人気漫画家・福満しげゆきの代表作を実写映画化した『ヒーローマニア-生活-』の初日舞台あいさつが5月7日に、都内で行われ、東出昌大、窪田正孝、小松菜奈、船越英一郎、片岡鶴太郎、豊島圭介監督、山崎静代(南海キャンディーズ)が登壇した。初日舞台あいさつ/その他の写真うだつの上がらないフリーター(東出)が、驚きの身体能力を誇るニート(窪田)、情報収集力が抜群の女子高生(小松)、夜な夜なカナヅチで悪を退治するサラリーマン(片岡)という個性豊かな面々と意気投合し、街にあふれる小さな悪を成敗する自警団を結成。やがて、街の“ヒーロー”になるが事態は思わぬ方向に…。本作でコメディ演技に初挑戦した東出は、「現場は和気あいあいとした雰囲気。ずっと楽しかったので、振り切る演技ができた」と手応えたっぷり。豊島監督とは2度目のタッグで「僕らは監督が大好きなので、モニター越しにニヤニヤした表情を見ると、喜んでもらえたと思えて、こっちまでうれしくなる」と強い信頼感を示した。同じく従来のイメージを役柄に取り組んだ小松は「皆さんマイペース。自由な雰囲気で、変に緊張せず伸び伸びできた」と満足げ。「笑えて泣けて、スカッとするエンターテインメント作品になった」とアピールした。また、窪田はベテラン俳優の船越から「ゴキブリを見て逃げ出した」と暴露され、当時の恐怖を思い出したのか、「皆さんは普通に弁当を食べていて・・・。黒い何かがゴソゴソしているのに、よく食べれるなあと・・・」と苦笑いをしていた。『ヒーローマニア-生活-』公開中取材・文・写真:内田 涼
2016年05月07日福満しげゆきの人気マンガを、東出昌大、窪田正孝、小松菜奈、片岡鶴太郎らで実写映画化する『ヒーローマニア-生活-』の特別映像が公開になった。ヘタレな主人公・中津に焦点を当てた内容で、オファーを受けた東出は撮影前に、ヘタレに見えるように走り方などを研究したという。『ヒーローマニア』/特別映像映画は、うだつの上がらない中津が、謎の身体能力を誇る土志田(窪田)、情報収集力が抜群の高校生カオリ(小松)、昼はサラリーマンで、夜は“若者殴り魔”として活動している日下(片岡)に出会い、町を守る自警団を結成する。街にはびこる小さな悪を見つけ、懲らしめていく彼らの活動はやがて実を結び、自警団は、警備サービス会社“ともしび総合警備保障”という大きな組織になるが、新しいメンバーの中に、その力を私欲の為に使う者が現れ、秩序は徐々に崩れていく。特別映像は、会社をリストラされコンビニでバイトをはじめた中津が、バットを振りかざして悪を退治する姿や、自警団として土志田、カオリ、日下と悪に立ち向かうシーンが登場する。他の3人と違って、目立った能力のないチームリーダーの中津役について東出は、「こういう役に挑戦できるんだって思えて純粋にうれしかった」とコメントをしており、メガホンを執った豊島圭介監督は「誰も知らない東出くんのキャラをどうしても撮りたかった」とこだわりを明かしている。『ヒーローマニア-生活-』5月7日(土)全国ロードショー
2016年04月22日人気漫画家・福満しげゆきの代表作を実写映画化した『ヒーローマニア-生活-』の完成ヒーロー(披露)上映会が4月20日に、東京・新宿バルト9で行われ、東出昌大、窪田正孝、小松菜奈、船越英一郎、片岡鶴太郎、豊島圭介監督が登壇。配給を手がける東映の“ヒーロー”である仮面ライダーのサプライズ登場もあり、東出は「スゴっ!」と興奮しきりだった。完成ヒーロー上映会その他の写真うだつの上がらないフリーター(東出)が、驚きの身体能力を誇るニート(窪田)、情報収集力が抜群の女子高生(小松)、夜な夜なカナヅチで悪を退治するサラリーマン(片岡)という個性豊かな面々と意気投合し、街にあふれる小さな悪を成敗する自警団を結成。やがて、街の“ヒーロー”になるが…。本作で初のコメディ演技に挑んだ東出は、「緊張感はありつつ、誰一人怒ったり、怒鳴ったりしていない現場。楽しい雰囲気が、作品にも出ていると思う」と振り返り、「窪田くんはアイスの差し入れに『ウェ~イ』と喜んでいたし、菜奈ちゃんはダジャレを言わせたら天才的」と共演者の意外な素顔を披露。窪田は「登場人物はみんなマニアックで変態ですが(笑)、遊び心もありエンターテインメントがたっぷりな作品」と見どころをアピールした。原作との出会いから約5年の構想期間を経て、映画化にこじつけた豊島監督は、「当初はこんな素晴らしいキャストで映画化できるなんて思ってもいなかった。あえてバランスは考えず、好きなものを詰め込んだ作品なので、いろんな角度で楽しんでもらえれば。キャストの皆さんのイメージとは違う面を描くことを念頭に置いた」と話した。『ヒーローマニア-生活-』5月7日(土)全国ロードショー取材・文・写真:内田 涼
2016年04月20日古川雄輝さんの2年ぶりの主演舞台『イニシュマン島のビリー』は、アイルランドの島に暮らす手足の不自由な少年を描くブラックコメディ。「舞台自体がハードルが高いうえ、日本とは笑いの質が違う海外のコメディだけにどうなるか…。ただ、いまはビリーのことを考えたいんです。どうしてもハンディキャップの部分がクローズアップされる役ですけれど、閉鎖的な田舎の島で映画俳優になる夢を見ている心優しい17歳の少年という、内面の部分に真摯に向き合えたら、と思っています」ビリーとして「どう動いたらいいかを大事に」。彼の優しさを「行動で表現していけたら、自然とそう見えるのかもしれない」。取材が行われたのが稽古初日を目前にしたタイミングだったこともあり、役についてあれこれ考えを巡らせていた。ただ、稽古しながら変わってくることも多いだけに、「いまはとにかく早く森(新太郎)さんの演出を受けて、自分の考えていることが正しいか、一回答え合わせをしたい」とも。「演技ってどれが正解かわからないんで、わりとテクニカルなことから考えちゃうんです。自分なりに準備して、現場で急に方向性が変わったときに対応できるようにしておくと、戸惑わずに済みますから」発言の端々に理系男子の片鱗が。「理系脳だとよく言われます。物事を組み立てて考えたいんですよね」客観性のある人かと思えば、「客観性はある方だと…いや、ないな(笑)」。在学中にミスター慶應に選出。その後、合格していた大学院への進学をやめ、芸能界入りした経緯からしても、意外と直感型の人?「ミスター慶應に選ばれた後、オーディションを受けたのですが、必死ながらもやっていて楽しかったんです。ただ、やればやるほど俳優という仕事は難しい。舞台は、稽古期間が長いぶん挑戦ができる場なので、怯んでしまう自分を奮い立たせて臨みたいです。少しでも自分の引き出しを増やしていけたらいいですね」◇ふるかわ・ゆうき1987年生まれ。2010年芸能界デビュー。出演作にドラマ『5→9~私に恋したお坊さん~』、映画『脳内ポイズンベリー』など。出演映画『太陽』が4月23日公開。◇心優しく理知的ながら、ハンディキャップゆえに周囲からは馬鹿にされている少年・ビリー(古川)。ある日、彼の住む小さな町のすぐそばに、ハリウッドの撮影隊がやって来る。3月25日(金)~4月10日(日)三軒茶屋・世田谷パブリックシアター作/マーティン・マクドナー翻訳/目黒条演出/森新太郎出演/古川雄輝、鈴木杏、柄本時生、山西惇、峯村リエ、平田敦子、小林正寛、藤木孝、江波杏子S席8500円A席6500円(共に税込み)ホリプロチケットセンターTEL:03・3490・4949※『anan』2016年3月30日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・望月リサ
2016年03月25日日本国内のみならず、世界から注目を集める「デスノート」シリーズの正当な続編とされる最新作『デスノート 2016』。この度、主演を務める東出昌大が写る場面写真が解禁された。キラこと夜神月(ライト)とLの死から10年。再び死神が地上にデスノートをばらまき世界中が大混乱に陥っていた。夜神総一郎が立ち上げた「デスノート対策本部」は存続していた。すでに亡くなった夜神総一郎の跡を継ぐべく、キラ事件に精通した三島を筆頭に、唯一10年前のキラ事件を経験した松田ほか5人の対策特別チームの捜査官たちを中心に警視庁内に本部を構えていたのだ。ロシア、ウォール街そして渋谷でのデスノートによる大量殺人が行われる中、世界的私立探偵にして、“Lの正統な後継者”竜崎が加わり事件解明に当たり、地上には「6冊のデスノート」が存在する事が判明。その矢先にキラウィルスと呼ばれるコンピューターウィルスが世界中に拡散された。そのメッセージとは「他の所有者に次ぐ。速やかに私に差し出せ」とデスノートの提出を呼びかけだった――。原作は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて読み切りから始まった伝説的コミック「デスノート」で、日本国内累計発行部数3,000万部を誇る大ヒットカリスマコミック。『DEATH NOTE』『DEATH NOTE the Last name』と実写化がされ、メガヒットを記録。また、海外からの注目も高く、スピンオフ作『L change the World』を合わせると35の国際映画祭に招かれ、60以上の国と地域で公開され、3作の日本国内興行収入は100億円を超え、名実共にいまもなお人気を博している。そして伝説となった本映画シリーズ誕生から10年目となる年に、正統な続編として完全新作映画となったのが本作だ。今回の舞台となるのは、デスノートを駆使して世の中に野放しになっていた凶悪犯を次々と死に追いやったキラこと夜神月(藤原竜也)と、命をかけてキラを食い止めたL(松山ケンイチ)との天才同士の対決から10年を経た世界。デスノートを追う男・三島創役の東出さんをはじめ、デスノートを封じる男・竜崎役の池松壮亮、デスノートを制する男に菅田将暉、世界中に散らばった“デスノート”6冊のうち、1冊を手にする青井さくら役に川栄李奈が出演。さらに前作でも出演している“ミサミサ”こと弥海砂役に戸田恵梨香が続投している。そして今回解禁されたのは、スーツ姿の主人公・三島が写し出されている2枚。視線の先には一体何があるのだろうか…と、物語の想像膨らませる場面写真となっている。三島は、月の父・夜神総一郎により警視庁内に立ち上げられたデスノート対策本部特別チームの捜査官の一人で、10年前に起きたキラ事件と総一郎の資料から夜神月について徹底的に調べあげ、“研究ノート”を作成。対策本部一、“デスノートヲタク”と呼ばれるほど「事件とルール」に精通しているという人物。また、「デスノートに名前を書かれた人間は死ぬ。その人物の顔が頭に入っていないと効果は得られない」というデスノートのルールに対する最大の防御策として、デスノート対策本部のメンバーは、三島をはじめなんと全員が“偽名”。お互いの本名も知らされてないという。さらに本名や過去の経歴を知られないように、家族のいない人間が選抜されているということが今回判明した。新たなキャストが続々と発表される中、「ベルリン国際映画祭」のEuropean Film Marketでも世界中が注目していることを実証してきた本作。今後の続報にも期待ができそうだ。『デスノート 2016』は10月29日(土)より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国にて公開。(cinemacafe.net)
2016年03月24日トーホーは、版画家・君島龍輝氏の個展「版画家・君島龍輝 ~BANGAの世界展~」を開催する。会期は1月15日~2月13日(日曜・月曜・祝日は休廊)、開館時間は11:00~19:00。会場は東京都・浅草橋のGallery t。入場無料。同展では、版画家・君島龍輝氏によるBANGA(下絵を描かずに版木を彫る技法)の作品が展示される。会場では、同氏がその技法により龍や鳳凰で宇宙を表現した、畳242枚分(400平方メートル)もの巨大な木版画作品「COSMO-242」の中心となる太陽と主要部分が公開されるほか、BANGAの小作品が展示されるという。ちなみに「COSMO-242」は、世界最大&世界最長の木版画としてそれぞれギネス世界記録に認定されているとのことだ。また、イベント初日の1月15日 18:00~20:00には、オープニングレセプションが開催される。レセプションへの参加は予約不要。入場無料。このほか、1月15日(11:00~18:00)と16日(11:00~13:00、15:00~18:00)には、オリジナル版画実演販売が行われる。作品はA5サイズ。制作費は54,000円(版木制作、版画額装)。制作時間30分。さらに、1月16日(13:00~15:00)には、 BANGA塾《体験教室》が開催される。受講料は1万800円(彫刻刀や筆などの道具レンタル代、和紙や絵具などの材料代、額装代が含まれる)。定員8名。版画実演販売やBANGA塾についての問い合わせは、Webサイト内に記載のあるメールアドレスに、タイトルを「版画実演販売」または「BANGA塾」とし、名前(ふりがな)、連絡先を明記してメールを送信する。なお、君島龍輝氏は1956年、那須温泉湯本生まれ。広島市在住。1983年にギタリストから版画家に転向、個展開始。1992年、ジャズミュージシャン(リチャード・デイビスなど)のコンサートポスターを多数手がける。1994~1998年、NYのギャラリーで個展を開催するために訪米。2012年、畳サイズ180枚の巨大木版画「奇跡の時空」の彫りが完成す。2013 年「巨大木版画」世界最大&最長に挑戦、制作開始。2014年、畳サイズ242枚の超巨大木版画「COSMO-242」完成。世界最大の木版画400㎡・世界最長の木版画220mギネス世界記録認定、2冠達成。2015年3月4日、ギネス世界記録共同通信発信。同年7月イタリアピストイア聖堂 個展。
2016年01月05日EIZOは9月1日、「FlexScan」と「ColorEdge」、「FORIS」3ブランドの液晶モニタにおいて「無輝点保証」サービスを開始した。輝点があった場合、購入から6カ月以内であれば、無償で液晶パネルを交換するサービスだ。輝点とは、画面の背景に黒色を表示した際、赤・青・緑で常時点灯しているサブピクセルのこと。2015年9月1日以降に購入した対象製品で輝点があった場合は、EIZOで確認したのちに無償で液晶パネルを交換する。保証期間は購入から6カ月以内。ただし、1つのサブピクセル全体が点灯するものを保証の対象とし、サブピクセルの一部が暗く光るものや、サブピクセルの全部が光っていないもの、異物が原因で光って見えるもの、背景が白色の際に赤・青・緑以外の有色で見えるもの(黒点)は対象外となる。無輝点保証の対象製品は以下のとおり。FlexScan:「EV2450」「EV2450-R」「EV2455」「EV2455-R」「EV2736W-Z」「EV2730Q」「EV2750」「EV2750-R」「EV3237」、および発売日が2015年9月1日以降のIPSパネルを搭載したFlexScan EVシリーズColorEdge:「CS230」「CS240」「CS270」「CX241」「CX271」「CG247」「CG277」「CG248-4K」「CG318-4K」、および発売日が2015年9月1日以降の全ColorEdgeシリーズFORIS:「FG2421」「FS2434」「FS2434-R」「FS2735」、および発売日が2015年9月1日以降の全FORISシリーズ
2015年09月01日その格好良さ、その知的さ、その色っぽさ、イケメンという表現では足りないほどの魅力を持った俳優・古川雄輝。その類い稀なる魅力を活かし、すでに「イタズラなKiss~Love in TOKYO」(ドラマシリーズ)などで人気を博している彼が、新作映画『脳内ポイズンベリー』でこれまでとは少し違うイケメン役に挑んだ。演じるのはヒロイン・いちこ(真木よう子)が恋する相手、年下のアーティスト、早乙女23歳。似ているけど似ていない!?早乙女を通して見えてくる古川さんの素顔──。「台本を読んで感じた早乙女像は、子供っぽいところがある、つき合うにはいいけど結婚には向いてない、すぐに感情を表に出してムスッとしてしまう、連絡がテキトーなどですが、実はキャラクターとして共感できる部分もあるんです(笑)。僕もすごく子供っぽいところがあって…たとえば、ホイコーローを食べるシーンで早乙女はキャベツをよけて食べるんですけど、僕も20歳までまったく野菜が食べられなかった。ああ、一緒だなぁって(苦笑)。あとは、大人の男性なら顔に出さずにスマートに振る舞うところで感情を出しちゃったりするし、マイペースだし。そういうところは自分と一緒だったのでそのまま活かして演じています」。クールなイメージが強いだけに早乙女的な一面はかなり意外。けれど、好きな女性にすべてを“合わせる”ことは「ないですね」ときっぱり言えるのは何だか格好いい。「僕は僕なので、すべてを相手に合わせることはしないです。この映画でもいちこさんは早乙女に合わせすぎて、けっきょく疲れ果ててしまって、2人の関係は悪い方へ行ってしまう。だから無理矢理自分を変えることはしたくない。でも、もしも僕がいちこさんだったとしたら、早乙女ではなく断然、(恋敵である)越智さんを選びますね」。その理由を聞くと、子供っぽいと言うのはやはり謙遜で、いやいやどうして素敵な大人にしか見えない。そこから古川さんの恋愛観、結婚観が見えてきた。「女性の年齢によって付きあい方って変わってくると思うんです。いちこさんは30歳。一般的に30歳前後の女性とつき合うなら結婚を意識するべきだと僕は考えていて。というのも、僕がいちこさんと1年間つき合ったとすると、いちこさんの30歳から31歳までの時間を奪ってしまうわけですから、つき合うときにちゃんと将来を考えて責任を持つべき。だから、越智さんがおすすめなんです(笑)」。古川さんが「絶対、越智さん」というように、観客はいちこを通して、自由な年下アーティストの早乙女か、それとも頼れる年上の編集者の越智さんか、2人の男を天秤にかける。そんないちこの恋愛模様が描かれるのが現実パート、いちこの頭の中を描くのが脳内パート。面白いのは、原作から引き継いで描く脳内会議──理性、ポジティブ、ネガティブ、記憶、衝動、5つの思考=キャラクターたちがいちこの頭のなかに存在し会議をする。とても斬新な設定がみどころだ。「僕は現実パートだったので、脳内パートの撮影風景は見ていなかったんですが、完成した映画を観てものすごく面白いなぁと驚きました。あと、女性って…と思ったのは、思ったことを相手に言わずに脳内会議してしまう心理ですね。女性のみなさんは「察してほしい」と言うけれど、男はバカだから察することはできない。僕は無理ですね(苦笑)。早乙女のセリフにもありましたけど、言ってくれないと分からないんです…」。男は女の生態を、女は男の生態を垣間見るという意味でも、この映画は実に面白い。それが色濃く表れているとてもユニークなシーンがある。30歳になったいちこに向かって早乙女が、「ないわ~」と言うシーン。早乙女的には「30歳にはぜんぜん見えないね」という、いい意味の「ないわ~」であるのに、いちこは勝手にネガティブな意味として捉え、あれこれ妄想してショックを受ける。コメディ要素の強いシーンでもある。古川さんに課せられたのは「ないわ~」のセリフをアドリブで演じること。「あのシーンはアドリブも含め20テイク以上撮りました。実際の早乙女じゃない、いちこさんの妄想のなかでの早乙女を演じるので、不思議な感覚でしたね。そのシーンは僕ひとりでの撮影。真木さんはその日の撮影を終えていたので、てっきり帰られたと思っていたら、実はモニター脇でずっと見ていたらしくて…。“古川くん、あんな(にヒドイ)こと思っていたんだね…”って。もう、なにも言い返せなかったです(苦笑)」。そんな見たことのない古川さんの演技を引き出したのは、佐藤祐市監督。「いつか仕事をしてみたかった」と喜ぶ反面「今までやったことのない挑戦もあった」と苦労を語る。「今回は演技プランを考えずに現場に入ったんです。それは初めてのこと。いつもは、こうきたらこう、この動きならこう、このセリフなら…とあれこれ考えてプランを練っていくんですが、僕が演じるのは現実パート、自然体で演じなくてはならない。加えて、監督からの指示がものすごく多くて、かつ細かかったんです。目線、手の動き、身体の角度、仕草…監督の細かい演出にひとつひとつ応えていくことで早乙女になっていきました。正直、決して楽しいとは言えなかったけれど、完成した映画を観ると、ちゃんとスクリーンの中に早乙女がいる。新しい演じ方を経験させてもらいました」。演技の幅を広げた古川さんは現在、中国、アメリカ、イギリスなど海外にも活躍の場を広げている。彼がこの先に目指すものは何なのか──。「引き出しの多い俳優になりたいというのがひとつ。あと、帰国子女なので英語を活かした仕事もどんどんやっていきたいんです。海外に住んでいるときに思ったのは、洋画に登場する日本人役をなぜ中国系の役者さんがカタコトの日本語で演じているんだろう?どうして日本人の俳優が演じないんだろう?という疑問。なので、そういう場でも活躍していきたいです」。(text:Rie Shintani/photo:Nahoko Suzuki)
2015年05月07日ドラマや映画での活躍目覚ましい東出昌大が初めて舞台に挑戦する。原作はイギリスの文学界における最高の栄誉といわれるブッカー賞、さらに大英帝国勲章を獲得し、日本での人気も高い作家、カズオ・イシグロが初めて手掛けた短篇集。独立しながらもテーマと状況がつながる5篇のうちから、「老歌手」「夜想曲」「チェリスト」の3篇をひとつに組み立て直して舞台の上に描き出す。脚本はてがみ座の長田育恵。演出を手掛けるのは、ここ数年立て続けに良作を手掛け、3度の読売演劇大賞優秀演出家賞を獲得する小川絵梨子だ。本番を2週間後に控えたなかで行われた公開稽古を覗いた。舞台『夜想曲集』チケット情報稽古場には二階建てのセットが組み上げられ、ところどころに椅子が置かれている。稽古場に入ってきた東出は、報道陣が稽古場を埋め尽くさんばかりの様子を見て「すっごい空気!」と笑う。キャスト同士、いい空気ができあがっているようで、通常とは明らかに違うこの状況に対しても過剰に意識することなく、笑い合いながら稽古開始を待っている。やがて稽古がスタート。東出演じる旧共産圏出身のヤンが、彼の亡き母がかつて大ファンだった往年の歌手、トニー・ガードナー(中嶋しゅう)とカフェで遭遇するシーン。静謐な空気の中で言葉がやり取りされる。その静けさを破るように登場したのが安田成美演じるトニーの妻リンディ。ロングコートに幅広のハットをかぶり、意識的か無意識か、やや無礼なところもあるマダムをそのしゃべり方と空気感で見事に体現。素朴な青年の雰囲気をまとった東出との対比が鮮明に見える。稽古の切れ目で緊張がほどけたような笑い声がセットの裏から聞こえてくる。長身の東出はチェロを構える姿、青いギターを構える姿が実にしっくりくる。稽古の中ではギターを持った東出がベネツィアのゴンドラに揺られるシーンや、近藤芳正によるサックスプレイが披露されるシーンもあり、物語の断片を観ただけでも幻想と現実の合間をたゆたうような、不思議な世界がそこに広がる。初舞台ながらこの物語の空気の中にすっと溶け込んでいる東出。彼が本番でどんな姿を披露するのか、期待が募る。公演は5月11日(月)から24日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場、5月30日(土)・31日(日)大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて。その後広島・富山でも上演。チケットは発売中。取材・文/釣木文恵
2015年04月28日東出昌大が、『夜想曲集』で舞台に初挑戦する。原作は、英国の作家、カズオ・イシグロの短篇集。演出を、気鋭の小川恵理子が担う。俳優の仕事を始めてから、いつかは立ちたいと思っていたというその場所で、東出はどんな姿を見せるのだろうか。「夜想曲集」チケット情報舞台には興味があった。出演作が相次ぐなか、「数えてみたらこの3年で30本位観ていた」のだという。やってみたかったのは、「映像と違う何かが求められる場所」だと思ったからだ。「舞台を経験したことのある方からよく聞いていたんです。舞台をやると自由に動けるようになるよと。それはたぶん、何回も同じ芝居を繰り返すことで、想像力とか演技の説得力というようなものがつくからだろうと思ったので。自分がどれくらい柔軟に自由に動けるようになるのか、怖くもあり、楽しみでもあるというところなんです」。実際、初舞台として挑むのは、想像力も説得力も大いに求められる作品となった。原作は、人生の晩年を迎えて心を揺らす人々の音楽をめぐる5篇の物語。そこから、「老歌手」「夜想曲」「チェリスト」の3篇がひとつの戯曲に再構築され、そのうち2篇に登場する若者を、東出はひとりの人物として演じることになる。すでにチェロの練習も開始。「弦に対して垂直に弓を引くだけで5年かかると言われたんですけど(笑)、だからといってあきらめるのではなく、ちゃんとお見せできるものにしたい」と意気込む。また、演じる人物には“旧共産圏の生まれのヤン”といった限られた情報しかないが、「ちゃんと生きている人間として演じられるようにその人物の背景を勉強したい」と下調べも始めている。「さらに難題だなと思うのが、どの人物もみんなストレートな感情表現をしないこと。言葉の裏にあるものをしっかり読み取って表現しないと伝わらないと思うので、課題は多いです」。舞台に立つまでに越えなければならない壁はいくつもある。それでも怯まないのは、「いい役者になりたい」という思いがあるからだ。「ありがたいことに、役者を始めてからいろんな新人賞もいただきました。でも、それで喜んでいられないというか。やり続けること、観てよかったと思っていただける役者になっていくことが大事だと思うんです。とくに舞台は、チケット代を払っていただいて足を運んでいただくんですから、緊張感を持って臨みたいと思います」。覚悟した役者は強い。東出昌大の初舞台、期待していい。公演は5月11日(月)から24日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場、5月30日(土)・31日(日)大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて。その後広島・富山でも上演。チケットは発売中。取材・文:大内弓子
2015年04月17日本田翼と東出昌大は、青春映画の似合う俳優、原作漫画をリアルにする力のある俳優だ。人気少女コミック「アオハライド」を映像化するにあたって、俳優たちがぶつかるであろう難関は、累計930万部(2014年12月現在)を越える漫画の世界感を、紙面上ですでに出来上がっているキャラクターを、どう現実世界に落とし込むか──。恋にも友情にも真っ直ぐな“双葉”に息を吹き込んだ本田さん、真面目に無器用に悩みながら“洸”に寄り添った東出さん。2人が映画『アオハライド』で感じて表現した“リアル”な感情とはどんなものだったのか?本田さんの演じるヒロイン・吉岡双葉、東出さんの演じる双葉の初恋の相手・馬渕洸。『アオハライド』は、彼らを中心に恋や友情が描かれる、いわゆる学園ものだ。少女コミックということで「そういうシチュエーションありえないでしょ…っていうのもあるかもしれないけれど、登場人物の性格が細やかで、本当に“いる”って共感する。私自身、思考回路が勝手に双葉ちゃんと同じように行き着いたというか、双葉ちゃんと自分自身の呼吸がすごく重なり合っているのを感じました」と語るのは本田さん。主演という大きなプレッシャーを感じつつも「考えていても仕方ないので、切り替えて、本田翼の演じる吉岡双葉を頑張っていこうと思ったんです」。その前向きさ、真っ直ぐさは、やはり双葉に通じるものがある。「双葉も本田翼も裏表がないんですよね。全世界が“本田翼”だったら戦争は起きないと思う」と、ヒロインに最大の賛辞を贈るのは東出さん。闇を抱えながらも、そのなかにそこはかとない優しさのある洸は「難しいと思った」という本人の言葉とおり、チャレンジングな役となった。「洸は自分が幸せになってはいけない…と、がんじ絡めになって、本当の自分を隠して、芝居をして生きている子なんです。そんな芝居をしている人間を演じるというのは難しいし、洸の心境を考えるとつらかった。気をつけたのは、その場その場を一生懸命生きるということ。僕自身は台本を読んでストーリーは知っているけれど、洸として毎回ショックを受けたり、驚いたりすることで、リアルな感情が伝わるんじゃないかなって思ったんです」。現在、22歳の本田さん、26歳の東出さん。20代の彼らが違和感なく学生服を着こなす、というのも演じる上での必須項目だった。東出さんは今年公開の映画『クローズEXPLODE』で高校生を演じているけれど、学ランとブレザーはまた別もの。「スタイリッシュさを損なってはいけないと思ったので、着こなし方も気を遣いました」と、撮影時のある工夫を明かす。「出演者はみんな20歳を超えていたんですけど、俳優に合わせるために学生のエキストラの年齢が高めに設定してあったりするんです」。また、スタッフ・キャストは約1か月間、富山に滞在し合宿状態で撮影をこなしていった。“同じ釜の飯”を食べて撮影したことで、三木監督を筆頭にチームは一致団結。キャスト同士もまるで本当の同級生のように「仲がよかった」と、撮影当時をふり返る本田さん。「実は私、すごく人見知りなんです。最初の頃は相手の目を見て話せなかったほど。なかなかみんなと仲良くなるきっかけを作れずにいたら、東出くんが連絡先を聞いてまとめてくれたんですよね。…それにしても、双葉と洸を含めたあの5人の関係、友情って羨ましいです。本音でぶつかってこそ本当の友情が築けるんですよね」。上辺だけではない関係を役としても役者としても築けたからこそ「撮影中は洸を演じるのが苦しくて、東京に帰りたいと思ったこともあるけれど、ふり返ってみると、濃くて楽しい1か月ちょっとでした。青春、でしたね」と、東出さんの瞳の奥はキラリと輝いていた。その5人が繰り広げる、“青春だなぁ”というシーンが映画にはいくつも登場する。なかでも本田さんと東出さんの記憶に鮮明に残っているのは、朝日を一緒に見るシーン。限られたわずかな時間のなかで最高のシーンをカメラに収めなくてはならない、チームワークの見せどころでもあるが、その“青春”な太陽を見て本田さんが発したひと言は──「鮮やかなオレンジ色だったので、つい、『イクラみたい』って言っちゃったんですよね(笑)」。この“らしさ”がチームをまとめていたんだろうと想像がつく。5人の友情にジーンと心打たれ、そして双葉と洸の恋のゆくえにキュンと心奪われる。キュンとくるセリフ、キュンとくるしぐさ、もしも自分がその立場だったらどうするんだろう…そんなふうにキャラクターの心情が自然と自分自身と重なっていくのもこの映画の魅力だ。本田さんのお気に入りのキュンとするシーンは、あまりにも好きすぎて“ハンド to ハンド”と命名したのだそう。「窓越しに双葉と洸が手を重ねているセリフのないシーンです。あのシーン、双葉は洸の気持ちをぜんぜん分からない設定なので、私自身もそういう気持ちで演じています。だから演じているときは、なんで洸はあんなに切なそうな顔をしているんだろうって思っていたんです。でも、完成した映画を観客として観ると、うわぁ、切ないよぉ…って、ものすごく切ないシーンでした」。そんな切なさを2人から引き出したのは、三木監督。『僕等がいた』『陽だまりの彼女』『ホットロード』など、青春映画、恋愛映画を数多く手がけてきた監督の手腕が今回も存分に発揮されている。「監督は絶妙なキュンキュンポイントを誰よりも知っている」「2人の恋にやきもきする!」「じれったい!」と、本田さんと東出さんが語るように、恋愛特有の感情──タイミングがほんの少しズレてしまうがゆえのやきもき感、じれったさ、ドキドキ感、胸キュンのすべてが『アオハライド』には詰まっている。(text:Rie Shintani/photo:Nahoko Suzuki)■関連作品:アオハライド 2014年12月13日より全国東宝系にて公開(C) 2014映画「アオハライド」製作委員会(C) 坂伊緒/集英社
2014年12月12日バイオレンス・アクション大作『GONIN』の続編となる『GONIN サーガ』がクランクアップを迎え、劇中写真と主演を務めた東出昌大らキャスト陣のコメントが公開された。その他の写真1995年に公開された鬼才・石井隆監督の『GONIN』は、佐藤浩市、根津甚八、ビートたけし、木村一八、本木雅弘らが出演し、カルト的な人気を集めたアクション大作。バブル経済が崩壊し、指定暴力団五誠会系大越組から巨額の借金返済を迫られた男が、五人の男たちを集め、暴力団を襲撃したことを機に壮絶な殺し合いを繰り広げた。『GONIN サーガ』はそれから19年後の2014年を舞台に、男達が遺したそれぞれの家族たちの血と宿命に彩られた新たな物語が展開される。東出は、前作で五人に襲撃を受け、命を落とした大越組若頭・久松(鶴見辰吾)の息子・勇人を演じ、桐谷健太は、同じく前作で命を落とした久松の組長・大越(永島敏行)の息子・大輔を演じる。土屋アンナは、五誠会の2代目に秘密を握られ、今は3代目の愛人に成り下がっている元グラビアアイドル・麻美役。柄本佑は、19年前の事件の真相を追うルポライターの森澤役。そして安藤政信は、本作の五人の敵役で、前作の五誠会会長・式根(室田日出男)の孫であり、麻美を愛人として囲う、五誠会三代目・誠司を演じる。監督の意見で主演に抜擢されたという東出は、「石井組という素晴らしい組で約一カ月演じさせていただいたのは、今まで経験したことのないような現場で、貴重な経験になりました」と振り返り、「自分自身の反省点もありますがみんなで作った現場なので今は作品の完成が待ち遠しいです」とコメント。安藤は「誠司は人間の悪の部分を徹底して背負い、それを貫かなければいけない役だったので石井監督とも何度もディスカッションしながら撮影をしていきました」と話し、「僕も、自分のためでもあるけれど、何より監督が喜ぶような僕を選んでよかったと絶対思ってもらえるようにと考えながら最後までやり切りました」と語っている。本作の五人目のキャスティングはまだ発表されていないが、「ファンがあっと驚くキャスティングを予定しております」とアナウンスされている。『GONIN サーガ』2015年 秋 全国ロードショー
2014年10月22日3月に開幕する舞台、SHOW-ismVII『ピトレスク』の出演者が2月14日、東京・日比谷シャンテでトークイベントを開催。女優の彩輝なお、風花舞、美鳳あや、そして作、演出を手がける小林香がファンの前に顔を揃えた。SHOW-ismVII『ピトレスク』チケット情報舞台は1942年、ナチス占領下のパリ。キャバレーがドイツ軍により閉鎖されてしまう。人々は夜間外出禁止令をかいくぐり、とある工場の地下に集まり、キャバレー存続に動き出す……。ナチス統制下にあっても、なお自由と喜びを求める人々を描く、ミュージカルナンバーあり、シャンソンあり、オペラありの音楽劇だ。彩輝なおは、キャバレーの元衣裳係で、今は映画館の切符売りをする女性カミーユ。彩輝が「オリジナルの楽曲もありますが、みなさんご存知の曲もたくさん出てきます。歌詞がシュールというか、重要な意味がある。いかにその歌詞の内容を伝えるか」がポイントと話すと、小林が「そう、替え歌大作戦」と笑う。テーマは人種と性別を越えた愛。小林は「舞台には同性愛者やロマ、いろいろなマイノリティが登場します。マイノリティの方々が、愛する人へ『愛してるよ』といえる世の中であってほしい」と作品に込めた思いを語った。出演はほかに、シャンソン界からクミコ、オリジナル楽曲も提供する中川晃教、ソプラニスタ・岡本知高。公演は3月27日(木)から4月3日(木)まで東京・シアタークリエにて。チケット発売中。
2014年02月18日「クランクアップを迎えて『おつかれさまでした』って声をかけられたとき、思わずワンワン泣いちゃったんですよ」――。それは東出昌大というひとりの俳優が誕生した瞬間だった。10代の頃からモデルとして活躍し、3度にわたってパリコレのランウェイを歩くなど世界の舞台で戦ってきた。そんな彼が23歳にして俳優に転身し、初めて臨んだのが映画『桐島、部活やめるってよ』である。初めての演技の中で24歳のルーキーは何を感じ、何を手にしたのか?映画の公開を前に胸の内を語ってくれた。俳優としての道、その“覚悟”「小説すばる新人賞」を受賞した朝井リョウのデビュー小説を映画化した本作。学校の人気者・桐島がバレー部を退部したといううわさが校内を駆け巡り、友人、カノジョ、果ては桐島と全く接点のなかった者まで様々な視点で青春が切り取られていく。東出さんが演じたのは桐島の親友の宏樹。多くの役がオーディションとワークショップで決まったが、中でも宏樹は最も多くの候補者が集められた役でもあった。そんなこととはつゆ知らず、当時まだモデル事務所に所属していた東出さんは軽い気持ちでオーディションに足を運んだという。「最初からあきらめていたというのも変ですが、『まさか自分が役者なんて』という気持ちが強かったんです。マネージャーが先方に『東出は芝居をしたことないし、できないですよ』と伝えていたくらいで、そんなやりとりがあった後だったので興味を持っていただけるとも思ってなかったんです」。1次選考で吉田大八監督と初めて顔を合わせ「すごく面白い方で、この人と仕事ができたらいいなぁと思った」と言うが、それでもまだ「まさか」という気持ちの方が勝っていた。だが選考が進むにつれて自身の中での気持ちが変化していくのをひしひしと感じていた。「モデルの場合、オーディションはあっても2次までなんです。だから3次選考に呼ばれたと聞いて『マジで?これはもしかするかも…いやいやいや!』って感じでしたが(笑)、だんだん躍起になっていき、その次になると『ここまで来たからには絶対に受かりたい』という気持ちになってました。そこで、また次があることを聞かされて、その頃にはほかの俳優のみなさんとのセリフのやりとりもあったりして、ハードルがどんどん上がっていくんです。意地もあったし、やりがいも感じたし、できないことも増えていったけどそれを面白いって感じるようになってましたね」。最終選考が終わったとき、吉田監督に改めて「これから役者一本で腹を括れるか?」と俳優の道に進む“覚悟”を問われたという。「別室に呼ばれて監督に『どうだった?』と聞かれて素直に『精一杯でした』と答えたんです。『いま、宏樹役を東出くんで考えてる』と言われたんですが、宏樹は原作でも中心人物の一人だったし出番も多い。現場に入ってから心が折れて『やっぱりできません』というわけにはいかないので、あのとき監督は覚悟を決めて『できます』と言える人にしか役は与えられないと最後に確認したんだ思います」。その言葉通り、“元パリコレのモデル”という肩書もプライドもかなぐり捨てて、撮影を通じて「とにかくできることは全てやろうという気持ち」で喰らいついていった。「監督からは『(宏樹がつるむ)帰宅部のみんなで一緒にご飯に行ってこい』と指令が出されたんですが、そういうところで『俺、今回が本当に初めてで』と最初から自分を全てさらけ出したんです。みんな年下ですが、本当にしっかりしてるし『いいものを作ろう』っていう情熱が伝わってくるんです。だから恥ずかしいとかそういう気持ちを抱くことなく『芝居ってどうしたらいいの?どういう風に考えてどう役作りしていくの?』ってどんどん聞いて、台本の読み方を教えてもらうところから始まり、勧められたことは全てやりました」。宏樹はかわいい彼女と陽気なクラスメイトに囲まれた“上”のグループの学生。放課後は帰宅部の仲間とバスケに興じるなどワイワイと高校生活を過ごしつつも、心のどこかに自分でもよく分からない不安やいら立ちを募らせている。それは映画のクライマックスでの映画部の前田(神木隆之介)とのシーンへと帰結していく――。東出さんはかつて高校時代に自身が感じた感情を引き出しつつ、宏樹の内面を作り上げていったと明かす。「僕自身、どちらかというとうるさいグループで『お前なんて悩みないだろ』って思われてたかもしれないけど、確実にモヤモヤした気持ちは抱えてました。モデルの仕事をしてはいたけどそれで一生とは思ってなくて、漠然と大学行くのかなとか。そういうときに美術部や軽音部の連中から『美大に行く』『音楽で生きていく』なんて話を聞かされると雷に打たれたような衝撃を受けたり。それはまさに宏樹と前田のやりとりですよね。限界に近づいていた宏樹が、カッコつけつつも最後の最後で心の声に正直になった結果があのシーンなのかな、と思うとすごく理解できました」。俳優業は「マイペース」、女性には「甘えさせてほしい」オーディションで覚悟を固めた東出さんだが撮影、そしてクランクアップ時の“号泣”を経て、俳優を一生の仕事とするという思いはますます強くなっているようだ。「これまで仕事のことで泣いたことなんてなかったし、ましてや23歳(当時)にもなって自分がそんな反応を示すなんて思ってなかったんですが…(苦笑)。その後、ロケ地の高知から東京に戻って年が明けてもふと『あぁ、もう『桐島』の撮影はないんだな』という思いがよぎってポカンとしてしまうこともあって…。それだけこの仕事にのめり込んでたんだなというのを改めて強く感じました。理想の役者像ですか?人間性を伴った俳優でありたいと思っています。身近なところでいいから幸せになって、それが反映されるような役者になれたらいいですね」。最後に映画ともこれまでの話とも全く関係のない自身の恋愛観についての質問を投げかけると、少しだけ頬を緩めつつこんな答えを返してくれた。「俳優の仕事って“勉強”という一言で片づけちゃうけど、釣りに行ったり慣れないボウリングをやったり、寄席や演劇に行くことも読書も全てが仕事なんですよね。だからそういう部分を理解してもらえないと付き合えないかなと思います。あと良くも悪くもマイペースでないとやっていけない部分もあると思うので柔軟に甘えさせてくださる方がいいですね(笑)」。(photo/text:Naoki Kurozu)特集:年下のカレ■関連作品:桐島、部活やめるってよ 2012年8月11日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2012「桐島」映画部©朝井リョウ/集英社
2012年08月06日