の矢が立った。中村さんは当時、極端紫外線を使った観測を行っていたが、新たに赤外線を使う観測機器を造らないかともち掛けられ、宇宙科学研究所(ISAS)に移った。さらにそのなりゆきで、中村さんはこの計画のプロマネを務めることにもなった。そこで他の研究者や日本電気(NEC)の技術者らと共に検討を重ね、わずか1年で構想をまとめた。2000年12月には、ISASの宇宙科学ミッションを審査する宇宙理学委員会に提案書が提出され、翌2001年の1月に開催された「第1回宇宙科学シンポジウム」の初日の最初の講演で、中村さんはこの計画を発表した。発表は好評。宇宙理学委員会による審査を経て、2001年5月、ISASとして金星探査ミッションを推進することが決まった。同年7月には、宇宙開発委員会推進部会の事前評価で「開発研究」段階への移行は妥当との評価を受け、ここに第24号科学衛星「PLANET-C」、後に「あかつき」と命名される日本初の金星探査機の計画がスタートした。当時の計画では、2007年に打ち上げ、2009年に金星に到着する軌道を取ることになっていたが、2004年になってようやくPLANET-Cの開発に予算がつき、打ち上げ時期は2010年まで遅れることになった。○金星気象衛星「あかつき」PLANET-Cは打ち上げ時の質量が約500kgで、ここに5台のカメラと1台の電波発信器からなる、合計約35kgの科学観測装置が搭載されている。535kgというのは金星探査機の中では比較的小さいが、金星の自転と大気の回転と同じ方向に向けて回る軌道から、赤外線を使って金星の大気を見るというミッションは、これまでどの探査機もやったことがないことで、科学的に大きな成果が得られることが期待された。実はこの探査機には、コードネームの「PLANET-C」、愛称の「あかつき」以外に、Venus Climate Orbiter (VOC)という名前でも呼ばれていた。直訳すると「金星気象衛星」。現在ではあまり使われることのない名前だが、この「金星気象衛星」この、「あかつき」の性質を端的にかつ的確に表した名前である。金星には地表を覆い隠すほどの分厚い大気があり、地表での気圧は90気圧もある。その内部の構造がどうなっているのかはまだ謎が多く、たとえば硫酸の雲がどうやってできているのかはわかっていない。また、赤道から高緯度までの広い範囲で、金星の自転方向と同じ向きに風が吹いており、さらにその速度は高度60kmあたりでは時速400kmにも達する。こうした高速で循環する風のことをスーパーローテーションと呼ぶ。地球では考えられない現象だが、土星の衛星タイタンでも似たような現象が起きていることが判明しつつあり、宇宙規模では珍しくないかもしれないと見られている。こうした金星大気の謎を解明することで、金星そのものを知ることになるのはもちろん、金星と地球の気候は何が共通していて何が違うのか、そしてそれは何故なのかを調べることで、地球に対する理解をさらに深めることにつながり、気象学の分野がさらに発展することが期待されている。○金星環境に耐える「あかつき」PLANET-Cの開発は2004年に始まった。2001年に承認された提案に手を加え、設計を詰める作業が行われたが、中村さんによれば、これにはプロジェクト・エンジニアを務める石井信明さんが辣腕を振るったという。PLANET-Cの開発では、特に金星環境にどう耐えるかが重要となった。金星は地球よりも太陽に近いため、探査機が受ける熱の量も大きくなり、放っておくと壊れてしまう。そのため、太陽から受ける熱や、探査機内部から出る熱をうまく制御する必要がある。実際の開発と製造を担当したNECによれば、「熱設計が大変だった」と語る。機体の随所には、いかに放熱する面に太陽光を当てないようにするかという工夫が施されている。特に、地球と大容量の通信を行うための高利得アンテナも、検討時はお椀のような形でおなじみのパラボラ・アンテナだったが、これだとアンテナが太陽のある方向を向いたときに給電部に集光し、温度が上がってしまうため、平面状のアンテナ(ラジアルライン給電スロットアレイアンテナ)が新たに開発された。また、探査機の両側にそれぞれある太陽電池の格納方法にも工夫が施された。多くの衛星では、両翼にある太陽電池はそれぞれの側面側に折り畳まれているが、PLANET-Cでは探査機の高利得アンテナがある側に、蓋をするような形で折り畳まれている。これにより、タイダウン(拘束具)のメカニズムを共通化でき、軽量化につながった。そしてもうひとつ、PLANET-Cにとって最大の変更ももたらされた。スラスターがセラミック製に変わったのだ。通常、人工衛星のスラスターにはニオブ系合金の金属製のものが使われる。しかし、耐熱性に制限があり、また寿命や取扱性にも問題があり、さらに日本にとっては特許の問題から海外から輸入するしかなく、入手性にも問題があった。そこで、金属ではなく窒化珪素系セラミックスを使った「セラミック・スラスター」の開発が行われた。セラミックはニオブ系合金よりも耐熱性が高いため、その分スラスターの性能を上げることができる。またニオブ系合金で必要な耐酸化コーティングも不要という利点がある。そして国産であるため入手しやすく、いわゆる「ブラックボックス」にもならないため、問題が起きても十分な調査が行えるという利点もあった。開発は順調に進み、試験を繰り返した結果、十分な性能と信頼性をもつことが実証された。そしてPLANET-Cが、この新型スラスターの採用第1号になることになった。○M-VからH-IIAへPLANET-Cそのものの開発は順調に進んだが、それ以外のところで大きな問題が起きた。打ち上げロケットの変更である。当初の予定では、打ち上げには「M-V」ロケットが使われることになっていた。M-VはISASが開発した全段固体燃料を使うロケットで、世界の固体ロケットの中でも高い性能をもっていた。しかし、コストが高いという欠点があり、JAXAは2006年、M-Vを退役させる検討を始めた。このとき、PLANET-Cの打ち上げをどうするのかという議論が起こった。「あかつき」はM-Vで打ち上げるように造られているが、機体が完成し、打ち上げられるのは2010年になる。それまでM-Vを延命させるのか、それともH-IIAロケットで打ち上げるのかが検討され、最終的に後者が選ばれた。H-IIAはM-Vとは違い、液体の推進剤を使うロケットであるため、乗り心地は比較的良いほうだった。しかし、大型ロケットのH-IIAにとってPLANET-Cはあまりにも軽く、振動が発生することが問題になった。その振動はPLANET-Cの固有振動数と一致しており、そのまま打ち上げると共振を起こして、壊れる心配があった。まずこの振動を抑えるため、ダミー・ウェイト、要するに衛星でもなんでもない、ただの「重り」を載せることになった。後に、このダミー・ウェイトは、小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」が換わって載ることになった。さらに、各所に補強のための梁が入れられることになった。一方、H-IIAにしたことでメリットもあった。M-Vは固体ならではの振動が大きく、H-IIAとはまた別の点で補強が必要なところがあった。たとえば、M-Vで打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」は、回転する駒の力で機体の姿勢を制御する「リアクション・ホイール」に、打ち上げ時の振動に耐えるための設計変更が加えられた。このリアクション・ホイールそのものは米国製で信頼性は高く、また他の衛星や探査機にも採用された実績もあるものだったが、この設計変更が仇となり、航行中に故障することになった。しかし、PLANET-CはH-IIAで打ち上げることになったため、ともすれば不安要素にもなる、こうした設計変更をする必要がなかった。それは設計寿命を超えて今日まで、「あかつき」が正常に動き続けていることにつながっている。○打ち上げ打ち上げロケットがM-VからH-IIAに変わるということはあったものの、計画そのものは大きな遅延を出すことなく進んだ。2009年10月23日には、PLANET-Cの愛称を「あかつき」とすることが決定、発表された。「あかつき(暁)」は、日の出直前の東の空が白み始めるころを指し、金星が最も美しく輝く時間として知られている。一日の始まりである夜明けを意味するこの言葉には、情景の美しさだけではなく物事の実現への力強さがある。その名前が与えられた背景には、ミッションの成功と、探査により惑星気象学を新たに創出しようという想いと決意が込められているという。そして2010年5月21日6時58分22秒(日本標準時)、「あかつき」を搭載したH-IIAロケット17号機は、種子島宇宙センターから離昇した。ロケットは順調に飛行し、打ち上げから約27分29秒後に「あかつき」を分離。その後、太陽電池パドルの展開や、太陽を捕捉する制御にも成功し、その日の夜には搭載カメラを使って地球を撮影する試験も行われた。こうして「あかつき」は、半年後の金星到着に向け一路、宇宙の海へ漕ぎ出した。【取材協力:JAXA、日本電気】
2015年12月08日既報の通り、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月7日、金星探査機「あかつき」の金星周回軌道への再投入を実施した。同探査機は5年前の同日、金星に到着。軌道投入を試みたが、推進系のトラブルで失敗していた。今回成功すれば、日本の探査機にとって、初の惑星周回となる。同日の正午から開催された記者会見には、JAXAの中村正人・あかつきプロジェクトマネージャが出席。今回の運用結果について説明した。あかつきは予定通り、8時51分29秒に、トップ側の姿勢制御エンジン(RCS)の噴射を開始。そして9時11分57秒に終了した。この1,228秒という噴射時間は計画通りだったという。あかつきは不具合による噴射の中断に備え、姿勢を反転させてボトム側で追加噴射できる体勢を取っていたが、順調だったため、この追加噴射は実施する必要が無かった。現時点で分かっているのは、噴射方向と噴射時間が計画通りだったということのみ。肝心の金星周回軌道に入れたかどうかは、今後さらに観測する必要があるため、現時点で断定はできないものの、中村プロマネは「かなり期待できる」とコメント。予定通りの噴射は実施できており、周回軌道への投入はほぼ確実だろう。あかつきは本来、5年前に周回軌道へ投入されているはずだった。中村プロマネは「本当は欧州の探査機と一緒に観測して、世界的に盛り上がっているはずだった。日本が責務を果たしていないという、忸怩たる想いがあった」と当時を振り返る。今回、5年前の雪辱を晴らせたことで、「肩の荷が下りた」と安堵の表情を見せた。周回軌道へ入れば、次はいよいよ科学観測だ。記者会見前にすでに観測プログラムを探査機に送信したとのことで、午後2時から5時の間に、「中間赤外カメラ(LIR)」「紫外イメージャ(UVI)」「1μmカメラ(IR1)」を使い、撮影を行うという。最初の3カ月は試験期間で、本格的な観測は2016年4月から2年間実施する計画だ。なお金星到着前に、これらのカメラで試験撮影を行ったところ、「傷は思ったより遙かに少なかった。カメラの状態は非常に健全」(中村プロマネ)だったという。最初の観測データが届くのは2~3日後になる見込みだが、こちらも楽しみだ。探査機の状態は、現時点で正常であることが確認できている。あかつきは打ち上げから5年半が経過。すでに設計寿命は超過しているが、5年前にメインエンジンが破損した以外は、特に問題は起きていない模様だ。中村プロマネは「丁寧に作ってくれたおかげ。こんなに堅牢だとは思わなかった」と、メーカーの技術者に感謝を述べた。JAXAは軌道投入の結果について、12月9日に発表する方針。18時より記者会見が開催される予定なので、続報をお待ち頂きたい。
2015年12月07日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月7日、金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入のため、姿勢制御用エンジン噴射を同日8時51分から実施したと発表した。「あかつき」から送信されたデータを解析した結果、姿勢制御用エンジンの噴射は計画通り約20分実施され、所用の噴射時間が得られたことが確認された。同探査機の状態は正常で、現在は噴射後の探査機軌道の計測と計算を行っており、投入結果の判明までは2日程度要すると見込まれている。
2015年12月07日宇宙航空研究開発機構(JAXA)の金星探査機「あかつき」が12月7日、金星周回軌道への再投入を実施した。同日8時51分に噴射を開始したと見られるが、運用の結果については、本日12時から開催される記者会見で明らかになる見通し。同日朝、軌道投入前に会見に応じたJAXAの久保田孝教授によると、その時点で分かっている限り、探査機の状態は正常。コマンドは全て前日の運用中に探査機に送られており、管制室では40人のスタッフがあかつきから届く電波を見守っている。正式な報告は記者会見で行われるが、9時25分ころJAXA広報より発表があり、あかつきは予定通り噴射を開始し、終了したという。地球-探査機方向の距離と速度変化はレンジ計測とドップラー計測でモニターできており、その値も計画通りだったそうだ。詳細については追ってレポートする。
2015年12月07日今年12月には、宇宙ファンにとって注目すべきイベントが2つある。小惑星探査機「はやぶさ2」の地球スイングバイ(12月3日)と、金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入(12月7日)である。特に「あかつき」は5年前に一度失敗しており、今回がラストチャンスとなる。なんとか成功して欲しいところだ。ところで、報道などではどうしても宇宙航空研究開発機構(JAXA)ばかりに注目が集まってしまうのだが、宇宙開発を陰で支えているのがメーカーである。この両探査機の製造を担当したメーカーはNEC。同社は、日本初の人工衛星「おおすみ」以来、多くの衛星・探査機を手がけてきたメーカーだ。NEC側で、「はやぶさ2」と「あかつき」のプロジェクトマネージャを務めているのは、宇宙システム事業部プロジェクト推進部の大島武氏(49歳)。今回、大島氏に両探査機の状況や、プロジェクトマネージャの業務について、話を聞くことができた。あまり表に出てくることがない衛星メーカーの仕事というのは、どんなものだろうか。(※筆者の都合で掲載が遅くなりましたが、このインタビューは9月16日に行いました。発言は当時の状況にもとづいているので、2カ月ほどタイムスリップして読んでもらえれば幸いです。)○目指すのは「こんなこともあろうかと」が無い運用--両探査機のプロジェクトマネージャを兼務しています。2つのイベントが、たった4日しか離れていないのは大変そうですね。担当メンバーは一部重なっていますが、基本的に「はやぶさ2」の地球スイングバイは、事前に行う軌道決定と軌道の微調整が最も重要な運用で、スイングバイ前後は、地球に近づくチャンスを捉えた運用が主体となります。それに対して「あかつき」の運用は、当日の軌道制御運用が全てを決める最も重要な運用です。2つの探査機の運用は、イベントでの運用の性格がかなり異なるため、それぞれに適した人員で準備を行っています。「はやぶさ2」は地球スイングバイの後、小惑星とのランデブーに向け、イオンエンジンの運転率も上がりますので、その準備を入念に行います。一方、「あかつき」は今回のイベントが金星周回軌道への投入の唯一のチャンスであるため、このイベントに向けて集中的な準備をしています。--「あかつき」の軌道投入へ向け、現在はどんなことをやっているのでしょうか。金星到着までに軌道の微調整があり、これも非常に重要な運用です。ただ計画通りにいかないことがあったとしても、時間的には修正を行う余裕があります。やはりポイントとなるのは12月7日ですね。そのときにどういう運用をするのか、ということを検討しています。計画通りにいかない場合にどうやってリカバリするか、contingencyプラン(対応策)も考えています。様々なケースが考えられますので、作業量は正常ケースのみの検討に比べ、何倍にも増えていきます。--せっかく検討した様々なケースも、成功すればその努力は表には出てこないんですよね。日の目を見るのはトラブルが発生したときだけで。はい。ただこれは多かれ少なかれ、どのプロジェクトでも重要な運用に対しては必ずやっていることです。例えば衛星の場合は、打ち上げ直後の第一可視で何をやるか、いろいろなケースを想定して、それに対応したコマンド列を用意しておくとか。成功したら確かに表には出ませんが、それはむしろ望むところです。「備えをすればするほど、備えたことは何も起きない」とよく言われますし、そのような努力は、活用できる場面はあって欲しくないわけなので。--火星探査機「のぞみ」も「あかつき」も惑星周回軌道への投入に失敗。今回成功すれば日本初となりますが、やはり惑星探査は難しいですね。「はやぶさ2」のような小惑星ランデブー/タッチダウンと、惑星周回軌道への投入は、難しさの性質が大きく異なります。「はやぶさ2」のタッチダウンでは、何か問題があった場合でも、一度退避してやり直すことが可能ですが、多くのケースを想定した複雑な運用準備が必要となります。一方で、惑星周回軌道への投入は、時間的余裕が全く無いところで、確実に成功させなければならない。そこが難しいところです。--今の心境は。当日は緊張感があるでしょうが、今はまだ落ち着いて粛々と準備を進め、その日に備えたいと思っています。--ちなみに大島さんは前日には普通に寝られるタイプですか?寝られるタイプです。当日は寝たくても寝られないかも知れませんので。○メーカーのプロマネに求められる役割とは?--NECへの入社は1990年ですね。最初の仕事は何でしたか?JAXAの「宇宙実験・観測フリーフライヤ」(SFU)に搭載した「GDEF」(Gas Dynamics Experiment Facility)という装置の開発でした。ダイヤモンドは通常、高温高圧下で作られますが、微小重力下ではプラズマ低圧環境で薄膜ができます。実験は成功して、装置は、JAXAの若田光一宇宙飛行士により、スペースシャトルで回収されました。「GDEF」は、私が入社したときにはもう設計は大体終わっていました。私が設計から関わったのは、「のぞみ」や「LUNAR-A」(月探査機:2007年にプロジェクト中止)あたりですね。「のぞみ」では、観測装置などに組み込まれているCPUボード(SICPU)を開発しました。そのほかカメラ関係では、「のぞみ」の火星撮像カメラ(MIC)や「LUNAR-A」の月撮像カメラ(LIC)のデジタル系も担当しました。私は電子工学科出身で、会社ではデジタル系の部署にいたので、コンポーネント全体のまとめや、デジタル系の設計が主な仕事です。FPGAの中の回路設計も行っていました。地球周回中の「のぞみ」が、MICを使って地球と月の見事なツーショットを撮影した時には非常に感動しました。この写真は大きな話題になり、天文年鑑にも掲載されたのは良い記念になりました。ただ本当は火星を撮るためのカメラだったので、周回軌道に入って火星を撮れなかったことが残念です。--1996年には、「はやぶさ」初号機のシステムマネージャに就任していますね。入社してから6年間は機器担当でしたので、探査機システムについては分からないことも多くて大変でした。しかし、これはもともとやりたかった領域だったんです。いつかは探査機システム全体に関わりたいとずっと思っていました。--「あかつき」では最初システムマネージャで、2007年からはプロジェクトマネージャに。両マネージャの仕事の違いは?プロジェクトマネージャの仕事は、いわゆるQCD(品質、コスト、納期)の管理です。このQCDに密接に絡んでくるため仕様についても判断しますが、やはり大変なのはプロジェクトをうまく進めることですね。社内メンバーを動かしたり、JAXAと調整したり。技術的なところからは少し離れてしまうので、システムマネージャ的な仕事がしたくなる時もありますが、プロジェクトマネージャの方が自分の裁量でやれる範囲は広がります。--JAXAとメーカーの役割分担はどうなっているのでしょうか?実用衛星と科学衛星で違ったりもしますが、「はやぶさ」や「あかつき」のような場合では、JAXA宇宙科学研究所の先生方が、要求仕様を決めるだけでなく設計まで入り込んで、一緒に作り込んでいくスタイルで昔からやっています。JAXAが開発した技術でJAXAが知り尽くしているところ、逆にメーカーでないと分からないところなどが複雑に入り組んで存在しているので、密接にやりとりをしながら開発を進めていきます。「要求仕様を出したら後はメーカーで」というような、単純な進め方ではありません。ただ、最終的な「形」にするのはメーカー側なので、細部を詰めて設計製造するのはメーカーの仕事になります。--タフな交渉もありますか?かなり大胆な、意外性のある提案をされることもありますね。それとは逆に、こちらから提案することもあります。たとえば「あかつき」は、打ち上げ時、太陽電池パドルを横ではなく上に畳んでいますが、この方が固定しておく機構が少なくて軽量化できるため、我々の方から提案しました。--「はやぶさ2」と「あかつき」に加え、2015年4月からはジオスペース探査衛星「ERG」のプロジェクトマネージャも兼務。忙しいですね。「ERG」は開発の真っ最中なので、今のマネジメントの仕事としては、これが中心ですね。ただ、現在は「はやぶさ2」と「あかつき」も大きなイベントを控えているので、実運用の計画立案はシステム担当者に任せつつ、運用計画全体の確認を行っています。「ERG」は2機目の小型科学衛星で、1機目の惑星分光観測衛星「ひさき」とは、共通のバス機器を採用しています。ただ、「ひさき」が三軸姿勢制御であったのに対し、「ERG」はスピン安定制御であるなど、違いもあります。コンポーネントは同じでも、様々なカスタマイズが入っています。個人的に「ERG」はのぞみに似ているところがあると思っていて、たとえば観測センサーですね。もちろん観測対象が地球と火星という違いはあるんですが、搭載されているセンサーは似ていたりするんですよ。予定している2016年度の打ち上げに向け、「のぞみ」を今度こそ周回させるつもりで、しっかり仕上げたいと思います。
2015年11月30日福島県商工会連合会は11月28日~29日、「福島の美味しいものベストキュレーションフェア」を「代官山T-SITE GARDEN GALLERY」(東京都渋谷区)で開催する。時間は28日が10時~21時、29日が10時~16時。同イベントは、福島県産品の品質の高さと安全へのこだわりを伝えるために開催するもの。イベント中は、福島県産品のおいしさを実際に体験することができる催しを行う。「しぼりたての新鮮ミルクで手作りバター体験」は、会津地方下郷町の金子牧場直送のジャージー種から採れた牛乳を使って、バターを作るイベント。バターは、ペットボトルに牛乳を入れて振るだけで完成するので、その場でも食べることができるという。利き酒BAR「福・島・美・味」は、南相馬市出身の若手利き酒師とのコラボレーションで生まれた立ち飲みBAR。日本酒は、日本酒ファンから初めて飲む人、女性向けの軽めのものなど、さまざまな銘柄を取りそろえる。BARでは、2日間にかけて4つのイベントを開催。11月28日の11時~15時は、福島の日本酒「山の井」や「あぶくま」などを提供する「味わい酒セレクトタイム[味TIME]」を行う。同日16時30分~20時には、女性向けの日本酒を提供する「女性向けセレクトタイム[美TIME]」も実施する。11月29日の10時~12時は、「おとな酒セレクトタイム[福TIME]」を開催。純米吟醸の「磐城壽(いわきことぶき)」や「廣戸川 純米酒 悠久の里 石背(いわせ)」などを提供する。また同日13時~15時には、「日本酒ビギナー向けセレクトタイム[島TIME]」と題し、ビギナーでも安心して楽しめる日本酒を提供する。そのほか、生産者や開発者で行うトークショーや、みそソムリエが教える「みそボール作り」のイベント、「矢大臣うどん」「蔵醍醐クリームチーズのみそ漬」「阿武隈の紅葉漬」など、25種類の商品が並ぶ物産コーナーなども設置する。イベント参加の事前予約チケットあり。バターつくり体験、みそボール作り体験は無料。立ち飲みBARでの各イベントは、事前予約チケット(税込2,000円)。予定数に達し次第締め切りとなる。
2015年11月17日金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入への再挑戦を約1カ月後に控えた2015年11月9日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「あかつき」の最新の状況と、投入日である12月7日当日の運用計画などについて記者会見を行った。「あかつき」は今から5年前に金星を回る軌道に入ることに失敗。その後、再挑戦できる目処が立ち、太陽の回りを周りながら準備を行ってきた。現在、探査機に大きな問題は発生していないが、予定よりも長い航海となったことで探査機には疲労がたまっており、軌道投入は難易度の高い挑戦となる。今回は9日に行われた記者会見から、「あかつき」の現状や、12月7日の計画、今後への期待や決意の声などをお伝えしたい。○「あかつき」のこれまで「あかつき」は日本初の金星探査機として、2010年5月21日に種子島宇宙センターから打ち上げられた。そして同年12月7日に金星に接近し、金星を回る軌道に入るためにスラスター(小型のロケット・エンジン)を噴射した。プロジェクト・マネージャーを務める中村さんが「楽勝だと思っていた」と語るほど、「あかつき」に問題はまったくなく、順調にここまでやってきたものの、肝心の軌道投入でスラスターが故障し、失敗した。スラスターは完全に壊れ、もう使うことはできない。しかし、運用チームはなんとかして再挑戦の機会を掴もうと検討を重ね、その結果「あかつき」の姿勢を制御するために使う、より小さなスラスターを使って軌道投入する方法が編み出された。この小さなスラスターは、探査機本体の上面と下面の4隅にそれぞれ搭載されており、「プシュ」と噴射することで、探査機を姿勢や向きを制御する。そのため1基あたりの力はすごく小さい。軌道投入では4基を同時に噴射するが、それでも本来使うはずだったスラスターの20%の力もない。難しい方法だったが、道筋は見えた。再挑戦は2015年の冬ごろに設定され、そして2011年11月、それに向けて軌道を調整するため、この小さなスラスターを使った軌道修正が行われた。その後、投入日を2015年12月7日に設定することが発表され、また2015年7月には、金星を周る軌道への投入後の観測を有利にするための軌道修正も行われた。さらに「あかつき」は、太陽の熱にも耐えなければならなかった。投入に失敗したことで、当初想定していなかった近さにまで太陽に近付く軌道を回ることになり、最も近付くところ(近日点という)を9回も通過しなければならなくなった。そのたびに想定を超える熱にさらされ、探査機の全体に貼られている金色の断熱材の劣化が進んでいたこともあり、きびしい状況が繰り返された。それでも大きな問題は起きず、「あかつき」は航行を続け、金星周回軌道投入への再挑戦は、もう目前まで迫っている。○2015年12月7日の計画「あかつき」は、金星よりも太陽側、つまり内側の軌道を回って金星を一度追い越し、現在は金星の前方を飛んでいる。このあと12月1日ごろになると、「あかつき」は金星の軌道よりも外側に出るため、自然に速度が落ち、金星が追い付いてくる。そして12月7日になると追い越されるため、この瞬間を狙ってスラスターを噴射し、探査機の速度を落とすことで、金星の周りを回る軌道に入ることができる。12月7日の金星軌道投入に先立ち、12月6日には、7日当日の行動を「あかつき」自身の判断で行えるよう、新しく作成されたプログラムが送信される。その後、探査機の姿勢を変える作業も行われる。現在「あかつき」は太陽の熱に耐えるため、機体の中で最も熱に強い面を常に太陽の方向に向ける姿勢で飛んでいる。そのままでは軌道に入るためのスラスターが噴射できないので、あらかじめ姿勢を変えなければならない。そして12月7日の4時30分に、長野県にある臼田宇宙空間観測所の大きなパラボラ・アンテナを使い、「あかつき」との通信が始まる。8時22分に「あかつき」は地球から見て金星の裏側に入る。そして8時51分に、「あかつき」は前日に送られたプログラムにしたがって、機体の上面にある4基の小さなスラスターの噴射を開始する。噴射時間は20分間。この噴射は「VOI-R1」と呼ばれており、VOIとは「金星軌道投入」を意味する「Venus Orbit Insertion」の頭文字から取られ、「R」は「Re-何々」とか「Revenge(雪辱)」といった単語を想定しているという。やがて「あかつき」は金星の裏側から出てくる。そこで噴射の状況などを確認し、もし20分よりも早く噴射が止まってしまった場合など、必要なら追加の噴射を行うように地上から指示が出される。この追加の噴射は「VOI-R1c」と呼ばれている。この「c」は「correction(補正)」や「contingency(万一の)」といった単語を想定しているという。なお、VOI-R1が成功したかどうかにかかわらず、探査機は必ず決められたタイミングで機体をほぼ反転させることになっている。もしVOI-R1が失敗したとすれば、それは上面側スラスターに原因である可能性が高いので、下面側を使ってVOI-R1cが行えるように、あらかじめ下面側を噴射する方向に向けておくための処置である。なお、12月7日の時点では、「スラスターの噴射が実施できたかどうか」しかわからず、「軌道投入に成功したかどうか」は、その後数日かけて確認をしないとわからない。JAXAでは、12月9日の18時から、軌道投入の成否に関する記者会見を行うとしている。無事に軌道投入に成功すれば、まず観測機器の試験が行われ、試験的に撮影された金星の画像も、このころに公開できる見込みだとしている。その後、探査機の軌道を徐々に科学観測に適した軌道へと変え、2016年3月以降から、本格的な科学観測を開始する予定だという。軌道の関係で、当初期待されていた観測の一部ができなくなったり、また一部のデータの質が落ちるといった点はあるものの、たとえば金星の自転よりもはるかに速く大気が動く「スーパー・ローテーション」という現象など、謎の部分が多い金星の大気の様子について、多くの発見が得られることが期待されている。○難易度の高い挑戦11月9日の記者会見では、現在「あかつき」は、5年前に損傷したスラスターを除けば、特に不具合は出ておらず、探査機は健全であることを確認しているという。しかし、「あかつき」の設計寿命は4.5年という前提で造られているため、現在ではすでに超えており、いつどこかが故障してもおかしくはない状態にある。また、前述のように想定以上の太陽熱にさらされていたことで、探査機には疲労がたまっている。「あかつき」のプロジェクト・マネージャーを務める中村さんは、「この5年間で衛星も疲労していますので、投入中にどこかが故障するといったことが起これば、計画を達成できない。その意味では、(5年前と比べて)難易度は高いと考えています」と語る。中村さんによると、「もし何か起きるとすれば、VOI-R1の開始直後、噴射し始めのときが一番危険性が高い」という。4基の小さなスラスターは、機体の姿勢を変えるためのものなので、機体の重心を通っていない。そのため、もしこの4基の噴射の力がバラバラだったりすると、姿勢が崩れてしまう可能性がある。ある程度は「あかつき」自身で立て直すこともできるが、それにも限界がある。立て直しが不可能となれば、「あかつき」は噴射を止めることになっている。この場合、VOI-R1ではほとんど噴射ができないことになるが、VOI-R1cで挽回することは可能だという。また仮に、20分の間噴射ができたとしても、その間に探査機の姿勢が少しでもずれていれば、必要なだけの減速をすることができず、失敗に終わる可能性もないわけではない。「あかつき」はすでに設計寿命を超えている上に、残っている燃料は今回の投入でほとんど使い切ってしまうため、もし今回も失敗すれば、再々挑戦の機会は無い。探査機のエンジニアリングを担当する廣瀬さんは「さまざまなエンジニア的な準備を行ってきました。考え漏らしなどがないように、これまでも準備していますが、12月7日までよくよく不具合への対策を取っていけたらと思っています」と語る。中村さんは「実は探査機にはそれほど壊れる不安は無い。それより地上の設備のほうが壊れるかも」とも語る。探査機の運用に使うコンピューターは旧式のものが多く、またプログラムなどもそれ専用に造られているため、代わりを用意するのが難しい。実際にリハーサルでは、地上設備のトラブルが起きたという。○観測機器も健全、士気も高い一方、「あかつき」に搭載されている科学観測機器も同様に、不安は残る。この5年間、「あかつき」は観測機器を太陽の熱から守るような姿勢で飛行していたが、やはり設計寿命を超えていることから、故障してもおかしくはない。ただ、こちらも現在まで大きな問題は出ておらず、また搭載されている5台のカメラのうち、LIR(中間赤外カメラ)とUVI(紫外イメージャ)、IR1(1μmカメラ)の3台に関しては、10月中に試験を行い、最低限ながら健全性を確認することができたという。残る2台のR2(2μmカメラ)とLAC(雷・大気光カメラ)については、現在の探査機の姿勢では確認することができないため、金星軌道投入後に確認試験を実施するという。プロジェクト・サイエンティストの今村さんは「5年前と状況は違います。軌道も当初の最適と考えていたものと違います。観測機器も、気付いていないような不具合があるかもしれない」と語る。しかし、「サイエンス・チームはこの5年間、遊んでいたわけではなく、観測データを解析するプログラムの改良をしたり、海外のミッションに参加して腕を磨いたりと、みんないろんな形で知恵をつけてきています。もちろん5年前と比べて厳しい面はありますが、何とか知恵と努力で乗り切りたいと考えています。今のサイエンス・チームの士気はとても高いです」と、期待を寄せる。「あかつき」は決して楽観的な状況ではない。けれども、悲観するほどでもない。中村さんは「やるべきやることはやりました。すべてがうまく行けば、必ず成功すると考えています。人事を尽くして天命を待つという心境です」と決意を述べる。2015年11月10日で、「あかつき」は打ち上げからちょうど2000日を迎えた。11日現在、金星到着の日まであと26日である。
2015年11月11日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2015年11月9日、金星到着を12月7日に控えた金星探査機「あかつき」の最新の状況と、当日の運用計画について記者会見を行った。「あかつき」は今から5年前に金星を回る軌道に入ることに失敗、その後は太陽の回りを周りながら、再挑戦に向けて準備を行ってきた。現在、探査機に大きな問題は発生していないが、予定よりも長い航海となったことで探査機には疲労がたまっており、軌道投入は難易度の高い挑戦となる。「あかつき」は2010年5月21日、日本初の金星探査機として打ち上げられた。そして約半年後の12月7日に、金星周回軌道への投入に挑んだが、軌道に入るための噴射に使うスラスター(小型のロケット・エンジン)が故障したことで入れず、そのまま通り過ぎ、太陽を回る軌道に入った。その後「あかつき」は太陽の回りを周りながら、再挑戦できる機会を伺ってきた。そして検討の結果、2015年末に金星に到着できる新しい軌道が見つかり、それに向けて2011年11月に3回、また今年7月にも3回の軌道修正が行われた。現在「あかつき」は、金星よりも太陽側、つまり内側の軌道を回って金星を追い越し、金星の前方を飛んでいる。このあと12月1日ごろになると、「あかつき」は金星の軌道よりも外側に出るため、自然に速度が落ち、12月7日にちょうど金星と近付くことができるという。「あかつき」はまず、金星周回軌道への投入に先立ち、前日の12月6日に地上で作成された軌道投入のためのプログラムが送られ、当日の動作を「あかつき」が自分の判断で行えるようにする。その後、探査機の姿勢を、噴射を行うための向きに変える。そして12月7日の8時51分に、「あかつき」は4基のスラスターを同時に噴射する。軌道投入用のスラスターは5年前に壊れているため、本来は探査機の姿勢を制御するために装備されている、より小型で、力の弱いスラスターを使う。噴射は20分間続き、金星を回るために必要なだけ探査機を減速する。このスラスター噴射のことを「VOI-R1」と呼ぶ。地上からは常に「あかつき」を追うことができ、また「あかつき」からも途切れ途切れながら電波が送られてくるので、それを確認しつつ、必要に応じて追加の噴射(VOI-R1c)が行われる。12月7日の時点では、「スラスターの噴射が実施できたかどうか」しかわからず、「軌道投入に成功したかどうか」は、その後数日かけて確認をしないとわからない。JAXAでは、12月9日の18時から、軌道投入の成否に関する記者会見を行うとしている。現在「あかつき」は、すでに設計寿命の4.5年を超えており、どこかの機器が壊れてもおかしくはない状態にある。それに加え、当初の想定よりも太陽に近付く軌道に乗ったことから、太陽の近くを通過するたびに、設計時の想定を超える熱にさらされ続けており、探査機には大きな疲労が蓄積されている。しかし今のところは、5年前に壊れたスラスターを除けば健全な状態を保っているという。また観測機器も同様で、5台搭載されているカメラのうち、3台に関しては今年10月に試験を行い、こちらも最低限の健全性を確認しているという。残り2台のカメラは、探査機の姿勢の関係で確認ができないため、金星周回軌道投入後の確認となる。無事に軌道投入に成功すれば、まず観測機器の試験が行われることになる。試験的な金星の画像も、このころに公開できる見込みだとしている。その後、探査機の軌道を徐々に、科学観測に適した軌道へと変える。本格的な科学観測の開始は2016年3月以降に予定されている。軌道の関係で、当初期待されていた観測の一部ができなくなったり、また一部のデータの質が落ちるといった点はあるものの、謎の部分が多い金星の大気について、多くの発見が得られることが期待されている。プロジェクト・マネージャーを務める中村さんは「この5年間で衛星も疲労していますので、投入中にどこかが故障するといったことが起これば、計画を達成できない。その意味では、(5年前と比べて)難易度は高いと考えています」と語る。しかし「やるべきやることはやりました。すべてがうまく行けば、必ず成功すると考えています。人事を尽くして天命を待つという心境です」と決意を述べた。(編集部より:この記者会見についての詳細レポートは11月11日に掲載予定です。)
2015年11月10日ヤフーとグループ会社のIDCフロンティア(IDCF)は9月17日、福島県白河市の環境対応型大規模データセンター「白河データセンター」に新しく3号棟を建設すると発表した。1棟50ラック・全6棟で構成される計300ラック規模で、10月1日着工、2016年2月末の竣工を予定している。白河データセンター3号棟は、増加するデータの格納や、Yahoo! JAPANが保有するマルチビッグデータを活用するための処理基盤強化を目的として、Yahoo! JAPAN向けに提供する。データセンターで、さまざまな企業が各種のIT機器を利用する場合と比べ、1社専用とすることで、設置する機器の画一化と動作環境を絞り込むことが可能となり、建物の工期短縮と効率の高いサーバーの収容を実現するという。ネットワークの伝送路を直線距離に極力近づける最短経路で設計し、中継ノードも可能な限り少なくすることにより、東京-白河間のレイテンシは、東京近郊に位置するデータセンターと同等の3.5ミリ秒前後の応答速度を実現。物理的な距離に比例しない高速なネットワーク環境を提供する。また、サーバーから出る排熱を冷やすための空調ユニットには、外気を導入して空調効率を高める間接外気空調方式を採用。空調ユニットはサーバールームのモジュールに直接接続され、白河の冷涼な気候を最大限活用して年間のPUEは設計値で約1.2を見込む。
2015年09月18日海洋研究開発機構(JAMSTEC)は8月18日、東京電力福島第一原子力発電所(東電福島原発)南東沖の大陸斜面において、放射性セシウムが付着した東電福島原発沖の海底堆積物が沖合に向かって移動している様子を捉えることに成功したと発表した。同成果はJAMSTECと米ウッズホール海洋研究所(WHOI)の研究によるもので、8月18日付けで米国化学会の学術誌「Environmental Science and Technology」に掲載された。JAMSTECとWHOIは、2011年7月より、東電福島原発から南東へ約100km離れた大陸斜面の1点の水深500mと1000mに海中を沈降してくる粒状物を捕集する装置を設置し、同地点同水深の粒状物を継続的に捕集することで、2011年の東電福島原発事故により放出された放射性セシウムの量を測定してきた。その結果、粒状物からは事故から約3年が経過した2014年7月においても事故由来の放射性セシウムが検出された。放射性セシウムの沈降量と濃度は2011年9-10月に最大となり、その後、2012年9-10月と2013年9-10月に小規模な増加が観測された。特に、2013年9-10月の場合は、東電福島原発から100km圏内を複数の台風が通過しており、浅海域の海底堆積物が巻き上がり、海流によって沖合の観測点まで輸送されやすい状況にあったと考えられる。また、通常の海洋生物活動に伴う沈降量の季節変動では、9-10月に沈降量と濃度の増加が起こる可能性は低いという。JAMSTECは今回の成果について「今後の東電福島原発沖の海洋環境やその生態系への影響を評価するためには、海底堆積物に付着した放射性セシウムが今後どれぐらいの速さで減少していくのかを明らかにすることが重要です。そのため放射性セシウム濃度が低下するメカニズムである、海水への再溶解、底生生物による堆積物の攪乱による希釈効果に加え、本観測研究による海底堆積物の再懸濁と流れによる外洋域への水平輸送量をより定量的に明らかにしていきます。」とコメントしている。
2015年08月18日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月5日、2015年12月7日に予定している金星探査機「あかつき」の金星周回軌道への再投入に向けて7月17日、24日、31日の3回に分けて実施した4回目の軌道修正制御の結果を発表した。この結果、8月2日までに取得したテレメトリデータを解析したところ、8月4日17時30分(日本時間)を持って、軌道修正制御が計画通りに実施されたことが確認されたとしている。あかつきは今後、8月29日に太陽の近日点を通過した後、10月から12月にかけて軌道の微調整を実施。その後、軌道投入の前日となる12月6日に姿勢を観測に適したものへと変更し、翌12月7日に金星の周回軌道への投入が計画されている。
2015年08月05日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月9日、金星探査機「あかつき」に関する記者会見を開催し、7月に実施する軌道修正制御(DV)について説明を行った。あかつきはこれまでに3回の軌道修正制御を実施しており、今回が4回目。これに成功すれば、計画通り12月7日に金星に再会合する軌道に入ることになる。これまでの経緯などについては、前回記者会見時の記事を参照していただきたい。【レポート】金星探査機「あかつき」は12月7日に再投入 - 2年以上の科学観測でエクストラサクセスも2011年11月に実施した3回の軌道修正制御(DV1~3)により、あかつきは現在、2015年11月に金星に最接近する軌道を飛行している。このまま飛行して金星の周回軌道に投入することも可能であるが、この場合、投入時点の太陽摂動(潮汐力)の作用が近金点高度を下げる向きに働くため、周回中に金星に落下してしまう恐れがあった。このリスクを回避するために実施するのが4回目の軌道修正制御(DV4)である。DV4前の軌道だと、金星軌道の内側から金星に接近する形になるのに対し、DV4後の軌道では、一旦、金星軌道の外側に出て、そこで金星に追いつかれるようになる。金星に接近する方角を変えることで、周回軌道の楕円の長軸の向きを変えるというわけだ。ここまでは今年2月の記者会見で説明されていたことだが、今回のアップデートは、(1) DV4は3回に分けて実施する、(2) 金星周回軌道投入マヌーバ(VOI-R1)ではトップ側の姿勢制御エンジン(RCS)を使用する、の2点だ。前回、DV4は「7月に1回実施する」と説明されていたが、3回に分けて実施することになり、それぞれDV4-1/2/3という名称が付けられた。必要なΔV(加速量)は87m/sで、現在の計画では、DV4-1で18m/s(94秒間)、DV4-2で53m/s(276秒)、DV4-3でその残りを実施する予定。もし3回で不足していたら、4回目を実施することで補う。DV4を3回に分けたのは、上記の(2)が密接に関係している。あかつきのRCSは、トップ側(ハイゲインアンテナ側)とボトム側(メインエンジン側)にスラスタが4本ずつ搭載されているが、周回軌道投入時には、熱的な制約から、トップ側を使うことに決まったという。ボトム側を使う姿勢にすると、機体の温度が上がってしまうので、なるべく避けたいのだ。ボトム側では不可能というわけではないが、ボトム側を使うとなると、温度の上昇を抑えるために、VOI-R1の直前に姿勢を変える必要がある。しかし、トップ側ならば、前日(12月6日)のうちに姿勢を変えておいても問題無く、運用に余裕が出る。理由としては、温度そのものよりも、むしろこちらが大きい。ところが、過去3回の軌道修正制御では、すべてボトム側が使われており、トップ側を長時間噴射した実績が無かった。トップ側も姿勢制御系のアンローディングでは日常的に使われており、長時間噴射でも問題無いと見られてはいるものの、その性能試験の意味も兼ねて、DV4でトップ側を使うことになり、慎重を期して、3回に分けたというわけだ。惑星の周回軌道への投入は一発勝負だ。前回の失敗でそれを痛感したわけだが、VOI-R1での噴射時間は1,145秒と、DV4の2.5倍程度だ。同じトップ側のRCSを使うので、今回のDV4に成功すれば、かなり展望は開ける。JAXAの中村正人・あかつきプロジェクトマネージャも、「かなり安心して投入に臨めるようになる」と述べる。あかつきの現在の機体の状態については、特に問題は起きていないという。5年前、金星周回軌道投入に失敗したことで、あかつきは太陽に近づく楕円軌道を飛行。想定以上の熱量を受けたことによる機器の劣化が懸念されているが、今後、8月29日に9回目の近日点通過があり、熱的にはこれが最後の試練となる。中村プロマネは、「紫外線により、金色のMLI(多層断熱材)は飴色に、白色のハイゲインアンテナは真っ黒になっているはず」としつつも、「洋服はボロボロだが、内部の温度はそれほど悪くなっていない。それなりの機能を維持している」と述べ、問題は無いとの見通しを示した。
2015年07月10日東芝と国際廃炉研究開発機構(IRID)は6月30日、福島第一原子力発電所(福島第一原発)2号機の原子炉格納容器内の状況を把握する調査のための小型ロボットを開発したと発表した。福島第一原発 2号機は、燃料デブリの取り出し手順や工法の検討に向けた燃料デブリの分布状況の確認が必要となっており、同ロボットは、今後の原子炉格納容器底部付近の調査に向けた容器内のプラットホーム上の落下物や損傷の有無、状態などの確認のほか、原子炉格納容器底部付近へのアクセスルートの状態を確認することを目的として開発された。機体サイズは長さ約54cm、幅約9cm、高さ約9cmながら、CCDカメラを2台、LEDライト(カメラ内蔵用12灯×2台+単体1台)、放射線量計を1台、温度計を1台搭載。有線ケーブルによる遠隔操作に対応し、直径約10cm程度のパイプの中を通り抜けて格納容器内に進入する予定だという。また、走行中に倒れた場合でも、自力で復帰することが可能な機構も取り入れられているという。なお、同ロボットは操作訓練が7月に実施され、8月中の現場投入が計画されている。
2015年07月01日福島洋上風力コンソーシアムは6月22日、2012年3月に経済産業省より受託した「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」の第2期実証研究事業のうち、福島県・小名浜港における7MW油圧ドライブ型浮体式洋上風力発電設備の組立作業が完了し、実証研究実施海域への曳航・設置作業を開始する段階に移行したと発表した。同コンソーシアムは丸紅、東京大学、三菱商事、三菱重工業、ジャパンマリンユナイテッド、三井造船、新日鐵住金、日立製作所、古河電気工業、清水建設および、みずほ情報総研にて構成されており、すでに第1期として2MW級のダウンウインド型風車が設置されている。第2期として設置が予定されている7MW浮体式洋上風力発電設備は世界最大規模のもので、風車は三菱重工業が製造を担当している。今後の設置スケジュールとしては、2015年6月30日に曳航作業および設置工事を開始し、同9月中旬に同工事を完了する予定。その後、各種の試験調整ならびに試運転を開始し、同12月中旬より実証運転を開始する予定だという。また同コンソーシアムでは、第3期として、5MWのダウンウインド型浮体式洋上風力発電設備1基の建設も進めており、浮体式洋上風力発電の安全性・信頼性・経済性の評価を行っていく予定としている。
2015年06月22日福島県は6月6日・7日の2日間、JR白河駅(福島県白河市)周辺等で「ご当地キャラこども夢フェスタinしらかわ~ふくしまから"元気"はじめよう。~」を開催する。同イベントは、今回で3回目の開催となる。全国から188体のご当地キャラクターが集結し、福島県の復興シンボルキャラクター「ふくしまから はじめよう。キビタン」と共に登場する。また、同県の観光キャンペーン「ふくしまデスティネーションキャンペーン」の特別企画として、県内の観光と食の魅力も合わせて発信していくという。同イベントの開催に際して、福島県の復興シンボルキャラクター「ふくしまから はじめよう。キビタン」は「ご当地キャラをはじめ、ご当地ヒーロー、萌えキャラが、皆さんをお迎えするよ! 会場で待っているから、遊びにきてね! 」とコメントしている。なお、同イベントの開催時間は各日9:00~15:30となる。
2015年06月04日8月1日(土)から9日(日)まで、福島・猪苗代湖畔で開催されるイベント「オハラ☆ブレイク ’15夏」の第1弾参加アーティストが発表された。【チケット情報はこちら】同イベントは、「ARABAKI ROCK FEST.」を主催するARABAKI PROJECTが中心となり開催。世界中のどこにもないカラフルで穏やかな空間で、来場者が思い思いの楽しみ方で過ごせる、「大人の文化祭」を目指し、音楽だけでなく、舞台、美術、写真、映画、小説、ファッション、食などをテーマに様々な催しを行う。実際にライブを披露する音楽枠には、安藤裕子、サニーデイ・サービス、田島貴男(ORIGINAL LOVE)、トータス松本、ハナレグミ、ましまろ、MANNISH BOYS、LOVE PSYCHEDELICOなど20組の出演が決定。音楽枠のほかにも、展示など様々な形でイベントに参加する小説枠、美術枠、演劇枠などのカテゴリが設けられており、小説枠で伊坂幸太郎、技術枠でAR三兄弟などの参加が発表されている。チケットの一般発売は6月28日(日)午前10時より。なお、一般発売に先がけて、オフィシャルホームページ先行を実施中。受付は6月1日(月)23:59まで。■「オハラ☆ブレイク ’15夏」8月1日(土)~9日(日)猪苗代湖畔天神浜(福島県)参加アーティスト:【音楽】outside yoshino / 青谷明日香 / あがた森魚 / 新谷祥子 / 安藤裕子 / 大木温之(Theピーズ) / 大島花子 / コトリンゴ / ゴンチチ / サニーデイ・サービス / 田島貴男(ORIGINAL LOVE) / トータス松本 / つじあやの / ハナレグミ / ましまろ / MANNISH BOYS / 憂歌兄弟 / YOK. / LOVE PSYCHEDELICO / 麗と蘭(仲井戸麗市・土屋公平)【小説】伊坂幸太郎【美術】忌野清志郎 / MIMURI / 百世 / 渡辺孝行【技術】AR三兄弟【写真】野口勝宏×「福島の花」プロジェクト【演劇】ペテカン
2015年05月28日糸井重里氏が主宰するWEBサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」はこのほど、自宅で簡単に、福島のコシヒカリを育てられる「ちいさな田んぼキット」を発売する。○種と土は放射性物質検査をクリアし安心同商品は、福島県・郡山の農家・藤田浩志氏をはじめとする「農のプロ」の協力を得て開発。プロが使う種もみ、肥料の入った用土、栽培用ケース、栽培マニュアルがセットされる。同商品の売上による利益は、福島の食関連のプロジェクトに寄付する予定とのこと。福島県産の檜に防腐性の塗料を塗り、木工メーカーが作ったカバー付きセットも用意。稲の栽培後には、鉢植えカバーとして利用が出来る。栽培は、太陽の光と水があればどこでもできる。種と土は放射性物質検査をクリア。また、昨年(2014年)には、同WEBサイトの「お米チーム」が東京都・青山のビル屋上で実際に栽培し収穫。その際に得たノウハウもマニュアルに盛り込まれている。○収穫期にはプロが作った新米3kgも届く栽培する米は、福島県産コシヒカリ。同商品を購入すると、稲刈りの時期に、福島の農家がつくったコシヒカリの新米3kgも届けられる。同WEBサイトを通じて、数量限定で販売。「あおむしくらぶ+ほぼ日 ちいさな田んぼキット スタンダード コース」は、7,560円(税込・配送手数料別)。限定100セットの「同 檜(ひのき)のいいカバー コース」は、1万2,960円(同)となる。
2015年03月27日JR東日本ウォータービジネスは、国産桃果汁シリーズ「福島あかつき桃」を発売した。○福島県産あかつき果汁100%の濃縮還元ジュース同商品は、福島県産あかつき品種のみを使用した100%果汁の濃縮還元ジュース。2010年より好評を得ている国産桃果汁シリーズだが、今回も福島県産あかつき品種のみを使用し、ついに果汁100%で登場。今まで使用していた安定剤は排除し、原材料には必要最低限の添加物のみを使用している。エキナカ飲料自販機「acure<アキュア>」の会員制度"acureメンバーズ"の女性会員による座談会を実施し、味やラベルデザインについてユーザーの生の声を聞き、その声を反映して作り上げたという。福島県産の農林水産物の魅力や、産地・県の安全に対する取り組みを広く発信する「おいしいふくしま、できました。」のロゴマークを使用している。280mlペットボトルで、価格は160円(税込)。販売場所は、JR東日本エキナカ飲料自販機「acure<アキュア>」、JR東日本ウォータービジネス通信販売、JR東日本のエキナカ店舗など。
2015年03月12日フジテレビは、東日本大震災からちょうど4年を迎える3月11日(水曜 14:00~16:50)に、原子力発電に焦点を当てる報道特番『震災と原発と日本の覚悟』を、福島から生放送する。キャスターは安藤優子と、福島テレビアナウンサーの坂井有生。番組では、原発事故での避難から帰還に揺れる福島県楢葉町や、廃炉作業を妨げる汚染水など、原発の現状や原発を巡る問題を様々な角度から取材。さらに、動物や昆虫におきた異変や、原発事故による甲状腺がんへの影響といった問題について、複数の専門家や研究者の見解を聞いていく。当日は、原発の廃炉作業と福島復興の拠点でもあるJヴィレッジ内の特設スタジオから生放送し、政府主催の追悼式典や、14時46分の被災3県の表情を中継。ゲストに福島県出身の西田敏行などを迎える。フジテレビの吉澤建一プロデューサーは「問題を未来へ先送りしたまま、原子力のエネルギーを享受するのか。『そうだ』との考えもあるでしょうし、反対の意見もあるでしょう。番組に求められるのは、人々の判断材料のよりどころとなる正確かつ幅広い情報、多様な視点を提供することかと考えています」とコメントしており、原発を含む今後のエネルギーについて、番組で問題提起していく考えだ。
2015年03月10日福島県喜多方市押切の喜多方プラザ文化センター東側の特設テントで、各地からおいしいと評判のラーメンが集まる「第15回 蔵のまち喜多方冬まつり 全国ラーメンフェスタ」が行われる。開催期間は2月21日~22日まで。○各地の"おいしいラーメン"が集結同イベントは「第15回 蔵のまち喜多方冬まつり」の一環として行われるもの。東京都の「麺匠 真武咲弥」、「麺屋 翔」、「ど・みそ」、「築地 えび金」、熊本県の「桂花ラーメン」のほか、地元喜多方市から「喜多方老麺会」が出店し、自慢の味を提供する。また、21日の10時~17時と22日の9時~16時には、喜多方プラザ小ホールにおいて「喜多方物産展」も開催。大ホールでは21日に「ふくしまスマイルキャラバン」、22日の13時30分から「郷土芸能フェスティバル喜多方の四季祭」なども開催される。時間は、21日が10時~20時(17時~は夜鳴きタイム)、22日は9時~16時(9時~10時は朝ラータイム)。料金はチケット制で一杯600円(税込)。
2015年02月20日日本の“フラ(ダンス)”ブームに火をつけた松雪泰子・主演の映画『フラガール』(’06)。この物語で描かれた、福島県いわき市湯本の大型レジャー施設・常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)で設立されたフラガールチームを始め、一般のフラ教室などの取材を通してフラの魅力を探るドキュメンタリー映画『Aloha mai ka Hula(仮題)』が制作中であることが明らかとなった。スパリゾートハワイアンズ創業50周年の記念すべき年となる、今年。日本のフラ人口は現在100万人とも言われ、なおも増加中。そのフラ人口の大半を占めるのは、30代~60代の女性たち。女性たちにとって、フラは仕事や子育てなどの日常から解放される貴重な時間なのだ。そんな人々を笑顔にさせるフラの魅力を探ってみたいという思いから、この企画はスタートしている。最初に、スパリゾートハワイアンズのフランダンスチームに密着取材したという本作の撮影部隊。総勢38名のダンサーたちの中には、映画『フラガール』を観てフラに憧れてダンサーになった者もいるそうだ。そんな彼女たちが、観客や3.11の大震災からの復興を応援してくれた人々への“感謝”を持って踊る新演目「BIG MAHALO!!(意味:大きな感謝)」のお披露目までの一部始終を追いながら、スパリゾートハワイアンズから引退していった元フラガールたちの人生も追いかけ、プロから引退してもなおフラに関わり続ける彼女たちの想いに迫っていく。これから各地の一般のフラ教室の取材が始まり、編集作業もすでにスタートし、完成は5月予定しているとのこと。映画に広がりを持たせるため、現在、サイバーエージェントがサービスを手がけるクラウドファンディング・プラットフォーム「Makuake」で制作に必要な資金を募るためのプロジェクトを実施中だ。(text:cinemacafe.net)
2015年02月18日●5年間の時を経て、再び金星に挑む「あかつき」宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月6日、金星探査機「あかつき」に関する記者会見を開催し、今年12月7日に金星周回軌道へ投入する計画であることを明らかにした。あかつきは日本初の金星探査機。2010年5月21日に打ち上げられ、同年12月7日に金星に最接近したが、推進系のトラブルにより周回軌道への投入に失敗していた。○ぴったり5年後の再挑戦あかつきの目的は、金星の大気の運動を観測することである。特に、金星最大の謎として、「スーパーローテーション」と呼ばれる現象がある。金星の自転速度は非常に遅いのだが(自転周期は243日)、大気上層では秒速100mにも達する暴風が吹き荒れている。これは自転速度の60倍もの速さで、なぜこんな風速が出るのか、原因が分かっていなかった。こういった謎を解明するため、あかつきは近金点300km、遠金点8万kmという、非常に細長い楕円軌道に投入する計画だった。だが、周回軌道に投入するため、軌道制御エンジン(OME)を噴射したところ、機体の姿勢に異常が発生し、燃焼を自動的に中断。減速が足らずに、金星を通過してしまい、そのまま太陽を周回する軌道に入っていた。事故後の検証で、燃料を加圧するための配管にあるバルブに塩(えん)が生成し、閉塞したことが原因だと特定された。ここが閉塞したことで、燃焼中に燃料の供給量が減少し、酸化剤の割合が相対的に増え、正常な燃焼条件を逸脱。温度の異常上昇を引き起こし、その結果、ノズルが破損したと見られている。その後、OMEの試験噴射を行ったところ、完全に壊れていることが分かり、使用を断念。以降の軌道制御については、小型の姿勢制御エンジン(RCS)を使うことになった。この経緯については過去記事が詳しいので参照して欲しい。【レポート】「あかつき」の軌道制御エンジンは使用断念 - 当初の観測軌道投入は困難に2011年11月には、最初の軌道制御を実施。近日点で減速を行い、遠日点の高度を下げ、2015年11月に金星に再会合する軌道への投入に成功した。それから現在まで軌道制御は行っていないが、今後、今年7月の軌道修正で再会合を12月7日にずらし、同日、最接近時にRCSを20分ほど噴射して、金星周回軌道に投入する計画だ。投入日が5年前と同じ「12月7日」になったのは「たまたま」とのことだが、中村正人・あかつきプロジェクトマネージャは「本来なら5年前に成功して当然のミッション。幸いにして再びチャンスが与えられたので、粛々と責任を果たしたい。感傷的にならず、冷静に事を進めたい」と、現在の心境を語る。ちなみに再会合を当初予定していた11月から遅らせたのは、11月投入の軌道だと安定性が悪く、太陽重力の影響によって、すぐに金星に落ちてしまうリスクがあったからだ。12月投入の軌道であれば、このリスクが小さい。あかつきは非常に長い楕円軌道を飛行するため、太陽重力の影響を受けやすい。近金点の高度はいつも300kmというわけではなく、この影響のせいで、1,000km以上になることもあるそうだ。12月投入の軌道でも、近金点が大きく変動することは変わらないものの、すぐに落ちてしまうようなことにはならないという。●当初の計画から大幅に変更される観測軌道○現在の機体の状態は?あかつきの打ち上げから、もうすぐ5年が経過しようとしている。現在、もっとも懸念されているのは、搭載機器の劣化だ。あかつきの設計寿命は4.5年。これをすでに超えてしまっている。もっとも、設計寿命を過ぎてもすぐに壊れるというわけではないが、逆に、いつ壊れても不思議ではないとも言える。特に大きな問題は熱だ。あかつきは元々、金星を周回するための探査機であるので、金星(太陽から約0.7AU)での熱環境に耐えられるよう設計されていた。だが、周回軌道への投入に失敗したことで、あかつきは太陽を回る人工惑星となり、近日点では太陽に約0.6AUにまで接近。想定以上の熱を受けることになってしまった。あかつきはこれまでに7回、近日点を通過しており、今ちょうど8回目を迎えているところだ。金星軌道では、太陽からの熱入力は2,649W/m2であるが、近日点では最大3,655W/m2にもなる。これは、2,800W/m2以下という設計条件を大きく超えており、冷却能力が不足した結果、機器の温度が上昇することになる。探査機各部の温度履歴を見ると、近日点を通過する度に、全体的に温度が上がってきていることが分かる。探査機の周囲は金色の多層断熱材(MLI)に覆われているのだが、この劣化が進行しているために、温度が上昇しているものと推測される。一部の機器では、設計マージンを超えており、「油断はできない状況」(同)だ。金星に再会合するまでには、あと1回、今年8月に近日点を通過する。最後の試練を乗り越えて、無事な状態で何とか金星まで辿り着いて欲しいところだ。一方、気になるのは事故を起こした推進系であるが、RCSは今のところ、問題は無い模様だ。加圧側のバルブは依然としてほぼ閉塞しており、燃焼を続けると徐々に推力が低下してしまうものの、20分程度であれば問題ない見通し。石井信明・あかつきプロジェクトエンジニアは「必ず投入できると思う」と自信を見せる。なお、RCSは探査機のOME側に4基、反対のハイゲインアンテナ側に4基搭載されているが、どちらの面のRCSを使うかは、現時点では未定だという。噴射時の姿勢で各部の温度がどうなるか、あるいは各エンジンの信頼性など、様々なメリット・デメリットを総合的に検討し、今後決定していく。○観測軌道は大きく変更に現在、あかつきは金星軌道の内側を回っているが、再会合前に一旦外側に出て、外側から金星に接近する形になる。金星の公転速度の方が速いため、先行していたあかつきに、後ろから金星が追いついてくる。あかつきはスイングバイのように金星の後方を通過するので、最接近時にRCSを噴射して、公転とは逆向きの西回りの周回軌道に投入する。これは、金星の自転が西回りであるためだ。スーパーローテーションの流れも同方向であるので、あかつきも西回りで観測する必要があるわけだ。ただし観測軌道は、当初の計画からは大幅に変わってしまう。12月7日の噴射で、一旦、遠金点が50万kmの軌道に投入。初期チェックアウト中の2016年春に再び軌道修正を行い、遠金点を32万kmまで下げるが、当初予定の8万kmに比べると、4倍も遠い。旧軌道の周期は30時間だったが、新軌道では8~9日になる。当然、科学観測には大きな影響が出るのだが、この軌道で妥協せざるを得ないのは、燃料が足らないからだ。1液式のRCSは2液式のOMEよりも燃費が悪く、同じだけ軌道を変更するにも、より多くの燃料を消費する。しかも5年前の投入失敗で消費した分もある。現時点で残っている燃料は60kg程度。打ち上げ時の117kgから、すでに半減している。探査機の姿勢を維持するのにも、燃料は必要になる。軌道投入で全部使ってしまうわけにはいかないのだ。あかつきの目的は、あくまでも金星の観測。今後、最低2年の観測を行うために必要な燃料を確保すると、残りの燃料では、このくらいまでしか近づけないというわけだ。観測期間は最短2年で、最長でも4年程度と見られている。あかつきの軌道は楕円。金星からの距離が周回中に大きく変わるので、これを利用し、距離に応じた様々な観測を計画していた。このうち、近距離での観測はほぼ同等の内容を実施できると見られているが、問題は遠距離での観測だ。ただ、分解能が低くなるというデメリットがある反面、より長期のグローバル観測が行えるというメリットもある。新軌道での観測について、今村剛・あかつきプロジェクトサイエンティストは「4年前の時点では、赤道周回軌道か極軌道かという選択肢があった。しかし、赤道周回でないと、長時間連続的な気象データを得るという目的は絶対に果たせない。この条件が満たされた時点で展望が開けた」と述べる。金星からの距離が遠くなることで「より頭を使う必要が出てきた」(同)ものの、遠距離での長期間観測と近距離での高分解能観測を連携させるなどして、「やろうとしていた観測の大部分はリカバーできるのではないか」との見通しを示した。なお観測機器の状態であるが、現時点では確認できていない。確認のために電源を入れれば温度が上がってしまう。データを地球に送るため、ハイゲインアンテナを地球に向けると、太陽側になった部分の温度が上がってしまう。それで壊れてしまっては本末転倒なので、観測機器のチェックは金星到着後に実施する予定だ。ただ観測機器については、「悲観する材料はあまりない」(同)という。観測機器は元々、探査機の放熱面付近に搭載されており、ここは「温度的には涼しくて快適な場所」(同)だ。放射線による劣化は考えられるものの、それについても「想定内」とのことで、大きな問題は無い模様だ。
2015年02月10日