座・高円寺で毎年上演されるクリスマスレパートリー、「ピアノと物語『アメリカン・ラプソディ』『ジョルジュ』」が今年も開幕する。これは、ふたつの物語をリーディングとピアノ演奏で綴るもの。12月20日(水)〜22日(金)の3日間は『アメリカン・ラプソディ』。アメリカ音楽の父、ジョージ・ガーシュイン。ユダヤ系ロシア移民の子としてニューヨークで生まれ、やがてジャズとクラシックを融合させて新たな音楽を生み出した彼について描く物語。撮影:梁丞佑公私にわたるパートナーとして知られる女性作曲家ケイ・スウィフトと、ヴァイオリニストのヤッシャ・ハイフェッツのふたりが手紙のやりとりをするという形で表現。もちろん「ラプソディ・イン・ブルー」や「サマータイム」、「パリのアメリカ人」など、佐藤允彦によるガーシュインのピアノ曲の生演奏もたっぷり。今回の公演はスウィフト役の島田歌穂、ハイフェッツを演じる福井晶一の競演で、歌唱メドレーが例年よりも多めになる予定とのこと。撮影:梁丞佑12月23日(土)〜25日(月)の3日間は、“ピアノの詩人”として今もなお多くの人に愛されるフレデリック・ショパンにまつわる物語。39歳の若さでこの世を去ったショパン。その短い生涯のうち9年間をともに過ごした作家、ジョルジュ・サンドはショパンに大きな影響を与え、彼の名曲の多くはジョルジュと過ごした時期に生み出されている。ジョルジュと、ふたりを見守る弁護士との往復書簡を通じて、ショパンを支えたジョルジュの思いやふたりの日々を描く。ジョルジュは例年通り竹下景子が演じるが、弁護士に扮する塚原大助とは初顔合わせ。新たな風が吹きそうだ。「バラード第1番」「英雄ポロネーズ」「別れの曲」など、ジョルジュとショパンが過ごした日々の中で生み出された名曲を演奏するのは實川風。愛の物語とピアノ演奏をいちどに楽しめるこの演目は、クリスマスムードを味わうのにぴったりだ。文:釣木文恵<公演情報>ピアノと物語 『アメリカン・ラプソディ』 『ジョルジュ』作:斎藤憐演出:佐藤信出演:『アメリカン・ラプソディ』島田歌穂、福井晶一/佐藤允彦(ピアノ)『ジョルジュ』竹下景子、塚原大助/實川風(ピアノ)2023年12月20日(水)~12月25日(月)会場:東京座・高円寺1公式サイト:
2023年12月20日2023年に開館20周年を迎えた東京・汐留のパナソニック汐留美術館。ジョルジュ・ルオーの充実したコレクションを誇る同館では、4月8日(土)から6 月25日(日)まで、開館20周年記念展の第1弾 として、ルオーの本格的な回顧展が開催される。19世紀末、パリの国立美術学校に入学し、象徴主義の巨匠モローに学んだルオーは、20世紀前半のフランスで活躍した革新的な画家のひとり。社会の下層に生きる人々の姿や宗教的な主題を深い精神性をもって描き出し、デフォルメされた親しみやすい人物像や、とりわけ晩年の油彩画の輝く色彩で多くの人々を魅了してきた。同館はこの20年間で、様々な切り口でそのルオー芸術を紹介してきた。だが、代表作を多く網羅する本格的な回顧展は、20年ぶり、開館記念展以来初となる。今回は、パリのポンピドゥー・センターから日本初公開作品を含む13点のルオーの傑作が来日するほか、フランスや国内の美術館等からルオーの代表作が集結する。総数約70点を展観する大規模な展覧会だ。展覧会タイトルの「かたち、色、ハーモニー」は、ルオーが自身の芸術を語る際に繰り返し用いた言葉だという。そのルオーの「かたち、色、ハーモニー」の形成に影響を与えたモローやセザンヌら同時代の芸術家との関係を浮き彫りにする展観が、同展の見どころのひとつだ。その後、次第に装飾的な関心を深めていったルオーは、安定感のある形態と輝く色彩、そしてマティエールが美しいハーモニーを奏でる成熟期の表現へと到達する。同展では、初期から最晩年に至る作品群によって、その表現の変遷の軌跡をたどることができる。同展のもうひとつの見どころは、ふたつの大戦を経験したルオー作品における戦争の影響を深く考察する試みが行なわれていること。戦争の残酷さや人間の苦悩を見つめ、さらにその中にも希望を見いだす表現に取り組んだルオーの戦争期の重要作《ホモ・ホミニ・ルプス(人は人にとりて狼なり)》や《深き淵より》が初来日するのも楽しみなところだ。同展が、日本におけるルオーの最も充実した回顧展のひとつとなることは間違いない。<開催情報>『開館20周年記念展ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー ―』会期:2023年4月8日(土)~6月25日(日)会場:パナソニック汐留美術館時間:10:00〜18:00、5月12日(金)、6月2日(金)、6月23日(金)、6月24日(土)は20:00まで(入館は閉館30分前まで)休館日:水曜(5月3日、6月21日は開館)料金:一般1,200円、65歳以上1,100円、大高700円公式サイト:
2023年03月24日映画『ザ・バニシング -消失-』が、2019年4月12日(金)よりシネマート新宿他順次全国ロードショー。30年の時を経て“サイコロジカル・サスペンスの金字塔”日本劇場公開30年の時を経てついに日本劇場初公開となる、映画『ザ・バニシング -消失-』。1988年に公開された本作は、同年オランダ映画祭で最優秀作品賞受賞を受賞。世界中の映画祭で喝采を浴び、いまなお高い人気を集めるサイコロジカル・サスペンスの金字塔といえる作品だ。主人公はある日突然恋人を失ってしまったレックス映画『ザ・バニシング -消失-』の主人公は、ある日突然恋人を失ってしまう男性・レックス。オランダからフランスへ車で恋人と小旅行に出掛けていたレックスは、立ち寄ったドライブインで、彼女・サスキアを突然失ってしまう。必死に彼女を捜すも手掛かりは得られず、3年の歳月が経過。亡霊に取り憑かれたかのように、執念深く恋人を探すレックスの元に、犯人らしき人物からの手紙が届く。犯人らしき人物から手紙が何通も届き始めると…自分の異常性と正常性を立証したいという欲求から、ある歪んだ「実験」に手を染める男・レイモン。その犯人らしき人物からの手紙が何通も届くうちに、レックスは次第に精神を追い詰められていくのだった…。巨匠キューブリックが“最も恐ろしい映画”と太鼓判監督は、『マイセン幻影』『ダーク・ブラッド』を手掛けた、オランダ人監督ジョルジュ・シュルイツァー。静かに迫りくる異様な恐怖を描いた映画『ザ・バニシング -消失-』は、巨匠スタンリー・キューブリックが3度鑑賞し「これまで観たすべての映画の中で最も恐ろしい映画だ」と評したほど。あまりに絶望的で魅力のあるラストは必見だ。あらすじ7月、オランダからフランスへと車で小旅行に出掛けていたレックスとサスキア。立ち寄ったドライブインで、サスキアは忽然と姿を消してしまう。必死に彼女を捜すも手掛かりは得られず、3年の歳月が経過。依然として捜索を続けるレックスの元へ、犯人らしき人物からの手紙が何通も届き始め…。【作品情報】映画『ザ・バニシング -消失-』公開日:2019年4月12日(金)よりシネマート新宿他順次全国ロードショー監督:ジョルジュ・シュルイツァー製作:ジョルジュ・シュルイツァー、アンヌ・ロルドン原作:ティム・クラッベ脚本:ティム・クラッベ、ジョルジュ・シュルイツァー出演:ベルナール・ピエール・ドナデュー、ジーン・ベルヴォーツ、ヨハンナ・テア・ステーゲ、グウェン・エックハウス原題:SPOORLOOS
2019年01月24日ジョルジュ・ブラック 晩年の境地 キュビスムの創始者であるジョルジュ・ブラック。20世紀初頭、パブロ・ピカソとともに対象物の立体的な全容を平面上に表現するために、分割と再構成という手法で革新をもたらした重要な画家として知られています。本展覧会は、これまで日本ではほとんど紹介されてこなかった、ブラックが最晩年に取り組んだ「メタモルフォーシス」シリーズの一連の作品群が、絵画を含めてまとまった形で約90点も来日し、日本で初めて本格的に展示する大変貴重な機会です。メタモルフォーシスという言葉は…「変身」「変容」という意味。ブラックの絵画作品から発展させ、陶磁器、ジュエリー、彫刻などの装飾芸術に至る様々な形態への移り変わりが感じられるとともに、彼の絵画から立体への昇華や、最終的な目的である“すべての造形物への美化への挑戦”を汲み取ることができます。 美麗な立体への飽くなき探求 右)ジョルジュ・ブラックトリプトレモス(部分)ブローチ(金とルビー)サン=ディエ=デ=ヴォージュ市立ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館蔵Archives Armand Israël 絵画である二次元作品から三次元に変容させるブラックの情熱は、ジュエリー作品に加えて、ガラス彫刻、陶磁器、タピスリー、ステンド・グラス他、装飾芸術に至る様々な形態へと変化させていきます。モチーフは一緒でも様々な表情を見せてくれるプロダクトから、素材と形態の組み合わせを変えながら永遠の命を与えようとする試みが感じ取れることでしょう。ブラックの絵画が貴石と貴金属によって立体に変容した様子を目にした、フランス文化大臣のアンドレ・マルローが「ブラック芸術の最高峰」と絶賛したジュエリーの数々においては、崇高な彫刻とも言えるほどに、貴石や金属の美しさに魅了された画家の美への飽くなき探求が結実しています。 絵画作品や平面作品にも注目 本展覧会では、ジュエリーをはじめとする三次元に変容した作品紹介していますが、その原点となるジョルジュ・ブラックの画業の重要な遍歴を辿れるような構成になっています。最初の作品といわれている18歳の頃に描かれた《モンソー公園》をはじめ、貴重なキュビスム絵画《静物》が出品される他、「メタモルフォーシス」の制作活動の根幹である平面作品も紹介されています。第1章に展示されている一連のグワッシュ画は、その後の立体作品が作り出される下絵となり、晩年のブラックによるエネルギーを込められた躍動的な作品群です。 ブラックの人生もメタモルフォーシス 右)ジョルジュ・ブラックペルセポネ陶器サン=ディエ=デ=ヴォージュ市立ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館蔵Archives Armand Israël 81歳で亡くなるまでの3年間に取り組んだ「メタモルフォーシス」シリーズ。そこに至るまでの彼の人生を思うと、まさに「変容」の一言に尽きます。少年時代は家業をついで装飾画家としての修行を積み、18歳でパリ・モンマルトルに住みながら夜間講座で油彩画やデッサンを学びながら最初の淡い色彩の作品を手掛けたり、フォーヴィスムの影響を受けて色彩豊かな作品を描いたり…そして、セザンヌとピカソから影響を受けてキュビスムを創始するとモノトーンの作品を制作するなど、その画風を一つずつ紐解いていくと彼の変化をたどることができます。そして、そのキュビスム絵画を探求していくにつれ、鑑賞品を超えて装飾品として生まれ変わっていく様子も変容と言えるでしょう。本展覧会は、ブラックの集大成ともいえる晩年の境地にフォーカスしていますが、そこへの道のりに想いを馳せながら鑑賞してみてください。 【情報】ジョルジュ・ブラック展絵画から立体への変容 ―メタモルフォーシス会期:2018年4月28日~6月24日会場:パナソニック 汐留ミュージアム住所:東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階時間:10:00~18:00休館日:水曜日観覧料:一般1000円、65歳以上900円、大学生700円、中高生500円、小学生以下は無料※5月18日(金)国際博物館の日は入館無料会場
2018年05月22日「glee/グリー」キャストのコーリー・モンティース、オスカー俳優のフィリップ・シーモア・ホフマンら、素晴らしい才能を持ちながらも志半ばにして不慮の死を遂げてしまった名優は数多い。1993年、23歳の若さでこの世を去ったリヴァー・フェニックスもそのひとりだ。その“伝説的”スター俳優・リヴァーの幻の遺作と言われていた『ダーク・ブラッド』が、GWより日本劇場公開される。この公開に合わせ、劇場で公開される機会の少ないリヴァーの過去作上映や関連イベントを催す「リヴァー・フェニックスフェス!」の実現に向けた、クラウドファンディングがスタートした。『ダーク・ブラッド』は、23歳の若さで薬物の過剰摂取のため急逝したリヴァーが、死の直前まで撮影していた未公開作。リヴァーは、砂漠の真ん中で車が立ち往生してしまったハリウッド俳優の夫婦が出会う、ミステリアスで美しい青年を演じていた。彼は間違いなく、この世を去ってからもその類い稀なる才能で今なお世界中を魅了し続けている俳優のひとりだろう。人気絶頂の最中にあったリヴァーの突然の死は、親友のキアヌ・リーヴス、ジョニー・デップ、イーサン・ホーク、彼に憧れていたというレオナルド・ディカプリオといった俳優仲間から各国のファンまで、世界中の人々に大きな悲しみと衝撃を与えた。日本でも、87年、91年と2度のキャンペーン来日を果たしていただけに、映画ファンの間に凄まじいショックが走ったものだ。この悲劇により、撮影途中だった本作は、主役不在での完成は不可能とされ、長い間お蔵入りに。だが、2007年末に大病を患い余命わずかと宣告されたジョルジュ・シュルイツァー監督が、キャリア最後の作品として本作の再開を決意。監督自らが大事に保管していたフィルムの権利問題や未撮影シーンの再現など、さまざまな壁を乗り越えて2012年に完成した。お披露目となったベルリン国際映画祭ほか各地の映画祭では喝采を浴び、「若き日のリヴァーがスクリーンに蘇った!」と世界的なニュースになった。インターネットを利用して不特定多数の人々に資金提供を呼びかけ、資金を調達するクラウド(=群衆)ファンディング(=資金調達)は、近年さまざまジャンルで試みられており、映画界では、キネマ旬報日本映画ベスト・ワンなど各映画賞を席巻中の『ペコロスの母に会いに行く』もFacebookを通じたクラウドファンディングから公開が実現している。支援金額に応じて、特典付きチケットや非売品プレスシート、リヴァーのもう一つの遺作でサム・シェパード監督『アメリカンレガシー』の鑑賞券などを入手することができ、“支援者”として劇場用パンフレットに名前が掲載されたり、DVDプレゼント、イベントへの招待などのリターンがある。資金が多く集まれば、いつまでも若々しい、在りし日のリヴァーにたくさん会えるチャンスも増えるはずだろう。『ダーク・ブラッド』はGW、公開。(上原礼子(cinema名義))
2014年02月21日