アメリカのフロリダ州にある世界最大級のチンパンジー保護施設『Save the Chimps』。この施設では研究所やペット取引、エンターテインメント産業から保護されたチンパンジーが安心して暮らせる場所を提供しています。2023年6月、『Save the Chimps』のSNSに投稿された動画に大きな反響が上がりました。28歳のバニラちゃんは幼少期をニューヨークの生物医学研究所で過ごしていたとのこと。バニラちゃんは、狭いケージの中で自由に動き回ることもできない日々を送っていたといいます。1995年に、カリフォルニア州の動物保護施設に移りましたが、そこでも自由は得られなかったそうです。2019年にその施設が閉鎖されたため、バニラちゃんは家族とともに新たな里親に引き取られることになります。その後、いくつかの過程を経て、終の棲家となる『Save the Chimps』に辿り着いたのです。『Save the Chimps』は、バニラちゃんが最初に建物から外に出た時の様子を公開。生まれて初めて広い空を見たバニラちゃんの反応は…。こちらをご覧ください。@savethechimps Vanilla and Shake have been fully integrated into a large family group and were released onto their island home! Shake went right out, but Vanilla was hesitant. Nothing an encouraging hug from the alpha, Dwight, couldn’t fix. Watch as Vanilla is in awe of the sight of the vast open sky for the first time. Learn more and donate. https://bit.ly/3Nx0rkm All gifts are currently being matched and will have twice the impact on supporting Vanilla, Shake, and our more than 220 other residents. #vanillathechimp #dwightthechimp #shakethechimp #release #islandrelease #rescue #chimpanzeerescue #chimp #chimpanzee #savethechimps #chimpanzees ♬ original sound - Save the Chimpsバニラちゃんの姉であるシェイクちゃんはすぐに野外に出て行きましたが、バニラちゃんはちゅうちょして、なかなか一歩を踏み出せませんでした。それを見た、群れのリーダーであるドワイトくんが励まし、ハグでバニラちゃんを受け止めます。ドワイトくんの胸に飛び込んだバニラちゃんの頭上には、今まで見たこともない広大な空が!感動したような表情を見せたバニラちゃんは、その後も何度も空を見上げていました。この動画を見た人たちからは、ついに自由になれたバニラちゃんへの喜びの声が上がっています。・信じられないほど感動的なシーン。嬉し涙があふれた。・空を見ることがこんなに幸せだなんて、悲しいね。この子の28年間がどんなものだったかを想像すると胸が張り裂けそう。・バニラちゃんのこれからの毎日が太陽の光で満たされますように。バニラちゃんとシェイクちゃんは先住チンパンジーの家族にすっかり溶け込んで、広大な敷地の中で自由を満喫しているそうです。生まれてから28年間も外に出ることすらできないなんて、動物にとってどれほどストレスを感じることでしょう。ついに自由を手に入れたバニラちゃんたち。これからは好きなだけ空の下で走り回って幸せに長生きしてほしいですね。[文・構成/grape編集部]
2023年07月04日出産をした母親は、初めて我が子を抱きしめた瞬間、言葉にならないほどの喜びを感じるでしょう。2022年11月16日、アメリカのカンザス州にある『セジウイック群立動物園』でチンパンジーの赤ちゃんが誕生。母親であるマハレは出産の時、自然分娩が進まなくなり、病院で緊急帝王切開が行われました。赤ちゃんは無事に産まれましたが、自力でうまく呼吸ができなかったため、そのまま入院することになったのです。それから2日後、マハレはようやく我が子と再会することができました。赤ちゃんがいる部屋に入って来たマハレは、青い毛布にくるまれた我が子が目の前にいることに気付いていない様子。その直後、赤ちゃんが毛布から手を伸ばすと…こちらをご覧ください。赤ちゃんを抱きしめて愛おしそうに見つめるマハレ。生まれてすぐに我が子と離ればなれになった2日間は、マハレにとっては永遠のように長く感じたのでしょう。動画からはその場にいるスタッフたちが泣いている声が聞こえますが、この動画を見た人たちも涙をこらえきれなかったようです。・何度見ても涙があふれて画面が見えない。なんて感動的なシーンだろう。・まるで赤ちゃんが「ママ、僕ここにいるよ」って手を挙げたみたいだ。・美しい瞬間。母の愛に勝るものはないよね。赤ちゃんは男の子で『クチェザ』と名付けられ、母乳をたくさん飲んですくすくと成長しています。マハレはこの再会の日以来、一度もクチェザを腕から離していないとのこと。出産直後から我が子に会えなかったマハレは、クチェザがどこにいるのか、無事なのかも分からず、心配していたはずです。もしかするとマハレは赤ちゃんを失ったと思っていたかもしれません。2日ぶりにクチェザと再会した時、マハレがどれほど安心したか…画面を通じて伝わってきます。我が子を愛しむチンパンジーの母親の愛情に、多くの人が感動の涙を流したようですね。[文・構成/grape編集部]
2022年11月28日西アフリカのリベリアにある動物保護団体『リベリア・チンパンジー・レスキュー&プロテクション(以下、LCRP)』は、チンパンジーの孤児を保護する活動を行っています。違法なペット売買により、密猟者に殺されるチンパンジーが後を絶たないリベリア。母親を失ったチンパンジーの赤ちゃんたちは、自力では生きていけないといいます。2022年夏、そんなかわいそうなチンパンジーがまた1匹、『LCRP』に保護されました。ベックリーと名付けられたオスの赤ちゃんは、親を亡くしてひとりぼっちだったところを発見されたそうです。人間と同じように、チンパンジーの赤ちゃんも24時間体制で世話をする必要があります。『LCRP』のスタッフたちは、母親を失ったベックリーを心身ともにケアしてきました。チンパンジーたちはある程度成長すると、施設に隣接するチンパンジーの保護区『リトル・バッサの森』で生活を始めます。ベックリーも野生での生活に慣れるために、少しずつリハビリが行われていました。同年9月、ついにベックリーが『リトル・バッサの森』へ引っ越す日がやってきます。初めてベックリーを見た、ほかのチンパンジーたちの反応は…こちらをご覧ください。次々と集まって来た幼いチンパンジーたちは、ベックリーをハグで温かく歓迎!まるで「いらっしゃい!よろしくね」と挨拶をしているようですね。ここで暮らすチンパンジーたちはみんな孤児で、血のつながりを超えた家族なのだそう。彼らはベックリーが自分たちと同じ境遇だということを分かっているのかもしれませんね。この動画には多くの感動の声が寄せられています。・初対面だとは思えない。まるで家族の再会みたいだ!・心が温かくなった。チンパンジーはなんて愛情深い動物なんだろう。・ベックリーにたくさんの兄姉ができてよかったね。『LCRP』のFacebookには、ほかのチンパンジーたちと仲よく遊ぶベックリーの写真が紹介されています。これからは安全な『リトル・バッサの森』で、本来の野生での生活をしていくということです。この森は『LCRP』が管理している土地のため、ベックリーは大好きなスタッフたちともいつでも会えるとのこと。人間のエゴによって親を奪われたベックリーが、新しい家族と幸せに暮らしていけるといいですね。[文・構成/grape編集部]
2022年10月29日人間とチンパンジーとの間に生まれたハイブリッド〈ヒューマンジー〉のチャーリー。理解ある人間の両親に育てられ、極めて優れた頭脳と身体能力の持ち主に成長。地元の高校に入学し、チャーリーが学校生活になじめるように寄り添ってくれるルーシーとの関係を深めていく。一方、動物解放を求めてテロ活動を繰り返す「動物解放同盟(ALA)」は、チャーリーを仲間に引き入れようと過激な手段に訴えるようになり…。「このマンガがすごい!2022」オトコ編10位にランクインした注目作『ダーウィン事変』。その著者が、うめざわしゅんさん。もともとネオダーウィニズムやポピュラーサイエンスが好きで、関連書などを愛読しているらしい。「何が人間を定義するのかという生命倫理を問うテーマで『もう人間』(『えれほん』に収録)という作品を描いたことがあり、本作はそれを発展させた思考実験的な内容になっています。もしチャーリーみたいな存在が生まれ、人間と動物の境界が崩れると、人々はどういうふうに反応するだろうと。そういう面白さは生まれると思いました」うめざわさんはマンガを通し、自然との調和や動物保護、生命倫理、差別、人権など人間がいまだ明確な答えを出せない問題に広く言及していく。そんな物語に掴まれてしまうのは、登場人物たちの主張がみな、一家言あると思えるため。「ALAの主張には、人類喫緊の課題が含まれています。悪人側に正論を言わせると、耳が痛いけど腑に落ちることも多いんですよね。また、マージナル(周縁)の存在であるからこそ持てる視点を託せるのがチャーリーで、読者にも首肯してもらえるように意識しました」ちなみに、チャーリーの風貌、特に顔はサルに近く、変わっている。だが彼の活躍を知るにつけ、可愛らしく思えてくるから興味深い。「最初はCGでヒトとチンパンジーを合成させたような見た目に。ただ、チャーリーに関しては僕の得意とするリアルめなタッチより、可愛いと思ってもらえるよう、やや記号的なキャラデザインに変えました。それでいながら、生きて、人間とともにいる存在感は出したいなと」半分猿ゆえ、表情などで感情表現をするのは難しい。そのため、「目の描き方で伝わればいいなと工夫しています。もっとも人間同士でも、心の底まではわからない。他者というものの象徴でもありますね」3巻では、チャーリーにとってかけがえのない人たちがピンチに!彼はどう打って出るのか、ハラハラが止まらない、傑作コミックだ。『ダーウィン事変』3月刊『アフタヌーン』で連載中。チャーリーは、地元の住民や警察、FBIからも敵対視されるように。チャーリーの反撃が待たれる4巻は、春頃発売予定。講談社748円©うめざわしゅん/講談社うめざわしゅんマンガ家。1978年、千葉県生まれ。’98年、読み切り「ジェラシー」でデビュー。著作に、『パンティストッキングのような空の下』(太田出版)など。※『anan』2022年1月26日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2022年01月25日西アフリカのリベリアに、親を亡くしたチンパンジーの赤ちゃんを保護する施設があります。アフリカでは野生動物の肉を求める密猟者によって命を奪われたり、違法なペット取引で売買されたりするチンパンジーが後を絶たないといいます。『リベリア・チンパンジー・レスキュー・アンド・プロテクション(以下、LCRP)』で暮らしているチンパンジーは、そのような悲劇的なケースで母親を失った子供たちなのです。おいしいバナナをもらったチンパンジーが?2021年9月、『LCRP』のInstagramに投稿された動画が話題になりました。映っているのはドロシー、トゥーラ、ジジという3匹のチンパンジーたち。おいしいバナナをもらった3匹は、早速嬉しそうに食べ始めます。すると、トゥーラが何かに気付いたように立ち上がってどこかへ向かいます。その理由は…こちらをご覧ください。 View this post on Instagram A post shared by LCRP (@liberiachimprescueprotection) トゥーラが駆け寄ったのは、トゥーラの世話係であるスタッフのエスターさん。まるで「おいしいバナナをありがとう」と伝えるように、エスターさんに抱きついたのです。このほほ笑ましい動画にはたくさんのコメントが寄せられています。・ハートがとろけた。なんて美しい瞬間なのかしら。・この子は「ありがとう」っていっているね。・感動して涙が出た。 View this post on Instagram A post shared by LCRP (@liberiachimprescueprotection) まるで、母親に甘えるようにエスターさんを見つめるトゥーラ。その姿から、エスターさんがトゥーラの母親代わりとなり、たっぷりと愛情を注いでいるのが分かります。血のつながりも、種の違いも超えた『母親と娘』の絆は、多くの人の心を温かくしてくれました。[文・構成/grape編集部]
2021年10月11日京都大学(京大)は11月10日、重度の先天的障害のある野生チンパンジーを観察し、母親が過去の子育てとは異なる方法で障害児のケアを行っていた点、他個体が障害児に対して恐れや攻撃といった特異な反応を示さなかった点などを明らかにしたと発表した。同成果は、同大学理学研究科博士後期課程 日本学術振興会特別研究員の松本卓也氏、野生動物研究センター 中村美知夫 准教授、伊藤詞子 研究員、鎌倉女子大学学術研究所 井上紗奈 研究員らの研究グループによるもので、近日中に国際学術誌「Primates」にてオンライン公開される予定。今回の研究では、タンザニアのマハレ山塊国立公園に生息するチンパンジー集団において、2011年に重度の障害のある赤ん坊が生まれたことを発見し、その後赤ん坊が消失するまでの約2年間の行動を記録した。この結果、今回観察された障害児の特徴が、過去に報告されたダウン症様の個体の症例に酷似していることがわかった。野生下でダウン症様の赤ん坊が発見され、2年近く生き残った事例が報告されるのは今回が初めてだという。また、他個体からのケアとして、他個体がその赤ん坊に対して恐れや攻撃といった特異な反応を示さなかったこと、母親が腹に掴まった赤ん坊に片手を添えつつ移動するなど、過去の子育てとは異なる方法で障害児を育てていたこと、障害児の姉が母親の代わりによく世話をしており、その姉が自身の子を出産した約1カ月後に障害児が消失したことがわかった。重度の障害のある赤ん坊が野生下で2年近く生き残ることができた要因として、母親による柔軟な子育てや姉の世話といった他個体からのケアが影響を与えていた可能性がある。中村准教授は同成果について「マハレでのチンパンジー研究は今年で50年になりますが、障害のある赤ん坊が観察されたのは今回が初めてです。障害者などの弱者をケアできる人類社会の進化基盤を考察する上でも重要な観察事例だと考えています」とコメントしている。
2015年11月11日京都大学は9月18日、チンパンジーをはじめとする類人猿がヒトと同様に一度見た出来事を覚えていることができることを見出したと発表した。同成果は京都大学霊長類研究所の狩野文浩 特定教授らの研究グループによるもので、米科学誌「Current Biology」に掲載された。印象的な出来事を1日以上の長期にわたって記憶する能力はヒト特有のものだと考えられてきたが、専門家の中では少なくとも類人猿には可能だとする主張と、同じ出来事を繰り返し経験しないと長期記憶を形成できないとする主張があり、意見が分かれていた。今回の研究では、ボノボ6個体とチンパンジー6個体に動画を見せ、アイ・トラッキングによって動画を見ている時の目の動きを記録した。動画は、チンパンジー達にとってショッキングな出来事が途中で発生するという内容で、最初に見せた24時間後に同じ動画を見せた。実験の結果、チンパンジー達は2回目に動画を見た際に、動画中でショッキングな出来事が発生する場所を予測的に見たという。別の動画を用いた実験でも、類人猿が一度見た出来事を少なくとも1日隔てて覚えていることを示す結果が得られたという。同研究グループは今回の結果について、ヒトの特殊性・優位性に対する従来の考えを再考する必要があることを示しているとしている。また、同実験で用いたアイトラッキングは、言葉を持たない動物やヒトの幼児の記憶能力やその他高度な認知機能を調べるために応用できる可能性がある。
2015年09月18日京都大学は6月11日、西アフリカのギニアに生息する野生のチンパンジーが、ヤシの樹液が発酵した「酒」を飲むことがわかったと発表した。同成果は京都大学霊長類研究所と英オックスフォード・ブルックス大学の共同研究によるもので、6月9日付け(現地時間)の英科学誌「Royal Society Open Science」に掲載された。同研究によれば、チンパンジーたちは葉っぱをスポンジのように用いて、地元住民がヤシの樹液を採取するために設置した容器の中で発酵してできたアルコールを口に運んでいたという。こうした行為は17年間で51例確認され、うち20回は集団で飲酒をしていた。チンパンジーたちが飲んでいた「酒」のアルコール度数は3.1~6.9%で、年齢・性別に関わらずアルコールを摂取していた。チンパンジーの中には飲酒後すぐに寝てしまうなど、酩酊状態に陥った個体もいたとのことで、同研究グループは「おそらく人間と同様にアルコールの摂取が可能で、好きなのでしょう」とコメントしている。
2015年06月11日京都大学はこのほど、チンパンジーに見られる同種間の殺しが、生息地の破壊や餌付けなどの人為的かく乱の結果として表れているものではなく、食物や配偶相手などの資源を得るための雄の適応戦略であることを証明したと発表した。同成果は同大学霊長類研究所の松沢哲郎 教授、同 古市剛史 教授、同 橋本千絵 助教、同大学野生動物研究センターの中村美知夫 准教授、 同 伊藤詞子 研究員らとミネソタ大学のMichael L. Wilson 准教授の研究グループによるもので、9月17日付け(現地時間)の英科学誌「Nature」に掲載されたチンパンジーでは、集団間、集団内の同種間の殺しや共食いがしばしば報告されている。研究者によっては、これをチンパンジーの雄の繁殖戦略の1つだと考え、ヒトとチンパンジーがともに共通祖先から受け継いでいる攻撃性の表れだとしている。一方で、これが餌付けなどの人為的影響の結果として表れる行動だとする研究者もおり、チンパンジーによる同種殺しとヒトに見られる戦争や殺人行為を安易に結びつけて考えることに対して批判があがっている。同研究グループはこれらの仮説の検証を行うために、50年間にわたって研究されたチンパンジー18集団およびボノボ4集団から得られた情報をまとめたところ、チンパンジーでは15集団で152件の殺し(観察例58件、推定例41件、疑い例53件)が認められた一方、ボノボでは疑い例が1件のみだった。さらに、多くの例では雄が加害個体および被害個体であり、集団間の攻撃に関わる殺しが多く、加害個体数が被害個体数を大きく上回っていること、殺しの発生率の変異は人為的影響の指標とは無関係であることが判明したという。同研究グループはこの結果について、チンパンジーと共通の祖先から進化したボノボでは疑い例が1件あっただけだったことから、同種殺しというヒトにも共通する行動が祖先から受け継いだ行動特性なのか今回の研究からはわからないとしながらも、「この研究で従来の論争に結論を見たことで、ヒト科における同種殺し行動とその抑制のメカニズムの進化の研究が、今後さらに進むことが期待される」とコメントしている。
2014年09月30日