「止める」「蹴る」をもっと早く正確にできるようになる指導はある?強豪チームと対戦すると止める、蹴るのレベルが格段に違う。狭いスペースでもピタっと止められるから顔も上がるしプレーに余裕がある。選手たちを一段階上のレベルに成長させてあげたいから、自分の選手たちにも教えたいけど、楽しみながらできる「止める」「蹴る」のレベルを高める練習はある?というご相談。今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、小学生年代の指導において大事なことをアドバイスします。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<「月謝を払っているんだから上手くして」かけたお金=上達ではないのにサッカーでもコスパを求める保護者にどう説明したらいい?<お父さんコーチからのご質問>はじめまして。お父さんコーチとして、息子が所属するチームのU-10を担当しています。少年団ではありますが、地域ではそこそこ強く、県大会の常連チームではあります。今回お伺いしたいのは、「止める」「蹴る」というサッカーの基本をしっかり身につけさせるお勧めのトレーニングです。チームの代表の人脈で、近隣県の全少出場常連強豪チームとも練習試合をさせてもらう機会があるのですが、やっぱり「止める」「蹴る」の基礎技術が全然違います。狭いスペースでも、強くて早いボールをピタッと止めて素早く味方にパスを出すなど、速さと強度が桁違いです。やっぱり止めて蹴るがしっかりできているからしっかり顔も上がっているし、プレーに余裕があるなと思って見ています。勝つことだけがすべてではありませんが、子どもたちをもう一段階成長させるために、「止める」「蹴る」のレベルを高めるお奨めのメニューはありませんでしょうか。できれば楽しんでできるようなものだとありがたいです。どうぞよろしくお願いいたします。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。全少に毎年出場するような強豪チームを見てしまうと、なるほど足元は上手いのでしょうね。■日本のスポーツは、小さいときから教え込みすぎしかし、日本のスポーツがほぼすべての競技で、「小さいとき(アンダーカテゴリー)」は強いのに、大人になると弱くなる傾向があることも知ってほしいと思います。ほかにも、オリンピックに出場する選手を見渡すと、20~30代が出てくる米国などのスポーツ先進国と比べると年齢層が低いです。彼らは高校や大学になって、自分の専門種目を決めます。日本のような全国大会もないため「ここで勝たなくては」「他人より秀でなくては」と焦らなくて済みます。対する日本は「小学生で勝てるように」と目の前の勝利や成果を追って、小さいときから教え込んでしまいます。■日本の子に足りないのは技術より「認知力」私は足元の技術よりも、日本の子どもに足らないのはサッカーの認知力だと考えています。この連載のアーカイブを見ていただけると「認知・判断・行動」の指導について書いていますので、良かったら読んでみてください。それはどういうことかと言えば、例えば今行われている欧州チャンピオンズリーグを見てみましょう。そのスピード、パスの精度。選手たち皆凄いです。ところが彼らが10歳の頃、どうだったかといえば、足元の技術は高くありませんでした。10歳の彼らが何をやっていたかと言えば、サッカーの成り立ちを学んでいるのです。どうしたら相手の逆をとれるか。どこにボール運ぶのか。どこで受けるのか。そういうことを小学生の間にやっています。これらのことがジュニアの指導では大事だと私も言い続けています。これらのことを探究したいので、私は小学生、中学生、高校生すべてのカテゴリーを教えています。例えば、外部コーチをしている府立高校の選手たちは、足元の技術は劣っているけれど、周りの高校と徐々に戦えるようになってきました。強豪校に追いつくために足元の技術をすぐに引き上げるのは難しいですが、頭のなかを変えることはできます。サッカーはどう点をとるのか。そんなことを伝えるだけです。■日本の選手たちは足元の技術はあるのに周りを使えない一度子どもの成長をイメージしてみましょう。子どもは大きくなっていくと、やれることが増えていきます。それが技術を身に付けるということですね。柔らかいタッチ、足に吸い付くようなドリブル。ところがそこに指導者が執着しすぎると、その年代でやらなくてはいけないことを忘れてしまいます。よって、日本の高校生は足元の技術を持っているのに、周りが使えない選手が非常に多いです。周りを見られないため、判断も遅れます。そうすると、相手のプレッシャーが速ければすぐに囲まれボールを奪われてしまいます。こんな状況を、イングランドの指導者たちは「バッドハビット(悪い習慣、悪癖)」と表現します。例えば日本では、ボールを持ったらすぐにドリブルする。ゴール近くに持ち込むと、仲間を使うことをせず無理に突破しようとする。そんなバッドハビットが見受けられます。子どものときから「勝負、勝負」と煽られてきたので、自分で何かしないといけないと思い込んでいます。1対1はチャレンジしないと許されないと考えているような気がします。私たち指導者はこの悪癖を早く直して、だれかがフリーでシュートを打てるよう相手を崩すことを考えられる子どもに育てる必要があります。そのためには、例えばボールコントロールは相手から遠いほうの足でやる。そんなことを確実にやろうとするチームは、なかなか見受けられません。■コートのサイズを変えることで強度が上げられるこのようなことを踏まえて、個人で行うクローズドスキルの練習をやり過ぎないようにしてください。止める、蹴るができないと勝てないからキック練習をしよう、ボールコントロールやドリブルの練習をしよう、とはならないようにしましょう。加えて、技術を上げるためにはどんなことをすればいいのか、メニューなどはネットなどからいくらでも引っ張ってくることができます。特に止める、蹴るにかかわるメニューは山ほどあります。それを取捨選択しながら、コーチングの手法を研究してください。例えば練習の「強度を上げる」とはどういうことなのか。そういったことをコーチ自身が考えてほしいと思います。コートのサイズを小さくすることで強度は変えられます。狭くすればディフェンスとの距離が短いので、プレースピードを上げなくてはなりません。そのなかで強いパスが出てきたら、止めるもうまくなります。そうやって練習を組み立てます。練習の最後には試合をして、やったことを試してもらいます。そんなことをやっていると変わってきます。池上正さんの指導を動画で見る>>■サッカー先進国ほど小学生年代のやり方を見直している(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)欧州や南米のサッカー協会は、各年代の指導をさまざま試しながら、よりよい育成法を模索しています。サッカー先進国ほど、小学生年代のやり方を見直しています。しかし残念ながら日本ではそういったことが足らないようです。皆さんを見ていると、日本のなかで強いか弱いとか、週末の試合のことしか考えていない気がします。それよりも、どうやったら練習を楽しく集中したものになるのか、子どもたちがどうしたら上手くなるのか、そういったことをぜひ考えてください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年04月15日一人ひとりの実力は相手チームと負けてないのに、パスやポジショニングなど組織的なプレーが上手くできず、試合に勝てない子どもたち。楽しく、真剣にやることが大事だと思って指導してきたけど、考えさせて導くコーチングだけでなく、勝たせるためにちょっと圧をかけて教え込むことも必要?と悩むお父さんコーチ。今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、指導において大事なこと、組織的なプレーができるようになるアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<ドリブルで相手の逆を作る動きが苦手な子どもたち。相手の動きを予想できるようにするお勧めの練習は?<お父さんコーチからのご質問>息子がいるU-9でサポートしてるパパさんコーチ5か月の者です。自分も小中と地域の社会人リーグでサッカーをしていました。自分なりに色々見て調べてサッカーのスキルをあげてきたつもりです。指導者としては初めてだらけのことなので、池上さんを参考にさせて子ども達に色々声を掛けてあげています。しかし試合になり強いチームと戦うと、個々の実力は負けてはないと思うのですがパスやポジショニングや組織的な部分で負けてしまい子ども達のモチベーションが下がってしまいます。僕は「サッカーは楽しくやるスポーツだよ!まずは練習から楽しく真剣にやろう」と言っています。試合に勝つ事は、やる気やモチベーションに繋がると思いますが、多少の圧力をかけてまでもコーチングだけではなく、ティーチングを行うべきなのでしょうか?<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。主たる悩みがはっきりとわからないのですが、最後に「多少の圧力をかけてまでもコーチングだけではなく、ティーチングを行うべきか」と書かれているので、教え込むというか、子どもに何かを「やらせる」イメージをお持ちなのかもそれません。■時としてティーチングは必要サッカーの指導において、時としてティーチングは必要です。小学生の間に知っておいたほうがいいことが9歳でもあります。特にこの年代からは、サッカーはこんなスポーツなんだという理解を深めなくてはなりません。上手な子どもがひとりでドリブルで抜いて行ってゴールするのではなく、みんなで協力し合ってゴールまでつないでいく。守るときも、誰かが抜かれたら責めるのではなく、仲間の失敗をカバーする。それがサッカーだということを伝えることもコーチの役目です。具体的には「味方をサポートするとしたら、どこの場所がいいかな?」とか「どこに動いたらボールがもらえるかな?」といった声掛けです。そういったことは、この連載のほかの回でもずっと伝えています。味方のサポートをしないと、サッカーにならないよということを教えてください。負けていると思われる「組織的な部分」こそ、まさしくサッカーの根本です。まずは、サッカーってこういうものだよと理解させるところからスタートしてください。■全員が賢いプレーをする川崎フロンターレジュニアの試合を参考にしてでは、仲間と協力してゴールするとはどういうことなのか。例えば、今年度の全日本少年サッカー大会は、JFATV(日本サッカー協会のYouTubeチャンネル)でほとんどの試合を観ることができます。そのなかで私がお勧めしたいのは川崎フロンターレのジュニアチームの試合です。彼らは体格が大きいわけではないし、スーパーな選手もいません。ただ、全員が賢いプレーをします。確か中盤の選手たちは5年生だったと思います。ご相談者様が指導なさっている子たちと2歳違いくらいです。2年後にあのような動きを目指すとしたら、今からポジショニングやサポートを認知するトレーニングをしてほしいと思います。やっていけば必ず変化が起きるでしょう。川崎フロンターレの試合も!JFA 第45回全日本U-12サッカー選手権大会のフルマッチなど動画はこちら>>※JFAのサイトに飛びます■選手権でも「良い判断」ができなくてフィジカル勝負になるチームが多い今よりずっとコロナが落ち着いていたころ、私が主宰している交流サイトのオフ会を行いました。その際に全国高校選手権を観ておられますか?とコーチの方々に尋ねたら「観ていない」「面白くなかった」という声が多かったです。選手たちがいい判断ができないので、体がぶつかるフィジカル勝負が多かったようです。素早い判断でプレーすれば、相手とコンタクトしなくてもかわせるはずです。コーチの方からも「そこが残念だった」という声が聞かれました。高校生でこうなってしまうのは、小学生からの育成で仲間とプレーする重要性、サポートの意味を教えられていないことも一因でしょう。■オシムさんが語った、組織的なプレーをするために大事なこと前述したように、全少で組織的なプレーをするチームはフロンターレくらいでした。それ以外は、ボールが来たら蹴ってしまったり、スーパーな子どもに頼ってしまうチームが目につきました。オフ会では「日本では、リスペクトとコレクティブが別々に理解されているけれど、これはつながっているんですよ」と話しました。皆さんもご存知のように、リスペクトは「尊重する」、コレクティブは「組織的」という意味です。私がジェフ時代にたくさん勉強させていただいたオシムさんは、こう話していました。「味方が動いているから使ってあげる。動いた味方を尊重するからパスを出す。そうすると、サッカーは組織的なものになる。リスペクトとコレクティブはつながっている。同じものなんだ。選手も、コーチも、そういう感覚を持たないといけない」■大人が何も言わなくても、子どもたちは当然勝ちたいものいかがでしょうか。日本のサッカー指導者たちが、そういう理解をしてくれると、サッカーの見方や育成は変わってくると思います。そして、このようなことが海外でいう「スポーツ教育」なのです。ところが、日本のスポーツ教育は「頑張る・耐える・やり抜く」といった精神論がいまだ主役です。コーチが伝えていくべきことは何か。それをもっと勉強していただく必要があります。最後に私のチームのことを伝えます。先日、今年初めて試合をしました。ほかのチームは人数も多く、そこから選ばれた子が出てきます。練習も試合もたくさんやっています。一方、私のチームは練習を週2回。試合は月に1回か2回です。それでも、4年生、5年生が、ハーフラインからシザースパスを5本通してゴール前まで持ち込みます。私は組織的なサッカーを教えています。もちろん勝敗などまったくこだわっていません。教えている子たちがどんなレベルで、いまどこまで到達しているか。次にどの様な課題を出すべきか。そういったことを観ながら練習を進めます。課題を見つけるために試合をします。結果にもこだわるべきだという指導者は多いですが、大人が黙っていても子どもは当然勝ちたいに決まっています。じゃあ、そのために練習で何をしたらいいかな?と、一緒に考えてあげるのがコーチの役目です。池上正さんの指導を動画で見る>>■たくさん失点をしても子どもたちが「楽しい」と言う理由(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)私のチームの選手は試合が終わると、一人ひとり保護者の前で感想をしゃべります。その日は1分け3敗。いっぱい失点しましたが、子どもたちは「楽しかった」「こんなことができた」「パスがうまくいった」などと非常にうれしそうでした。私は同時に保護者にこんな話をします。「どうでしたか?お父さんやお母さんが見ていると、(たくさん失点したので)そうは感じませんよね?もっと頑張ったらと思いますね?でも、子どもたちは楽しいんですよ」親御さんたちは、もっと頑張ってほしいのにという顔をされています。でも、回を重ねると、出来なかったことよりも、子どもが出来たことに注目し始めます。圧力をかけるとか、やらせなくてはと考えず、「大事なことを子どもに伝える」という姿勢を持ってください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年01月14日今年も、「JFA 第45回全日本U-12サッカー選手権大会」(旧全日本少年サッカー大会/以下全日本U-12)のシーズンとなりました。都道府県大会を勝ち抜いた競合チームが会場の鹿児島県に集まり、優勝を目指して白熱したプレーを繰り広げてくれることでしょう。決勝戦はテレビ放映も予定されています。そこで、同世代の選手たちのプレーを観ることのメリットについて、日本サッカー協会(以下JFA)普及ダイレクターの中山雅雄さんにお話を伺いました。(取材・文:小林博子)■ピッチに立つ選手たちは「憧れ」でなく「目標」動画配信アプリなどで、サッカー動画を好んで観る子どもたちはとても多いもの。ただしそれらの動画のほとんどは、試合の一部を切り取ったダイジェスト動画です。「華々しいゴールシーンや、技が光るきらめいたプレーに魅了されるのは当然のこと。しかしそれだけではなく、試合を通しで観ることにもたくさんの意味があります」と中山さんは話します。<<前編:ダイジェスト映像ではなく1試合見ることでオフザボールの理解が進む理由また、12月29日(水)には、「JFA 第45回全日本U-12サッカー選手権大会」の地上波でのテレビ放映が予定されています。サッカー少年の憧れの舞台に立ち、プレーする同世代の選手たちの姿は、子どもたちにとっては「憧れ」だけではありません。都道府県大会に出場し、勝ち進んだとしたら、自分がそのピッチに立っている可能性もあった試合だからです。この日戦う選手たちは、手の届く範囲にいる存在。中山さんは、「これから先、チームメイトや対戦相手になるかもしれない彼らの戦う姿は、叶えることができる『目標』」だといいます。■子どもたちが注目すべき3つのシーン目標として試合を観ることは、試合を「自分ごと化」できます。「自分だったらこうする」という意識が芽生えやすいからです。そのためには、ダイジェストではなく試合を通して観ることがサッカーというスポーツの理解を深めるのに役立つのです。ゴールなど試合の中で盛り上がったシーンは試合全体ではごく一部の瞬間です。ほとんどの選手が試合の中ではボールを持っていない時間が多いのです。ゴールの瞬間以外にも、試合ではさまざまなことが起こりますが、今回はその中でも小学生の子どもたちがとくに観るべき3つのポイントを中山さんが教えてくれました。1.試合の流れ比較的プレー時間が長いにもかかわらず、1つのゴールで勝敗が決まるサッカー。その1点を奪い、守る試合の中には、数々の「流れ」が存在します。その流れを感じられるのは、ダイジェスト動画にはない試合観戦の醍醐味です。また、現代サッカーでは試合の中で戦術が変わるのはよくあること。流れにのりつつ、状況に応じてどう戦術を変えているかなども見どころのひとつです。2.ダイジェストとして切り取られない動きゴールの手前のシーンで、選手たちはどうしているのか。ダイジェスト動画になるスーパーゴールが生まれるためには、パスやドリブルなど、ゴールまでボールを運ぶことに成功した何かがあるはずです。それ以外にも、ミスをした際にどうリカバリーしているか、オフザボールではどう動いているのかなど、シーンを切り取られた動画にはない学べるポイントにも注目しましょう。3.自分のポジションの選手に注目する自分の目線で観たい選手の動きを見られるのも、試合を通しで観る意味のひとつです。これはスタジアムなどで生でみるほうが自由度が高いのですが、テレビでも十分学ことはできます。例えばドリブラーなら、ボールを持ってなぜ前向きになってスタートできたのか。どうやって相手をかわしてチャンスをつくるために何をしているのかを観察するのは、自ら観ようとしないと観ることができません。ダイジェストだと相手をかわしてスタートしたシーンから始まりがちだからです。■テレビで観戦だけのメリットもサッカーの試合を通しで観るのには、生観戦またはテレビやオンラインでの試合中継の2パターンがあります。スタジアムの臨場感や自由度の高い観戦にはテレビ観戦は及びませんが、生観戦にはないメリットもいろいろあります。まずは「解説」があること。試合の展開を即座に言葉にして理解を促してくれるので、子どもたちの学びにもつながります。2つ目は、画面がスイッチされること。生観戦では見える景色が席に依存されますが、テレビではわかりやすい角度や位置に何台もカメラがあり、視聴者にとって最適な距離や角度から、プレーがよりわかるように放送されます。サッカーを熟知したスタッフによるその編集は、とくに小さなサッカー少年たちにとっては「観るべきポイント」がわかりやすくなることでしょう。「JFA 第45回全日本U-12サッカー選手権大会」は、12月29日(水)10:30から日本テレビ系31局ネットで放送されます。観るべきポイントをおさえつつ、同世代の選手たちの戦いを観戦してみてはいかがでしょうか。子どもたちの「目標」が1つ増えるかもしれません。【放送予定】TV放送、インターネットライブ配信予定はこちら>>中村憲剛さんのメッセージを含む大会オープニング映像や、ラウンド16までの【フルマッチ】動画も見られるJFATV(YouTubeチャンネル)はこちら>>
2021年12月25日今年も、「JFA 第45回全日本U-12サッカー選手権大会」(旧全日本少年サッカー大会/以下全日本U-12)のシーズンとなりました。都道府県大会を勝ち抜いた競合チームが会場の鹿児島県に集まり、優勝を目指して白熱したプレーを繰り広げてくれることでしょう。決勝戦はテレビ放映も予定されています。そこで、同世代の選手たちのプレーを観ることのメリットについて、日本サッカー協会(以下JFA)普及ダイレクターの中山雅雄さんにお話を伺いました。(取材・文:小林博子)■ダイジェストではない「サッカー観戦」を観る機会が減っているデジタルネイティブである今の小中学生たちにとって、動画を観ることは日常のひとつ。国内外の有名選手のスーパープレーや、日本代表チームのゴールシーンなどに釘付けになっている子どもも少なくないようです。その反面で、今の子どもたちは、キックオフから試合終了までを通して観戦することが減っているように感じませんか。代表戦ですらアジア最終予選はアウェイの試合が地上波で中継されなかったり、お住まいによっては地元のプロチームのスタジアムが遠かったりと、さまざまな事情で、サッカーの試合をテレビで観る機会が減っています。とはいえ、ダイジェスト動画だけでサッカーが理解できるのか、試合を観るのも選手として上達につながる大事なことではないのか、と感じている保護者・指導者の方もいるのでは。■1試合を通して試合を観ることの大切さ「ダイジェスト動画を観て、憧れの選手の華やかなスーパープレーにわくわくする気持ちを持つことは大切です。ただしそれだけではなく、試合の流れやオフザボールでの選手の動きも観られる、ダイジェストではない試合を観ることも、子どもたちのサッカー観を養う上ではとても大切なことです」そう話すのは、今回お話を伺ったJFA普及ダイレクターの中山雅雄さんです。どんなスーパープレーでも、その瞬間を生み出すまでに選手は試合の中でどんなふうに動いてそのプレーにつなげているのかなどは、ダイジェストだけでは知ることはできません。サッカーの試合に存在する「流れ」を感じることができるのは、一部を切り取った動画にはないヒントにあふれています。また、ゴールに結びついたり、ドリブルで突破できたりといった成功シーンだけではなく、ミスも観たほうがいいと中山さんは言います。プロ選手ですら試合の中ではミスをするので、そのミスにつながった理由や、どうカバーするかなども試合を通しで観るからこそ観ることができるポイントだそうです。■全少の試合には「手に届く目標」がたくさん発見できる今年の全日本U-12サッカー選手権大会は、12月26日(日)~12月29日(水)の開催に伴い、JFATVで全試合を生配信します。また、準決勝、決勝の様子は日本テレビ系31局ネットにて、決勝戦当日の12月29日(水)10:30より録画中継が行われます(決勝戦のキックオフは9:30を予定)。準決勝の放送予定はこちら>>全少は同世代の選手たちのプレーを観るまたとない機会です。「身近な存在の子どもたちのプレーにも、観るメリットがたくさんありますよ」と、中山さん。最大のメリットは、同世代のトップレベルの選手たちのプレーを観ることにより、自分たちがたどり着きたいレベルを知り、サッカーに対するモチベーションを高めるきっかけになるからということです。プロの選手による華やかな成功シーンは「夢」、「憧れ」です。小学生がすぐにできるかというとそうではないはず。対して同世代の選手たちの姿は、来年、再来年にこうなっていたいという身近な「目標」になり得るからです。実現可能な目標を明確に持つことで、サッカーに対する姿勢にも変化がみられるかもしれません。■まずは親御さんが楽しんで観戦を試合を観ることの大切さを理解すると、ぜひわが子に観戦させたくなるところですが、子どもがすすんで観たいとは言わない可能性もあります。「うちの子はサッカーをするのは好きだけど、観るのはそれほどでもないみたい」そんな声もちらほら聞きますが、それならそれでOKだと中山さんは言います。「サッカーは観るより自分でプレーするほうがもちろん上手くなる」とのこと。それゆえ、興味が持てない状態で無理に観させる必要はないのだそう。「まずは親御さんが楽しく観戦している姿を見せてみては」とのアドバイスもいただきました。「お子さんに観させる」のではなく、まずは大人が楽しむ1時間として決勝戦をテレビ観戦するのもおすすめです。その世代の最高の舞台で、勝利を目指して一生懸命プレーする子どもたちを応援してください。【放送予定】TV放送、インターネットライブ配信予定はこちら>>中村憲剛さんのメッセージを含む大会オープニング映像や、ラウンド16までの【フルマッチ】動画も見られるJFATV(YouTubeチャンネル)はこちら>>
2021年12月24日