眞島秀和主演、いま人気のサウナを舞台に繰り広げられる人情ドラマ短編集「サウナーマン~汗か涙かわからない~」から、予告編と本ビジュアルが到着した。本作は、オレンジ色に火照った男たちの汗が滴り落ちるサウナを舞台に、10年間涙を流していない眞島さん扮する黒柳ヨシトモが、サウナにやってくる様々な客たちの熱い人間模様を通じて、忘れていた心を取り戻していくドラマ。主演の眞島さんをはじめ、常連客を演じる山中崇、七瀬公、仁科貴、北川尚弥といった今回公開されたビジュアルに写る面々のほかにも、ゲストが多数登場する。また、放送に先立ち到着した予告編では、全編サウナの室内にて、タオル1枚で繰り広げられるドラマの一部を覗くことができる。さらに今回、テレビ放送に先立ち、8月18日(日)よりTSUTAYAプレミアムとTSUTAYA公式Youtubeで一部先行配信も決定。Youtubeでは第1エピソードを、TSUTAYAプレミアムでは第1エピソードに加えて、第2エピソードも配信する。「サウナーマン~汗か涙かわからない~」は8月25日より毎週日曜日深夜1時57分~ABCテレビにて放送(関西ローカル)、ABCテレビ放送終了後よりTSUTAYAプレミアムにて独占配信。(cinemacafe.net)
2019年08月13日東村アキコの漫画を原作に、杏主演で贈るちょっとこじれた大人のピュア(?)ラブストーリー「偽装不倫」。この度、すでに出演が発表されていた眞島秀和の役柄がついに判明。宮沢氷魚演じる丈の“秘密”を知る脳外科医・一之瀬隆美を演じる。本作は、杏さん演じる独身の主人公・鐘子が、一人旅中に出会った年下のカメラマン・伴野丈(宮沢氷魚)に、つい既婚者だと嘘をついたことから始まるラブストーリー。第2話では、鐘子が姉・葉子(仲間由紀恵)の結婚指輪を取り戻し、丈の自室を立ち去ったあと、ひとり残された丈が強烈なめまいに襲われるシーンで終了したが、そんな丈の“秘密”を知る脳外科医を、眞島さんが演じる。かつて師事したスペインの医師から、日本での丈の診察を託される一之瀬は、7月31日(水)放送の第4話からの登場となる。丈のめまいの理由、丈が鐘子に不倫を持ちかけた本当の理由…。物語が進むに連れ、秘密が徐々に明らかになっていく。そして今夜は第3話が放送。なんとか指輪を取り戻したものの、これでもう丈に会うことはないのだと寂しさを感じる鐘子。一方、鐘子を既婚者と思い込む姉の灯里(MEGUMI)から、不倫はいけないと釘を刺された丈は鐘子にはもう会わないと話していた。そんな中、風太(瀬戸利樹)から練習中に怪我をしたので見舞いに来てほしいとせがまれた葉子は、賢治(谷原章介)との結婚記念日ディナーを抜け出す口実を作るため、鐘子に協力を頼む。その夜、葉子と賢治はディナーのために高級レストランを訪れ、鐘子は姉の嘘に付き合うために病院を訪れ思いがけず風太と会ってしまう…。既婚者を装う妹と独身を装う姉、2人の本当の幸せ探しが動き出す!「偽装不倫」は毎週水曜日22時~日本テレビ系にて放送中。(cinemacafe.net)
2019年07月24日作・iaku横山拓也、演出・鄭義信の舞台『エダニク』が6月から7月に東京・浅草九劇で上演される。出演者の稲葉友、大鶴佐助、中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)に話を聞いた。【チケット情報はこちら】『エダニク』は、横山が2009年に書き下ろした、食肉加工センターを舞台にした三人芝居。初演以降、さまざまな演出家により再演を重ねられている作品で、鄭が演出を手掛けるのは今回が初。本作について稲葉は「三人芝居、ワンシチュエーション、会話劇…きっと密度が濃いものになるはず。それをどれだけ楽しめるかですよね。この本が鄭さんの演出でどんなふうに変わっていくかも楽しみです」。大鶴は「屠殺場の話ということもあり、直接的ではないにしろ、死の臭いみたいなものがずっと空気中にあるようなイメージです。そんな中3人しか登場しない人物達も、それぞれ抱えてるモノが違う。ひとつの空間が物凄い密度になるんだろうなと思いました」。中山は「最初は真面目な話なのかと思ったのですが、徐々に滑稽になっていく感じがいいなと思いました。最初は真面目に観始めて、“あれ?これはおもしろい芝居に発展するんじゃない?”と思い、“やっぱりそうだった!いい芝居観たな”という感じで。お客さんも楽しめるんじゃないかなと思います」とそれぞれの印象を語る。自身の役柄について、食品加工センターの若手作業員を演じる稲葉は「嫁がいて子供がいるという役も初めてですし、屠殺場で働いている人は身体が大きいのでそういうビジュアルもつくっていかなきゃいけない。今までにないアプローチになりそうです」。取引先の若手社員を演じる大鶴は「純粋なのかひねくれてるのか分からない様な所があるので、そこも楽しみたいです」。センターのベテラン作業員を演じる中山は「おっさんの役は、実はあまりやったことがないので楽しみです。役が関西弁なのですが、今までは僕が稽古場で関西弁を話すと“その設定やめよう”と言われてきたのでビビッてます。なんとか関西弁の似合う強面なおっさんをやりたいです」とコメント。鄭の演出は舞台『すべての四月のために』(2017年)ぶりの稲葉は「鄭さんはご自身のことを“アジアで二番目にしつこい演出家”と言っているのですが、本当にしつこいんですよ(笑)。稽古がすごく濃密。そのなかでさまざまな変化があると思うので、そこも楽しみにしています」と意気込んだ。『エダニク』は6月22日(土)から7月15日(月・祝)まで東京・浅草九劇にて上演。取材・文:中川實穗
2019年04月05日俳優の田中圭が24時間にわたり生出演、吉田鋼太郎、眞島秀和ら親交の深い俳優をはじめ豪華ゲストも集結したAbemaTVの「田中圭24時間テレビ」が12月15日から16日にわたり放送された。「24時間でドラマを作る」というテーマで行われた本番組、SNSはどんな反応を示したのか?本番組は田中さんが24時間にわたる生放送中の間、様々なゲストと共にドラマを1本作る「24時間耐久ドラマ制作」に挑戦するというもの。ドラマは「くちびるWANTED」というタイトルで「田中圭とキスした女性には1億円」という情報がネットで広まり田中さんの唇が様々な女性から狙われるというストーリー。田中さんがタイトルを間違えるハプニングで始まった放送は、大ヒットドラマ「おっさんずラブ」で共演した鋼太郎さんが登場、田中さんと鋼太郎さんの共演シーンに視聴者から「部長とはるたんにしか見えなかった」「吉田鋼太郎をおじさん呼びする田中圭くそくそくそ可愛すぎ」「吉田鋼太郎さんのアドリブにどんどん返していく田中圭もすごい」などの反応が寄せられる。またドラマ本編で「おっさんずラブ」のBGMが流れたことに「部長の曲ーーー激笑」「やばい!おと!おとが、おっさんずラブのやつ」と歓喜の声も。同じく「おっさんずラブ」で共演した眞島さんが登場、熱い“抱擁”シーンが放送されると「仲良しハグが見られて心拍数がドーーーンと上がりました」「田中圭を抱きしめて優しくとんとんってするの好き」「眞島さん、声も見た目も包容力も好き」などSNSは再び大きく沸きあがる。こちらも同作で共演した伊藤修子はシャワーを浴びて半裸の田中さんを“急襲”。田中さんの肉体美に「田中圭の裸刺激が強すぎ」「すごい、、筋肉すげえよはるたん」「ここのシーンだけ5万回くらい再生したい」といったツイートが続々と上がる。そのほかに田中さんを催眠術にかける謎の俳優・ロドリゲス役で出演した満島真之介の“怪演”に「面白いを超えた」「振り切れてるなぁ」などの声が上がっていたほか、田中さんのマネージャー役を演じた吉田羊とのエチュードにも「本当に観ていて楽しかった」「吉田羊さんの「中二かよ!!」最高でした」といった反応が寄せられていた。16日21時でいったん生放送は終了し、21時からはドラマ本編がオンエアされ全てのプログラムが終了。「田中圭24時間テレビ観てファンになった」「必ず田中圭を好きになる番組」「本当に刺激的で面白かった」など今回の企画を讃える声がいまも続々とネットに上がり続けている。(笠緒)
2018年12月17日『焼肉ドラゴン』『パーマ屋スミレ』など時代に翻弄される在日コリアンの姿を描いてきた鄭義信の新作である『赤道の下のマクベス』が3月6日(火)より東京・新国立劇場にて上演される。池内博之、平田満ら実力派俳優がそろった稽古場に足を運んだ。【チケット情報はこちら】『焼肉ドラゴン』などで“家族”を描いてきた鄭だが、本作では終戦から2年後のシンガポールのチャンギ刑務所を舞台に、死刑を宣告され、執行を待つ朝鮮人と日本人BC級戦犯たちの姿を描いている。なぜこの題材を?そんな問いに鄭は「僕の父は戦時中、憲兵をやっていて戦後、対日協力者として村八分にされました。上官の命令に従った朝鮮、台湾出身の軍属がBC戦犯として裁かれ、彼らの遺族も戦後、対日協力者として厳しい扱いを受けたという事実を知り、父と重なる部分を感じた」と明かす。この知られざる歴史が大きなテーマであることは事実だが、舞台上で展開するのはあくまでも、いつ訪れるとも知れぬ死刑を前にした者たちによる徹底した人間ドラマ。朝鮮人の軍属だった南星(ナムソン/池内)、文平(ムンピョン/尾上寛之)に年配の日本人兵士の黒田(平田)、戦時中は大尉として朝鮮出身の軍属たちをしごき、戦後は一転、彼らと同じ獄に繋がれることになった山形(浅野雅博)、その山形らの命令で捕虜を使役したことで戦犯となった春吉(チュンギル/丸山厚人)など、異なる出自や立場の者たちが死を前に同じ刑務所で生活している。静かに死を待つ者、諦めに似た境地でおどける者、絶望する者、自分は助かるはずだと信じる者、死を前になお復讐を企てる者など、彼らの心情は様々…いや、ひとりの人間の心情さえもコロコロと変わっていくし、それぞれの関係性も憎み合ったかと思えば、死という共通の未来を前に共感や同情、赦しを抱くようになるなど、目まぐるしく変化していく。そして、舞台上で登場人物たち以上に強い存在感を放っているのが、絞首刑の台である。「笑わせたい。こんな状況だからって暗く演じる必要はない」という鄭の言葉通り、池内演じる南星を中心に、日々の営みの中に笑いやユーモアが散りばめられながら物語は展開するが、一方で、どんな時も死刑台は常に“神”のごとく彼らを見下ろし、死がいつ訪れてもおかしくないのだと知らしめる。タイトルにある「マクベス」は役者を志していた南星が常に持ち歩いている古い文庫の戯曲。殺さずとも王になれたはずのマクベスがなぜ王殺しに手を染めたのか? 南星はそんな大命題とも言える疑問を抱く。登場人物は全員男。鄭は「更衣室が男臭いらしい」と笑い「男子校の部室みたい」と評するが、稽古場で男たちがぶつかり合う姿からも、南方の太陽や土ぼこり、血と汗のにおい、生への渇望、死の重みがひしひしと伝わってきた。『赤道の下のマクベス』は東京・新国立劇場にて3月6日(火)より開幕。取材・文・撮影:黒豆直樹
2018年02月26日深田恭子と松山ケンイチが妊活に励む夫婦役を、北村匠海と眞島秀和が“同性カップル”を演じる「隣の家族は青く見える」が1月18日から放送開始。北村さんと眞島さんのキスシーンにSNSが騒然とするなか、社会問題に向き合う姿勢への評価の声も上がっている。本作は「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」「ラスト・シンデレラ」「ディア・シスター」などを手がけてきた脚本家・中谷まゆみ氏によるオリジナルストーリー。さまざまな家族が自分たちの意見を出し合いながら作り上げる集合住宅“コーポラティブハウス”に暮らす各家族の葛藤と成長をハートフルに描くヒューマンドラマとなっている。“子どもが欲しいカップル”を深田さんと松山さんが、“子どもが欲しくない女性とバツイチ男性のカップル”を平山浩行と高橋メアリージュンが、“虚栄心の強い専業主婦と失業夫カップル”を真飛聖と野間口徹が、そして“同性カップル”を北村さんと眞島さんがそれぞれ演じる。1話では北村さん演じる青木朔と眞島さん演じる広瀬渉の“ラブストーリー”と、深田さんと松山さん演じる五十嵐夫婦の“妊活”に視聴者の視線が注目した模様。北村さんと眞島さんのカップルには「最高に可愛い」「キャスティングしてくれた方、ありがとうございます」「スピンオフで見てみたい」などの声が殺到。特に北村さんには「若くして新境地ですごい」「こんなかわいい匠海くんが毎週見れるなんてしあわせー」といったツイートも数多く寄せられているほか、「表情がゲイとして描かれやすい「女の模倣」ではなく完全に純粋な「恋する人間」の香りしてる」とその演技を賞賛する投稿も。今作で北村さんを知ったという視聴者からの「めっちゃ可愛い!思って調べたら、北村匠海ってゆう人やった」というツイートもあり、今作で一気に北村さんの俳優としての認知度が上がったのは間違いなさそうだ。また深田さんと松山さん演じる五十嵐夫婦に対しても「不妊治療ってこんなに大変なんだね」というツイートが多数寄せられており、「現代の身近な問題が盛りだくさんで良い内容だった」「現代の日本の社会的問題を全部総括した感じ」などといった声も数多く見られた。次回の2話では朔(北村さん)が奈々(深田さん)と親しくなったことで、自分達の関係に気付かれるのを恐れた渉(眞島さん)と朔の仲に溝が生まれるほか、亮司(平山さん)の息子も登場するなど各家族の事情がさらに描かれていくようだ。現代社会が向き合っている“多様性”にまつわる様々な問題と正面切って向き合った感のある本作。「様々な問題を抱えた登場人物たちがどのような形で幸せを体現していくのか見届けたくなった」というツイートが象徴するように、多くの視聴者が自らを取り巻く環境と重ね合わせながら、物語の行く末を見守っているようだ。「隣の家族は青く見える」は毎週木曜日22時~フジテレビにて放送中。(笠緒)
2018年01月19日2018年1月7日(日)東京・豊洲PITでベーシスト「ひなっち」こと日向秀和のベース道四半世紀を記念したライブ祭『HINA-MATSURI』が開催される。【チケット情報はこちら】日向秀和はストレイテナー、Nothing’s Carved In Stone、FULLARMORなど多くのバンドで活動。この日は上記3バンドのほか、日向と縁のあるLITE、Yasei Collectiveが出演。さらに、バンド活動と平行して数々のセッションを行っている彼ならではの “HINATA’S SESSION”と題した企画も行われる。セッション参加メンバーは日向秀和、大喜多崇規、KenKen、田中邦和、タブゾンビ、別所和洋、松下マサナオ。チケットの一般発売は11月26日(日)より。なお、一般発売に先がけて、プレリザーブを実施中。受付は11月7日(火)午後11時59分まで。■HINA-MATSURI日時:2018年1月7日(日)開場12:30 / 開演13:30会場:チームスマイル・豊洲PIT(ピット)(東京都)出演:ストレイテナー / Nothing’s Carved In Stone / FULLARMOR / LITE / Yasei Collective /HINATA’S SESSION(日向秀和 / 大喜多崇規 / KenKen / 田中邦和 / タブゾンビ / 別所和洋 / 松下マサナオ)料金:スタンディング4950円※ドリンク代別途必要。※未就学児童は入場不可。
2017年11月01日●大学を卒業したら地元で就職すると思っていた現在放送中の関西テレビ・フジテレビ系ドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』『緊急取調室』、8月からスタートのWOWOW『連続ドラマW プラージュ ~訳ありばかりのシェアハウス~』と立て続けにドラマ、映画に出演する俳優・眞島秀和。独特の存在感で求められ続けている。6月17日公開の映画『心に吹く風』では、『冬のソナタ』ユン・ソクホ監督のもと、北海道の豊かな自然の中で初恋を蘇らせた。眞島は主役のリョウスケを演じ、高校時代に愛し合い23年ぶりに再会した男女が過ごす数日間が描き出された。俳優を志した意外と知られていないきっかけや、『フラガール』『怒り』等で知られる李相日監督との出会い、そして今回の映画でのユン監督とのやりとりなど、眞島本人に話を聞いた。○幸せな役があまりない――俳優を志したのは、大学生のときだそうですね。東京の大学に入ったのは、単純に地元の大学に落ちたからなんです。そのころは、大学を卒業したら地元に帰って就職しようと思ってたんですけどね。――ダンスをやっている友達を見て、自分も何かをやろうと思ったのがきっかけだとか……。そうです。同じ年頃の友人たちが、ダンスや音楽をしているのが、楽しそうに見えたんでしょうね。それで自分も俳優をやってみようと。でも、よく考えたら、10代のときから、すごくテレビを見るのが好きで、ドラマの中のセリフを自分でも言ってみたりとか、そういうことはしてたんです。だから、ちょっとは興味があったのかもしれないですね。ただ、自分が俳優になるということは全く考えてなかったです。――俳優をやろうと決めてからは、どんなことをしていたんでしょうか。劇団の研究生をやったり、仲間と自主映画を撮ったりしていました。――その後1999年、李相日監督の卒業制作『青~chong~』主演に抜擢されたのがデビューになりましたが、どんなきっかけで出演することになったんでしょうか。僕は俳優の養成所に通っていたんですけど、その養成所が、李監督のいた日本映画学校(現・日本映画大学)に「うちの研究生を使ってください」と資料を持参していたらしく、それがきっかけで映画に出ることができました。でも、主演できたとはいえ、まだ当時はどうなるかわからないと思っていました。――その後、転機はありましたか?『青~chong~』に出られたのも転機ですし、今の事務所に入れたこともあります。作品で言うなら、NHKの『海峡』(2007年)や、WOWOWの『なぜ君は絶望と闘えたのか』(2010年)だったのかなと思います。その2作で「この先もどんどんやっていって、年を重ねたらどうなるのかな」と思ったというのはあります。ただ、役をいただいて、それをいかに演じていくかということに対しての考えは、ずっと変わらないですね。――そして今では、毎クールドラマで眞島さんを見ないときはないくらいですが。自分としては、そんなにたくさんという感じではないんですけどね。いろんな役をやりたいので。それがこの仕事の楽しいところだし、なんでもやってみたいというシンプルな考えなんです。――今年ですと『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』や、『連続ドラマW プラージュ ~訳ありばかりのシェアハウス~』などのドラマに出られていますし、『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』にも、もうひとつのバイプレイヤーズとして出演されていましたが、ご自身で演じられる役には傾向はありますか?いろんな役があるし、それが楽しみでもあるんですが、幸せな人物の役があんまりないのかなとは思います(笑)。――いろんなドラマで眞島さんを見て、気になっている方もたくさんいるんじゃないかと思いますけど、ご自身が今の自分をどう捉えられてますか?結局、今になっても、この仕事を続けていくのは大変だなと実感しているし、だからこそやっていきたいなとは思っています。――これからこうなりたいという俳優像はありますか?仕事をしていると、先輩の役でこういうのがいいなとか、面白いなというのはたくさんあります。僕が50代、60代になったときに、そういう先輩たちの役を演じられていたらいいなと思いながらやっています。●初恋の思い出はしまってある○『冬のソナタ』を見返した――17日からは『心に吹く風』が公開されますが、ユン・ソクホ監督と初めてあったときのことを教えてください。面接を受けたときですね。そのときは、映画や役についていろいろ聞かれたというよりは、普段のことを話したり、世間話をした感じでした。ユン監督の作品は『冬のソナタ』や、スペシャルドラマを見たことはありました。やっぱり、とても話題になっていたので、どんな作品なのだろうという興味で見ました。今回も作品に出演することになって、また見返しました。――ユン監督と実際に撮影してみていかがでしたか?ユン監督の撮影スタイルが通常の撮影スタイルと違っていて、最初のほうは戸惑いました。通常は段取りを確認して、テストをして、それで本番に入ることが多いんですが、ユン監督は最初からカメラを回していて、それがもう本番なんです。この映画が「偶然」を大事にしているからなのかなと思いました。――ユン監督は、眞島さんが初恋の相手と再会して、高校時代の思い出の歌を歌うシーンで、眞島さんが演じるリョウスケが少し恥ずかしそうな雰囲気だったのを見て、日本と韓国の文化の差なのかなと思われたというエピソードを聞きましたが、そういう感情表現の違いは感じられましたか?実は、その初恋の歌を歌うシーンが、初めて撮影したシーンだったんです。それで、どういう風に演じるか、探りながらやっていたところ、そういう恥ずかしそうな感じになったのかもしれません。自分自身の感覚だと、照れくさいなと思う部分もあるんですけど、リョウスケというキャラクターは、照れないでいられる人だと思うので、監督の求めるものを演じたいとは思っていました。――映画の中で印象的だったシーンはありますか?ピアノのシーンですね。音楽を担当されたイ・ジスさんが実際に撮影現場で即興でピアノを弾いてくれて、すごく感動しました。それを聞いて、この音楽がひとつのテーマになるのだなと思ったし、物語に説得力を与える素敵な曲だと思いました。――ユン監督の要望というのはありましたか?リョウスケというキャラクターに関しては、アーティスト特有の頑固さを持ちながら、優しい男でいてくれということはありました。監督は、ヒロインの春香を演じる真田(麻垂美)さんと僕との2人がとにかく空気がいいようにと気を使ってくださって、それですごく楽しく撮影できました。○いろいろな縁があってここにいる――この映画は初恋がテーマですし、ユン監督も常に初恋をテーマに描かれてきた方ですが、眞島さんは初恋に対してはどういう考えを持たれてますか?ユン監督ほど語れないかもしれないけど、いい思い出としてどこかにしまってある感じですね。――ユン監督にも取材したんですが、ちゃんと話すには徹夜の覚悟がいりますよと言われました(笑)。眞島さんは、この映画のように初恋の人と再会したりは?そういうこともないですね。きっとユン監督もそうなんじゃないかな。――そうですね。ユン監督もあえて再会しなかったと言われていました。やっぱりそうですか。――最後に、『心に吹く風』を見られる方に、一言お願いします。大人のラブストーリーなんですけど、生きていく中で、誰しも初恋を胸に抱いていたり、いろんな偶然があったりするもんだと思うんですよ。だから、大人の人が見たら、そういう思いってあるんだ、偶然ってあるんだと思える作品になっているんじゃないかと思います。――眞島さんも偶然ってあるんだなと思うときはありますか?もちろんです。特にこの仕事って、偶然がたくさんあると思うし、いろんな縁があってここにいるんだなと思います。(C)松竹ブロードキャスティング(ヘアメイク:佐伯憂香 スタイリスト:M&E)<著者プロフィール>西森路代ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。
2017年06月13日新国立劇場で連続上演中のシリーズ“鄭義信三部作”、そのラストを飾る舞台『パーマ屋スミレ』が5月17日(火)に小劇場にて開幕する。劇作家・演出家の鄭義信が「激動の昭和の時代に翻弄された、庶民の姿を描きたい」として発表した三部作のうち、『パーマ屋~』は1960年代半ば、九州のとある炭鉱町を舞台に展開。そこで暮らす在日コリアンの炭鉱労働者の家族や彼らを取り巻く人々の、苦境に負けずに力強く生きる姿を、笑いと涙で鮮烈に綴った物語だ。理容室を営む須美役の南果歩、その姉・初美役の根岸季衣など、2012年の初演とほぼ同じキャストが揃うなか、須美の夫・成勲(ソンフン)役の千葉哲也、その弟・英勲(ヨンフン)役の村上淳が今回の再演に新加入。稽古場では、鄭の熱のこもった指揮のもと、激しくも温かい九州の方言が飛び交っていた。舞台『パーマ屋スミレ』チケット情報床屋椅子がひとつポツンと置かれた理容室、路地にある手押しポンプや共同便所など、稽古場に精密に建て込まれたセットから、1965年の炭鉱町の風情が存分に伝わってくる。理容室の座敷に祖父・洪吉(ホンギル)役の青山達三が横たわった状態で、鄭の合図で一幕の頭から立ち稽古が始まった。語り部となる中年の大吉(酒向芳)が登場し、空間を仰ぎ見ながら少年時代を懐かしむ。その穏やかな口調が引き出す郷愁に、早くもささやかな悲劇の匂いを感じて胸を突かれるが、少年大吉(森田甘路)のけたたましい登場とともに空気は一変。続々と生命力あふれるキャラクターが現れ、嵐のような勢いで観る者を巻き込んでいく。須美の妹夫婦(星野園美、森下能幸)がくりひろげる夫婦漫才調のやりとりに笑わされ、生活臭を漂わせた初美・根岸のたくましさ、不甲斐ない夫に怒声を飛ばす須美・南の気っ風の良さに圧倒される。負けじと声を張ってずる賢くかわす成勲の、千葉が見せる狡猾な表情も失笑せずにいられない。片足を引きずって歩く英勲だけは、村上が静かな笑みに諦観の色をにじませて独特の印象を残していた。ドラマの序盤、駆け抜けるような彼らのやりとりを鄭は楽しそうにみつめながら、「だんだんたっぷりと演じてしまっているから、もっと早く」とテンポの良さの重要性を強調。その一方で、根岸が三段落ちのようにして言葉をたたみ掛け、笑いを誘う場面では、「もっと三回目を長くねばって」と要求する。演出家が好む“くどい笑い”へのこだわりに応えるべく、根岸が何度もシーンを繰りかえし、周囲から爆笑を引き出していた。強烈な言葉の応酬、おおらかな仕種から感じとれるのは人間の底知れぬ強さ、突き抜けた朗らかさだ。だがその後に続く物語は、炭鉱事故で彼らの生活が打ち砕かれる様を厳しく映し出す。それでも鄭は、懸命に生きる人々の姿に必ず“笑い”をまとわせることを忘れない。『焼肉ドラゴン』、『たとえば野に咲く花のように』と続いて話題を集めた鄭義信の人間ドラマ、その最終章もやはり、胸をえぐる衝撃が待ち構えているに違いない。公演は5月17日(火)から6月5日(日)まで。前売りチケット発売中。取材・文:上野紀子
2016年05月06日新国立劇場にて過去に上演され、戦後まもない日本社会でたくましく生き抜く人々の姿を在日コリアンの視点を絡めて描き、大きな反響を呼んだ鄭義信作の『焼肉ドラゴン』『たとえば野に咲く花のように』『パーマ屋スミレ』。この3作が3月から6月にかけて新国立劇場で一挙再演されることになり、1月19日に制作発表会見が行われた。鄭義信三部作 チケット情報会見には鄭義信、新国立劇場芸術監督の宮田慶子、『焼肉ドラゴン』からナム・ミジョン、ハ・ソングァン、馬渕英里何 、中村ゆり、高橋努、『たとえば野に咲く花のように』から演出の鈴木裕美、ともさかりえ、山口馬木也、村川絵梨、石田卓也、『パーマ屋スミレ』から南果歩、根岸季衣、村上淳、千葉哲也の総勢16名が出席した。『焼肉ドラゴン』と『パーマ屋スミレ』は鄭が自ら演出も務め、今回の三部作連続上演を「光栄の至り」と喜びをかみしめる。3作ともキャストの一部を入れ替えての上演となるが「新たな、錚々たるキャストのみなさんと新しく作るということで、喜びと不安、期待でいっぱいです」と意気込みを口にした。『焼肉~』はすでに本読み稽古がスタートしており、初演時に客席で鑑賞し、感動に打ち震えたという馬渕は、エネルギーあふれる脚本との格闘に「読んでるだけでボロボロになります(苦笑)。嬉しくて仕方ないんですが、本を開くと疲れます…」と苦笑いしながらも、「この作品の一員になれる幸せを噛みしめつつ、初演、再演以上の新しい『焼肉ドラゴン』を作れるよう稽古を重ねたい」と力強く語る。『たとえば野に咲く~』主演のともさかは「新国立劇場も鄭さんの作品も(鈴木)裕美さんの演出も初めての“初めて尽くし”です」と緊張の色を浮かべ、「どんな新しい景色が見られるか、楽しみ半分、恐ろしさ半分です」と語る。初演に続いて演出を務める鈴木は「演劇、俳優の力を信じている本だと思います。どの人物も美しさと頭の悪いところが、両方とも描かれている」と改めて鄭の作品の魅力を語った。4年前の『パーマ屋~』初演以来「誰よりも再演を熱望してきた」と自負する南は感慨もひとしおのよう。「鄭さんは『アジアで二番目にしつこい演出家』とご自分で仰ってましたが、北半球で一番ではないかと思います(笑)」とキッパリ。これには鄭も「アジアで一番になるように頑張りたい(笑)」と応戦。南はさらに「人生を懸けてもいいと思えぶつかりがいのある山で、役者にとって最高の幸せであり、不幸であり(笑)、試練!今後、こういう役に出会う機会はないかもしれないという思いで一期一会を感じています」と本作への特別な思いを吐露し、並々ならぬ意気込みをうかがわせた。『焼肉ドラゴン』は3月7日(月)から27日(日)、『たとえば野に咲く花のように』は4月6日(水)から24日(日)、『パーマ屋スミレ』は5月17日(火)から6月5日(日)まで、新国立劇場小劇場にて上演。なお、チケットぴあでは三部作特別割引通し券を1月21日(木)まで発売中。
2016年01月20日グートは18日、ユーザーインタフェースのデザインやメディアプラットフォームを提供するプログラム「ARATAS」を発表した。2016年春より、アジアを中心とするグローバル市場で同プログラムによる格安スマートフォン「KAZE01」と「KAZE02」を発売する。「ARATAS」は、日本のクリエイターが筐体、壁紙、アイコン、着信音などのデザインを手がける「ARATAS DEVICE」、「ARATAS UI」、グートが企画し提供するメディアプラットフォーム「ARATAS NET」という3つのプロダクトから構成されているプログラムだ。第1弾となるスマートフォン「KAZE01」と「KAZE02」は、元amadanaのデザイナーである鄭秀和氏が代表を務めるインテンショナリーズがデザインを担当している。製造は、中国のKingtech Mobile Ltd.が努め、約10カ国で年間30万から50万台の販売を計画しているという。「KAZE01」の主な仕様は次の通り。OS: Android 5.1CPU: MT6735(1.3GHz、クアッドコア)内蔵メモリ: 1GB(オプションで変更可能)ストレージ: 8GB(オプションで変更可能)外部ストレージ: microSD(32GB)サイズ: W73.0×H144.8×D8.1mmディスプレイサイズ: 5.0インチディスプレイ解像度: 1,280×720ピクセルメインカメラ: 800万画素サブカメラ: 200万画素バッテリー容量: 2,200mAhFDD-LTE: B1/B3/B7/B28WCDMA: B1/B19Wi-Fi: IEEE802.11b/g/nBluetooth: 4.0カラーバリエーション: Black、White、Yellow想定販売価格: 160ドル「KAZE03」の主な仕様は次の通り。OS: Android 5.1CPU: MT6735(1.3GHz、クアッドコア)内蔵メモリ: 1GBストレージ: 8GB外部ストレージ: microSD(32GB)サイズ: W80.0×H149.0×D10.5mmディスプレイサイズ: 5.0インチディスプレイ解像度: 1,280×720ピクセルメインカメラ: 800万画素サブカメラ: 200万画素バッテリー容量: 2,200mAhFDD-LTE: B1/B3/B7/B28WCDMA: B1/B19Wi-Fi: IEEE802.11b/g/nBluetooth: 4.0カラーバリエーション: Black、Pink、White、Yellow想定販売価格: 140ドル2機種の販売予定国(エリア)は、インド、インドネシア、フランス、フィリピン、スペイン、南米、北米、シンガポール、台湾、香港、マレーシア、バングラデシュ、ベトナム、日本。
2016年01月18日石川県金沢市で毎年開催される、メディアアートとクリエイターのための祭典「eAT KANAZAWA」(以下、eAT)は、IT黎明期の1997年から金沢市が主催し、行政が主体となってクリエイティブの情報発信を行うユニークな長寿イベントだ。本稿では、その模様に密着したレポートをお届けする。○「3Dプリンタ」をめぐるものづくりの今先日紹介したセッション「ジェネレーション ~ eATが発掘する新しい才能」に続き行われたのは、「クラフト~eATから生まれた工芸の可能性」。モデレーターにはクリエイターの宮田人司氏、パネリストには金沢で起業した「雪花」の上町達也氏(3Dデザイナー・シェフ)と柳井友一(3Dデザイナー・陶芸家)の若手2名、3Dプリンター業界の第一人者である原雄司氏(ケイズデザインラボ)、DMM .make AKIBAの創立者のひとりであるベンチャーキャピタリストの小笠原治氏(株式会社nomad)を迎えた。このセッションの共通キーワードは「3Dプリンタ」だ。上町氏はもともとニコンのミラーレス一眼レフシリーズのデザインを、柳井氏はJVCケンウッドでヘッドホンのデザインを担当してきたキャリアを持つ、いわば「プロのインダストリアルリアルデザイナー」たち。そんな彼らが、華々しいキャリアを離れてまで実現したかったものは「食と工芸」だと語る。「食器はまだまだデザインできる領域が大きい」と語る柳井氏の作品は、国際陶磁器コンペティションでここ数年入賞を続けるなどすでに一定の評価を得ている。陶芸の意匠としての素晴らしさを持ちながら、工業的なアプローチも忘れない氏の作品は、その形状からは想像しにくいがスタッカブル(積み重ねられる)であることを実現している。いわゆる手焼きの一点ものではなく、料亭などでも「しまう」所作を考えて設計されている。これを実現しているのが3Dプリンタの存在だ。CADで図面を起こし、形状を作り上げていきながら、3Dプリンタでサンプルを作って実際にテストする。そうやって何度も試行錯誤を繰り返したうえで、サンプルから実際に陶器にするための「型」を起こす。焼き物は火入れを行うと実際には10~20%縮んでしまうため、その収差を考えて設計するといったノウハウも氏ならではだが、出来上がった作品はどれも緻密に計算されているものの、そのデザインは手作りの温かみのあるものだ。彼のパートナーである上町氏のアプローチも非常にユニークだ。氏も3Dデザイナーでありながら、食へのこだわりから金沢でハヤシライス専門店を営むシェフでもある。柳井氏の作品のひとつである「スノーヒル」もそんな中から生まれたアプローチ。皿に丘状の傾斜を設けることで、皿に残りやすい汁や米といったものを「最後の1粒まで」すくえるように工夫した。プロトタイピングに3Dプリンタが頻繁に用いられるだけでなく、時には最終的なプロダクションにもそのまま3Dプリンタを使い、コーティングに漆や金箔などの金沢ならではの工芸を組み合わせることによって、新しい価値を模索している。こういった多角的な視点を持つ氏のデザイン能力は内外の評価が高く、名古屋のデザイナーTOSHI氏の正48面体アート作品「protcol(プロトコル)」やJUDY AND MARYのギタリスト・TAKUYA氏のギターを3Dプリントでリモデルするなど数多くのオファーがあるという。また最新のプロジェクトでは、アマダナやJINS!のデザインを手がけることで知られる鄭秀和氏のデザイン補佐を行っており、東南アジア向けのスマートフォンデザインや、すみだ水族館のペンギンプールのリニューアルを担当するなど、まさに今が旬のデザイナーだ。そして、この2人をバックで支えているのが小笠原氏とDMM社。同社は石川県内に国内最大級の3Dプリンタ工場を持っており、雪花の作品もここを経由して作られるものも多い。「DMMの3Dプリント事業参入で相場も非常に下がった」と非常に喜ぶ雪花のふたりだが、一方で小笠原氏も「実験的なパーツ発注ではなく、食器という実用的なプロダクトの発注がこんな高いレベルで来てくれるのは非常に嬉しい」とのこと。彼らとのやりとりはお互いに良い方向に作用しているようで、1カ月半足らずでプロトタイピングからプロダクトアウトまで仕上げてほしいとのクライアントの要望に応えられるのも、3Dプリントのおかげと話す。「単にうちのスタッフが徹夜して頑張っただけ」と小笠原氏は苦笑するが、小ロット生産を短期間で成し遂げられるのは3Dプリンタだからこそであり、雪花のふたりが氏の想定以上に速いペースで「3Dプリンタの実用性を急速に高めている」と評価している。○3Dプリントの潮流の行く先はさて、3Dプリントは、どこまで広がっていくのだろうか。原雄司氏はまず、素材よる進化を指摘した。従来はABSやPLAなどのいわゆるプラスチック系のフィラメント(材料)が主流だったが、カーボンやウッドチップなど新しい素材も急速に増えつつある。「銃器を作ることもそろそろ現実的になりますね」と原氏は冗談っぽく切り出すが、鉄や鋳物といった金属タイプのフィラメントも出てきている。次々に登場する新素材だが、これらの背景には「失われた技術を補完する」側面も強いという。具体的なジャンルとして、氏は古美術や建築物を挙げた。風化によって損傷が進み補修に手をつけられない物から、そもそも長い歴史の中で技術的継承が失われているものもあるとのこと。こういったものを3Dスキャナで丁寧にデジタルデータ化し、3Dプリンタで複製可能な環境を提供する。「文化遺産の複製、という点では周りからの反対も多いのですが」と氏は前置きしながらも、岡山県など積極的に複製へと着手している自治体もある。実は、近年文化財は盗難や観光客による破損行為などが深刻な問題となっており、これを解決する手段としての3Dプリンタが有力視されているそうだ。オリジナルは保管し、レプリカを展示することでリスクを回避できるほか、視覚障害者などが文化財に「直接触って」体験するなどの新しいサービスを提供することも可能になっている。こういったアプローチは日本に限った話ではない。毎年1月にラスベガスで行われるCES(コンシューマ・エレクトロニック・ショウ)でも数多くのアプローチが見られる。3Dプリンタによるプロトタイピングが安価に実現できるようになった現在、大企業よりも個人に近いベンチャー系のほうがフットワークも軽く、新しいイノベーションを次々に生み出している。そんな中で日本の企業も「元気なところが多い」と小笠原氏は指摘する。事実、氏の経営する企業のひとつであるCerevoも「Top Tech of CES 2015 award」のSports & Fitness部門を受賞したのを筆頭に、複数の日本企業がCES関連のアワードを受賞するなど「モノづくり大国ニッポン」の存在感は高まりを感じるものがあるという。原氏も「3Dプリンタのフィラメントにも砂糖を使った食品関連のプリントがでてきましたが、造形がドクロや昆虫などセンスのないものがほとんどです。こういった分野も日本の和菓子職人のセンスで十分に戦えるのではないかと思っています」と評するが、日本の「工芸」がモノづくりにかける影響の大きさは計り知れないことをあらためて知る機会となった。(氷川りそな)
2015年03月30日2011年に閉館した映画館「恵比寿ガーデンシネマ」が、名称を「YEBISU GARDEN CINEMA」と変更し、恵比寿ガーデンプレイス内にリニューアルオープンする。オープン日は3月28日。このたびリニューアルオープンする「YEBISU GARDEN CINEMA」は、2011年に閉館した恵比寿ガーデンシネマを超える文化芸術の情報発信を行うことを目的として開業する。館内は、デザイン家電「amadana」の元クリエイティブディレクターで、「HOTEL CLASKA」「ユナイテッド・シネマ豊洲」などを手がけた鄭秀和が率いる建築デザイン事務所「インテンショナリーズ」がデザイン。2スクリーンに合計280席を設け、シートにはカップホルダー付きのワイドタイプとラグジュアリータイプを採用。4Kデジタルプロジェクターと7.1ch サウンドにて上映可能な環境を備える。また、オープニング第1弾となる上映作品は、『ダラス・バイヤーズクラブ』で2014年アカデミー賞3冠を獲得した注目の監督・ジャン=マルク・ヴァレが手がけた『カフェ・ド・フロール』。そのほか、イザベル・ユペール主演の『間奏曲はパリで』(4月4日公開)、『ラスト5イヤーズ』、『MOMMY/マミー』(どちらも4月25日公開)、『ゼロの未来』(5月公開)といったラインナップとなっている。今後はアート系映画の上映のほか、演劇やミュージカル、ファッション、クラシックコンサートなどの「ライブビューイング」などの取り組みも行い、恵比寿ガーデンプレイスや施設内テナントが企画するアートイベントなどとも連動していくとのことだ。
2015年02月10日2008年、日韓合同公演『焼肉ドラゴン』の作・演出を手がけ、その年の名だたる演劇賞を総なめにした鄭義信。新国立劇場の財産演目として昨年も再演された『焼肉ドラゴン』に続き、鄭義信が再び演出も兼ね、同劇場に新作を書き下ろす。新作のタイトルは『パーマ屋スミレ』。3月5日(月)の初日に向けて奮闘する稽古場を、2月某日、訪ねた。作品は1965年、九州の炭鉱町で暮らす在日コリアンの炭鉱労働者とその家族の物語。ある日、炭鉱事故に巻き込まれ、訴訟を抱え必死に戦いながらも、石油へのエネルギー転換でやがて彼らが置き去りにされる日本の陰の歴史を描く。有明海を望む“アリラン峠”の集落のはずれにある「高山厚生理容所」には、元美容師の高山須美(南果歩)と再婚した張本成勲(松重豊)とその家族が住んでいる。貧しいながらも、須美は明るく騒がしく姉・初美(根岸季衣)や妹・春美(星野園美)らと力を合わせて暮らしていたが、炭鉱の爆発事故で成勲や春美の夫・大杉昌平(森下能幸)が一酸化炭素中毒患者になってしまう。彼女たちは生活を守るため、そして生き抜くために壮絶な戦いを始めて……。この日の稽古は第6場、物語がシリアスな方向に大きく展開する場面だ。餅をつき、須美と初美がリズミカルに丸めて振る舞うというシーンから始まり、本物のつきたての餅もスタッフから用意された。南と根岸が丁々発止のセリフのやりとりをしながらも、口の中にちぎった餅をポンポンと入れていく胸がすくような食べっぷりにそこかしこで笑いが起きる。台本自体が面白いため、演出をつけずに通しただけでも楽しく観られるのだが、ここからが“世界では2番目、アジアでは1番しつこい演出家”を自称する鄭義信の本領発揮。前述のシーンだけでも、餅をつく速度、炭鉱労働者・木下役の朴勝哲が餅をつく長さ、南が話す説明ゼリフの視線の置きどころや、根岸らしいアドリブのセリフの効果的な入れどころ、人の突き飛ばし方や突き飛ばす長さ、足の悪い成勲役の松重への歩き方指導と、細かい指摘は枚挙にいとまがない。自然な芝居の流れと間、そしてリアルな描写に徹底的にこだわり、俳優の無意識の動作をすべて生活に結びついた動作に変え、セリフと動作をしっかりと意味づける。そうした小さな指摘をひとつひとつ直すごとに、“アリラン峠”に暮らす人々の生活がビックリするほどの鮮やかさでより具体的に立ち上ってくるから不思議だ。大変なのはキャスト陣。つきたての餅という消えモノや多くの小道具を操るだけでもてんてこまいなのに、そこに鄭義信の微に入り細を穿つ演出が加わり、さらに芝居が変わる。第6場ほぼ出ずっぱりの南と根岸は、多くなるきっかけに少々頭を混乱させながらも必死に演出に食らいつく。そんな南にスタッフが、もう一度本物の餅を用意したほうがいいかと尋ねると「食べられるものは全部食べます!」とニッコリ。キャストのガッツと、スタッフ、鄭義信への全幅の信頼感がうかがえる瞬間だった。同作品は新国立劇場 小劇場にて、3月5日(月)から25日(日)まで上演。チケットは発売中。
2012年02月23日