英国文学史上、最もセンセーショナルと称され、いまでは不朽の名作と讃えられる「ジェーン・エア」。これまでも多くの監督たちが映画化に挑んできたが、今年、新たな傑作が誕生した。物語が誕生した1847年当時、女性の自立を描いた衝撃的な古典に、21世紀らしい新鮮なアプローチで取り組んだのは、長編デビュー作『闇の列車、光の旅』でサンダンス映画祭監督賞に輝くなど、高い評価を得たキャリー・ジョージ・フクナガ監督だ。モラルを犠牲にせず、愛を貫くジェーンの姿勢1977年、アメリカ生まれの米国人だが、名前からもお分かりのように、祖父母、父が日系アメリカ人、母がアメリカ人という環境で育った人物。俳優だと言われても納得するほどの容姿の持ち主で、知的な話しぶりからは、洞察力の鋭さもうかがわせるハリウッド期待の新進気鋭だ。前作では、女性の強い精神性を描いていたが、本作でも、ジェーン・エアが真実の愛にたどり着くまでの“選択”に焦点を当て、そこから一人の人間が自らの尊厳を守り抜き、愚直なまでに強く清らかに生きようとするさまを見事にあぶり出している。この名作文学の魅力についてフクナガ監督はこう話す。「ジェーンの強靭な精神に心を打たれたんだ。モラルを犠牲にせずに、愛を貫く姿勢がとても素晴らしい。この物語に惹かれたのは、普遍的で避けられないテーマをはらんでいるということがひとつ。そして、女性をめぐる旅という意味で前回の映画の続編のようなものであるということがもうひとつの理由だね」。フクナガ監督が感銘を受けたという精神性は、どこか日本人にはなじみやすい。作品を観ているとき、決して泣き言を言わず困難に立ち向かうジェーンの姿、その美学ある生きざまに、震災に直面した際に多くの日本人が見せた強さを思い出した。「そうだね。英国と日本には、一般的な共通点が多いと思うね。ほかの国や文化から隔絶されているという地理的な特徴が、精神性にも影響していると思う。島であるということ、ほかの文化から侵略されていないということ、文化が比較的混ざり合っていないということに共通点があるかもしれないね」。とはいえ、自分自身のバックグラウンドにある日本文化が、この物語をより深く理解する助けになったという意識はないという。「人には誰にでも共感や分析力というものがあり、様々なテーマの物語を受け入れることができるし、特にこの物語には普遍的な感情を呼び覚ます力がある。どんな文化圏に育った者にも理解できるメッセージが込められている。物語には、あまりに様々な要素が組み合わさっている。ただ、素晴らしい物語には人間性が反映されていると言える。様々な個性をもつ素晴らしい名作が世の中にはあるけれど、自分の考えや体験と重ね合わせることができ、強い共感を覚えるものを人は素晴らしいと思うのだろう。たとえ自分とは違う世界で生きる人々の話であっても、人は物語に感銘を受けることができる。それは人間というものが、結局は同じものを共有しているから。ジェーン・エアの物語についても同じだね。ジェーンが経験してきた過酷な人生、彼女が自ら選んだ人生の意味、そしてなぜ彼女がそれを選んだかということは、ミステリーでも何でもない。これは特殊な選択などではなく、とても難しい選択だったということなんだ。特に、彼女はうその生活で幸せを装うよりも、ロチェスターから逃げモラルを貫いて死ぬことを選ぶ。これはとても強い意志と決意に裏打ちされた選択で、たぶん、99%の人間が選ばない人生だと思う。ただ、誰でも難しい選択をしたことはあるものだ。だから、それと重ね合わせることはできるんじゃないかな」。「ガールフレンドには自分と出会う前のボーイフレンドがいるもの(笑)」実際に、彼自身も難しい選択をしたことがあるといい、「ここでは言えないけれどね」と笑顔を見せる。「全ての難しい選択は、自分を見つけ、知るのに役立つのだと思う。何を選んでいくかで、インテグレティ、強さを試される。自分が誰であるかを知る手がかりになる。そして、その選択をした後では、自分が変化していると感じるものだ。難しい選択をした後では、それ以前の自分とは同じではいられない。全てのものは変化していく。岩でさえね」。ところで、『ジェーン・エア』は誰もが知る名作文学であり、多くの監督たちが映画化してきた物語だが、今回、そのことでプレッシャーは感じなかったのかと聞くと、「ガールフレンドには、自分と出会う前に別のボーイフレンドがいるものだから」と笑う。「実際にプレッシャーも特になかったし、作品の成功についても、正直なところ考えなかったんだ。この作品を撮った監督たちと競う気もなかった。自分の映画を撮るときに、ほかの作品やほかの監督のことなどを考えたくなかったんだ。自分らしい決定ができなくなったり、自分の監督としての可能性を狭めたりしたくはなかったからね。それに、作品を比べられるという不安もなかった。彼らの映画は彼らの映画。自分は自分の視点で違った作品を撮るんだと思っていたから。僕の作品にはある種の自分が反映されているはずで、自分の直感が導く決定には、僕自身が映し出されているはずだから。いずれにしろ、ジェーン・エアの物語は素晴らしいのだから、これからも多くの作品が誕生するはず。誰かがやることになるんだ。シェークスピア作品を考えてみれば、同じ物語を繰り返し別の人間が世界中で舞台化している。それと同じようなものだと思うよ。なぜ繰り返し語られるのかと問われれば、『やらないほうがおかしいね。素晴らしい物語なのだから』と答えるね」。豊かな才能に裏打ちされた自信と余裕のなせる業なのだろう。揺るぎない選択眼により選んだキャストについても、こう話してくれた。「今考えられる最高のキャストだった。特に主演の二人については、別のキャスティングは考えられない。ジェーンを演じたミア・ワシコウスカと、ロチェスターを演じたマイケル・ファスベンダーは、これから長く素晴らしいキャリアを築いていくと思うし、そう願うね。彼らはとはとても素晴らしい仕事ができた。こういった誰もが知る名作の場合は特に、キャスティングは重要になる。シェークスピア劇や名作文学の場合、確かに多くの俳優が演じているし、適した俳優を選ぶこと自体は難しくはないかもしれない。でも、その作品の世界観を確立させるためには、一人一人の俳優が役に合っているかだけでなく、キャスト全体に調和が生まれているかが重要になる。それはまるでバスケットボールのチームのようなものだね。一人のスターだけでは成り立たない。成功のためには、一人一人が役割に合っていて、調和のとれた働きをしなければならないんだ。だから、キャスティングも映画作りにとって重要なひとつの基礎。そのほかにも基礎的なステージがいっぱいあり、つまりは失敗する要素もいっぱいあるけれど」。構図や色調も、その一つだろう。本作では、構図や色調の絵画的な美しさも印象深い。「実は、絵画には造詣は深くないけれど、写真は撮るんだ。イギリスの『Lula』という雑誌に、一連の作品を発表したことがあるんだ。実際に映画製作やキャスティングの現場などを自分自身で撮影している。これからも撮影していくつもりなんだ」。スチールとムービー。2つのカメラを使い分け、人間をフィルムに焼き付けていくフクナガ監督。今後もどんな物語を題材にしようと、その豊かな描写力をもってすれば向かうところ敵なしといったところだろう。「僕は、人として物語を語る手段として、画を撮っている。モチーフには、僕自身が興味を持てる物語かどうかが重要なんだ。監督として、またフォトグラファーとして、この作品を撮ってみたいと感じるよりも、むしろね」。次に、キャリー・ジョージ・フクナガが一人の人間として、興味を持つのはどんな題材なのか。実に楽しみな才能だ。(text:June Makiguchi)■関連作品:ジェーン・エア 2012年6月2日よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国にて公開© RUBY FILMS (JANE EYRE) LTD./THE BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2011.■関連記事:ミア・ワシコウスカ、元「OASIS」N・ギャラガーも!「SSFF&ASIA」注目のスターたち英国文学史上に残るスキャンダル!『ジェーン・エア』試写会に10組20名様ご招待ミア・ワシコウスカ、『ジェーン・エア』に続いて『ボヴァリー夫人』のヒロインにジュード・ロウに新恋人。お相手は舞台で共演した9歳年下の女優
2012年05月30日本年度のアカデミー賞で衣装デザイン賞にノミネートされた『ジェーン・エア』が6月2日(土)から公開される。これまで幾度も映像化されてきたシャーロット・ブロンテの傑作小説を前に、監督のキャリー・ジョージ・フクナガとスタッフが目指したもの。それは“完璧な時代の再現”だったという。そのこだわりはどこにあるのだろうか?その他の写真本作は、幼少期に両親を亡くし、孤独に生きてきた女性ジェーン(ミア・ワシコウスカ)と、横柄で気難しい上流階級の男性ロチェスター(ファスベンダー)の身分違いの恋を主軸に、苦難に満ちた人生の中で、真実の愛を探し求めるひとりの女性の姿を描いた物語だ。フクナガ監督は、原作の舞台となった1830年代に関する時代考証を徹底的に行い、衣装や言葉、作法のすべてに完璧を求めた。撮影は、小説の舞台となった英国ダービーシャー州で、奇跡的に18世紀の状態が維持されてきたというハドン・ホールの屋敷と敷地で行われた。さらに衣装は、『ある公爵夫人の生涯』で第81回アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞したマイケル・オコナー氏が担当。「俳優のために衣装を作るのは、登場人物の一部を作り上げること」と語るオコナー氏は、当時の写真を参考に、徹底的に研究を重ねたという。当時はまだミシンが発明されていないため、主要な登場人物の衣装はすべて手縫い。さらにスクリーン上ではドレスの下の見えない部分(パンタロンと長い下着、そしてプリーツの入ったペチコート)までもが忠実に再現されている。CG全盛期の現代において過去の風景を完璧に再現することは不可能ではない。しかし本作では、監督とスタッフ、キャストが一丸となり、あえて“手で作る”努力を惜しまずに19世紀の英国の風景を再現した。そのこだわりの数々が、映画『ジェーン・エア』に魅力を与えているのではないだろうか。『ジェーン・エア』6月2日(土)TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
2012年05月25日損保ジャパンは、マレーシア格安航空大手エアアジアグループの長距離路線エアアジアXと、海外旅行保険の販売に関して業務提携し、今月からエアアジアX利用客向け海外旅行保険「エアアジアインシュラトラベルプロテクション」の取扱いを開始したことを発表した。エアアジアのサイト上でのチケット購時に、損保ジャパンが引受先となる「エアアジアインシュラトラベルプロテクション」をあわせて提示することによって、航空券と海外旅行保険の購入をまとめて済ませることが可能になるという。プランは、片道航空券を購入した場合は保険期間が2日間の「片道プラン」、往復の航空券を購入した場合は、旅行期間に応じて最大30日間の保険期間が設定できる「往復プラン」の2種類があり、保険加入者に対し、海外旅行中の補償のほか、旅行先での医療機関手配などを行う「医療アシスタントサービス」、「事故相談サービス」なども提供するとしている。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月11日たっぷりうるおう使用感“美白できるSPF50+”花王は、さらさらで使い心地のよい日やけ止め「ビオレさらさらUV」シリーズから、SPF50+の強力UVカット機能とたっぷりうるおう使用感を持つ「ビオレさらさらUVアクアリッチ美白クリーム」(医薬部外品33gオープンプライス)を、2月25日に新発売する。*画像はニュースリリースより「肌にすっとなじみ、うるおった白肌を守る」「ビオレさらさらUVアクアリッチ美白クリーム」は、過酷な日差しをしっかりブロックするSPF50+の高いUVカット機能と、ウォーターリッチ処方でしっかりうるおう使用感を両立した美白クリーム。保湿成分を多く含有するクリームに、紫外線防御剤と植物由来の美白成分(カモミラET)を配合。メラニンの生成をおさえ、日やけによる、シミ・ソバカスを防ぐ。「濃厚なのに、肌にすっとなじみ、うるおった白肌を守る」という。元の記事を読む
2012年02月11日エステーは、10月20日から出荷を開始する、一般家庭でも安心して使える性能と価格を実現した家庭用放射線測定器「エアカウンター」を、新たな技術提供によりさらに性能をアップさせた上、税込み¥15,750としていた希望小売価格を税込み¥9,800に改定。また、販売ルートとして関東、東北のドラッグストア、ホームセンターなどを予定していたが、その需要の高さから福島県を中心に先行発売することとした。このたび出荷開始する「エアカウンター」は、新技術の導入によって放射線を測定する感度が上がり、最大約10分であった測定時間を最大約5分にて測定が可能となり、約半分に大幅短縮。パッケージデザインもMR_DESIGN代表のアートディレクター・佐野研二郎氏による、クリーンな空をイメージした水色と、下部に小さく家々を配置したかわいらしくシンプルなデザインとなっている。さらに、この「エアカウンター」には、首都大学東京の福士政広教授が監修した放射線等についての基礎知識を掲載した小冊子「正しく覚えよう!放射線の基礎知識」がセットになっている。詳しい商品情報はエステー(株)ホームページにて。 お問い合わせ先:エステー株式会社 お客様相談室TEL:03-3367-2120 プレスリリース提供元: 日経プレスリリース
2011年10月10日