私たちの身近にあり、元気を与えてくれる“お花”。美しい色といい香りで私たちをリフレッシュさせてくれますよね。今回は、どの花畑に出かけたいかにより「元気が出ないときの対処法」がわかる心理テストをご紹介します。Q.あなたは次のうちどの花畑に出かけたいですか?A:タンポポB:パンジーC:チューリップD:ネモフィラあなたはどれを選びましたか?さっそく結果を見てみましょう。この心理テストでわかるのは?「元気が出ないときの対処法」深層心理において“花畑”は、あなた自身がリフレッシュできて元気になれるシチュエーションを暗示。そして、出かけたいという気持ちは、自分で気分を切り替えるためのアクションを意味します。そのため選んだ選択肢から、「元気が出ない時の対処法」がわかるのです。A:「タンポポ」を選んだあなた…ポジティブな言葉で自己宣言をあなたはどちらかというと、自分の好きなことに黙々と没頭しがちなタイプではないでしょうか。そのため、自分のキャパシティを超えてアクティブに活動しすぎると「おもしろくない」「疲れた」といったネガティブな言葉がつい増えがちかも。自分が口にした言葉がきっかけで、ますます悪循環に陥ってしまう恐れがあります。苦手なものに対してもあえて「好き」と口に出すことで、だんだん好きだと思えるように変わっていくはず。元気を出したいときは、ポジティブで能動的な言葉を使うことを意識してみて。前向きな言葉に引っ張られて、心も自然と元気になっていくでしょう。B:「パンジー」を選んだあなた…努力の後にご褒美を設定するあなたは楽しいことが大好きな反面、やるべきことを後回しにしてしまいがちかもしれません。そうして問題を先送りにしていると、後ろめたい気持ちがどんどん増して、元気をなくしてしまう恐れがあるでしょう。そうならないためにも、ぜひモチベーションとなる“ご褒美”を設定してみて。自分を動かすためには、どんなご褒美を、どれだけ用意しておくかが重要です。自分の目の前にニンジンをぶら下げ、エサを追いかけるように自分を叱咤することで、いつの間にか元気になり、普段以上にパワーがみなぎってくるはず。C:「チューリップ」を選んだあなた…6割の努力で達成できる目標を立てるあなたには、人一倍強い上昇志向が備わっているよう。でも、高すぎる目標はそれ相応の努力が求められることもあり、途中で元気をなくし、くじけてしまうこともあるかもしれません。そこで重要なのが、目標設定の方法です。高すぎて気持ちが滅入らず、かつ、簡単すぎてやる気がしぼんでしまわないような、ちょうど中間の目標を掲げるのがポイント。目標はなるべく「手が届きそうで届かない」くらいのレベルを意識してみて。そうすれば、ゲームのように楽しみながら課題をクリアしていけるため、自然と元気が湧いてくるでしょう。D:「ネモフィラ」を選んだあなた…持ち物をレベルアップさせるあなたには、いつも完璧でありたいという思いがあるようです。ただし完璧主義であるがゆえに、理想と現実とのギャップを感じて元気をなくしてしまうこともあるのでは?そんなあなたが元気を取り戻すのに最適なのが、持ち物をランクアップさせること。元気ができないときや、やる気が湧いてこないときは、ぜひ洋服や小物を一新してみて。普段より少しだけリッチなものや、機能性に優れたアイテムを使えば、自然と元気がみなぎってくるでしょう。おわりに自分で自分を元気づけられる人は、ストレス耐性が高くなり、幸福度が高い人生を送ることができるもの。自分に合った「元気が出ないときの対処法」を知っておけば、きっとあなたにとって心強い“応援団”になってくれるはずですよ。脇田尚揮/占い・心理テストクリエーター株式会社ヒューマン・ライフ出版代表取締役社長、企業占術鑑定士、大学講師、秀心寺住職。©ユキ/のはらりか/PIXTA(ピクスタ)文・脇田尚揮
2023年04月21日フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『conne』(コンネ)のステークフリットとガレットです。街に愛されて7年になる定食と甘いものの店、都立大学『Little chef』のオーナーシェフ・田中雪絵さんは、店のあり方について真摯に葛藤し続けてきた人なのだと思う。彼女の作る丁寧で心まで染み込むような食事やデザートは、予約なしでは確実でないほどの人気を誇るが、彼女が夜の部として2月からスタートした『conne』は、今は予約を取らない方針だ。「いつでもあの店に行けば、なんか美味しいものが食べられる、ちょっといい思いができる。そんな店でありたいんです」と雪絵さん。仕事終わりでヘトヘトの夜、何が食べたいかも思い浮かばないほど疲れていても、あの店なら……。パワフルなステークフリットがある。自家製のアイスクリームとワインがある。しっかり食事をしてもいいし、デザートだけいただいてもいい。フレンチの経験もある雪絵さんのシンプルで直球なビストロ料理は、心にそっと火を灯すみたいに輝いて、帰る頃にはまた明日も頑張ろうと思える。彼女はそんな景色が好きなのだと思う。彼女自身がそういう飲食の場に、救われてきたのだと思う。街に店が開く。その店の数だけ、無数の思惑と願いがある。『conne』がもたらしてくれるのは、大袈裟に言えば、生活の肯定だ。楽しいばかりではない人生を、それでもやっぱり今日はいい日だったと思えるように。そんな時間を分かちあうために。きっと、店は在る。ビフテックにフレンチフライの付け合わせ(¥2,900~)、本日のガレット(¥1,200~)とグラスワイン(¥1,000~)。本日のガレットは砂糖とバター。ビフテックの付け合わせはフレンチフライかサラダから選べる。「ガレットは本当に大好きで。お菓子と食事の間のような存在がたまらないんです」と雪絵さん。conne東京都目黒区平町1‐23‐18 マヌワール都立大103TEL:03・6421・217918:30~22:00(21:00LO)火・水・木曜休詳細はインスタグラム(@conne.lc34)で。ひらの・さきこ1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)など。※『anan』2023年4月12日号より。写真・清水奈緒取材、文・平野紗季子(by anan編集部)
2023年04月05日小さい子供を連れての外食は、想像以上に大変。だからこそ、周りのやさしさに触れることもあります。これはInstagramに育児漫画を投稿する、hanemi(hanma_ma)さんが、反抗期の息子とイヤイヤ期の娘を連れて、インドカレー屋さんで食事をしていた時のこと。子供たちがカレーを食べ散らかす、テーブルに上がるなど、悲惨な状態になってしまい、早く店を出ようとしたのですが…。お会計をすると200円足りない事態が発生。ただでさえ、周りに迷惑をかけてしまった焦りと悲しみでいっぱいでしたが、さらに窮地に追い込まれます。確実に怒られると思いながら、半泣き状態で「お金を取りに帰ります」と伝えると、外国人の店員さんが粋なはからいを…!さりげなくお会計を打ち直し、「ガンバッテネ」とねぎらいの言葉をかけてくれたのでした。hanemiさんはやさしい配慮に完全ノックアウト、人目をはばからずボロボロと泣いてしまったのだそう。心温まる投稿のコメント欄には、共感の声が寄せられていました「人のやさしさがしみる〜!」「外食は1人でも連れて行くの大変なのに、2人でその状態は泣きます」「泣けるね…」以来、hanemiさんはこのインドカレー屋さんをよく利用しているそう。こんな風にやさしくされたら、お返しをするためにも通わずにはいられませんよね。[文・構成/grape編集部]
2023年03月28日烏丸【わかしろ】烏丸御池【割烹市川】祇園四条【あお樹】清水五条【六条河原院讃】烏丸【LafamilleMorinaga】烏丸【わかしろ】天然鯛の旨みを余すことなく。うどやスナップえんどうなどの春野菜と共に料理人との会話も楽しい広めのカウンター席烏丸駅にほど近い場所にある本格小料理店【わかしろ】。「今しか食べられない味を大切にしたい」と考える親子二代の料理人が、京都らしい季節の素材を使用。春は山菜、夏は鱧、秋は土瓶蒸し、冬はかぶら蒸しなど、鰹と昆布から丁寧に抽出するだしで味わう料理を提供しています。鯛の身・皮・肝・鯛の子まで丸ごと使った『天然鯛』季節の野菜と共にいただく新鮮なお造りは、自慢の逸品。鯛の身、皮、鯛の子の塩辛まで丸ごと使った『天然鯛』には、醤油漬けをしたワサビの茎や、うるい・こごみ・うど・スナップエンドウなど春の味覚もたっぷりと盛り込まれています。鯛肝を裏ごしした肝醤油が味わいを深めます。わかしろ【エリア】四条烏丸/烏丸御池【ジャンル】和食【ランチ平均予算】1500円【ディナー平均予算】5500円【アクセス】烏丸駅 徒歩5分烏丸御池【割烹市川】採れたての新鮮な筍を、黒毛和牛と共に「しゃぶしゃぶ」で旬を味わえる割烹料理店京都烏丸に佇む【割烹市川】。カウンター席で臨場感あふれる調理風景を目で楽しみ、その味わいに舌鼓を打つ、そんな割烹ならではの醍醐味を存分に満喫することができます。そしてメインとなる旬の食材はもちろん、「だし」にもこだわる同店。厳選された真昆布から抽出した旨みが食材の個性を引き出し、料理の味わいを深めます。『筍と黒毛和牛のしゃぶしゃぶ』京都と言えば筍の名産地です。採れたての新鮮な筍は柔らかくて、えぐみも少ない上に、香りも非常に豊かです。こちらではだしで炊いたのち、上質な黒毛和牛と共に「しゃぶしゃぶ」で味わうことができます。柔らかな筍と上質な肉の旨みが、ふんわりと口いっぱいに広がる贅沢な時間をどうぞ。割烹市川【エリア】京都御所/西陣【ジャンル】和食【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】9000円【アクセス】烏丸御池駅 徒歩5分祇園四条【あお樹】特製のだしで炊き上げる、ほたるいかの釜めしを味わうカウンター席でゆったりと京都ならではのお茶屋が立ち並ぶ京都随一の花街・宮川町の路地裏に佇む日本料理店【あお樹】。数ある漁港より厳選した新鮮な魚介類と、京野菜が融合した極上の逸品を堪能することができます。店内は古民家をリノベーションした、木の温もりを感じる空間。都会の喧騒から離れてゆっくりと過ごすことができます。『ほたるいかの炊き込みご飯』同店の名物の一つとも言えるのが季節の食材を使用した釜めし。春には、春の味覚の代表格とも言えるほたるいかの釜めしがスタンバイしています。旨みの強い新鮮なほたるいかとご飯をこだわりのだしでふっくらと炊きあげた滋味深い味わいです。京都の春の訪れを感じてみてはいかがでしょうか。あお樹【エリア】祇園【ジャンル】日本料理・懐石・会席【ランチ平均予算】2000円【ディナー平均予算】8000円【アクセス】祇園四条駅 徒歩10分清水五条【六条河原院讃】心和む、蛤と利尻昆布の出汁が織りなすハーモニー洗練された和の空間住宅地の中に佇む隠れ家的な懐石料理店【六条河原院讃】。「源氏物語」のモデルとも言われる「源融(みなもとのとおる)」が造り上げた庭「六条河原院」を、店名に冠しています。京都の四季の移ろいを、走り、旬、そして名残を感じていただけるよう、骨董から現代の器にのせて、物語性のある料理を提供しています。五感で楽しめる一皿『蛤の椀』旬の食材が主役となる椀物では、春は『蛤の椀』が楽しめます。利尻昆布でとっただしが蛤の味わいを引き出した上品な味わい。木の芽をアクセントに効かせた見た目にも美しい、五感で楽しめる逸品です。料理を引き立たせるお酒にもこだわり、絶品料理とのマリアージュを堪能できる、とっておの一軒です。六条河原院讃【エリア】七条/丹波口【ジャンル】日本料理・懐石・会席【ランチ平均予算】11000円【ディナー平均予算】22000円【アクセス】清水五条駅 徒歩3分烏丸【LafamilleMorinaga】ふっくらしたサワラと、ふわりと立ちのぼる野菜の香りが、春の訪れを告げる季節の移ろいを表現した日々のフレンチコースを提供築80年の京町家を使用したフレンチレストラン【LafamilleMorinaga】。フランス語で「森永さんの家族」という店名通り、店主の心づかいを随所に感じるあたたかなレストランです。新鮮な旬の素材を用いて、それぞれの持ち味を活かしきるよう、絶妙な火入れに昆布だしや醤油、京野菜など和のものも取り入れた調理で、その日だけしか味わえないコース料理を提供しています。『サワラの腹身ミキュイ炙り焼き、塩レモンと冷燻オイル』同店の春のオススメ『サワラの腹身ミキュイ炙り焼き、塩レモンと冷燻オイル』は、腹身を炙りオリーブ油を塗りつつオーブンで火入れした一皿。ガラスドームで香りを閉じ込め、大原の野菜を添えています。特別感がありながらどこかホッとする味わいも森永流フレンチの魅力です。LafamilleMorinaga【エリア】四条烏丸/烏丸御池【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】6500円【ディナー平均予算】12000円【アクセス】烏丸駅 徒歩10分※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報や営業時間は店舗にご確認ください。
2023年03月18日人間国宝などの器で美食を食べる――。佐賀県でおこなわれた、期間限定のプレミアムレストランの様子をお伝えします。人間国宝の器で食べる!?佐賀県と言えば、焼物の里です。「伊万里焼」「有田焼」「唐津焼」などはみなさんもご存知かもしれません。いずれも豊臣秀吉の時代から佐賀県で作られてきた陶磁器です。「すばらしい器なんだろうなぁ、でも自分との接点はないだろうな」なんて思っていたところ、驚きのイベントを知ります。その名も、「美術館(MUSEUM)に飾るような人間国宝などの器を使って(USE)、佐賀の美食を楽しむ、期間限定のプレミアムレストラン“USEUM SAGA(ユージアム サガ)”」。こんな機会はめったにない!とよろこび勇んで参加することにしました。入り口からすでにワクワクの体験が始まっています。食材もメンバーもプレミアム過ぎ!プレミアムなのは器だけはありません。料理は日本のトップシェフによるコラボレーションで提供されます。今回の料理は、ミシュランも獲得した地元佐賀のレストラン「Kaji synergy restaurant」の梶原大輔シェフと、岩手県遠野市で予約のとれない人気店「とおの屋 要」を営む佐々木要太郎シェフが担当します。互いへのリスペクトから、今回のコラボレーションが実現。左が梶原シェフ、右が佐々木シェフふだんから地域らしさをお皿の上に表現しているという点では近い、そして九州と東北という距離としては遠い2人が、いったいどのような料理を生み出すのか、興味しんしんです。おいしい!けれどこれはなに?いよいよ料理が並び始めます。最初の一皿目は、「ニシユタカ/武雄イノシシのジャーキーとコンソメ」。真っ白な皿の上に、乾燥させた肉とボール状のものとコンソメスープ。1皿目ニシユタカ/武雄イノシシのジャーキーとコンソメ李荘窯業所ボール状のものは、口に含んでビックリのとても複雑で芳醇な味わい。これはニシユタカという品種のジャガイモに大根・人参・ごぼうの味噌漬けで風味付けをした一品で、発酵を得意とする佐々木シェフがふだんは「芋サラ」という名前で提供しているシグネチャーだそう。それに添えられるジャーキーは、梶原シェフが地元で獲れたイノシシを燻したもの。隅々までイノシシを使い尽くすべく、その骨を使ってコンソメスープを引いてあります。野性味と滋味が、奥からどんどん湧いてきます。今回の趣向のカケラが見えてきました。皿の上にまるで謎掛けのように料理が並び、わたしたちはそれを、耳から得たヒントを頼りに、目と、舌と、頭を使って縦横無尽に探索するというもののようです。これは楽しい!五感を使った大冒険全11皿の中から、特に印象に残ったお皿をピックアップしてご紹介します。ちなみに今回は東京からやってきたソムリエの大越基裕さんが、すべての料理にアルコールとノンアルコールをペアリングさせていて、料理とのマリアージュも楽しめます。口が忙しい!けどうれしい!3皿目唐津産真鯵/多久野生高菜文祥窯フレッシュな鯵のタルタルに、野生の高菜を焦げる寸前まで焼いて合わせた一皿。苦味と旨味が合わさって、大人な風味。そこに合わせるアルコールは、米全部を使い切りたいと、佐々木シェフが醸造している米ぬかの酒。米ぬかまで一緒に発酵させることで、日本酒にはない酸味が加わり、さらに料理に奥行きを与えています。8皿目武雄イノシシ/蕪の葉/仏手柑弓野窯この青い皿は、まさに今回のイベントを知るきっかけともなった、人間国宝である弓野窯・中島宏さんの作品。「中島ブルー」として多くの人を魅了する青磁に、イノシシの茶色が映えて、コントラストが美しい一皿です。同じテーブルの器に詳しい方から、「中島さんのお皿で食事ができるなんて、ありえませんよ!」と教えてもらい、その一生に一度かもしれないよろこびを堪能。もちろん緊張もしましたが、お皿そのものからは柔和な優しさを感じました。シェフが丹精込めた料理を盛られて、お皿もなんだかうれしそう。イノシシの上には、仏手柑という柑橘を刻んだものが添えられています。岩手からやってきた佐々木シェフが、佐賀の柑橘類の豊富さに驚き、これを酸味として使いたい!という思いから生まれたアイデアだそう。まるでハーブのようで、オリエンタルな風味を加えています。辺境はいま最前線かもしれないこうして、美食と旨い酒と端正な器と戯れた3時間あまり。一皿ごとに味わい、考え、尋ねてをくりかえして、おなかも頭もいっぱい!そして、このイベントの中に、いろいろなアイデアの種が隠れているような気がしてきました。例えば、土地の特性に気づくこと。岩手からやってきた佐々木シェフは、「佐賀にやってきて、冬なのに食材が溢れていることに驚いた」と話し、見つけたものの一つである柑橘を、酸味として自分の料理に取り込みました。一方で梶原シェフは「ふだん新鮮な食材に恵まれているからこそ、佐々木シェフが本来保存のためだった発酵を、自身の料理の最大の特徴にしているところがすごい」と、その力を借りていました。距離があるからこそ、互いの土地のいいところが見つかったのかもしれません。また、足元の歴史を見直すこと。おいしい食材は他の地域でも見つかるかもしれませんが、豊かな陶磁器の文化はここ佐賀にしかない代えがたいものです。そこに敬意を払うことで「自分たちらしさ」を形作っているのだと感じました。お客さんの顔から、どれだけエキサイティングな試みだったかが伝わります。同時に、世界のトレンドにも敏感であること。2人のシェフは、食材に対してこれまでの単なる「贅沢」とは異なるスタンスをとっていました。生産者にこだわって作ってもらったものと一緒に庭で偶然見つけたものを使ったり、廃棄されるはずの骨やアラからぎゅぎゅっと旨味を引き出したり。軽やかさと同時に哲学を感じて、その場に参加していることがうれしくなるようなイベントでした。こんなにおもしろいことが、いま佐賀では起きています。そして「USEUM SAGA」はまだまだ続きます。ぜひ次のチャンスには、五感をしっかり鍛えて、みなさんも参加してみてください。USEUM SAGA
2023年03月09日フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『Oscar(オスカー)』のヴィーガンアメリカンチャイニーズです。アメリカに留学していた頃、モールに行ったらピザか中華、お腹がすけばピザか中華のデリバリー、という感じでとにかくピザと中華を食べまくっていた。アメリカンチャイニーズは本場の中国料理とは違う独自の進化を遂げていて、何を食べてもギラギラと味が濃く油っぽく、いつも何かに飢えているユースの胃袋に突き刺さる美味しさだった。昨年末、下北沢に登場した『Oscar』は、アメリカンチャイニーズの深き理解者である『PIZZA SLICE』のオーナー・猿丸浩基さんが代表を務めるダイナーだ。猿丸さんがピザ修業でアメリカに住んでいた時めちゃくちゃお世話になったのがアメリカンチャイニーズで、いつか日本でもやりたいと何年も構想を温めてきたという。店内のデザインから、チャオメン(焼きそば)のいい意味でもっさりした食感まで、自身の思い入れと愛情が店の細部に宿っているのを感じる。しかし元来のアメリカンチャイニーズとの決定的な違いがある。それは、オールヴィーガンであること。甘辛塩(じょ)っぱいの大定番・ジェネラル・ツォーズ“チキン”も、永遠のアイドル・“ビーフ”&ブロッコリーもメイドインヴィーガン。まさかと思うほどの肉々しさは、代替肉などの技術力の高さはもちろん、レシピ開発の試行錯誤の賜物だ。ヴィーガンといえばヘルシー。そんなイメージを打ち破る、ヴィーガンなのにジャンクでハイテンションな新しいダイナーの形がここにある。ランチプラッター(¥1,200)は、サイド1種またはハーフ&ハーフ、メイン2種、ソフトドリンク1杯を選ぶ。写真はサイドがハーフ&ハーフで、手前から左回りに、チャオメン、“ビーフ”&ブロッコリー、フライドライス、ジェネラル・ツォーズ“チキン”。実はカクテルも充実な『Oscar』。ピンクレモネードマルゲリータ(¥700)でカラフルに乾杯。現在、17:00~19:00にアルコール全品¥500となるハッピーアワーを実施中(終了未定)。Oscar American Chinese東京都世田谷区代田2‐36‐15BONUS TRACK内TEL:03・6823・749612:00~23:00(22:00LO)不定休詳細はインスタグラム(@oscaramericanchinese)で。ひらの・さきこ1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)など。※『anan』2023年3月15日号より。写真・清水奈緒取材、文・平野紗季子(by anan編集部)
2023年03月08日「一緒に食事をしないか?」同僚が仕事終わりに、奇妙な提案をしてきた。この辺境の職場には変わり者が多いが、この同僚は格別だ。「それはどういう意味か?私の栄養摂取のタイミング、構成、摂取量も、あなたとは大きく違うはずだが」「地球人の食事、特に“レストラン”での食事という文化を再現、体験してみようと考えた。二人一緒だと、より多くの発見に富んだ体験ができると推測する」私たち調査団は、恒星標準時間で数万年前のいっとき、この辺境惑星を支配した生物を“地球人”と呼んでいる。“地球”は彼らの言語でこの惑星の名前で、絶滅生命体の社会・文化研究を専門とするこの同僚が最初に使い始めた。地球人が彼らの文明について多くの情報を残そうとした痕跡はあるが、ほとんどは失われ、彼ら自身の遺伝情報すら、すべては解明されていない。しかし先ごろ食事にまつわる多くの情報の断片が見つかり、復元された。地球人は家族のほかに“友人”、“恋人”といった独特の関係性を築く上で、栄養摂取の時間を利用したらしい。時には自宅ではなく“レストラン”――栄養を様々な形にして供し、その対価として通貨を得る、商業の一形態と推測――を利用したようで、同僚はこの発見に多大な関心を寄せている。「“レストラン”での食事は同空間での摂取と認識する。健康への影響は大丈夫なのか」「食事の前後に精密検査を行う。栄養の内容も一部復元情報から生成した素材を使用するが、私たちの体への影響を事前に検査してある。二人ずつで問題が生じなければ、ゆくゆくは複数人での実験も視野に入れている」私たちの星系では未知の病原菌が頻繁に蔓延するため、栄養摂取、激しい運動、排泄といった体液が多く飛散する行為を同空間で行うことは忌避されている。免疫遺伝子を近しくする者とも、一定の介助が必要な幼少期以降は滅多にそのような行為を共にしない。躊躇いはあったが、私は同僚の提案に応じることにした。実験への警戒心より、科学者としての好奇心が優った。復元された“レストラン”には予め同僚から教示された通り、地球の食事道具が並んでいた。空間いっぱいに不思議な“音楽”なるものが響き、同じ装飾をつけて “給仕”となった整備マシンによって、私たちの前に最初の“グラス”と“皿”が運ばれてきた。「ワインでございます」「海の幸のカルパッチョでございます」“ワイン”は一口舐めると私たちが使用する薬品と似たような味がした。しかし口の奥で嗅いだことのない、だが決して不快ではない香りが膨らみ、舌を包む感覚がある。「地球人は数種の果物や花の香りが混ざったものと形容していたようだ」「原料自体は単種の果物と認識しているが」「そうだ。たった一種類の果物を、他の生物の手を借りながら、驚くべき手間と時間をかけてこの液体に変容させていた」もう一つの皿の中身は非加熱の肉をとりどりの植物と一緒に無秩序に並べた上に、液体状の何かをかけたもののようだった。半信半疑で口に入れると冷たく奇妙な食感と香り、続いて形容し難い味の層が口中に広がった。「植物由来の調味料を、複数使っているのか」「切る以上の調理をしていない水生動物と、手間をかけて抽出した濃度の高い陸生植物由来の調味料を組み合わせている。面白いと思わないか」「なぜこんな余計な手間をかける?食材の無駄も多すぎるのでは?」私は感心するより呆れた。地球とはそんな無駄が許されるほど食べ物が溢れかえる星だったのだろうか。私たちの星では同盟星の全生命体の健康を保つべく、栄養分の生産から摂取までの工程すべてに無駄がないよう管理している。同僚はまるで本物の地球人のように、“レストラン”を楽しんでいるように見えた。地球の奇妙な道具の扱いも堂に入っている。次に“給仕”が運んできたのは「かぼちゃのポタージュ」と「牛フィレステーキの赤ワインソース」だった。同僚によれば、“牛”なる陸生動物の復元は叶わなかったので、私たちが普段摂取するXXXという動物の遺伝操作をして作り上げた肉を使ったらしい。立ち上る香りもXXXに似ているが、焼き方のせいか、ソースのせいか、いつもより強く食欲が刺激される。「地球の味がどこまで再現できているのかは不明だが、私たちの好みに近くないか?」「XXXより柔らかいのは調理法にもよるのか……このソースは最初に飲んだ“ワイン”とはまったく味が違うようだが」「肉の柔らかさは特定の部位だけを切り出しているから。ソースのワインは、素材は同じ果物でも形種と製法が違う。こちらは果物を丸ごと使うが、最初に飲んだものは皮や種を取り除く。さらにこのソースは香りの強い植物と、“牛”の骨のエキスや乳から生成した調味料を使っている」ほんのりと甘みのあるスープにも“牛”の乳は活用されているのだという。素材の無駄が多いと思ったが、必ずしもそうではないらしい。最後には「チョコレートムースとシトラスソルベ」という色鮮やかで小さな一皿と、熱い「コーヒー」が供された。遺伝操作をして復元した数種の植物の種、豆、実が、甘み、酸味、苦味となって私の中で混ざり合う。栄養の温度や味の違いは素材と製法の違いによりたまたま生じたものと考えていたが、この最後の皿で、すべて計算されたものなのだと気付いた。「一つ一つの皿の見た目、味、香り、温度や食感、咀嚼音の違いまでも楽しむ……彼らは“レストラン”の手間隙かけた食事で体の内外の感覚器官を動員させ、それを同席した者同士で共有することを目指した、というのが私の仮説だ」「感覚を共有することで関係性を築くのは、私たちの祖先と同じだな」「地球人は私たちのような同調能力を持っていなかったが故に、意思疎通の手段が原始的な言語や所作に限られていた。性別や生育環境から生じる個体差もあった。そこに相手を知りたい、近付きたいという強烈な欲求が生じ、同空間での食事によって各種感覚を共有できたとき、喜びを感じた――とは想像できないだろうか」「あなたは本当に想像力が豊かだ」「この“レストラン”実験で、あなたにも地球人の面白さが伝わるといいのだが」かつてこの星の“レストラン”で、手間隙かけて加工された栄養を通じて、より互いへ近付こうとした生物がいた。彼らにとってその行為は、多少の健康上のリスクを冒してでも行う価値があった。本当に関係性を築けたのかは不明だが、そのようにして、彼らは確かに食べ、共に生きていた。はるか遠い過去に滅んでしまった生命のひたむきさを、私はこの奇妙な同僚を前にして突如、痛切に感じた。「私はあなたに少し同調しかけているようだ。これも“レストラン”のせいか」著者プロフィール白尾悠しらお・はるか2017年「アクロス・ザ・ユニバース」で第16回「女による女のためのR-18文学賞」大賞・読者賞をダブル受賞。同作を収録した『いまは、空しか見えない』でデビュー。他の著書にNHK-Eテレ『理想的本箱』で紹介され話題を呼んだ『サード・キッチン』、実在の高齢者劇団をモチーフにした『ゴールドサンセット』がある。白尾さんオススメのお店CAFE&MORE MIYANO-YU【エリア】日暮里【ジャンル】カフェ【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】-【アクセス】根津駅
2023年02月21日老舗青果仲卸が「青果を楽しむためのレストラン」をオープン1階「DEK KITCHEN」は旬の青果物を楽しむカジュアルキッキン2階「DEK DINING」は昼夜コースを提供(今春オープン予定)老舗青果仲卸が始めた、青果を楽しむためのレストラン表参道駅から徒歩4分、グラッセリア青山にオープン2024年に創業100周年を迎える老舗仲卸の「船昌」。次の100年に向け、新たなプロジェクトとしてスタートしたのが、レストラン事業でした。「2~3週間で旬の青果は変わる。そんな旬の青果が身近にある暮らしを提供したい」との思いから【DEK 青山】が誕生しました。入口には果物や野菜のショーケースここには旬の果物や野菜が並ぶブランド1号店となる【DEK 青山】では、東洋一の青果物取扱量を誇る大田市場から船昌の腕利きバイヤーが食材を厳選。それらを使い、LABの専属シェフやパティシエ、ソムリエ達が日夜メニューを研究し、提供します。1階「DEK KITCHEN」旬な青果を楽しむカジュアルキッキンフルオープンで一体感のあるテラス席や、清潔感のあるタイルが印象的なアイランドキッチンが明るく開放的な空間を演出お店は2フロア構成で、1階は友人や家族連れ、お一人でも気軽に楽しめるカジュアルキッチン「DEK KITCHEN」。青果そのものを楽しむメニューを展開します。提供する料理は、新鮮な食材ならではの素材の味を活かした『DEK サラダ』やスイーツ、パスタなど、カジュアルに楽しめるメニューをラインナップ。また、入り口には目からも旬を感じられるようにと青果のディスプレイを設置するなど、“魅せる”工夫もちらほら。では、さっそく「DEK KITCHEN」で提供されるメニューをご紹介します!『DEKサラダ 生ハム添え』1,700円/【DEK 青山】のシグニチャーメニュー。レタスや3種の旬野菜のマリネ、自家製ピクルス、季節の果物など、一皿で様々な味が楽しめるサラダ『DEKキッシュプレート』1,500 円/季節野菜をふんだんに使用した、具だくさんの自家製キッシュ。野菜たっぷりのミネストローネ付き『DEK オリジナルピクルス』600円/季節の野菜を使用してつくる、DEKオリジナルの和風ピクルス。旬な食材を楽しめ、彩も鮮やか『静岡県産クラウンメロンと生ハム』1,800円/静岡県産クラウンメロンと切り立ての生ハムを。ジューシーで甘いクラウンメロンとフレッシュな塩気の生ハムがマッチ『アボカドトースト 生ハム添え』1,600円/もっちりとした食感のパンの上にはアボカドを、その横には切りたての生ハムを添えたアボカドトースト『アサイーグラノーラ』1,400円(フルサイズ)/アサイーに沖縄県産バナナと季節の果物、自家製メープルグラノーラをトッピング『スパイシービーフカレー 焼き野菜添え』1,800円/季節野菜のグリルを添えた、徳島県産阿波牛入りのスパイシーなビーフカレー※十五穀米を使用『季節野菜のグリル』1,700円/旬の季節野菜を使用した炭火焼グリル。好みでホットソースとあわせてもOK『阿波牛のグリル』3,200円/徳島県産阿波牛の希少部位・いちぼ(元)を使った炭火焼グリル。自家製醤油オニオンソースをかけていただきます『苺“とちあいか”のパフェ』1,900円/栃木県産「とちあいか」を使用したパフェ。香りはまろやかで実はしまっており、甘味と酸味のバランスがよい苺です『沖縄県産ティダパインのパンケーキ』1,600円/沖縄県産パイナップルを使用した、自家製ソースとパイナップルをトッピングした DEK 特製パンケーキ『苺“とちあいか”とブラータチーズ』1,800円/栃木県産「とちあいか」をたっぷりと使用。新鮮なブラータチーズとの相性も抜群です2階「DEK DINING」素材を活かした調理法で、昼夜コースを提供(今春オープン予定)船のデッキをイメージしたという店内。まるで船旅に出ているような気分になります2階の「DEK DINING」は、クルーズダイニング=船卓をイメージした落ち着いた空間。中央にはシェフズキッチンがあり、目でも楽しみつつ、料理を味わうことができます。提供する料理は、「ジャンルにはこだわらず、料理から四季が感じられることを大切にしたい」とのこと。日本の青果の魅力を最大限に活かした料理をランチ・ディナーともにフルコースで味わえます。ウッディなデッキや丸窓が目を引く店内個室も完備しているので大切な食事会にも利用可能1階の「DEK KITCHEN」は2月10日にオープンしており、2階の「DEK KITCHEN」は2023年春にオープン予定なので、まずは1階でカジュアルに旬の青果を楽しんでみてください。▽営業時間1階「DEK KITCHEN」営業時間:8時~22時(フードL.O.21:00、ドリンクL.O.21:30)モーニング・ランチ・カフェ・ディナーを提供2階「DEK DINING」営業時間:未定ランチコース・ディナーコースを提供(価格:ランチコース 5,000円~、ディナーコース 1万円~を予定、8品程度を予定)※2階「DEK DINING」のみ、今春オープン予定DEK 青山【エリア】六本木【ジャンル】創作料理【ランチ平均予算】2,000~3,000【ディナー平均予算】-【アクセス】表参道駅
2023年02月16日お酒をこよなく愛するアナウンサー・宇賀なつみさんの「宇賀なつみのほろ酔いおつまみ」。今回は『シターラ 青山店』のバターチキンカレーとチーズナンです。宇賀(以下U):年末年始にインドに旅行してきまして。完全にカレーに取り憑かれてしまったので、今回はカレーです(笑)。私、南よりも北インド系のドロッとしたカレーが好きなので、王道のバターチキンカレーとチーズナンを選びました!編集K(以下K):カレーとは思えないお上品なビジュアル!U:そうなの。私は、品のいい店内の感じもお気に入りで。ちょっとした会食にもいいし、そういう場でカレーっていいじゃない?和むっていうか。シェアもできますし。バターチキンカレーも甘~いのじゃなくて、程よくピリッと辛い。あと、チーズナンは大事そうに白い布に包まれてて…(笑)。ほぼチーズなんじゃないかってぐらいに入ってるし、最高。どれも美味しいです。K:インドではどういう旅を?U:カレー食べて、お酒飲んで、遺跡巡って…。物価が安すぎてびっくりしました。いいレストランで、たらふく食べても「3000円!?」みたいな。なかでも、マトンカレーが忘れられないんですけど、今回はみんな大好きバターチキンで(笑)。あ、あとインドのワインも美味しかったんですよね。ぜひ日本でも流通してほしい!今回はインドビールを合わせましたが、麦が強くて美味しい。やっぱり現地のビールと一緒に楽しまないとね!バター・チキン¥1,750。チーズナン¥780。キングフィッシャー(瓶ビール)¥850。シターラ 青山店東京都港区南青山5‐7‐17小原流会館B1TEL:03・5766・1702ランチ11:30~15:00(14:30LO)、ディナー18:00 ~ 22:00(21:00LO)毎月最終日曜休宇賀なつみお酒をこよなく愛するアナウンサー。自身初のエッセイ本『じゆうがたび』(幻冬舎)が2月22日に発売予定。編集K入社4年目。最近、ペペロンチーノで乳化させることに初めて成功しました。※『anan』2023年2月22日号より。写真・清水奈緒(by anan編集部)
2023年02月15日フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『caillou(カイユ)』のアラカルト料理です。ラ ターブル ドゥ ジョエル・ロブション、アサヒナガストロノーム、フランスの国際料理コンクールでの優勝経験。そんな輝かしき経歴の料理人が満を持して店を開く。ならばどれだけハードルが高くとも異論を唱える者はいないだろう。しかし、シェフの安達晃一さんは、開かれた店の在り方を選んだ。西小山『caillou』の食体験はどこまでも自由だ。店に着くなり「メニュー選びはこちらで」と促され、キッチン前のオープンショーケースに案内される。パテ・アン・クルートにフォアグラのテリーヌ、牡蠣にトリッパ……。マルシェで感じるような幸福な目移りが止まらない中、テリーヌは50gからでも、トリッパはトマト煮でもソテーでも、と提案してくださる。ポーションも仕立てさえも自由自在。そんなわがままいいんですか。「いいんです。僕はフレンチの難しさを取り払いたい。知らない料理でもおいしそうだと思ったらトライしてほしい。フレンチの楽しさを伝えたいんです」。フォーマットは軽やかながら、ひとたび食せば技術に裏打ちされた強靭なおいしさが胃袋を貫く。これがフランス料理の喜びか。安達さんが伝えるフレンチの豊かさと底力には、食べ慣れた人もそうでない人も、誰しもハッとさせられるのだろう。『caillou』、それは大いなる食文化の入り口。その先に進んでみたくて、きっとこの店に何度だって足が向く。写真右上から逆時計回りに、玉ねぎのキャラメリゼにじゃがいもが活きた、じゃがいものタルト(1切れ1/4サイズ¥1,650)。リ・ド・ヴォーのムニエル(100g¥3,080)の貫禄。グラスワインは¥990~。仔牛のレバーや豚肉の喉肉、キノコのソテー等で作るパテ・アン・クルート(100g¥1,848)。身近な食材を技術でおいしくしてこそ料理。caillou東京都目黒区原町1‐7‐9ドゥーエ西小山1FTEL:03・6452・298517:00~23:00(22:00LO)日・月曜休詳細はインスタグラム(caillou_nishikoyama)で。※『anan』2023年2月15日号より。写真・清水奈緒取材、文・平野紗季子(by anan編集部)
2023年02月08日広尾【ケンゾーエステイトワイナリー広尾店】中目黒【リストランテシンティッラ】銀座【チーズ&ワインレストラン村瀬】原宿【ハンガリーワインダイニングAZFinom】六本木【重慶飯店麻布賓館】広尾【ケンゾーエステイトワイナリー広尾店】ワインと料理のマリアージュが楽しめるワイナリー直営店茨城県土浦市【久松農園】で採れた野菜を使った『久松農園野菜 バーニャカウダ』広尾駅から徒歩6分の場所にある【ケンゾーエステイトワイナリー広尾店】。ここは、実業家の辻本憲三氏が、アメリカのカリフォルニア州、ナパ・ヴァレーで立ち上げたワイナリー【ケンゾーエステイトワイナリー】の第1号直営店。それだけに、世界的評価の高いワインと上質な料理が味わえます。広々としたテーブル席のほかにカウンター席もワインの味わいを引き立てることをテーマに、素材にもこだわった料理を提供。色とりどりの野菜が味わえる『久松農園野菜 バーニャカウダ』など、露地栽培された有機野菜をはじめ、旬の食材を取り入れてシンプルな味付けで仕上げた料理はどれも、ワインとの相性抜群です。ケンゾーエステイトワイナリー広尾店【エリア】広尾【ジャンル】ワインバー【ランチ平均予算】5000円【ディナー平均予算】15000円【アクセス】広尾駅 徒歩6分中目黒【リストランテシンティッラ】伝統と革新が調和した料理をワインとともに客の目の前でトリュフを削って仕上げる『香りを包み込んだラビオリ トルテリーニ』中目黒駅から徒歩7分。複合施設“the GARDEN”の地下にある【リストランテシンティッラ】。お店の雰囲気は、まさに隠れ家といったよう。名だたる名店で経験を積んだ武笠 裕一シェフが生み出す料理は、イタリア料理の伝統をベースに、独創的なアレンジや華やかな表現を取り入れたものばかりです。店内は、ブルーグレーで統一されたシックな空間使用する食材は、岩手県北上市で採れた野菜や、群馬県の赤城牛など武笠シェフ自らが味を運んで厳選した食材ばかり。季節の素材を取り入れた料理は、どれもワインとよく合います。ワインのストックも1000本を超えており、料理とのワインペアリングが楽しめます。リストランテシンティッラ【エリア】中目黒【ジャンル】イタリアン【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】14000円【アクセス】中目黒駅 徒歩7分銀座【チーズ&ワインレストラン村瀬】こだわりのチーズとワインが心ゆくまで楽しめる特注のラクレットオーブンを使用したパリパリ&トロ~リチーズが味わえる『ラクレット』銀座駅から徒歩3分という都会にありながらも、隠れ家的な落ち着いた雰囲気のお店【チーズ&ワインレストラン村瀬】。自慢のワインは、ニュージーランド、オーストラリアを中心に、現地へ足を運ぶなど選りすぐりの230種類前後をそろえており、中には他では味わえない貴重なワインも。落ち着いた雰囲気でくつろぎながら食事ができる人気の『ラクレット』や『チーズフォンデュ』をはじめ、チーズ料理が多数並んでおり、使用しているチーズも農家製チーズを中心に約30種をそろえています。そのほかにも、厳選素材を使用したワインに合う料理も取りそろえているので、おしゃれな空間でおもてなしが楽しめます。チーズ&ワインレストラン村瀬【エリア】銀座【ジャンル】ダイニングバー【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】10000円【アクセス】銀座駅 徒歩3分原宿【ハンガリーワインダイニングAZFinom】ハンガリー料理とワインで上質な時間が過ごせるハンガリー産の新鮮なフォアグラを冷製で味わう『2種類の冷製フォアグラ胡桃とシナモンの自家製パン付』原宿駅から徒歩10分。賑やかな街並みを抜けたところにある【ハンガリーワインダイニングAZFinom】。美しい調度品が並び、優雅な雰囲気を醸し出す店内で味わえるのは、ハンガリー人シェフがつくりだすハンガリー料理。提供される食器もハンガリーで愛されているものを使用しています。ハンガリーから輸入した調度品などが飾られており、エレガントな雰囲気お店では、ハンガリーで食べられる国宝と言われる「マンガリッツァ豚」を使用した『マンガリッツァ豚のソテー』や、名産地として知られる「フォアグラ」を使ったものなど、料理はどれも本格的な味わい。直輸入ワインも50種程度を厳選してそろえており、ハンガリーの雰囲気を感じながらくつろぎのひとときが過ごせます。ハンガリーワインダイニングAZFinom【エリア】原宿/明治神宮前【ジャンル】洋食【ランチ平均予算】3500円【ディナー平均予算】9000円【アクセス】原宿駅 徒歩10分六本木【重慶飯店麻布賓館】フレンチスタイルの四川料理とワインとのマリアージュ150gと大きいサイズのフカヒレを使用する『干し貝柱入りフカヒレの姿煮』六本木駅から徒歩8分の場所にある【重慶飯店麻布賓館】は、“医食同源”をテーマにした四川料理をフレンチスタイルで堪能できるレストラン。香港の五ツ星レストランなどで腕を磨いた朱 衛雄シェフ独自のアレンジを加えた料理は、食材のおいしさを最大限に引き出していて、どれも絶品です。洗練された雰囲気の中で食事が堪能できるなかでも、『干し貝柱入りフカヒレの姿煮』は、刻んだ干し貝柱を入れてコクと甘味を引き出していて、滋味深い味わいで多くの人から愛される一品。フランスやカリフォルニアを中心に常時80銘柄程度のワインやシャンパンをそろえており、中華料理とのマリアージュが堪能できます。重慶飯店麻布賓館【エリア】西麻布【ジャンル】四川料理【ランチ平均予算】5000円【ディナー平均予算】15000円【アクセス】六本木駅 徒歩8分※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報や営業時間は店舗にご確認ください。
2023年01月23日お酒をこよなく愛するアナウンサー・宇賀なつみさんの「宇賀なつみのほろ酔いおつまみ」。今回は『Cave de ワイン県やまなし』のダチョウのオイルフォンデュです。宇賀(以下U):珍しいものを紹介したくてこのお店を選びました。ダチョウのオイルフォンデュです!編集K(以下K):オイルフォンデュ…?聞き慣れない料理です。U:このお店の監修をしている、ソムリエの田崎真也さんに連れてきていただいて、私も初めて出合いました。温めたオイルにダチョウの生肉をくぐらせて素揚げにして、ソースとかを付けて食べるんです。スイス発祥のフォンデュなんだとか。K:塩とコショウ、あとマスタードが効いたオランデーズソースと、スパイシーな四川風のソース。味の選択肢が多くて迷っちゃいますね(笑)。U:私は辛い四川風のソースがお気に入り!10秒から15秒、オイルにお肉を入れるんだけど、その時の「パチパチッ」っていう音もいいんです。ダチョウのお肉って馴染みないと思うけど、全然クセもなくて、次々と食べられる。赤身で、ヘルシーなのも嬉しいな。K:“素材の味勝負!”ですね。U:海外だと結構濃い味付けをしたりするんだけど、ここはオイルで素揚げ。鮮度が良くて、よっぽど素材に自信がないとできないこと。あ、もちろん合わせるのは赤ワイン。サッポロビールが造っている山梨甲斐ノワールの赤が飲みやすくて美味しいの!ダチョウのお肉と赤ワイン…最高ですね(笑)。やまなしフォンデュ ダチョウもも肉(150g/2人前)¥3,400。山梨甲斐ノワール 特別仕込み2018(赤)グラス(60cc)¥600。Cave de ワイン県やまなし 東京都中央区日本橋2‐3‐4日本橋プラザビル1FTEL:03・3527・9185ランチ11:30~14:00(13:40LO)、ディナー17:00~22:00(21:00LO)土・日・祝日休宇賀なつみお酒をこよなく愛するアナウンサー。MCを務める情報バラエティ番組『土曜はナニする!?』(フジテレビ系)が放送中。編集K入社4年目。「浅草の寿司屋によく行くのですが、生ダコの旨さに気づきました」※『anan』2023年1月25日号より。写真・清水奈緒(by anan編集部)
2023年01月18日塾で一緒だった、おんちゃんが、とうとう三代目「ふくや」を継いだ。本人からそうLINEで届いたので、紗江子は金曜日、勤め先の文具メーカーから久しぶりにそのまま実家に帰った。玄関に土日分の着替えやコンタクト類の入った紙袋を置くなり、母との会話もそこそこに、最寄り駅の反対側から始まる商店街を目指した。十数年前、個人学習塾が終わった帰り、この時間帯は夕食の買い出しをする女性で溢れ、醤油やみりん、揚げ油のにおいが立ち込めていた。その中でも和菓子屋「ふくや」から漂う、今川焼きの香ばしさは、腹ぺこの十代の胃袋を直撃した。店の前におんちゃんと並んで立ったまま、両手に収まらないほど大きなおいなりさんにかぶりつくこともあった。今はもう、通りに音も香りもなく、駅から吐き出されたらしき人はまっしぐらに家を目指しているし、商店街の向こうからやってくる地元民は皆無だった。コロナ禍を経て、多くの店のシャッターは降りた状態で、それ以外はチェーン店かコンビニに切り替わっていた。「ふくや」だけはあの頃のままだった。緊急事態宣言の直後「ふくや」二代目のお父さんが糖尿病で倒れ、一時期はお店を閉めていた。おんちゃんは新卒からずっと続けていたアパレルをやめて調理師免許を取得、おばあさんとおかあさんといとこの大学生・マキちゃんと四人で店を開けた、と母から聞いた時は、正直、かなり厳しいのではないかと思った。紗江子自身、開発部の前は営業部が長かったせいで、商店街の個人店がなにか画期的アイデアを出しても軌道に乗るのは稀だと身をもって経験している。コラボ企画を一緒に立ち上げた地方の老舗文具店をいくつも思い出した。がらんとした店の奥から、うぐいす色の甚平姿のおんちゃんは紗江子を見とめるなり、声を張り上げた。「ごめん、シャーコ!ちょうどよかった。カウンター出すの、手伝って」 もう四年ぶりなのに、おんちゃんはこちらの顔をろくろく見もせず、売れ残ったお団子やおいなりさんや羊羹が並ぶショーケースの反対側から、細長い木のテーブルや丸椅子をいくつもひっぱりだしてきた。なにがなんだかよくわからないまま、紗江子はおんちゃんと協力してテーブルを連ね、椅子を並べた。ショーケースの向こう側には、重たく光る今川焼き用の大判焼機がひっそりと調理スペースの片隅に寄せられていた。二人が通っていた塾も今はもうなくなったせいもあって、この辺りを中高生がうろつかなくなった、と母から聞いている。「ごめん、外の暖簾、ひっくり返してきて!」おんちゃんに命じられ、紗江子は店の入り口に下がっている、「ふくや」の古びた暖簾が揺れるつっぱり棒に、爪先立ちになって手をかけた。布の後ろ側を見ると「居酒屋ふくちゃん」と真新しい発色で染め抜かれていた。おんちゃんはショーケース内のみたらし団子をすごい勢いで銀のバッドに回収しながら、早口になった。「おばあちゃんは夕方には帰ってもらって、6時からはうち、居酒屋に切り替えてるの。もうすぐお母さんとマキちゃんがインする。あ、いらっしゃいませ」振り向くと、その夜最初の客らしい、スーツ姿の中年男性がのれんをくぐっている。店は突然、形態を変えた。常連らしき会社帰り風の女性や老夫婦が次々に入ってきて、あっという間に、即席カウンターは満員となった。おんちゃんにせっつかれ、紗江子は片隅の椅子の一つに腰を降ろさせられた。じゅうじゅうと何か焼ける音と食欲をそそるにおいが立ち昇る。「はい!名物抹茶ハイと豚みたらし!」そう言って、おんちゃんは、水滴の浮かぶ翡翠色のグラスをカウンターに置き、続いて、こんがり焼けた串刺しの肉巻きのようなものが載った皿を並べた。「抹茶ハイはお菓子に使う上等な抹茶をたっぷり使っているよ。豚バラだんごは、昼間売れ残ったみたらし団子を豚バラで巻いて油で焼いたもの。チーズ挟んだやつもおすすめ」串を取り上げ、焦げ目のついた豚バラをかじると、弾力のある白玉もちと甘辛いたれがとろりと流れ出す。熱くなった口の中をなだめるために流し込んだ抹茶ハイは、澄んだ苦味で、体中に冷えた青い風が行き渡るようだった。「よくこんなこと思いついたね」思わずそう言うと、おんちゃんが「おいなりさんと抹茶ハイも合うんだよ」と得意そうだ。そのやりとりを耳にした、常連たちが誰からともなく語り出した。「私、昔からここにおいなりさんや和菓子を買いに来てるの。お酒はこれまで得意ではなかったんだけど、ここの抹茶ハイは、甘いものにもよく合って、飲みやすいのよね」「俺は逆に、酒飲みで辛党だったんだけど、ここの抹茶ハイで『ふくや』のファンになってね。昼間、きんつばを買うようになったんだよな」紗江子は目を見開いた。年々需要が減っていくボールペンの企画開発をしていると、既存の人気商品をアップデートするかもう道がないと思いがちだが、 こんな方法で新規開拓できるのか。それだけではなく、肉と餅にからみつく濃厚なたれは、初代のおじいさんと同じ味がした。「この豚みたらし、常連さんにみたらし団子が翌日硬くなったら、そうやって食べるって教えてもらったんだよね」おんちゃんは大ジョッキに自分用にビールを注ぎ、かんぱいといってこちらのグラスにぶつけてきた。紗江子の隣に座っていた同世代の女性がつぶやいた。「この辺、人通りがないから、帰り道、毎日灯りがともっているのはありがたい」暖簾越しに通りを振り返ると、確かに寂しげだったが、「ふくちゃん」の照明がアスファルトを浮かび上がらせている。何故か、塾帰りのおんちゃんと紗江子がすぐそこに立ったまま、今川焼きとお稲荷さんを頬ばっているのが見えるような気がした。「大判焼機で作るアヒージョ絶品なんだけど、どう?」と、おんちゃんが声をかけてきた。著者プロフィール@イナガキジュンヤ柚木麻子ゆずき・あさこ▼1981年・東京都のお生まれ。▼2008年、女子校での人間関係を描いた『フォゲットミー、ノットブルー』でオール讀物新人賞を受賞し、この作品を含めた単行本『終点のあの子』でデビュー。▼2015年『ナイルパーチの女子会』で、第28回・山本周五郎賞を受賞。その他、『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『らんたん』『ついでにジェントルメン』など▼先月・10月19日には、初のエッセイ集『とりあえずお湯わかせ』が、「NHK出版」より発売されました。柚木さんオススメのお店ザ・カフェ(The CAFE)【エリア】横浜元町/山下公園【ジャンル】洋食【ランチ平均予算】3,000円 ~ 3,999円【ディナー平均予算】3,000円 ~ 3,999円【アクセス】元町・中華街駅
2022年12月16日お酒をこよなく愛するアナウンサー・宇賀なつみさんの「宇賀なつみのほろ酔いおつまみ」。今回は『THE TAMUYA』の海の幸の包み焼きうにバターソースです。宇賀(以下U):今回はよく行くビストロを紹介!中目黒と池尻の間で、大通りから一本入るところにあって、落ち着いて料理を味わえるお店なんです。編集K(以下K):黒板には、柿や栗といった季節の食材を使ったメニューが並んでいて、全部美味しそう…。U:だから何回来ても新鮮に楽しめるの!その中でもお気に入りなのが、この包み焼き。ホイル焼きみたいな感じで、エビや白身魚、牡蠣とか海鮮がゴロゴロ入っていて、うにバターソースで味付けされた一皿。冬ってやっぱりこういうのを食べたくなる。K:できあがる前の、アルミホイルがパンパンに膨れ上がった状態はワクワクをそそりますね!U:味付けはしっかりと濃いめだから、お酒がすすむこと、すすむこと(笑)。合わせるなら白ワインがおすすめ。包み焼きの具材は季節によって少し変わるけど、通年あるレギュラーメニューなんだって。これは裏技だけど…、このソースを使ったパスタもお願いすれば作ってくれるの。店主の方も親切で、本当に温かいお店。K:レモンの酸味も効いてて、思ったよりさっぱり。あわせて注文したガーリックスープもガツンとニンニクが効いていて、〆に飲むと染みるやつですね…!U:個室もあるから、友達の誕生日会とかにもぜひ。忘年会にもね!右から、海の幸の包み焼きうにバターソース¥2,180。ガーリックスープ(¥830)は、店主の実家から引き継いだメニューだとか。温泉卵を崩すのがポイント。ボトルワイン(白)¥5,280。バゲットはチャージ料(¥500)に含まれる。THE TAMUYA東京都目黒区東山1‐11‐15‐1FTEL:050・5872・466119:00~翌1:00(0:30LO)日曜休宇賀なつみお酒をこよなく愛するアナウンサー。MCを務める情報バラエティ番組『土曜はナニする!?』(フジテレビ系)が放送中。編集K入社4年目。この定例の取材後に会議がある日は、ちょっぴり憂鬱です。※『anan』2022年12月21日号より。写真・清水奈緒(by anan編集部)
2022年12月14日フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『枯朽(こきゅう)』のMenu Experimentalです。押上の住宅街にぽつりと佇むレストラン。今年の8月に誕生したばかりの『枯朽』だ。にじり口の印象もある低めの引き戸を開くと、店はほとんどキッチンが占めていて、壁を埋め尽くす棚にはスパイスや古物がずらりと並び、まるでオーナーシェフ・清藤洸希さんの食の実験室に忍び込むよう。コースはおまかせの1種類のみ。秋の日の一皿は、例えば百合根。蒸した百合根に帆立のムースや杏仁のメレンゲを合わせ、底に野生白茶の茶葉が敷かれる。中国・大雪山の野生白茶は浮足立つような華やかな香りを携え杏仁の香りと編まれ、百合根の甘みも加わり雲上の楽園へ……。と誘われるようだが、それを制止して正気を保たせるかの如く、帆立のムースの重しの効いたクラシカルな旨味が同時に響く立体的な味わい。添えられるスープは白茶に蛤とアルドイーノ(オリーブオイル)を合わせ、白茶の華やかさのみならず、苦味がもたらす陰の味わいに触れることもできる。一つの皿に多数の表情。まるでそれぞれの星の瞬きに目を眩ませながら食べ進めるうち、いつしかそれが一つの星座へと連なる食体験。しかしイノベイティブ一辺倒かといえばそうではないのが、フレンチの経験を長く積んできたシェフだからこそ。秩序の上に成り立つ美しく緻密な重層世界、その只中にひとり身を置き、委ね、呑まれていたいと思った。季節ごとに変わるコース約10品の一部、百合根の一皿。コースは終盤に向かうほど、よりクラシカルなフレンチの様相に。鴨の血を塗って熟成させ、熱した油をかけながら丁寧に火入れをした「銀の鴨」を用いた一皿は、あまりにも滑らかな鴨のテクスチャーに動悸が止まらない。ランチコース、ディナーコースともに¥22,000。アルコールペアリングとノンアルコールペアリングで選択可能。枯朽東京都墨田区横川2‐13‐912:00~15:30(12:00一斉スタート)、18:00~21:30(火曜除く。18:00一斉スタート)日・月・木曜休要予約1日8席限定詳細はHPで。※『anan』2022年10月19日号より。写真・清水奈緒取材、文・平野紗季子(by anan編集部)
2022年10月12日焼肉、それは祈り。どっぷりとタレに漬けられた肉の塊を網の上にそっと乗せ、わが子が如くじっくりじっくり育てた末に、ここぞというタイミングで食らいつく。食欲のままに、本能のままに。とって、やいて、くう。太古の昔から人類が生きるために踏んできたであろう工程をなぞれば、自分が人間という名の動物であることを、生きているってことを、実感できる。食べることは生きること。だから、私はまだ生きている。「仕事、辞めたんだあ」焼肉屋の個室に響いた園子の声は意図した通りののん気さで、そのがらんどうな明るさは我ながら耳障りでしかない。頭が空っぽな人間のフリをするのは特技の一つだったはずなのに、その嘘っぽさが情けなくて鼻の奥がギュっと切なくなった。え?、と真剣な眼差しで肉をつつきまわしていた藍が、撃たれたような勢いで顔をあげる。ふわりとはねた髪が耳周りのみにいれた明るいアッシュベージュの髪束を隠す。彼女がぱちくりと大きく瞬きすると、まぶたの上で濡れたように光る偏光パールが眩しくて、この子は綺麗になったな、と改めて思った。大学の新入生ガイダンスで隣同士だった藍とは、もう十年以上の付き合いになる。彼氏ができた時、その彼氏にフラれた時、ゼミに受かった時、就活で祈られ続けた時……学生の頃、事あるごとに通っていた食べ放題の焼肉屋は、社会人になる頃には肉寿司を出してくるようなこじゃれたチェーン店に、三十近くなるとドライアイスの煙の中から肉が登場するようなしゃらくさい店へと変化した後に、実家みたいな雰囲気のこじんまりした店に落ち着いた。この店に来るのは三度目だ。私が希望する部署に配属が決まった時と、藍に彼氏ができた時、そして今日。牛脂を塗り足らなかったのか、少し前に乗せたばかりの肉が網にぴったり張り付いてなかなか離れない。「海外にでも行こっかな?ほら、カナダとか。」めりめりと引きはがそうとした途端に端からぺりりと裂けた。ああもう、肉一つ上手に焼くことができない。沈黙は私の落ち度のようにしか思えなくて、どんどんと口が回る。「まあ、私ぐらいビッグになるとさー会社員には収らないよねー。」回し車の中でどこかを目指して必死に駆けるハムスターの見る景色って、こんな感じなのかもしれない。盛り合わせで頼んだホルモンを言い訳するように次から次へと網へ乗せる。マルチョウ、ハツ、テッチャン、上ミノ、ツラミ。網に乗ったそばからじゅうじゅうと音をたて、あっという間に小さな網は肉でいっぱいになった。私はこれからレールを外れる、それを知られるのが怖い。ふつうじゃなくなるのが怖い。あんなに応援してもらったのに、あんなに頑張って入った会社だったのに。ツラミ、が牛の顔の肉なのだと教えてくれたのは直属の上司だった。入社当初から面倒を見てもらい、育て可愛がってもらっていたその人を尊敬していた。なのに、園子がちょっとした賞を獲ったことは、彼の中で裏切り行為に当たったようだった。矢継ぎ早に飛んでくる怒鳴り声に委縮し、何をしても否定されることに疲弊し、丁寧なほど細かな嫌味に自尊心を削られた。ある朝、どうしても布団が重くて起き上がれなくて、もう全部やめることにした。「まあこれも全部ネタになると思えばさー」ははは、と笑おうとしたのに、浮き輪をつぶすときのような音が漏れる。全然思った通りの場所に口が動かない。さぞ情けない顔をしていることだろう。脂の爆ぜる音ばかりが響く。壁の奥から聞こえる若い男女の笑い声が、頭の中まで入ってきて柔らかな脳みそをめちゃくちゃに削り取る。逃げるんだ、ウケルー。「もう笑わんでええんちゃうんかなあ」そう口を開くと猛然とトングを構え、親の仇みたいに肉を網に押し付けてからひっくり返し、またひっくり返しする藍の目は燃えていた。穏やかな口調とは裏腹にぼろぼろと溢れ出す涙の粒に炭火が爆ぜる。「全部笑って冗談みたいにコメディにして」テッチャンの皮は少し焦げて油がぶくぶくと泡を立てている。「それで楽になるんかなって思ってたから黙って笑ってきた。」ミノやツラミから垂れたタレが焦げ広がり網を黒く浸食する。「実際まあ笑えばなんとかなってたみたいやし」ハツに入った格子模様の焼き目が美しい。「でもそんなん全部まちがってたんやわ」突如網から火柱が上がり、熱波が肌をさらう。藍はレモンサワーの中から氷を取り出し、ぽんと網の上に放った。「怒るべきやってん」ぐりぐりと網の上を踊らされ、炎を殺して瞬時に溶けていく氷から立ち上る、まっしろなけむり。「何があんたから仕事を奪ったん?ゆるせへん」全部笑って、笑ってもらって、どうにかネタにしてきたのに。それが大人のやり方だと思っていたのに。生き残るために薄ら笑いでごまかして見ないふりしていたそれは、心のどこかで腐り落ち、大きな穴を開けていた。「もう!ホルモンっていつまで焼けばええん?」泣きながら癇癪を起す藍の目元はアイラインが溶けだして、目の下に黒くに広がっている。はたと目の下に触れれば、私の目元もぐちゃぐちゃで、指先にマスカラとアイシャドウの残骸がべったり付いた。きったね。どんな顔してるんだ今?なんだか全部がおかしくなって、気づけば二人でケラケラと笑いだしていた。私が道半ばで転んだことを知ってくれている人がいる。傷ついて嫌になって逃げだした私の情けないその横顔を記憶していてくれる、そんな人さえいたら、それは独りじゃないってことだ。「今日は私のおごりや、いっぱいたべや」乱暴に目元をこすったせいで広がったラメをギラギラ光らせながら、藍が肉を皿に盛った。タレのしっかり絡んだマルチョウは噛めば噛むほど肉の旨味がにじみ出る。ついで鼻を抜けるのは幸せが具現化した匂い。コリコリとしっかり弾力のある歯ごたえを堪能すれば、口いっぱいに広がった甘い脂がじんわりと体に染み込んで、どこかの細胞がふいに生き返るのを感じた。口の中に残った脂が勿体なくて、慌てて白飯をかっくらう。沁みる。肉は、やっぱり人を救う。そういえば件の上司に中学生男子みたいな食い方だなと鼻で笑われたことを思い出した。それの何が悪いのだろう。凹まれ損なわれた心のどこかはまだ少し痛むけど、傷つけられた記憶は何度も自分を苛むけれど、補うように肉を口に運ぶ。その度に、藍がせっせと新しい肉を焼き、私の皿へ放り込む。育てるように、慈しむように。私に優しいひとと食べるごはんは、美味しい。ひとまずは、それでいいと思えた。著者プロフィール宇垣美里うがき・みさと1991年4月16日生まれ兵庫県出身。2019年3月にTBSを退社、4月よりオスカープロモーションに所属。現在はフリーアナウンサーとして、テレビ、ラジオ、雑誌、CM出演のほか、女優業や執筆活動も行うなど幅広く活躍中。宇垣さんオススメのお店石頭楼アネックス【エリア】六本木【ジャンル】和食【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】8,000円 ~ 9,999円
2022年10月05日そのレストランのことを、山中野乃実は心のなかで「いわく」と呼んでいる。勤めている広告代理店から最寄り駅の途中にある、古びた洋食屋で、昼はランチ、夜は酒も出すので食事というよりつまみとして、ロールキャベツやビーフシチュウやオムレツを頼む人が多い。もちろん店名は「いわく」なんかではない。洋食アポロというのがその店の名前だ。この店のランチしか食べたことがなかった野乃実が、勇気を出してはじめてひとりで夜に訪れ、デカンタのワインと何品かの料理を食べたのは入社二年目で、これからはどんな店でもひとりで飲食できるはずだと自信をつけたのだが、翌日、仕事で大ぽかをして上司に叱責された。そのときはまだ、洋食アポロと自身の大ぽかに関連性を感じなかった野乃実だが、半年後、ふたたびひとりで夕食を食べたその翌日、当時交際していた恋人にふられた。たまたまの偶然だろうけれど、なんとなく験が悪い気がしはじめた矢先、先輩社員が転職することになって、送別会を洋食アポロでやることになった。その二次会から帰る途中のどこかで野乃実は財布を落とした。そんなことはめったにないのに財布には八万円が入っていた。翌日の土曜日に冷蔵庫を買う予定だったのだ。財布は見つからなかった。八万円もたいへんな痛手だが、クレジットカードや定期券を再発行する手続きが地獄めぐりのようだった。それからだ、野乃実が洋食アポロではなく「いわく」とその店を勝手に呼ぶようになったのは。とうぜんながら店自体に罪はなく、事情も秘密もないが、自分にとっていわくつきの店にしか思えなくなったのである。地方で暮らす父親が余命宣告を受けて入院したと、母から電話で聞いたとき、野乃実はあえて「いわく」でひとりワインを飲み、蟹クリームコロッケとグリーンサラダとナポリタンを食べた。悪いことはもう起きた、もう「いわく」は終わった、だから「いわく」落としだ、これ以上悪いことは起きないはずだと、論理がまちがっている気もしたが、捨てばちのようにそう思い、料理をひとりで食べてワインを飲んだ。気分は最悪なのに料理はどれもおいしかった。父は、余命三ヶ月と言われたのに、一年後に亡くなった。七か月長く生きてくれたことと、「いわく」落としが効いたのかどうか、野乃実には判断できなかった。それからもうすでに、五年が経過している。その日は、同僚の理歩に誘われて、「いわく」にいくことになった。ほかの店にしないかと提案してみたが、「あの店のポテトサラダがどうしても食べたい」と理歩はゆずらない。そう言われてみれば、たしかに野乃実にも「いわく」のおいしい一品一品が恋しく思い出される。赤いタータンチェックのテーブルクロスに、カトラリーと、たたまれたナプキンののった皿がセットされている。座ってメニュウを広げ、好き好きに注文してから、テーブルの隅にスマートフォンがあることに野乃実は気づいた。こちらに向けてある画面が、ぴかりと光ったからだ。LINEで何か受信したらしい。反射的にのぞきこむと、「今どこ?もう着く?」と吹き出しが告げている。「これ、忘れものみたい」と野乃実は理歩に言い、「お店の人に渡す?」と理歩はスマホをのぞきこむ。「私はもう着いたからカルディでなんか見てる」とまた吹き出しが告げ、漫画のキャラクターがきょろきょろしているスタンプが送られてくる。「本人がすぐに取りにくるんじゃない?」と野乃実が言い、「それもそうだね」と理歩はうなずき、ワインが運ばれてきて、二人は乾杯をする。ポテトサラダや茸ソースのオムレツや小海老のフリットなどが次々と運ばれてきて、とりわけて食べながら、理歩は「毎日が単調すぎてうんざりしていて、転職を考えている」という、けっこうシリアスな話をはじめたものの、テーブルの隅のスマートフォンが気になって、野乃実は話に集中できない。ワインをボトル半分ほど飲んだあたりで、またスマートフォンの画面が光り、つい野乃実は見てしまう。「なんかあった?」「だいじょうぶ?」と続けて送られてくる。ああもう、何やってんの持ち主。野乃実はいらいらと背後のドアを振り向き、だれか入ってこないか見てしまう。それからしばらく眠っていたようなスマートフォンはまた目を覚まし、「なんで無視?」と文字を浮かび上がらせる。野乃実は思わずそれに手をのばし、つい返信しそうになるが、「ちょっと何やってるの、他人のスマホだよ」理歩に言われて我に返り、「だってなんか……」と、ひとりごとのようにつぶやく。スマホの持ち主とLINEの送り主の関係もわからないのに、彼らのあいだにひびが入ってしまうと、泣きたいような気持ちになる。この店が、持ち主の「いわく」になってしまったらどうしよう。あたらしいワインと湯気を上げるグラタンが運ばれてきたとき、野乃実の背後でドアが開く音がする。「あのー、すみません、さっきここでスマホを……」という声が聞こえるやいなや、野乃実はスマートフォンを握って勢いよく立ち上がっている。「これ、これですよね、すぐ確認してください、光ってたから、すぐ連絡してください」と、ドアから半身を出している若い男性にスマートフォンを押しつける。礼を言って彼がドアの向こうに消えると、安堵のため息が漏れる。席に戻ると、野乃実のグラスにワインをつぎながら、「ぜんぜん私の話聞いてなかったでしょ」と、理歩がにらむ。「ごめんごめん、マジごめん」野乃実はすなおにあやまる。「なんかさ」ワインに口をつけて一口飲む。渋みがあって風味もあって、おいしかった。「ふつうに毎日がドラマチックだね」つい、思ったことを口に出す。「転職を考えてること自体、すでにもうドラマチックだよ」この店で夕食を食べたから何かが起きたんじゃない、とはじめて野乃実は思う。私たちの日々は、何か起きることになっている。顔を上げられないくらいかなしいこと、飛び上がるくらいうれしいこと、何をしてもしなくても、そういうことは向こうからやってくる。今までもそうだったし、きっとこれかもそうに違いない。私たちにできることは、何かが起こらないようにすることではなくて、何か起きても、向こうから何がやってきても、へこたれないこと。ぺしゃんこにならないこと。なったとしても、またいつか、起き上がること。そう思っている自分に野乃実はびっくりする。はじめてひとりでここで食事をしてから、考えてみればもう十二年もたっている。「もし仕事変わっても、ときどきこうしてごはんいっしょに食べてね」野乃実が言うと、「なーんて、ずっと先まであんたと机並べてるかもだけど」理歩は笑って、グラスのワインを飲み干す。あの人、名前も知らないあの若い人、LINEの相手に会えたかな。今日の失敗のことを、もう笑ってるかな。LINEの相手といつかここにごはんを食べにくるかな。そうしたら、この店はあの人にとって、いわくではなくてえにしだな。野乃実は酔いのまわりはじめた頭でふわふわと考えて、口元をほころばせる。著者プロフィール(撮影:垂見健吾)角田光代かくた・みつよ作家1967年生まれ1990年「幸福な遊戯」でデビュー。2005年「対岸の彼女」で直木賞受賞。近著に「タラント」など。角田さんオススメのお店ゴブリン NISHIAZABU【エリア】西麻布【ジャンル】イタリアン【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】-【アクセス】乃木坂駅 徒歩9分
2022年09月20日まるでホテルのレストランのように朝・昼・夜、いつ訪れてもそれぞれの時間帯でのスペシャリテが楽しめる――青山のレストラン『Hotel’s』は“架空のホテルのレストラン”がコンセプト。手掛けるのは、代々木上原『sio』でミシュランガイド東京の一つ星を2年連続で獲得した鳥羽周作さんです。そのHotel’sから、鳥羽さんらシェフたちが日本各地に“旅”に出て、旅先で得たインスピレーションを持ち帰り、新しい料理として再構築したコースを出す、レストランinレストラン『Tabi』が9月11~20日まで期間限定でオープンします。第一弾の旅先は、佐賀県。入手したメニューを見てみると、蓮恋れんこんの無限酢漬け、竹崎蟹とパクチーのトマトソース、鶏ごぼうの炊き込みチャーハンなど、気になりすぎるメニューが並ぶなか、福岡県出身の私がどうしても見逃せなかったのが…“デザート ブラックモンブラン×トラキチ×ミルクック”九州出身者以外には暗号にしか見えないのではないか!?というこの文字の並び。でも九州出身者であれば、幼き頃に食べたアイスの名前だと誰もがわかる、そう、みんな大好きブラックモンブラン、トラキチ、ミルクック!これがコース料理のデザートになっているなんて気になりすぎる!鳥羽周作シェフといえば、ミシュランシェフでありながら、自慢のレシピをYouTubeや書籍でどんどん公開していくことでも人気ですが、そのレシピはどの家にもある調味料や材料を“意外な組み合わせ”で仕立てるものも多く、びっくりのお料理が身近な食材で簡単につくれたりします。本格フレンチのスペシャリテから、庶民の味まで、美味しいものはフラットに「美味しい!」という鳥羽シェフが生み出したこのデザート、絶対美味しいだろうなぁ…(まだ食べてないから妄想)新企画『Tabi』の第一弾は佐賀県ですが、今後も日本のいろんな地域をまわっていくそうです。そして、インスピレーションを持ち帰ることで終わらず、触れ合った地域が持っている素晴らしい価値を大切にしながら、その地域をもっと良くするために何ができるかを考え、関わり続けることを目指すのだそうです。あなたの出身地に鳥羽シェフが旅しに来たら、何からインスピレーションを受けてほしいですか?【『Tabi‐佐賀‐』ディナーメニュー】・はるかのジュース・桐岡ナスのフリット・海苔 牡蠣殻に乗せて・こはだの生タルタル ドライトマトのスープ・蓮恋れんこんの無限酢漬け・酒粕のニョッキ・竹崎蟹とパクチーのトマトソース・佐賀牛ヒレの薪火焼き 個性的な付け合わせ3種・香味干し海苔のリゾット・鶏ごぼうの炊き込みチャーハン・お口直し レモングラスのパンナコッタ×嬉野茶のグラニテ×太良町のクラゲ・デザート ブラックモンブラン×トラキチ×ミルクック・丸房露とクレメンティンジャムのプティフル・嬉野ほうじ茶※ペアリング付き※詳細のメニューは当日までに変更する可能性があります。【『Tabi‐佐賀‐』概要】場所:「ホテルズ(Hotel’s)」期間:2022年9月11日(日)~20日(火)所在地:東京都港区北青山3丁目4‐3 ののあおやま 2階営業時間:8:00~22:00 ※『Tabi』は17時~、18時~、19時~、20時~の4枠の時間で提供金額:30,000 円(ドリンク・税・サ込)TEL:03・6804・5699SNS:【Twitter】【Instagram】
2022年09月10日フードエッセイスト・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『Maple Pizza(メープルピザ)』のピザです。ピザはみんなの食べ物だ。田原町に6月にオープンしたピザショップ『Maple Pizza』にいるとそう思う。店にはタトゥーの入った少年から近所のおばあちゃんまで訪れ、垣根なく賑わう。その中心にあるのが店主のベンさんが焼く直径50cmの巨大なニューヨークピザだ。子供の頃、父親がピザ屋(その名も『Maple』!)をやっていたこともあり、ピザに囲まれて育ったベンさん。ニューヨークスタイルのピザを日本に広めた『PIZZA SLICE』で約8年腕を磨き、満を持して独立したベンさんのピザは、とにかく生地がうまい。強力粉を2種ブレンドしてしっかり寝かせた生地は、粉の香りとふっくら感が魅力。二口目には思わず耳を頬張りたくなる。「イメージは、ピザトーストみたいなピザ。優しくふっくらとした生地感を出したくて」。ピザソースもオリジナルで、トマトのフレッシュ感を残した味わいを追求。酸味と甘みの絶妙なソースがピザ全体を包み込む。トッピングは定番のペパロニ(量多め。「たくさんのってる方がテンション上がりますよね」とベンさん)やチーズのほか、厚切りベーコンにパイナップルのハワイアンが並ぶ日も。ドリンクは冷蔵庫からセルフで取って、瓶のコーラを開けて乾杯。「長く町に愛される店になれたら」と言うベンさん。きっとそうなりますよ、と店を出るお客さんの満ち足りた笑顔を見て思った。ペパロニスライス(¥550)とToday’s Sliceのハワイアンスライス(¥660)。サイドのピザ生地で作ったガーリックパン・ガーリックノット(¥220)は小腹にストライクな、やみつきボール(危険)。ドリンクはコカ・コーラ(¥330)に、サンペレグリノのリモナータ(¥418)など。お酒はバドワイザーやハイネケンなど瓶ビールも充実。Maple Pizza 東京都台東区寿2‐4‐8‐101妙見屋TEL:070・2434・181811:30~20:00(19:00LO)火曜、第2・4 水曜休詳細はインスタグラム(@maplepizza_)で。ひらの・さきこ1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)など。※『anan』2022年8月17‐24日合併号より。写真・清水奈緒取材、文・平野紗季子(by anan編集部)
2022年08月10日出産前は当たり前にできたことが、子どもを産んだ途端に出来なくなった…なんてへこんでいませんか? 赤ちゃんや小さな子どもと一緒でも、おいしいレストランや素敵なカフェにお出かけしたい! そんなママたちの声に応えて、子連れでも楽しめるキッズフレンドリーなレストラン&カフェ/ショップをご紹介します。■サスティナブルカフェ・ショップ「ALISHAN PARK (アリサンパーク)」(東京・代々木公園)▼ALISHAN PARK (アリサンパーク)住所:東京都渋谷区代々木5-63-1営業時間:7時30分〜18時定休日:水曜日・木曜日 Instagram: @alishanpark 食の選択肢のひとつとして、生活に根付いてきたオーガニック製品やベリタリアンのための食材。そんなサステナブル(持続可能)な食生活を牽引してきたのが、埼玉県日高市の 「阿里山カフェ」 です。約35年前から、食の選択肢を発信してきた同店が、待望の東京出店! 7月15日に代々木公園のすぐ近くにオープンした「ALISHAN PARK (アリサンパーク)」は、子どもにヘルシーな食生活をおくって欲しいと願うママにとっても気になるお店です。代々木公園が目の前にあり、たっぷりとした緑が目に入るステキな立地。小田急小田原線の代々木八幡駅からも、東京メトロ千代田線代々木公園駅からも徒歩7分です。また、JR渋谷駅からバスでの移動も便利。バス停「代々木神園町」まで行けば、お店はすぐ目の前です。店内は、木の温もりを感じるナチュラルな雰囲気。1階はショップとカフェ。ドライフルーツや調味料、スナック類などアリサンで取り扱う人気のアイテムが揃います。またコンポストやステンレスストローといった、サステナブルアイテムも取り扱っています。階段を上がると、2階はカフェの飲食スペース。窓から外の光が差し込んで、とっても気持ちの良い空間です。さらに2022年秋以降には、3階は食を楽しく学べるイベントエリアとして、そして屋上はヨガなどを行うスペースとしてオープンを予定しています。「誰もが満足できるオーガニック・ベジタリアンフード」をテーマに、朝から夕方まで、いつでも手軽にサステナブルな食体験ができる「アリサンパーク」。オーガニックな食材を使ったり、肉や乳・卵を使わないベジタリアンの食生活は健康に良いだけではなく、環境にもやさしいのが嬉しい。環境への配慮から、毎日ではなくてもできる範囲で、ベジタリアンやヴィーガンの食事を取り入れる人も増えてきています。食材がずらりと並んだショップスペース。世界中から厳選したオーガニック食材は、カフェのメニューに使用されているのはもちろん、ショップで購入して自宅でも楽しめる。カウンターには手作りのナチュラルブラウニーやオートミールクッキーなどもあって、目移りしそう。ピーナツバタークッキーには濃厚なピーナッツバターが使われていて、乳・卵不使用のヴィーガン仕様。オーガニックのグミやチョコレートバーなどといったおやつ類、ジュースなども充実しているのので、子どもたちも喜びそう! 目の前は代々木公園なので、遊びに行く前に立ち寄り、スナックやテイクアウトメニューを持ってピクニックをするのも楽しそうですね。<ココがうれしい>|ベビーカー入店OK(1階)|キッズチェア|離乳食持ち込みOK|おむつ替えシート(1階)|1階のカフェとショップスペースは、ベビーカーでの入店が可能です。かわいらしい木製のキッズチェアも常備。■おすすめメニュー朝7時半から18時までオープンしているので、1日を通して利用ができる「アリサンパーク」。朝食を食べてから公園で遊んだり、遊び疲れたらティータイムを楽しんだりといろいろなシチュエーションで活躍してくれそうです。「お豆の季節野菜のカレー」 1,500円(税込)11時から始まるランチタイムのメニュー「お豆と季節野菜のカレー」は、自家製ブレンドのスパイスを使った本格的な味わい。じっくり炒めた玉ねぎと野菜の甘みも感じる、控えめな辛さが美味しいカレーです。「ベジバーガープレート」1,600円(税込)ベジバーガーは、アリサンカフェで人気ナンバーワンのメニュー。ひきわり小麦の香ばしい味わいが特徴のベジパテとふわふわのバンズ、たっぷり挟まれた野菜が大満足のボリュームです。どちらのメニューも季節の野菜を使ったサラダが添えられているので、お腹いっぱいに。ベジタリアン食は物足りないというイメージをくつがえす大満足のボリュームと味わいです。ハンバーガーに添えられたトマトケチャップは、フレッシュでトマトそのものの味わいが子どもにも大人気。1階のショップで購入することができます。他にもバンズやチーズなども揃うので、気に入ったメニューを自宅で再現してみるのも面白そう!他にもカフェメニューが充実。大人は「カフェラテ」、子どもにはミルクにココアをふりかけた「ベビーチーノ」で、親子でカフェ気分を味わってみて。■食を通して美味しさと豊かさを「分け合う」親しい人にオーガニック食材やベジタリアン料理を分け合ってきた経験から、食材輸入会社の設立に至った創業者のジャック&フェイ夫妻。二人のビジョンは、1980年代の創業時から変わらず、ハッピーでカジュアル、そして子どもも一緒に楽しめる開かれた空間で食べ物を分け合うこと、なのだそう。埼玉県日高市を拠点に、創業者であるジャック&フェイ夫婦が「アリサン有限会社」を設立。オーガニックやベジタリアン食材を世界中から集めて販売している。代々木公園を新しい拠点とした「アリサンパーク」は、美味しい食事とステキな人々が集まるサステナブルな交流地点を目指して、新しいカフェの形を提案していきます。体にやさしい食事がしたいとき、公園お散歩の楽しみとしてお子さんと一緒に訪れてみてはいかがでしょう。▼Information今後、代々木公園「アリサンパーク」でも、カフェや食材販売だけでなく、さまざまなイベントを開催予定です。詳しくはホームページをチェックしてみてくださいね。
2022年07月21日お酒をこよなく愛するアナウンサー・宇賀なつみさんの「宇賀なつみのほろ酔いおつまみ」。今回は『Concerto(コンチェルト)』の唐辛子とパルミジャーノのスパゲッティです。宇賀なつみ(以下U):記録的な暑さが続く今年の夏、本当にぐったりしちゃいますよね。編集K(以下K):今年、梅雨はあったのか!?という感じです…。今回はパスタですか?U:そう!夏って冷やし中華とかそうめんとか、ツルッとひんやりしたものを食べたくなると思うんですけど、ちょっと物足りないな~って感じる時もあって。そんな時にはこのパスタを推したい。K:雪山のような見た目がもう涼しいです…!U:このパスタは見た目とは裏腹に結構辛いのがポイント(笑)。だけど、しつこい辛さではなくて、後味はスッキリとした爽やかな辛さなんです。上にこんもりかかってるパルミジャーノがソースにも入ってて濃厚な味わいで、唐辛子の辛さと絶妙なバランスを保ちながら支え合ってる。お酒も進むし、いうならば“大人のパスタ”がぴったりかも。他のお店にはない、ここでしか味わえないパスタです。夏に食べても爽快。K:これは、家では絶対再現できないやつですね…美味しい!お酒は、イタリアのオレンジワインを店員さんがオススメしてくれました。U:チーズとよく合いますね~。ワインについては店員さんに合うものを聞いてみて。「夏×辛い」を楽しみつつ、この猛暑を乗り越えましょ!唐辛子とパルミジャーノのスパゲッティ¥1,800。グラスワイン¥900~。Concerto東京都渋谷区上原1‐29‐5BIT代々木上原B1TEL:03・6804・879418:00~23:00(土・日・祝日はランチ11:30~14:00)不定休宇賀なつみお酒をこよなく愛するアナウンサー。MCを務める情報バラエティ番組『土曜はナニする!?』(フジテレビ系)が放送中。編集K入社4年目。近所にニューヨークピザのお店ができて、幸福感&生活力がアップ。※『anan』2022年7月27日号より。写真・清水奈緒(by anan編集部)
2022年07月20日フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『AC HOUSE(エーシーハウス)』のディナーコースです。西麻布に誕生した『AC HOUSE』。その店は、異質と異質が混ざり合って新たな色を生み出す生命力に満ちている。扉を開ければ真っ白で前衛的な空間、だけど2階へ続く吹き抜けの先には改築前の古民家の姿が覗く。カトラリーは箸とスッカラ(韓国のスプーン)のみ。国内陶芸家の美しき器で供されるコースは、一番出汁にスイカのジュースを合わせたり(ミラクルな相性!)、ラビオリでは、ブールブランソース(バターに白ワインを効かせた酸味のあるフランスの古典的ソース)と見せかけて発酵きゅうりのジュース(実に北欧的)が酸味を担っていたりと、あらゆる食文化が衝突しては新しい味覚をきらきら表出させる。そこにタブーはない。刺激的な魅力だけがある。そのうえどの一皿にも「おいしさ」の約束が背骨のように貫かれているのだから、あとはこちらも未知なる冒険を楽しみ尽くすのみ。20代からオスロの三つ星店『Maaemo』でスーシェフを務め、日本橋『caveman』のヘッドシェフを経て『AC HOUSE』を開いた黒田敦喜さん。ライブ感溢れるカウンターキッチンで、料理に合わせた音楽が鳴り響くなか怒涛のコースに没入すれば、食体験ってなんて楽しいのか!と思わずにいられない。ちなみに「AC」は「ACCHAN」の略なのだとか。あっちゃん=黒田さんのあだ名。その脱力感もたまらない(笑)。左下から時計回りに、スイートコーンとしらすとブルーチーズのスープ、ブッラータとンドゥイヤのラビオリ、煮穴子のリゾット。1か月半に一度ほどのペースで変わるディナーコース約10品(¥13,200)の一部。グラスワイン¥1,650~。AC HOUSE東京都港区西麻布2‐7‐7TEL:03・6419・756612:00~14:30(土曜のみ、12:00一斉スタート)、19:00~22:00(19:00 一斉スタート)日・月曜休要予約1日10席限定詳細はインスタグラム(@ac_house_jp)で。ひらの・さきこ1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)など。※『anan』2022年7月20日号より。写真・清水奈緒取材、文・平野紗季子(by anan編集部)
2022年07月13日Instagramに、自身の体験や日常、ツンデレな母親とのエピソードなどを漫画に描いて投稿している、momo(momomamemomo)さん。今回ご紹介するのは、momoさん夫婦が高級レストランに行った時のお話です。お祝いのため、ホテル付属のレストランを訪れたmomoさん夫婦。夜景の見える素敵なレストランで、フォーマルな装いをした店員が、丁寧に接客をしてくれました。独特な雰囲気の中、1人だけ毛色の異なる接客を続ける、男性店員。「バンバン食べてくださいね」と、momoさんの皿に大きなパンを提供したり、バジルパスタを『茶そば』と表現したりし、momoさん夫婦を笑わせてくれたそうです。momoさん夫婦が楽しんでいたのを察し、あえて茶目っ気あふれる接客を意識していたのかもしれませんね。momoさんの体験談に、クスッとする人が続出。さまざまなコメントが寄せられています。・リッチなレストランに行き慣れていない私だったら、店員の接客にホッとするし、食事が楽しめそう!・先日行ったイタリアンレストランで、まさにこんな感じの店員がいました!実はオーナーなのかも…?・客に合わせて接客をしているのかな。こんなお店に行きたい!客によって接客の仕方を変えるのは、プロならではの対応。店員の接客は、momoさん夫婦の祝いの席をおおいに盛り上げたことでしょう![文・構成/grape編集部]
2022年07月13日「俺、最近、ロシア料理にはまってるんだよ」店員が水と一緒に運んできたメニューを浮かない顔で開くなり、兄は笑顔でそう言った。三十五歳なのに未だに就職もせず、海外放浪を繰り返していた男からのランチの誘い。指定されたロシア料理の専門店であるこのレストランは、兄のお気に入りの店なのだそうだ。店内は薄暗く、主な照明は各テーブルに吊られているランタンの形をしたペンダントライトだけだった。壁の棚にはキリル文字で書かれた本が並び、テーブルの上には赤と白のチェック柄のテーブルクロスが敷かれている。正直なことを言えば、ロシア料理の店でランチをしないかと誘われたときから、あまり気乗りはしなかった。異国の料理がそこまで好きなわけではなかったし、ずっと現実から逃げて好きなことばかりしている兄に対して、あまりいい感情を持っていなかったからだ。それにラインの文面を見て気づいたのだが、その国の名前を聞くと、今は別のことが頭にちらついてしまう。でも、給料日前でお金がないし、兄がおごってくれると言うから、今回は付き合うことにした。注文を済ませ、最初の料理が運ばれてくるまでのあいだに、兄は戦争の話をした。やっぱりその話題を出すのかと内心うんざりしたが、戦況を伝えるニュースを目にしない日はないから、ある程度は仕方がないのかもしれない。兄は歴史的な背景や、今後予想される展開についてひとしきり持論を述べたあとで、「やるせないよな」とかぶりを振った。自分はこの国の料理が心から好きだからこそ、痛ましい報道を目にするたびに、その気持ちまで否定されているような感じがすると言う。「コロナで海外に行けなくなったのもそうだけどさ、なんかここのところ、しんどいことばっかりで。ほんと嫌になっちゃうよ」気落ちしている兄に引っ張られたのか、私も近頃の自分の人生の停滞ぶりに思いを馳せざるを得なかった。一緒にしたら怒られるかもしれないが、もう一年近く婚活を続けてきて、さすがに疲れ果てていたからだ。どれだけアポを重ねてもいい結果につながらないし、ついこのあいだは、これまでで一番いいなと思っていた人に三回目のデートをドタキャンされて、そのまま音信不通になった。だから今日のテンションも恐ろしく低い。兄のおごりだと言うから来たけれど、もしここに来るまでのあいだに何かひとつでも落ち込むようなことがあったら、私はおそらくこの椅子に座っていなかっただろう。嫌なことを思い出したせいで、まったく会話を楽しめないまま、時間だけが過ぎていく。まずまずだった前菜に続いて運ばれてきたのはピロシキだった。カレーパンに見た目が似ている、油で揚げた惣菜パンが、ケチャップと一緒に皿の上に載っている。「あ、熱いから、気をつけてな」取り上げようとした手を思わず離す。指で触れて確かめると、たしかに揚げたてで熱そうだった。紙ナプキンに包んだものを取り上げて、火傷しないように気をつけながらかぶりつく。口の中で熱さを慣らさなくてはならなかったが、表面がかりかりしている熱々のパンと、たっぷり入った具材の肉々しさの組み合わせが絶妙で、思わず「んー」と声が出た。「うまいだろ?」私は手で口を押さえながらうなずいた。共感してもらえたのが嬉しかったらしく、「俺もここのピロシキ大好きなんだよ」と笑っている。「前は単に好きだったんだけどさ、最近はこれを食べるたびに、負けちゃダメだって思うんだよな」どういう理屈でそう思うようになったのかが、まるでわからなくて理由を尋ねた。説明不足だったことに気づいた兄が、あぁ、と苦笑いをしながら手についたかすを払っている。「この店のシェフがロシアの人なんだよ。この前、ちょっとだけ話したんだけど、今の状況にかなり心を痛めてるみたいでさ。でも、そんな中でも、こんなおいしいものを日々お客さんに作り続けてるわけだろ?」カウンターの向こう側にいる年配のシェフに目を向ける。小さな鍋で作ったソースか何かを味見している白人の男性は、決して広くはないその厨房の中で手際良く動いて、自分の仕事に徹しているようだった。「実は俺、今就活中でさ。全然雇ってもらえなくてメンタルがやられ気味なんだよ。海外放浪を始めたのも、新卒のときに就活でつまずいたからだっただろ?当時のことをいろいろ思い出しちゃうんだよなぁ。なんでこんな、自分を無理やりプレゼンするようなことをしなくちゃいけないんだろうって」兄が就活をしているのが驚きだったが、それ以上に、今彼が言ったのは、ここ最近の私が一番思っていたことだった。ある程度は仕方のないことだとわかっているが、本音を言えば、もっと無理せず自分のままで、相手との時間を積み重ねていくようなことがしたかったのだ。何よりも本来なら遠いのが当たり前なはずの「結婚」が、達成すべき目標になってしまうがゆえに、そこにちっとも辿り着けない自分がみじめに思えてしまうのがどうしようもなく嫌だった。「でも、ここで食事をするたびに思うんだよ。つらくても、とにかく前を向いて、自分にできることをしようって」目の前にある食べかけのピロシキが、シェフの想いを体現しているように思える。戦争の話にうんざりしたことや、ロシア料理と聞いただけで別のことがちらついてしまうなどと不満を持っていたことを反省した。今感じている申し訳なさを自分が変わるためのきっかけにしてもいいのなら、やるせなさに苦しみながらもできることをしようと頑張っている人たちを、私も少しは見習いたい。「ごちそうさまでした。すっごくおいしかったです」お勘定の際に厨房にいたシェフに声をかけると、彼は嬉しそうにはにかんで、片言の日本語でお礼を言った。きれいな青い瞳をした、笑顔のかわいい人だった。余計なお世話かもしれないけれど、心の中でエールを送る。祖国から離れたこの国で、複雑な想いを抱えながら頑張るあなたが、どうか少しでも穏やかな気持ちでいられますように。「ありがとう。なんかちょっと元気出た」店を出たあとで、私は兄にお礼を言った。ここに連れてきてもらわなかったら、きっと今でも狭い世界の中で自分に同情しているだけだっただろう。真昼の陽気の中に立っている兄は、どうして私が元気が出たのかわからなくて困惑しているようだった。「あのさ、来月、またここで食事しない?今度は私がおごるから」兄との食事がすごく楽しかったわけではないけれど、思い切って誘ってみる。「マジで?」と目を丸くしている兄にうなずきながら、私も自分にできることをしようと思った。素朴で温かい料理を食べた余韻が、まだお腹に残っていた。著者プロフィール(撮影:小嶋淑子)白岩玄しらいわ・げん作家。1983年京都府生まれ。2004年「野ブタ。をプロデュース」で第41回文藝賞を受賞しデビュー。同作は第132回芥川賞候補作となり、テレビドラマ化される。他の著書に『ヒーロー!』『たてがみを捨てたライオンたち』など。白岩さんオススメのお店カドワラ【エリア】豊橋【ジャンル】ラーメン【ランチ平均予算】~ 999円【ディナー平均予算】-
2022年07月13日父と二人だけで食事なんて、いつ以来なんだろう……?すぐに思いだしたのは、小学生の頃のことだ。あの頃、日曜日になると毎週のように、二人で近所の喫茶店に行った。その他にはなかっただろうか、と記憶を探るのだが、何も思いだせない。本当に、それ以来なのかもしれないな、と思った。あの頃、兄と姉はもう中学生で、父のことをすっかり相手にしなかった。父が四十のときに生まれた一人だけ小さなわたしは、随分かわいがられていたのかもしれない。職場近くのレストラン、貧乏ゆすりをする父の向かいで、わたしは遠い記憶を見つめていた。◇名古屋の喫茶店にはモーニングという文化がある。休日の朝は喫茶店でモーニングを食べる、というのが、名古屋で生まれ育った父の習慣だったようだ。日曜の朝、父はわたしの布団をはぎとり、喫茶店へと連れて行った。だからわたしは、日曜朝の人気アニメをちゃんと見たことがない。父はいつもブレンドコーヒーを頼み、わたしはミックスジュースを注文した。ミックスジュースのグラスは丸いだるまのような形をしており、なぜだか赤い蓋がついていた。赤い蓋を開けるとき、父はコーヒーを飲む手を止めて、わたしをじっと見ていた。こぼすんじゃないぞ、と念を送っていたんだと、今にしてみればわかる。モーニングにはゆで卵とトーストが付いていたが、わたしたちは小倉あんをトッピングして小倉トーストにして食べた。ミックスジュースも小倉トーストも大好きだったが、わたしの一番の楽しみは他にあった。いつだったか、テーブルの下におしぼりを落としてしまったときのことだ。おしぼりを拾うためにテーブルの下にもぐると、足元に百円玉が落ちていた。「百円落ちてた」拾ったおしぼりと百円玉をわたしはテーブルの上に置いた。「おう。もらっとけ」え、いいの?と思いながら、百円玉を赤いスカートのポケットに入れた。向かいの父は「中日は弱えなあ、今年もドベゴンズだなあ」などと言いながら、スポーツ新聞の文字を、目を細めて追いかけていた。家に帰って百円玉のことを姉に話したが、漫画を読みながらふーん、という感じで、相手にしてもらえなかった。わたしはひとりで駄菓子屋に行き、ベビーカステラと、つまようじで刺して食べるさくらんぼ味のゼリーを買って食べた。その翌週、父とわたしは同じ喫茶店の、同じ席についた。小倉トーストを食べ終わり、もしかして、と思ってテーブルの下を覗くと、また百円玉が落ちていた。「お父さん、また落ちてた」「気前のいい喫茶店だな。もらっとけ」嬉しくて、心が跳ねた。今度は兄にも姉にも言わず、黙ってベビースターとフエラムネを買いに行った。でも三回目になると、さすがに怪しく思えた。最初は偶然だったかもしれないが、百円玉は父が仕込んでいるのだろうか。「お父さん、また落ちてた」「そんなことあるのか。もらっとけ」広げたスポーツ新聞の向こうから、父が平然と言った。わたしはポケットに百円玉を押し込み、もう一度テーブルの下を覗いた。茶色いサンダルを片方だけ脱いだ父が、貧乏ゆすりしてるのが見えた。それ以降も、日曜になるたび、百円をゲットした。わたしの日曜のお楽しみは、人気のアニメでもなく、ミックスジュースでもなく、テーブルの下の百円玉だった。あるときなんて、五百円玉が落ちていた。「お父さん、五百円だった」「あ!まあいいや。もらっとけ」父とのモーニングの儀式は、その後いつまで続いたのかまるで覚えていない。でも、どこかのタイミングで終わりを迎えたのだろう。わたしが大きくなって、もう行きたくないと言ったのかもしれないし、どちらかの都合で、日曜の朝に行けなくなってしまったのかもしれない。終わりの記憶は何故だか、わたしの脳裏からきれいに消えてしまっている。◇父の貧乏ゆすりはどんどん激しくなり、テーブルの上のグラスを揺らした。テーブルには、だるま形のグラスでも小倉トーストでもなく、こじゃれた季節のオードブルが並んでいる。二人だけの食事はきっと、あの頃の日曜の朝以来なのだろう。「お父さん、この人なんだけど」無関心を装った父が、宙に漂わせていた視線を写真に向けた。「お、いい人そうだな。もらっとけ」わたしはなんとなく、テーブルの下を覗いた。父の貧乏ゆすりが激しいだけで、そこには何も落ちていなかった。著者プロフィール中村航小説家。2002年『リレキショ』にて第39回文藝賞を受賞しデビュー。ベストセラーとなった『100回泣くこと』、『デビクロくんの恋と魔法』、『トリガール!』など、映像化作品多数。ユーザー数全世界2000万人を突破した『BanG Dream!』のストーリー原案・作詞等幅広く手掛けており、若者への影響力も大きい。中村さんオススメのお店意気な寿し処阿部 広尾別館【エリア】広尾【ジャンル】鮨・寿司【ランチ平均予算】1,000円 ~ 1,999円【ディナー平均予算】8,000円 ~ 9,999円
2022年06月01日フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『花重(かえ)』のえらべる二色火鍋コースです。四川料理の名店・新橋『趙楊』から娘の花重さん夫妻が独立し、今年2月、大塚にオープンした四川料理店『花重』。厨房に立つのは夫の田中宏茂さん。もともと音響効果の仕事をしていたが、絵が非常にお上手で(お店の油絵も宏茂さん作!)それを見た趙楊氏に「絵ができる人は料理ができる。やってみないか」と誘われ、まさかの料理の道へ。四川料理の生きる教科書の如し義父に基礎からみっちり学び、四川への買い出しにも同行。7年腕を磨き、満を持して開いた『花重』では、『趙楊』で提供を終えた幻の火鍋を伝統の味そのままに楽しめる。今回は「えらべる二色火鍋コース」から、麻辣湯と白湯をチョイス。赤の麻辣湯は20種類以上の香辛料が集結し痛辛そう、と一瞬ひるむが完全なる杞憂。スープをすすれば重層的な香り高さに驚くばかり。これが四川から独自で直輸入したスパイス調合のなせる業か……!鶏と高麗人参スープの白湯もまた、一口飲めばザバアッと全身で湯に浸かるような、奥ゆきあるふくよかな味わいに感服。それらに鹿児島黒豚や、味噌の詰まった赤海老、旬の野菜をくぐらせて頂けば至福。「火鍋は辛いだけではダメで、丁寧に仕込んだスープ、多様な香り、パワーのある食材、それらが調和して完成するんです」と宏茂さん。マイ火鍋史のぶっちぎりベストに躍り出たのも納得だ。えらべる二色火鍋コース(¥9,000)は、メインの火鍋+前菜と汁なし担々麺と氷粉(ビンフェン)が。いずれも絶品。医食同源な火鍋に花重さんの笑顔あふれるサービスで心まで超回復!火鍋なしのシェフのおまかせコースもあり。花重東京都豊島区南大塚3‐45‐7ザ・シティ大塚B1TEL:03・6682・582417:00~22:00(最終入店20:00)不定休ひらの・さきこ1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)など。※『anan』2022年5月25日号より。写真・清水奈緒取材、文・平野紗季子(by anan編集部)
2022年05月19日ピザとかハンバーガーがよかったのに、と思いながら、運ばれてきた生姜焼き定食の生姜焼きを食べてみて、あたしはちょっとビックリした。おいしい。すごくおいしい。うちでお母さんが作る生姜焼きもおいしいと思ってたけど、それとは違う料理みたいだ。お肉を口に入れた瞬間に、甘さとかしょっぱさとか、いろんなものがぶつかってくる感じ。ごはんにすごく合う。「おいしい」「だろ?」なぜか作ってもいないお父さんが得意げに言う。あたしは少し悔しくなってしまい、お母さんのもおいしいけど、と付け足した。お父さんは魚の煮つけを食べるより先に、瓶のビールを、小さなコップにうつして、飲んだ。「あー、うまい」お酒を飲むお父さんは好きじゃない。普段とそんなに変わるわけじゃないんだけど、お父さんは酔っぱらうと、話したことを忘れてしまうみたいだ。楽しみにしていた約束が、お父さんの中では存在しないものになっていて、ガッカリしたことが何度もある。でも多分、あたし以上に、お酒を飲むお父さんを嫌っている人がいる。お母さんだ。いい気なもんよね、毎晩毎晩お酒は欠かさずに。そんないやみを、しょっちゅう言う。お父さんは聞こえないふりをする。たいていは、お母さんがまた何かを言って、お父さんが聞こえないふりをしておしまいになるけど、お父さんが何かを言い返したり、お母さんの言葉が止まらなくなったりすることもある。「久しぶりだよなあ、こんなふうに美月とごはん食べるの」「うん」あたしは答える。本当に久しぶりだ。初めてではないと思うけど、前がいつだったのか思い出せない。今日、お母さんと海斗は、アニメ映画を観に行っている。おねえちゃんもくればいいじゃん、と海斗は言ってたけど、海斗が好きなアニメは好きじゃない。二人は映画が終わってから、あたしたちと同じように、お店でお昼ごはんを食べているはずだ。多分ファミレスかうどん屋さんかハンバーガー屋さん。お母さんと外食するときは、三つのうちのどこかが多い。だから今日、どっか食べに行くか、と言ったお父さんが、車に乗らずに歩き出したときはびっくりした。いつも行くお店はどこも、車でしか行けない。すぐ近くだから、とお父さんは言って、なんのお店か聞いても、秘密、としか答えてくれなかった。そしてこの、「呑み処あき」にたどり着いた。来るのも見るのも、初めてのお店だった。十分くらいしか歩いてないと思うけど、細い道をたくさん曲がったりしたし、ここから一人では帰れない。「はい、これ、昨日の余りだからオマケ。生姜焼き、どう?」お店の女の人(お母さんよりはきっと年上で、おばあちゃんよりはきっと年下)が、先にお父さんに、そのあとにあたしに向かって言う。おいしいです、とあたしは答えた。あらー、よかったー、と女の人が言う。「おお、ありがとう。これはビール追加になっちゃうかもなあ」「昼間っから、ほんとに、ねえ。ゆっくりしていってね」女の人はそう言って、あたしたちのテーブルを離れて、またカウンターのほうに戻っていく。お客さんはあたしたち以外は今は二人だけだし、お店も広くはないけど、女の人が全部一人で料理を作ったり、運んだりしているのがすごいと思う。「ラッキーだなあ」嬉しそうにお父さんは言い、持ってきてもらった、青い線の入った、小さなお皿の中のものを食べて、うん、うまい、と言う。ピンクみたいな、オレンジみたいな色。ハム?でもなんか、違う気もする。「美月も食べるか?あん肝」あたしがそれを見ているのに気づいてか、お父さんが言う。「アンキモ……?」「知らないのか、あん肝。あんこうの肝だよ。あん肝」「食べられるの?」アンコウは図鑑やテレビで見たことがある。あの気持ち悪い深海魚と、目の前のものが、結びつかない。キモっていうのはどこなんだろう。「そりゃあ食べられるよ。うまいんだから。ほら」おかしそうに笑って、お父さんは、お皿をあたしのほうに近づけた。あたしは少しだけ、それを箸でとってみる。ほろりと崩れる。口に入れてみた。変。最初に、そう思った。なんか変。でも、すぐに、おいしい、と思った。温泉卵の黄身みたいな、チーズみたいな、ねっとりとした感じ。「おいしいね」初めて食べる「アンキモ」だった。だろ、とお父さんは言う。あたしがさっき、生姜焼きをおいしいと言ったときみたいな感じで。そのまま少し、黙って生姜焼き定食を食べた。ついていたポテトサラダもおいしかった。お父さんがどこかを見ているのに気づいて、見てみると、お店の高いところにテレビがあって、タワーが映っていた。スカイツリーが綺麗に見えるんですよー、とテレビの中で誰かが言う。スカイツリー。東京にあるやつだ。「お父さんの新しい家、スカイツリー、近いの?」質問した瞬間に、よくなかった気がした。新しい家のことは、言っちゃダメな気がする。でもお父さんは、全然よくない感じではなく、普通に言った。「いや、近くないな。ナカノだから」ナカノ、がどこにあるのか、あたしにはわからない。あたしも一歳のときに東京に行ったことがあるらしい。でももう、十年近く前だし、赤ちゃんのときだからおぼえてない。ただ、「カミナリモン」の前で、お母さんに抱っこされたあたしが写っている写真は、何回も見たからおぼえている。あれはきっと、お父さんが撮ったのだ。海斗もまだ生まれていなかった頃の、三人の旅行。「お父さん」「どした?」柔らかい声で、お父さんは答える。リコンなんてしないで。東京なんて行かないで。あたしも一ヶ月のうち、一週間くらいは、東京でお父さんと暮らしたい。浮かぶことはいっぱいあったけど、どれを言っても、お父さんを困らせてしまいそうな気がした。だから言えない。言うことなんてできない。「アンキモって、おいしいんだね」あたしは言った。浮かんだことたちとはまるで違う。でも、おいしいと思ったのは本当だから、嘘じゃない。「美月は酒好きになるかもなあ。いつか一緒に飲もうな。ほら、まだあるの食べな」お父さんはそう言って笑った。約束だよ、と言いたくなったけど、お酒を飲んだお父さんは、すぐに話したことを忘れてしまう。あたしはちゃんとおぼえていようと思った。おぼえていて、きちんとかなえてもらわなくちゃいけないと、そう思った。アンキモを箸でとって、口に入れる。やっぱりおいしかった。初めてアンキモを食べたことは、お母さんにも海斗にも、内緒にしようと心に決める。著者プロフィール加藤千恵歌人・小説家。1983年北海道旭川市生。立教大学文学部日本文学科出身。短歌集『ハッピーアイスクリーム』でデビュー。短歌以外にも、小説、エッセイ、作詞提供等幅広く執筆する他、ラジオ等のメディアにも出演。近刊に、NICU(新生児特定集中治療室)を舞台とした『この場所であなたの名前を呼んだ』など。加藤さんオススメのお店アッピア【エリア】麻布十番【ジャンル】イタリアン【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】15,000円 ~ 19,999円【アクセス】広尾駅
2022年05月11日お酒をこよなく愛するアナウンサー・宇賀なつみさんの「宇賀なつみのほろ酔いおつまみ」。今回『ワイン村シャガール』のチーズオムレツです。宇賀(以下U):最近ちょっと重めのものが続いていたので、今回はオムレツ!銀座のクラブ街にあるイタリアンのお店。近くで買いものをした後に来ることが多いです。編集K(以下K):窓がひとつもない、アングラな佇まいがまたいいです。席数もコンパクトでガヤガヤしていないから、落ちついてゆっくり食事ができますね。U:この土地柄、夜のお仕事の方々がよくお店に来られてて、渋谷あたりでは味わえない独特のムードがあります。そんな中でお酒を飲むのは、非日常感があって面白いんです。オムレツの中にはカマンベールチーズ、ソースにはゴルゴンゾーラチーズが入っていて、口当たりもまろやか!K:チーズ尽くし、最高です。U:お店の名前にもあるように、ここのワインはソムリエの方がセレクトしているから、何を飲んでも美味しいの。あと、料理もいい。二軒目で行く人が多そうだけど、私はたくさん食べたいから一軒目に選んでます。特にパスタは食べてみてほしい!「あ、すみません。バゲットお願いします」K:もしかして…!U:この余ったソースをバゲットにつけて、最後まで楽しまないとね!ソースたっぷりだからこそ楽しめる、〆です。あ、まだ締めないですよ。「次のワインは赤でお願いします~」チーズオムレツ¥1,460(1人前)。グラスワイン(白)¥1,100~。ワイン村シャガール東京都中央区銀座8‐5‐10金成ビル1FTEL:03・3571・277016:00~翌3:00(土曜~23:00)日・祝日休宇賀なつみお酒をこよなく愛するアナウンサー。MCを務める情報バラエティ番組『土曜はナニする!?』(フジテレビ系)が放送中。編集K今年度から入社4年目。「低温調理器を手に入れ、ローストビーフを研究中」※『anan』2022年4月27日号より。写真・清水奈緒(by anan編集部)
2022年04月20日フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は韓国ごはんの店『モゴ』のビビンパ定食です。経堂にかわいい食堂ができた。その名はモゴ。韓国語で「食べて」を意味する韓国ごはんのお店だ。店主の山口泰子さんは韓国の食はもちろん、韓国文化を10数年来愛してきた人。韓国へ通い、料理を身につけ、今年の3月、自身のお店を開くに至った。韓国料理といえば辛い!のイメージが先行するけれど……「実は辛くない、滋味深いすてきな料理がたくさんあるんです」と山口さん。おっしゃる通り、モゴのビビンパはそこまで辛くない。真っ赤な自家製コチュジャンは辛さというより香り高さと深みがあって、ピカピカのナムルや、肉の味わいがぎゅっと濃厚な塩豚そぼろ(山形・平田牧場から指名買い。甘辛く味つけてはもったいないので塩味で!)と混ざれば混ざるほど、おいしさが重層的に広がっていく。この味わいの充実感、それでいて食後感は軽やかで、ランチは毎日これがいい!と前のめりになる。「野菜とお米をたっぷり食べられる外ごはんがあればいいのに」と思い続けてきた山口さん。体に負担が少なくて、栄養も満点で、豆や野菜をもりもり食べられて、ご機嫌な気持ちでごちそうさまって言える店。モゴには山口さんの理想が詰まっている。あ、帰りには、山口さんお手製の韓国民芸モチーフクッキーも忘れずに買って帰らなきゃ(実は山口さん、お菓子の名店『foodmood』出身なのです)!昼メニューからビビンパ定食(¥1,100)。たっぷり野菜と塩豚そぼろと自家製コチュジャンに、数種のおかずとスープ(この日はもやし。もやし出汁のおいしさ侮るなかれ!)付き。モゴ東京都世田谷区経堂2‐31‐20TEL:03・6680・704311:30~14:30、18:00~21:00(日曜除く)水・木曜休詳細はインスタグラム(@mogo_pap)で。ひらの・さきこ1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)など。※『anan』2022年4月20日号より。写真・清水奈緒取材、文・平野紗季子(by anan編集部)
2022年04月13日お酒をこよなく愛するアナウンサー・宇賀なつみさんの「宇賀なつみのほろ酔いおつまみ」。今回『アッシャゴ』のピザです。宇賀(以下U):今回は巣鴨のピザ屋です!この間、ラジオの収録後に放送作家の小山薫堂さんに連れていっていただいたのですが、美味しいし居心地もよくて最高でした。編集K(以下K):いわゆる流行りのNYピザって感じではなく、生地も薄くパクパクと食べられちゃいますね。まさにおつまみ…!U:そう!サイズも小ぶりでお一人様にちょうどいいし、種類も多いから、一人2枚はいけちゃう。私のおすすめは「ミックスB」(写真右)で、とっても具だくさん。一人でピザ1枚を食べながら、ビールが飲めるってなかなか味わえない幸せだと思うんです(笑)。K:あと、お店の雰囲気やマスターもチャーミングで素敵です。U:こんな紙ナプキン入れ、今じゃなかなか見られません。綺麗な今っぽいお店もいいけど、やっぱり昭和の薫りが残るお店は定期的に浸りに行きたくなりますね。マスターは、車と音楽が大好き。店内では井上陽水さんの曲がよく流れているし、他にも’70年代の洋楽も好きなんだとか。K:そういう親しみやすさも、昔ながらのお店の醍醐味!マスター:次は、マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」でも聴くかい?なかなか聴けないロングバージョンを持ってんだ。U、K:ぜひ!音量大きめで!左・サラミ¥700右・ミックスB¥1,000。ミックスBにはオニオンやマッシュルーム、ピーマン、ベーコン、コーンがトッピングされている。キリンラガービール¥600。アッシャゴ東京都豊島区西巣鴨3‐18‐4TEL:03・3940・441918:00~翌2:00(現在は17:00~21:00)月曜休宇賀なつみお酒をこよなく愛するアナウンサー。MCを務める『土曜はナニする!?』(関西テレビ)が放送中。「2月は働いた~!」編集Kもうすぐ入社4年目。「三州屋で定食に付いてくる鳥豆腐を家で再現したい!」※『anan』2022年3月30日号より。写真・清水奈緒(by anan編集部)
2022年03月23日