いよいよ2019年も下半期へ突入!そんなときこそ、上半期の嫌なことは忘れて、心機一転したいところ。そこで、オススメしたいのは、身も心もスッキリできるサウナです。とはいえ、「楽しみ方がよくわからない」とか「おじさんのイメージがある」という初心者も多いと思うので、話題のサウナ漫画『湯遊ワンダーランド』とともに、こちらの方にサウナの奥深い世界をご紹介していただきます。写真・角戸菜摘(まんきつ)人気漫画家のまんきつさん!今年の2月にペンネームを改名したまんきつさんですが、本作はまんしゅうきつこ名義では最後となる作品。サウナで繰り広げられる個性的な人たちとの出会いが独特な視点で描かれていますが、今回はその裏側やお気に入りのスポットなどについて教えていただきました。―サウナには弟さんの勧めもあって行くようになったそうですが、本格的に通い始めたのはいつ頃ですか?まんきつさんちょうど4年前ですね。その頃は、弟のところへ事務所を移したときでしたが、そこから30秒くらいのところに銭湯があったんです。―当時はどのくらい行かれていたのですか?まんきつさん毎日です。お風呂に入って外気にあたるというだけでも気持ちよかったというのが理由でもありますが、事務所のビルが古くて排水管から嫌なにおいが上がってくるので、銭湯に行くしかないというのも実はありました……。―それは銭湯に逃げたくもなりますね(笑)。とはいえ、そこからサウナの魅力にハマった一番の理由はなんですか?まんきつさんそれは水風呂を知ったからです。最初はサウナと外気浴を繰り返していて水風呂には入らなかったので、正直辛いなと思っていました。でも、通い始めて1か月後くらいにサウナにいる常連のヌシと呼んでいるおばちゃんと顔見知りになって、水風呂の良さを知ることができたんです。ようやく本当の意味でサウナを楽しんでいる―漫画のなかでも水風呂の良さについてはたくさん語られていますが、そもそもサウナにはどのように入るのがいいのでしょうか?まんきつさん「何分入ればいいですか?」とよく聞かれるんですけど、サウナによって温度が全然違うので一概には言えないんですよね。だいたい普通のサウナだと80度から100度くらいが多いですが、たまにコンフォートサウナと言われる50度くらいのところもあって、そういうところだとずっと入っていられますから。なので、最初に何分と決めずに、まずは自分が熱くて限界と感じたら出るのがちょうどいいかなと思います。―そのあとは水風呂に入るのを繰り返す感じですか?まんきつさん私も最初はサウナと水風呂を繰り返していたんですけど、その間に休憩を挟むと気持ちよさが全然違うことに気が付いたんです。特に、サウナに入り始めたばっかりの人はストイックになりがちな傾向にありますけど、途中で一回くらい休憩すると効果的だと思います。―ちなみに、まんきつさんは休憩中に何をしているんですか?まんきつさん露天スペースなどがあるところならそこで外気浴をしていますが、ただボーっとしているだけですね(笑)。でも、普段すっ裸でボーっとすることってないじゃないですか。めちゃめちゃ解放感があって昇天するような感じなんですよ、本当に!ただ、連載中は常連さんたちの話を一生懸命暗記したり、急いで外に出てメモしたりみたいなことをしていて、あまり落ち着いて味わえませんでした。それもあって、連載が終わったいま、ようやくサウナを心から楽しんでいるところです。サウナで目撃した衝撃の人物とは?―これまでで一番衝撃的を受けた出会いなどもありましたか?まんきつさんまずは、ずっと体を洗っている人がいて、それには驚きました。しかも、洗いすぎはよくないと聞いていたのに、すごく肌がきれいだったんですよ。だからいまは私もサウナと水風呂をする間に、だいたい2~3回くらいは洗っています。私の場合はつるつるになりますけど、肌が弱い人はやめたほうがいいかもしれないですね。あと、衝撃的だったのは、拝んでいた人かな。―サウナで拝むとは、いったいどういう状況でしょうか……。まんきつさんその人もサウナと水風呂を繰り返していたんですけど、水風呂のなかで願掛けしてずっと拝んでいたんですよ。多分、滝行の代わりだと思います(笑)。何を願っているのか近くで聞こうしたんですけど、さすがに怖くてやめたことはありました。―裸という無防備な状態だとより怖いですよね。逆にいい出会いはありませんでしたか?まんきつさん一番はじめに威張っている人として登場するおばちゃんは、口が悪いんですけど、本当に優しい人で笑顔もステキだし、この人との出会いは大きかったですね。サウナは女性ひとりで行っても大丈夫―印象に残っている言葉もありましたか?まんきつさんサウナで考えごとをしていたら、おばちゃんに「考えるだけムダだよ」って。そんなふうにいつも笑っていたので、私もすごく気が楽になりました。ただ、私のことがバレちゃったかもしれないので、行けなくなっちゃったんですよ。「あんた、私のことババアって書いてんだろ!」みたいに言われたらどうしようと思って。(笑)―(笑)。これまでにいろんなサウナに行かれたと思いますが、この4年間で何か所くらい行かれましたか?まんきつさん基本的には、気に入ったところばかりに行ってしまうのですが、上は北海道から下は福岡まで行きました。地方もいろいろといったので、数えきれないくらいです。―やはり地域によっても、雰囲気は全然違うものですか?まんきつさん西のほうと下町は、わりと常連さんが激しいような気がします。―となると、女性ひとりで行くのはハードルが高いように感じてしまうのですが……。まんきつさんただ、実際はここに出てくる凶悪な常連さんがいるところはそんなにないんですよ。東京でも数えるくらい。私の場合は、漫画のネタになるので、逆にそういうところばっかりに行っていますけど、基本はすごく穏やかな環境なので心配しなくても平気だと思います。それに、この漫画を読んでおけば、万が一そういう常連さんに捕まっても心構えができますよね?「ああ、これが噂のヌシか」と。でも、そういう人はあまりいないので、意外と女性ひとりで行っても大丈夫ですよ。オススメのサウナスポットを伝授―私もこの作品のおかげで、かなり免疫がついた気がします(笑)。では、ひとりで行く場合と友達と行く場合、それぞれでオススメの場所はありますか?まんきつさんまず、ひとりなら地元の銭湯がいいかなと思います。というのも、下町の銭湯に大勢で行くと「うるさい」と言われる可能性もありますから。なので、お友達とワイワイしながら行きたいなら、新宿の『テルマー湯』とか後楽園の『ラクーア』みたいなラグジュアリーな感じのところが楽しいと思います。美容グッズも充実していますしね。―ちなみに、ダメなサウナの見分け方はありますか?まんきつさんやっぱりにおいがするとか、不衛生なところはダメですね。いいサウナは本当にキレイで、係の人がしょっちゅう掃除していますよ。だから、清潔感とにおいは大事ですね。―施設やサービスなど、どんどん進化していると思いますが、サウナの最先端も教えてください。まんきつさん遠いのでまだ私も行けてないんですが、熊本にある『湯らっくす』というところは、進化し続けていると聞いています。水風呂なんて、150センチくらいの深さがあるそうです。サウナ初心者が気を付けるべきこととは?―すごいですね。ただ、女性の場合は、水風呂では頭まで入ってはいけないと漫画にも描かれていたような……。まんきつさん理由はよくわからないんですけど、基本はNGなんです。女性のほうが衛生面にうるさい人が多いからじゃないかなとは思っています。というのも、男性サウナだとヌシみたいにじっと見張っている人がいないらしいんですよ。でも、女性サウナだと、若い女の子が入ってくると、ちゃんと体を洗ってから入るかジッと見ていたりしますから。―それはちょっと怖いですが、つまりサウナに入るなら、衛生的な意味でも体は必ず洗ってから入るほうがいいということですね?まんきつさんそうですね。あと、サウナ好きに聞くと、サウナって教会と一緒らしいんですよ。―教会ですか!?まんきつさんつまり、体を清めてから入るみたいな(笑)。サウナへの礼儀としてということのようです。―サウナ好きはサウナへの思いも熱いんですね。まんきつさんそうなんですよ。常連のおばさんのなかには、髪の毛を洗わないで入ってくるのも嫌がる人がいるくらい。私もまだ何も知らないときに、「朝シャンしてきたから体だけ洗えばいいかな」と思ってサウナに入ったら、「髪の毛のにおいがするから洗ってきて」と言われました……。女性にとってうれしい効果を実感―そこでもめたりしたことはないですか?まんきつさんさすがにケンカしたことはないですね。まあ、私が行っていたところは都内でも有数の凶悪な常連さんいるところだったので……。そんなふうに地元のおばちゃんたちで出来上がっちゃってるような銭湯は避けたほうがいいかなとは思います。―初心者のうちは、気楽なところから行くのがよさそうですね。では、ご自身がサウナと出会って、一番変わったと思うのはどんなところですか?まんきつさん本当の意味で息の抜き方を知ったことです。私はずっとガチガチでつねに気を張っていたので、寝ているとき以外は気を抜く瞬間ってなかったんですよ。でも、サウナに行って、初めてホッとする時間を持つことができましたし、完全に自分の世界にも入ることができるようになりました。あとは、サウナと水風呂を繰り返していたおかげで代謝がよくなりすぎて、がんばって食べても太れない体質になってしまったんです。前はケーキ1個食べたくらいで翌日に1キロ増えるくらいだったんですけど。―女性にとっては一番うれしい効果だと思います。まんきつさんあとは、基礎体温も1度上がりました。なので、冷え性で困っている人には勧めたいですね。サウナでは痩せないと言われていますが、サウナと水風呂を繰り返すと若干体質は変わると私は感じています。サウナに合うグルメスポットをご紹介―となれば、恋愛面などにおいてもいい効果があるのではないでしょうか?まんきつさん確かに、彼氏にイライラしたときはサウナに逃げちゃうというのはいいかもしれないです。肌もキレイになりますからね。サウナに長く入っている女性は、おばちゃんでもサウナ派ではない人と比べると、肌質の違いがすぐにわかるくらい毛穴が小さくて肌のきめが細かいんですよ。―それはうらやましいです!あとは、サウナの後にぴったりなグルメなどもあれば教えてください。まんきつさん巣鴨にある染井温泉『SAKURA』に行くなら、『台湾』という台湾料理屋さんの角煮と鉄玉子がイチオシ。それから、押上の『大黒湯』のあとなら、『まるい』のもつ焼きがめちゃくちゃおいしいですよ。もし、ひとりで行くパターンなら、上野の『センチュリオンホテル&スパ』からの『まぐろ人』で立ち食い寿司というコースもありますね。あともうひとつ、友達と新宿の『ルビーパレス』に行って、そのなかにある韓国料理屋さんでチゲ鍋というのもいいですよ。―サウナのあとにもうひと汗かくんですね(笑)。まんきつさん実は、サウナのあとの火鍋とかはすごいよく合うんです。ちなみに、その汗は家に帰って、寝る前に流す感じでいいと思います。そんなふうに汗をたくさんかいた日は、すごくよく眠れますよ。いろいろな念や悩みが落ちていく感じもあるので、寝つきの良くない人はぜひ試してください。人でも場所でも逃げられるところを確保すること―それでは最後に、ananweb読者へメッセージをお願いします!まんきつさんまずは、何かひとつ逃げ場を見つけておくというのは、大切なことだと感じています。そうしないと、壁にぶつかって乗り越えるときに心が折れちゃったりすることがあるので。相談できる人がいるとか、何でもいいので、そういう場所を確保しておいて欲しいですね。もし、息抜きの方法がわからないのであれば、サウナに行くのがいいと思いますよ!インタビューを終えてみて……。もともと『湯遊ワンダーランド』の大ファンでもあったので、まんきつさんにお会いできて感激でしたが、実物の美しさとお肌のキレイさには思わず見とれてしまいました。ぜひ、教えていただいた方法でサウナ生活をスタートさせたいと思います!サウナに入ったような爽快感が味わえる!知られざるサウナ事情の数々に、驚きと笑いが止まらない本作。読んだあとは、心が軽くなっていることにも気づかされるはず。とはいえ、取りきれないストレスや悩みを抱えているなら、いますぐサウナに行って、体のなかからデトックスしてみては?作品情報『湯遊ワンダーランド』全3巻著者:まんしゅうきつこ扶桑社より発売中購入はこちら:
2019年07月06日いきなりですが、今日はみなさんに、ある説をプレゼンしにやって参りました。題して、「自分は依存症じゃないと言い切れる人なんていない説」です。いや、待って待って、読むのやめないで! ツムツム始めないで!気持ちはわかります。依存症なんて、特別な人がなる、特別な病気。そう思いたい気持ちは重々承知です。私もそう思ってました。だって、タバコ吸わないし。自分がツイてない人間だって知ってるから、怖くてギャンブルできないし。飲むとすぐ眠くなっちゃうから、酒も付き合い程度でしか飲まないし。でもね、ちょっと待って。あと、ツムツムもいったんやめて。ためしにこの本を読んでみてほしいんです。今、大注目の漫画家・まんしゅうきつこ氏が自身の実体験を描き下ろした『アル中ワンダーランド』。これを読むと、アルコール依存症が決して"特別な世界"ではなく、ありふれた日常と地続きにあるものだということがわかると思います。○淡々としたアル中描写のおかしさと恐ろしさアルコール依存症の実態を描いた作品といえば、中島らもの『今夜、すべてのバーで』をはじめ、吾妻ひでおの『失踪日記2 アル中病棟』、鴨志田穣の『酔いがさめたら、うちに帰ろう』など、壮絶な名作ぞろい。そのせいか、どこか芸術に身をささげたハードコアなろくでなしたちが奏でるブルースといった趣が強く、折り目正しくフツーに日常を過ごす私たちには無縁のもの、といったイメージが付きまといます。それに対して、『アル中ワンダーランド』のまんしゅう氏は、もともと一介の主婦ブロガー。ブログで人気に火がついたのをきっかけに、仕事と家事の両立に行き詰まり、お酒へとのめり込んでいくようになったといいます。その、誰でも足を踏み入れてしまいそうな、敷居の低さがかえって怖い!本作では、アルコール依存症の代表的な離脱症状である幻聴、被害妄想、希死念慮などの体験が描かれていくのですが、これらのエピソードは、決まって「気が付くと朝……」と、著者が布団で目覚めるコマから始まります。つまり、お酒を飲んでいる間のできごとは記憶がないので、周囲からの伝聞としてしか描けないのです。その、妙に人ごとで淡々とした描写がかえってリアル。エピソードの一つひとつはおかしいのに、じわじわとした不安と恐ろしさをかき立てられます。○誰もが「面白い人」を求められるなにより読んでいて胸をかきむしられるのが、本作全体から漂ってくる「面白い人にならなくちゃ」というプレッシャーです。漫画のネタが浮かばないとき、人とフレンドリーに話したいとき、イベントを盛り上げなきゃいけないとき……まんしゅう氏がお酒に走るのは、決まって人から"おもしろさ"を求められたときなのです。俗に、依存症は根が生真面目で完璧主義の人ほどなりやすいと言われています。まんしゅう氏も、コミュニケーションスキルのハードルを自分で勝手に上げすぎてしまい、そのハードルを乗り越えるためのツールとして、お酒を"ドーピング"に使うようになったと説明しています。コラムに書かれた「誰か、私を『面白い』から解放してください」という著者の心の叫びは、何かを創作する立場の人間にとって、涙なくして読めないのではないでしょうか。いや、現代では、作家だけでなくその辺の一般人までもが、「面白い人」「楽しい人」「変な人」として、自分の身の上をネタとして提供することを求められます。Twitterで本作の感想を検索してみると、尋常じゃない数の人が、「私もお酒を飲まないと人前で楽しく振る舞えない、だから飲んじゃう」と著者に共感しているという事実に気付かされるでしょう。誰もが、「人前では面白い人でなければいけない」「コンテンツとして消費される価値がなくてはいけない」というプレッシャーを抱えて生きているようです。○私たちは、依存する快楽から逃れられないまた、巻末の対談では、まんしゅう氏が「アルコールならなんでもいい」という状態に陥り、最終的には化粧水用のエタノールをトマトジュースで割って飲んでいた、という衝撃のエピソードを明かします。つまり、お酒の味そのものが好きなのではなく、アルコールによって得られる酩酊(めいてい)感や、それによってコンプレックスなどの「別の何か」を埋め合わせることができる快楽こそが、お酒に求めていたものだったわけです。では、翻って私たちは、果たして本当に「自分は何にも依存していない」と自信を持って言えるでしょうか。考えてみてください。あと、気が付くとツムツムやるのやめてください。お願いだからこっち向いてください。え、ツムツムじゃなくて「ねこあつめ」? うるせえ、同じだよ!お酒やタバコ、ギャンブルといったわかりやすいものだけに限りません。常に誰かに愛されていないと不安な恋愛依存、「忙しいから」を理由に家庭の問題から目をそらす仕事依存、ミッドライフ・クライシスに陥った中年男性が急に筋トレを始めるトレーニング依存、あと、わかんないけどツムツム依存……。科学的な実証のほどはわかりませんが、食べるのが好きな人は、料理を楽しんでいるのではなく、「血糖値が上がってテンションがハイになった状態の中毒になっているだけなのでは」という説すらあります。私たちは、自分が思っている以上に無自覚な領域に支配されているし、自分が正常だと思っている状態は、何かにすがりつくことによってやっと維持されているだけかもしれない。正常と異常、日常と非日常、正気と狂気……その境目は思ったよりもグラグラであるということを、本作は教えてくれるのです。○著者プロフィール: 福田フクスケ編集者・フリーライター。『GetNavi』(学研)でテレビ評論の連載を持つかたわら、『週刊SPA!』(扶桑社)の記事ライター、松尾スズキ著『現代、野蛮人入門』(角川SSC新書)の編集など、地に足の着かない活動をあたふたと展開。福田フクスケのnoteにて、ドラマレビューや、恋愛・ジェンダーについてのコラムを更新中です。
2015年05月25日