ヤフーは12月4日、IoT(Internet of Things)事業者の開発を支援するプラットフォームサービスの提供を来春より開始すると発表した。このプラットフォームは、主にIoT製品のハードウェア事業者に向け、製品とウェブサービスの連携をしやすくなるよう、さまざまなサービスやAPIを公開。これにより大手メーカーからスタートアップ企業まで、多くの事業者の製品開発や新規参入を支援する。公開するAPIは、Yahoo! JAPANの各種サービスだけでなく、国内外の多くのインターネット事業者からも協力を募り、オープンにインターネットにつながる製品とサービスが集まるプラットフォームを目指すという。なお、ワイモバイルとも連携し、本プラットフォームを活用したIoT製品のワイモバイルショップでの販売や、ワイモバイルのネットワークを使ってIoT製品をインターネットに接続しやすくするなど、開発面以外でも事業者をサポートできる仕組みを提供する。
2014年12月05日日本オラクルは2日、IoT(Internet of Things)時代のコンセプトカーを製作し、2014年12月4日に開催される「フリースケール・テクノロジ・フォーラム・ジャパン2014」(フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン主催)で初公開することを発表した。コンセプトカーには、車載LANシステムを搭載した「BMW X5」を使用。走行速度、エンジン回転数、アクセル開度などの車両情報を取得し、車両情報の収集・送信およびセンサーの制御を行う。使われているシステムやハードウェアは、イータスのECU統合計測・適合・診断ツール「INCA(インカ)」、リースケールのマイクロプロセッサ「i.MX 6シリーズ」、および日本オラクルの「Oracle Java ME Embedded 8」など。また、各種の情報をコンセプトカーのダッシュボードに表示する、「Oracle JavaFX Embedded」が稼働している。車両情報を長期的に蓄積し、走行情報の分析および車両側へのフィードバックを行うシステムも構築されている。このコンセプトカーは、2014年12月10日から12日まで開催される「2014 TRON Symposium」(主催:T-Engineフォーラム 会場:東京ミッドタウン ホール)でもデモンストレーションを行う予定。
2014年12月03日IDC Japanは11月18日、2013年から2020年の世界IoT(Internet of Things)市場予測を発表した。これによると、世界IoT市場は、2013年の1兆3千億ドルから、2020年には3兆400億ドルに拡大し、2013年から2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は13%になると予測している。IDCではIoTを「IP接続による通信を、人の介在なしにローカルまたはグローバルに行うことができる識別可能なインテリジェントシステム/エッジデバイスからなる、ネットワークを束ねるネットワーク」と定義。IoT市場のエコシステムの構成要素には、インテリジェントシステム/エッジデバイス、コネクティビティ、プラットフォーム、アナリティクス、アプリケーションがあり、さらに、それらに付随する専門サービス、セキュリティサービスも含まれる。なお、上記の「インテリジェントシステム」についてIDCでは、「高度なオペレーティングシステムを有し、自動的にインターネットに接続され、ネイティブアプリケーション/クラウドアプリケーションを実行し、センサーなどが収集した情報を分析する機能を持つ安全に管理された電子システム」としている。数百億台の接続デバイスを通じて数兆ドルもの収益をもたらすと予測されるIoT市場に対し、さまざまな事業者が取り組みを活発化していることから、IoTは既に単なるバズワードではなくベンダーの将来的な成長を支える上での重要な実ビジネスになりつつあるという。今後も顧客ニーズを満たすべく、この新しい市場機会に焦点を合わせてさまざまな戦略がベンダーによって打ち出されると見込まれる。米IDC バーノン・ターナー氏は「注力するビジネスの規模や種類に関わらず、世界中のあらゆるベンダーがIoTのもたらす市場機会に注目している。成熟度の観点からは未だ初期段階ではあるものの、IoTは政府、消費者、エンタープライズ分野における、またとないビジネスチャンスとなるであろう」と述べている。また、調査から「IoT市場において、一連のベンダー、サービスプロバイダー、システムインテグレーターが成功を収めるには、共存し、製品やソリューションを統合」する必要があることや「IoT向けインテリジェントシステム/エッジデバイスの接続数は2020年に約300億台に達する」こと、「新興ベンダーはIoT市場に攻勢をかけるべく、戦略的に事業を切り出すことで取り組みを加速させており、それによって大手ベンダーのイノベーションが創出される」点が明らかになったとしている。
2014年11月19日Freescale Semiconductorは11月11日(米国時間)、IoT機器の開発に向け、Thread IPベースの新しいメッシュ・ネットワーク・プロトコルの導入を促進するための、Threadベータ開発プログラムを開発したと発表した。同開発プログラムでは、ThreadのソフトウェアとKinetis Wシリーズマイコンを採用したベータ開発キットが提供され、これを活用することで開発者は独自のアプリケーションや差別化に専念することができるようになるという。また、同キットを現段階で導入して、今すぐ製品のプランニングと開発を開始した場合、2015年中にThread対応およびThread認証の最初の製品を市場に供給できる可能性があるとする。さらに同キットには、Thread対応の製品を評価および開発し、それをマルチノードのネットワーク環境でテストするのに必要なあらゆるハードウェアおよびソフトウェアが用意されており、Kinetis KW2x Towerボード、USBドングル、コンパイル済みのThread用ライブラリとデモ用アプリケーション・コードを含むサンプル・プログラムとThreadスタックが付属するという。
2014年11月17日NECは11月14日、シンガポール経済開発庁(EDB)とサイバーセキュリティ、スマートエネルギー、ヘルスケア、IoTなどの領域における共同研究や連携に関する基本合意書(MOU)を締結したと発表した。NECのITソリューション、およびシンガポールにおける人材開発プログラムや共同研究を通して、産業界の発展を促進・加速を目指すという。IoT領域においてNECは、EDBの協力のもと、様々な業界に利益をもたらし新たな可能性や事業機会を創出する共通ビジネス基盤の開発を進める。また、ヘルスケア領域については、より効率的な高齢者向けソリューションの共同開発など同領域の課題解決に取り組んでいく。さらに、サイバーセキュリティ領域では、シンガポールおよび周辺国のセキュリティ能力を高めるための人材開発に注力するとともに、スマートエネルギー領域では、エネルギー管理、スマートグリッド、蓄電システムと再生可能エネルギーの連携などを推進する。今後、NECとEDBはSDN(Software-Defined Networking)、衛星技術、流通ソリューション、およびリーダーシップ人材開発などの領域における連携についても検討を進めるという。
2014年11月14日ガートナーはこのほど、モノのインターネット (IoT:Internet of Things) に関する市場予測を発表した。これによると、2015年にはインターネットによってつながる49億個の「モノ」が実際に使用され(2014年から30%増)、2020年には250億個に上るという。同社は、IoTによる全体のサービス投資が2015年には695億ドル、2020年には2630億ドルになると予測している。バイスプレジデント兼ガートナー・フェローのSteve Prentice氏は、「単に製品やサービスをデジタル化することではなく、新たなビジネスモデルや価値ある提案を創り出すことが、破壊的インパクトや、競争相手への脅威、競争機会となることをCIOは理解しなければならない。企業は、スマートなモノから得られる情報に関して、情報を収集して分析したいという意思と情報の紛失や悪用によるリスクとのバランスを取る必要がある」とコメントしている。また2017年の終わりまでに、20%の企業はIoTにおけるデバイスやサービスを活用したビジネス・イニシアティブを守るためにデジタル・セキュリティ・サービスを持つようになるという。リサーチ・ディレクターの池田 武史氏は、「IoTは、従来のITの単純な進化ととらえるのではなく、あらゆる業種のあらゆる職種にこれまでに経験したことのないインパクトをもたらす可能性があるという前提で考えるべき。さらに、これらへの取り組みは、その多くが失敗を伴う試行錯誤となる可能性もあることから、経営陣のリーダーシップをしっかりと発揮すべき状況になるだろう」と述べている。
2014年11月14日アットマークテクノとロームは11月12日、アットマークテクノ製IoTゲートウェイ「Armadillo-IoT」にローム製のWi-SUN/EnOcean対応の無線モジュールを搭載することで合意したと発表した。12月から販売を開始する予定。「Armadillo-IoT」は、アットマークテクノ製の省電力・小型組み込みプラットフォーム「Armadillo」をベースとしたIoT向けゲートウェイであり、アドオンモジュールを載せ替えることで各種機器の接続にフレキシブルに対応できるのが特徴である。今回、アットマークテクノは、ロームが開発した汎用Wi-SUNモジュール「BP35A1」とEnOceanモジュール「BP35A3」を「Armadillo-IoT」用アドオンモジュールとしてラインアップした。ローム製の無線モジュールは、いずれもアンテナ内蔵で電波法認証も取得済みのため、Wi-SUNまたはEnOcean対応の無線センサに「Armadillo-IoT」ゲートウェイをそのまま接続することができる。なお、両社はアットマークテクノの組み込みプラットフォームに関する技術力と、ロームの無線通信に関する技術力というお互いの強みを生かし、今後もニーズにあった製品ラインアップを強化していく予定とコメントしている。
2014年11月14日エコモットとアットマークテクノは11月12日、IoT用途向けサービスにおいて協業すると発表した。今回、エコモットのクラウドプラットフォームサービス「FASTIO」とアットマークテクノのIoTゲートウェイ「Armadillo-IoT」を組み合わせ、機器・設備の接続からインターネット接続、クラウド連携、アプリケーション開発までを一括して提供することで、技術的な障壁を取り除き、事業化の促進をバックアップするという。「FASTIO」は、機器を接続し、クラウドプラットフォーム上で登録するだけで、IoTをスタートできるのが特徴である。センサ・機器への接続、クラウドプラットフォーム上のアプリケーションのユーザーインタフェースのカスタマイズ開発などにも個別対応可能で、センサからクラウド連携まで、ユーザーの要望に合わせてワンストップで提供する。一方、センサ・機器とインターネットとの接続をスムーズに仲介するには、3Gモバイル通信でネットワーク接続ができ、かつ各種インタフェースに柔軟に対応できるゲートウェイの存在が不可欠となる。3G対応のIoTゲートウェイ「Armadillo-IoT」は、専用アドオンモジュールを差し替えて各種機能を簡単に追加できる拡張性の高さが特徴となっている。RS232C/422/485といったシリアルや接点入出力の他、昨今注目されているWi-SUNやEnOcean、BLE(Bluetooth Low Energy)などの無線規格に対応したアドオンモジュールも用意され、多様な機器を接続することができる。また、「FASTIO」は端末・ユーザー管理、ログデータ管理、接点監視、データ連動アラート設定、画像履歴管理、GPSを利用した移動体管理、走行情報の統計・分析、帳票の出力などの各Webアプリケーションがあらかじめ用意されており、インストールや複雑な設定はなく、ログインするだけですぐに利用することができる。初期費用は0円で、1アカウントあたり月額980円から利用できる格安プランも用意されているため、少額の予算でスタートしたい場合にもマッチするとしている。なお、同サービスは、12月よりエコモットが窓口となって提供が開始される。今後、両社は遠隔監視システムなどに多数の導入実績があるエコモットの提案力と、組み込みプラットフォーム分野で培ったアットマークテクノの技術力を組み合わせ、より使いやすいサービス提供に向けて協業を進めていく予定とコメントしている。
2014年11月13日Cypress Semiconductorは11月11日(独時間)、IoT向けにセンサベースの低消費電力システムを容易に設計することを目指したSoC「PSoC 4 BLE」ならびに「PRoC BLEプログラマブル ラジオオンチップ」を発表した。IoTの活用に向けたセンサベースの製品の活用が試みられつつあり、そうしたセンサノードの無線規格としてBluetooth Low Energy(BLE)の活用が期待されているが、PSoC 4 BLEはそうしたIoT向け無線センサベースの設計容易化やBOMコストの低減などを実現するためのソリューションという位置づけとなっている。自社の130nm フラッシュベースSONOSプロセス技術を設計し、かつBLEの認証も取得済みであり、同社が提供する統合開発環境(IDE)「PSoC Creator」を活用することでシステムのハードウェアとアプリケーションファームウェアを同時に設計することが可能になるという特徴がある。また、アンテナの設計もインピーダンスのマッチングなどを行う必要があるが、バランも統合しているため、2個の外部コンポーネントのみでパラメータの調整も容易に行うことが可能だという。さらに、基本的なPSoCの機能も踏襲しているため、1チップでシステムを構築することも可能だ。一方の「PRoC BLE」はPSoC 4BLEからアナログのコンポーネント部分を省略した製品で、それ以外の部分はPSoC 4 BLEとほぼ同等の性能を実現しているという。なお、PSoC 4 BLEならびにPRoC BLEともに一部製品でサンプル出荷を開始しており、順次ラインアップを拡充させていく予定のほか、2014年12月より量産出荷も開始する計画。また、同社では用途に応じた複数の開発キット(SDK)やリファレンスデザインキット(RDK)を用意しており、リモコンRDKやタッチマウスRDKなども併せて提供するほか、リモコンに音声コントロールを搭載したRDKも2014年11月中に提供を開始する予定だとしている。
2014年11月12日On Semiconductorは、IoT(Internet of Things)やスマートメータ向けに高性能、高信頼性、高効率な通信をサポートするSoCトランシーバ「NCS3651x」ファミリを発表した。同ファミリは、2.4GHzの超低電力無線トランシーバで、ZigBee、6loWPAN、ワイヤレスHART、独自バージョンなどのプロトコルをサポートしたIEEE 802.15.4-2006規格に基づいており、低データ速度で断続的な通信を行うIoTアプリケーションでの使用に適している。さらに、1.0V~3.6Vの標準バッテリによる単一電源動作と最高クラスの低い送受信電流により、低消費電力および高効率を実現するために最適化されている。これにより、環境発電などの代替エネルギーに対する市場の需要拡大が促進される他、サポートできるバッテリの種類が増えると同時に、バッテリ寿命を劇的に延長できるとしている。また、同製品には、32ビットARM Cortex-M3プロセッサ、およびデータ保存用RAM、プログラム保存用フラッシュメモリなど、さまざまなコンフィギュレーションが組み込まれている。この中には、最高クラスのフルメモリコンフィギュレーションへの対応が含まれており、複数のアプリケーションおよびソフトウェアプロトコルをサポートする。この他、複数の周辺機能により、外部コンポーネントを最小限に抑えて完全なワイヤレスネットワークを設計できるとしている。なお、パッケージはRoHS対応のQFN-40。現在、一部の顧客向けにサンプル出荷を開始しており、2015年初頭から半ばに量産出荷を開始する予定。
2014年11月06日NTTPCコミュニケーションズ(NTTPC)は10月28日、IoTサービスの分野において、アットマークテクノと協業すると発表した。今回の協業は、NTTPCのIoT/M2Mソリューション「フィールドクラウド M2Mクラウドプラットフォーム」とアットマークテクノのゲートウェイ「Armadillo-IoT」との連携が目的。両社は、センサー接続からモバイル回線、クラウド接続をカバーする新たな垂直統合型のIoTサービスを提供する。具体的にM2Mクラウドプラットフォームは、モバイル回線、クラウドに接続用のソフトウェア「デバイスエージェント」、IoTデータ集積に適したデータベースを採用したクラウド環境を提供する。Armadillo-IoTは、Linux搭載の小型・省電力組み込みCPUボード「Armadillo(アルマジロ)」の技術を応用したIoT向けのゲートウェイ。専用のアドオンモジュールを差し替えて各種の機能を簡単に追加でき、シリアル(RS232C/422/485)や接点入出力のほか、Wi-SUN、EnOcean、BLE(Bluetooth Low Energy)などの無線規格に対応したアドオンモジュールを用意する。Armadillo-IoTは12月中に販売を開始する予定で、同時にNTTPCがモバイル回線を提供する。契約期間は3カ月、6カ月、12カ月の3種類から選択でき、契約期間中はM2Mクラウドプラットフォームの無料トライアル版を利用できる。なお、NTTPCでは「M2Mクラウドプラットフォーム(VPNタイプ) 」の提供を開始した。VPNタイプは、モバイル回線やM2MクラウドプラットフォームをVPN(閉域網)で接続でき、インターネットから隔離された環境にあるクラウドサーバーを利用できる。
2014年10月29日NTTPCコミュニケーションズ(NTTPC)とアットマークテクノは、両社の強みを生かしたIoTサービスについて、10月28日より協業開始すると発表した。NTTPCが提供するIoT/M2Mソリューション「フィールドクラウド M2Mクラウドプラットフォーム」とアットマークテクノ製ゲートウェイ「Armadillo-IoT」を連携することで、センサ接続からモバイル回線、クラウド接続までを一気につなぐ垂直統合型のIoTサービスが実現した。センサ接続を担う「Armadillo-IoT」は、Linux搭載の小型・省電力組み込みCPUボード「Armadillo」の技術を応用したIoT向けのゲートウェイ。フィールド用途に耐え得る堅牢な設計であることに加え、ソフトウェア・ハードウェアともに各要求に柔軟に対応することができるという。特に、専用のアドオンモジュールを差し替えて各種の機能を簡単に追加できることが大きな特長となっている。シリアル(RS232C/422/485)や接点入出力の他、Wi-SUNやEnOceanなどの無線規格に対応したアドオンモジュールも用意されている。IoTデータの収集・集積を担う「M2Mクラウドプラットフォーム」からは、モバイル回線と共に、「Armadillo-IoT」をクラウドにつなぐためのソフトウェア「デバイスエージェント」やIoTデータ集積に適したデータベースを採用した高セキュアなクラウドを提供する。API仕様書やサンプルコードも開示するため、収集したデータを活用するアプリケーション開発もスムーズに進めることができる。さらにNTTPCでは、よりセキュアなM2Mを実現するために、「M2Mクラウドプラットフォーム(VPNタイプ)」を提供開始した。VPNタイプは、モバイル回線からM2MクラウドプラットフォームまでVPNで接続でき、インターネットから隔離された環境にあるクラウドサーバを利用することができる。また、端末からデータを収集する際の、インターネット経由によるセキュリティリスクを低減し、医療、ヘルスケア、ホームオートメーションといった、機密情報・個人情報を扱う業界でもIoT化を進められる。「Armadillo-IoT」は2014年12月に販売開始予定で、「M2Mクラウドプラットフォーム」も同時に提供を開始するとのこと。また、11月18日~21日までパシフィコ横浜で開催される「Embedded Technology 2014」にて、アットマークテクノのブースでは、「Armadillo-IoT」実機を元にデモンストレーションを行い、NTTPCのブースではさまざまな業界の活用例を紹介するデモンストレーションを行う予定となっている。
2014年10月29日ARM社は、米国サンタクララ市で開催したイベントARM TechCon 2014(2014年10月1日~3日。現地時間)で、IoTデバイス向けのオペレーティングシステム「mbed OS」を発表した。mbed OSは、ARM社のCortex Mシリーズプロセッサ向けに最適化されたIoT用のオペレーティングシステム。無料で提供され、IoTデバイスの開発が容易になることから、今後多くのIoTデバイスが登場し、本格的なIoT時代がやってくることになると予想される。mbed OSは、ARM社のmbed IoT Device Platformの一部として提供され、このほかにARM社は、IoTデバイスを管理するための「mbed Device Server」、「mbed tools」といった技術を提供する。また、多くの半導体メーカーやSI企業、クラウドサービス企業などがパートナーとしてmbedに参加している。IoTとは、簡単にいうと通信機能を持つ組み込み系デバイスのことだ。組み込み系とは、機器を製造する側の呼び方で、マイクロプロセッサを応用した製品のことだ。現在では多くの家電や玩具、健康機器など、さまざまな「組み込み系デバイス」が存在する。また、既存のプロセッサがなくても動作できる機器(たとえば、コーヒーメーカーやトースターなど)にマイクロプロセッサを搭載し、IoT化することで、こうした機器からのさまざまな情報が通信によって交換可能となる。これを収集することでいわゆるビックデータとなり、そこから新しい知見が登場する可能性もある。また、いわゆる「ウェアラブルデバイス」も、ハイエンドのものを除くと「身につける」IoTデバイスだ。こうしたウェアラブルデバイスには、心拍計や歩数計などがある。これまでARM社は、Cortex-Mシリーズに対して、開発環境やツールなどを提供していた。一般的に組み込み系の開発は、組み込み用オペレーティングシステムを使い、その上でアプリケーションを開発する場合と、オペレーティングシステムを使わずにハードウェア上に直接アプリケーションを開発する2つの方法があった。オペレーティングシステムを使うメリットの1つは、システム管理や通信など、さまざまな処理を任せ、通信プロトコルやデバイス制御などを開発する必要がないという点だ。特に通信のプロトコルは、相手の実装といった問題もあり、開発が難しく、時間もコストもかかってしまう。これに比べて、ある程度利用実績のあるオペレーティングシステムは、十分にこなれた通信プログラムを持っており、これを使うことで、その部分の開発やデバッグを省略できる。同様にシステムの初期化やデバイスの制御などもオペレーティングシステム側に組み込まれたプログラムコードを使うことで、開発のコストを低減できる。こうした通信を行う組み込み系では、Linuxがつかわれることも少なくないが、もともと組み込み系に比べるとPCなどの大規模なハードウェア向けに作られたLinuxは、組み込み系で使われる小規模なデバイスでは、メモリサイズやハードウェアの機能などで利用が困難な場合もある。たとえば、テレビやレコーダーといった家電製品には搭載できても、歩数計のような小規模で低消費電力な機器には搭載困難(搭載するとコストが大きくなってしまう)なことがある。mbed OSは、こうしたLinuxが利用困難な規模のシステムでも動作できるため、比較的低価格な機器のIoT化に寄与する可能性がある。IoTとは、前述のように「通信」が可能な組み込み系デバイスであり、mbed OSにより、これまでよりも容易にIoTデバイスを開発することが可能になる。また、対象がmbed OSとなることで、実機が登場する以前から開発が可能になり、自社開発コードのライブラリ化やコードの再利用が可能になる。それ以外に、複数の機器の開発でmbed OSという同一のプラットフォームを使うことになるため、開発者の技能の向上やノウハウの蓄積が可能といったメリットもある。ARM社のCortex-Mは、組み込み向けのプロセッサで、ARMのThumb/Thumb-2命令セット(短縮命令と呼ばれる命令長の短い簡易な命令セット。ARM社のプロセッサアーキテクチャ定義であるARMv6/v7の一部となっている)を使うプロセッサだ。超低消費電力、極小フットプリントのCortex-M0から組み込み系としては性能が高いM7まで6種のプロセッサコアがある。最上位となる組み込み系プロセッサCortex-M7は、Techcon直前に発表されたものだ。mbed OSの特徴の1つは、IoT用にさまざまな通信デバイス、通信プロトコル、通信暗号化などの機能をアプリケーションに提供すること。IoTでは、必ず通信相手があり、比較的大規模なものでは、無線、有線ネットワークなどによりTCP/IPなどで、インターネット側のサービスと直接通信が可能であり、小規模なものでは、Bluetoothなどの低消費電力な通信や近距離通信を使ってスマートフォンやPC、タブレットなどに接続、これらの上で動作するアプリケーションと対になってインターネット接続を利用する。また、mbed OSは、イベント駆動で、一般的なオペレーティングシステムが持つプリエンプティブなスケジューラーは搭載していない。割り込みで発生するイベントであらかじめ指定されたプログラム(タスク)が起動し、処理が終了すれば、待機状態に戻り、電力をほとんど消費しない状態で待つという動作となると思われる。たとえば、ユーザーが機器のボタンを押したり、センサーが何かを検出するとイベントが発生し適切なプログラムコードが実行されるという感じだ。なお、mbed OSは、ARM社がゼロから開発したものでプロジェクト自体は数年前からあり、具体的にmbed OSとしての開発には3年ほどかかっているという。Cortex-Mシリーズには、非常に小規模だがフットプリントが小さく、超低消費電力のM0/M0+から高性能なM7までのバリエーションがあり、実際にmbed OSが動作するのは、これらの設計を購入して半導体メーカーが製造するSoCが対象となる。このため、全体がモジュール構造となっていて、必要なモジュールのみを組み合わせることが可能になるという。こうしたさまざまな構成に対して、いわゆる「プロファイル」のような形で、システム構成を「雛形」化することを想定しているようだ。おそらく、それらに対して、標準的なSoCのリファレンス設計なども作られると思われる。mbed OSが行うのは、システムの初期化などの起動関連の処理とさまざまなコンポーネントによるハードウェアの抽象化だ。この上で動作するアプリケーションは、たとえば、Bluetoothのハードウェアの違いを見ることなく、Bluetoothによる通信が可能になる。これまで、直接アプリケーションを書いていた場合、Bluetoothのハードウェアに合わせた初期化や制御が必要だったが、mbed OSでは、より「抽象的」な「通信」を行うプログラムを書くだけで、Bluetoothによる通信が可能になる。また、電力管理もmbed OSが請け負う主要な処理となるという。さらに、この上で動作する「データ交換」のためのプロトコルや、通信の暗号化といった処理もmbed OSが請け負うことになる。詳細は公開されていないが、基調講演のスライドやmbedのサイトには、「HTTP」、「MQTT」(MQ Telemetry Transport。機器同士の通信のための軽量プロトコル)、「CoAP」(Constrained Application Protocol。機器同士の非同期通信をサポートする軽量プロトコル)、「LWM2M」(Open Mobile Allianceが提案している軽量の機器同士の通信プロトコル)などの上位通信プロトコルに加え、TLSやDTLSといった暗号化方式、IPv4/IPv6、6LoWPAN(IPv6 over Low Power Wireless Personal Area Network)などの用語がある。また、通信方式にもBluetooth、Wi-Fi、2G/3G、Zigbee、イーサネットなどが利用できるようだ。こうした標準的な通信プロトコルがサポートされるため、スマートフォンやPC、タブレット側で動作する「デバイス用アプリケーション」も、標準的なやり方で開発が可能で、機器独自の通信プロトコルに対応する必要がない。このため、開発期間の短縮、開始時期の前倒し(機器の仕様を定義した段階で開発を開始できる)、コストダウンが可能になると予想される。mbed OSは、オープンソースで無料で利用できる。ただし、一部のモジュールは、ソースコードが公開されずバイナリ(Cortex-Mプロセッサが前提となるため)での提供となるようだ。具体的には、mbed OSは、ARMからコードが提供され、これをSoCを製造する半導体メーカーが自社SoCに移植、SoC内のデバイス制御に必要なドライバやソフトウェアモジュールと組み合わせて、SoC用のmbed OSを作って、顧客に提供するという形態になるようだ。mbed OSは、今年10月にAlpha版として最初の提供が行われ、来年の8月にベータ版、10月(つまり来年のTechConのタイミング)には、mbed OS v3.0として正式リリースされる予定だという。ARM社のプロセッサはすでに組み込み系で広く使われており、このmbedの登場でIoTデバイスの開発が容易になることから、多くのIoT機器が登場することが予想できる。mbed OSの正式版のリリースは来年であり、その後、本格的なIoT時代が到来すると思われる。
2014年10月29日アットマークテクノは10月28日、EnOceanやWi-SUNなど最新の無線センサ通信に加え、3G通信に対応したIoTゲートウェイ「Armadillo-IoT」を発表した。同製品は、アドオンモジュールを差し替えてさまざまな機能を実装できるのが大きな特徴となっている。シリアル(RS232C/422/485)や接点入出力をはじめ、次世代の無線通信規格として注目されているBLE(Bluetooth Low Energy)、EnOcean、Wi-SUNに対応したアドオンモジュールもラインナップされている。さらに、車載向けに使われるCANなどの機能を実装するアドオンモジュールも発売予定となっている。アドオンモジュールの仕様は、Webサイトで公開され(「Armadillo-IoT」購入者に限定提供)、独自にカスタマイズする場合にも役立つという。また、無償公開されている「Armadillo」向けの開発環境やユーザーコミュニティを利用して開発することができる他、Linuxカーネルやデバイスドライバ、基本的なアプリケーションなどはオープンソースソフトウェアを利用でき、追加開発も自由に行うことができる。そして、RubyやJava8にも標準対応しており使いやすい構成となっている。なお、「Armadillo-IoT」は、NTTPCコミュニケーションズ、コネクシオ、インターネットイニシアティブ(IIJ)など複数メーカーのモバイル通信サービスに対応しており、各社から専用回線プラン(3G)が提供される。加えて、パートナー各社から、「Armadillo-IoT」とクラウドプラットフォームやサービスを連携させたIoTソリューションサービスが提供される。12月より発売される予定。また、発売に先立ち、先着50台限定で、通常の開発セットにプリペイド型SIMカード(3か月利用可能)を無償バンドルした特別限定版を提供する「Armadillo-IoTスタートアップキャンペーン」が実施される。10月28日より「Armadillo」の販売代理店で先行予約受付が開始される。
2014年10月28日アットマークテクノと日本システムウエア(NSW)は10月28日、アットマークテクノ製IoTゲートウェイ「Armadillo-IoT」がNSWのM2Mクラウドサービス「Toami」に対応したと発表した。「Toami」は、デバイス、ネットワーク、M2Mプラットフォーム、アプリケーションまでを含むオールインワンのM2Mソリューションサービスである。リモート機器からのデータをセキュアかつリアルタイムに検索できクラウドサービスとしての安心感・安定感があるのに加え、ドラッグ&ドロップで簡単に開発できる機能など、組み込み開発現場へのクラウド導入をスピードアップする仕組みが提供される。NSWは、製造機器の遠隔監視や生産ラインの稼働率監視、電力のデマンド監視、農業向けM2M、構造物のモニタリングなどの用途を中心に「Toami」を推奨している。一方、「Armadillo-IoT」は、Linux搭載の小型・省電力組み込みCPUボード「Armadillo」の技術を応用したIoT向けのゲートウェイである。さまざまな用途での採用実績がある「Armadillo」をベースとしており、フィールド用途に耐え得る堅牢な設計となっているのに加え、ソフト/ハードウェアともに各要求に柔軟に対応することができる。特に、専用のアドオンモジュールを差し替えて各種の機能を簡単に追加できることが大きな特徴となっている。シリアル(RS232C/422/485)や接点入出力の他、Wi-SUNやEnOcean、BLE(Bluetooth Low Energy)などの無線規格に対応したアドオンモジュールも用意されている。さらに、ソフトウェア開発には無償公開されている「Armadillo」向けの開発環境やユーザーコミュニティを利用することができる。また、Linuxカーネルやデバイスドライバ、基本的なアプリケーションなどはオープンソースソフトウェアとして提供されており、用途に応じたLinuxベースのアプリケーションを自由に開発して多様な製品を実現することが可能となっている。なお、「Armadillo-IoT」は、「Toami」とすぐに接続できる「Toami Ready」ゲートウェイとして認定され、12月から「Toami」ソリューションのラインアップに加わる。NSWは、「Armadillo」が「Toami Ready」となったことで、顧客の多様な開発要望にさらに細やかに対応できる価値あるM2M/IoTサービスとして、「Toami」の提供を拡大させていくとコメントしている。
2014年10月28日イノテックは10月14日、「インテルAtomプロセッサ E3800」ファミリを搭載したIoTゲートウェイソリューション「EMBOX TypeT3564」を発表した。同製品は、広い動作温度に対応しながら、178×48×170mmサイズと小型のM2M向けゲートウェイソリューションで、USB3.0×1、USB2.0/1.1×5、RS-232C×2、RS-422/485×1、GPIO、Gigabit Ethernet×2、mSATA、CFast、SD、DVI-Iなどの豊富な外部I/Oを搭載する他、技術基準適合証明済みWi-Fiモジュールをはじめ、複数の無線ネットワークを実現している。また、Wind RiverのWind River Intelligent Device Platformを実装することでより迅速な開発を可能にするとともに、McAfee Embedded Controlによりセキュリティをサポートしている。これらにより、各センサのエッジデバイスから情報集約するM2M用ゲートウェイとして、高い信頼性を実現している。なお、11月19日よりサンプル出荷を開始する。
2014年10月15日Freescale Semiconductorの日本法人であるフリースケール・セミコンダクタ・ジャパン、Semtech、日新システムズ、丸文は10月6日、IoT向け国際通信規格である「Wi-SUN Profile for ECHONET Lite」に対応したソリューションを共同開発したと発表した。同ソリューションは、Freescaleのマイコン「Kinetis」、および「Kinetis」を使用した丸文のセンサフュージョンボード、Semtechの無線トランシーバ、および日新システムズのEW-WSNソフトウェアスタックで構成されており、「Wi-SUN Profile for ECHONET Lite」に対応している。このうち、Freescaleの「Kinetis」は、ハード/ソフトウェア互換性をもつARM Cortex-M0+、およびCortex-M4コアをベースとしたポートフォリオを有し、900品種を超える汎用組み込みおよびアプリケーション特化型の製品群によって構成されている。同ソリューションにおいても、消費電力、多彩な機能、メモリサイズ、そしてパッケージオプションのさまざまなラインナップからアプリケーションに最適な製品を選択できる。Semtechは、数kHzから2.4GHzまでのISM(Industrial, Scientific and Medical)バンドを利用した長距離、短距離の無線ソリューションを、スマートメータ、遠隔監視、セキュリティ、ホーム、ビル管理のシステムに提供している。今回の無線トランシーバIC「SX1272」は、Wi-SUN認証を取得している他、LoRa長距離伝送技術も内蔵しており、より広いエリアをカバーする無線ネットワークを構築することができる。日新システムズは、「Wi-SUN Profile for ECHONET Lite」に対応したPHY層、MAC層、ネットワーク層(6LoWPAN、IPv6)、セキュリティ認証(PANA)をサポートしたソフトウェアスタックEW-WSNを、Semtechの無線トランシーバICとFreescaleの「Kinetis」上で動作するようにソフトウェア実装を行った。EW-WSNは、組み込み機器への実装を想定した小フットプリント(ROM 90KB、RAM 30KB標準実装時)が特徴で、スマートメータ、HEMSゲートウェイの双方に対応できるため、さまざまな場面での活用が可能となっている。丸文は、センサフュージョン開発環境であるCemPla Triボードに「Kinetis」を搭載しており、簡単に「Wi-SUN Profile for ECHONET Lite」を実現できる他、さまざまなセンシングデータを送信できる環境を提供する。さらに、ユーザーの要望に合わせてハードウェアの受託設計の提案、対応も可能という。同ソリューションにより、標準規格に準拠しつつ、アプリケーションごとに異なる性能、機能、およびコスト要求に、ハード/ソフトウェア互換かつ豊富な製品群から最適な部品構成を選択できるとしている。なお、各社の製品はすでに供給が開始されている。同ソリューションの評価キットは2015年3月の出荷を予定している。
2014年10月08日Freescale Semiconductorは10月6日、高い多用途性と信頼性を備えた"モノのインターネット(IoT)"向けゲートウェイのリファレンスデザイン「LS1021A-IoTゲートウェイ」を発表した。同リファレンスデザインは、同社の製造パートナー企業であるTechNexionとの協業を通じて設計されたもので、Freescaleの「QorIQ LS1021A」プロセッサをベースとし、実証されたセキュリティ機能、クラス最高の効率性、先進的な仮想化、および豊富な周辺機能をサポートする。また、設計サイクルを短縮し、市場投入を早める他、高い多用途性を備えており、複数の機器を単一かつ低コストの統一アプライアンスに置き換えることができるため、IoTゲートウェイをはじめ、エンタープライズアクセスポイントやセキュリティアプライアンスなど、エンタープライズ用および民生用ネットワークアプリケーションに最適となっている。具体的には、「LS1021A」は新しいLayerscapeシステムアーキテクチャをベースにしている他、2つの高効率ARM Cortex-A7コアを搭載し、さらにエラー訂正コード(ECC)技術によって信頼性を高めており、3W未満の電力(標準)で高い性能を実現している。また、デュアルUSB 3.0ポート、フルサイズSATAIIIポート、ツインminiPCIeコネクタなど、シリアルベースの高速コネクタを幅広く搭載している。加えて、Arduinoシールドモジュール用のコネクタも搭載しているため、Arduinoシールドモジュールファミリをベースとするさまざまな通信ソリューションがサポートされている。そして、「LS1021A」の他にも、マイコン「Kinetis K20」、オーディオコーデック、CAN PHY、および最適な電力管理を実現するマルチ出力DC/DCコンバータ「MC34VR500」など、同社のさまざまな製品が搭載されている。中でも、「MC34VR500」は「QorIQ LS1」プロセッサファミリ向けに設計されており、電力効率性能を最大限に活用することができる。この他、包括的なソフトウェア開発キットによってサポートされており、コーディングが簡素化され、多種多様なインタフェースやプロトコルに対応できるため、ベンダを横断した最適な互換性が実現する。なお、「LS1021A-IoTゲートウェイ」は、一般向けのサンプル出荷がすでに開始されている。参考価格は429ドル。
2014年10月07日IoT(Internet of Things)に注目が集まっていることで、MBaaS(Mobile Backend as a Service)へのニーズが急増しているという。日本発のグローバルMBaaSサービス「Kii Cloud」を提供するKii 執行役員 技術統括の石塚進氏は、その理由について「IoTとMBaaSの親和性にある」と話す。○IoTのトレンドを生み出す2つの流れ近年IoTという言葉をよく聞くようになってきた。IoTとはさまざまな定義や捉え方があるが、おおよそ、コンピュータのような情報機器だけでなく、すべてのモノがインターネットでつながるようになり、それらが相互に通信して、これまでと違うサービスやビジネス価値を生み出すといった考え方、現象を指しているといえる。直訳で「モノのインターネット」などと訳されることが多い。IoTの事例としては、電力プラントに設置した計測機器情報を分析して部品の故障予測に活用したり、自動車に搭載したGPSを追跡して通行可能な道路をマッピングしたりといったケースが引き合いに出ることが多い。機械(センサー)が生み出したデータを機械で処理・通信する「M2M」(Machine to Machine)や「センサーネットワーク」などと関連して語られることが多い。こうしてみると、製造業や組み込み業など、ハードウェア業界との関係性が強く感じられる。しかし、IoTというトレンドは、決してそうした業界にとどまるものではないという。「アプリケーションやクラウド、モバイルといったソフトウェアとの結びつきは予想以上に強い」と石塚氏は指摘しつつ、さらに次のように強調した。「IoTというトレンドには、大きく2つの流れがあると思っています。1つは、M2Mやセンサーネットワークのようなハードウェア業界からの流れ。もう1つは、モバイルアプリ開発やスマートデバイスといったコンシューマ系サービスやソフトウェア業界からの流れです。後者については、ウェアラブルデバイスがいい例だと思います。デバイスに搭載したセンサーから情報を得て、クラウド上で処理し、結果をアプリで表示したり、共有したりできるようになっています」IoTというと、将来の話のように思えるが、スマートデバイスやウェアラブルデバイスのように、すでに我々にとって身近な存在になっているのが実情だ。そして、すでにお気づきのように、ハードウェアからの流れであれ、ソフトウェアからの流れであれ、共通しているのは、クラウドなどを使って、データやデバイスを管理するバックエンドが重要になるということだ。こういった点から、IoTとMBaaSの親和性はとても高いことが理解できる。○IoTとMBaaSにある強い親和性MBaaSは、ユーザー管理やプッシュ通知、データ管理、位置情報などのモバイル開発に不可欠なバックエンドサービスをクラウドで提供するものだ。IoTとMBaaSは、どんな点で“似ている”あるいは“相性がいい”と言えるのだろうか。石塚氏はまず、「つなぐ」という行為の類似性を指摘する。「スマートデバイスを利用するときは、まずアクティベートします。アクティベートによって、ユーザーとデバイスをクラウド上の管理システム上で紐づけ、ユーザーに合ったサービスを提供できるようにしています。バックエンド側からこの手続きを見ると、IoTとMBaaSはほとんど同じ処理になるのです」MBaaSが提供するユーザー管理の処理は、IoTでのデバイス管理とほぼ同じということは、これまでのモバイルアプリ開発で培ったノウハウなどはそっくり生かすことができるということになる。さらに石塚氏は、データ管理にも親和性があるという。「MBaaSのデータ管理では、ユーザーのプライベートな領域にデータを安全に格納できるような工夫がされています。ユーザーをデバイスに置き換えると、その仕組みがそのまま利用できるようになるのです。またIoTでは、膨大なデータをリアルタイムでストリーム処理できるようなテクノロジーに注目が集まりがちですが、実際にはセキュリティを確保して適切に管理する仕組みが重要になってくるのです」たとえば、医療、ヘルスケアといった分野ではどうだろうか。個人情報やプライバシー情報はクラウド上で厳重に管理されるような仕組みがなければ、サービスとして成り立たないだろう。また、家庭内で複数のスマートデバイスを利用するシーンを考えても、パーソナルなデータ管理は不可欠になってくる。技術的なところでは、通信に利用するプロトコルやAPIの共通性も指摘できるという。IoTにおいて、デバイス同士やクラウドとの連携には、REST APIなどの標準的なWeb APIが使用されることが多いという。モバイルアプリ開発で、サービスやシステムを連携させるノウハウは、IoTでも生かせるというわけだ。こうなると、IoTを疎遠に感じていたようなモバイルアプリ開発者にとっても、決して他人ごとではなくなってくるだろう。フロント側の開発の知識やスキル、ノウハウはIoTでも生かすことができる。アイデア次第で、「新しいIoTサービス」を立ち上げるといったことも視野に入ってくるのだ。○モバイルアプリ開発者からのニーズも急増石塚氏によると、実際そういった「新しいIoTサービス」を立ち上げるニーズは急増しているという。「製造業や組み込み業の方から、IoT関連のサービスを作っているが、Webサービス側がよくわからないので、Kii Cloudを利用したいという相談をいただくことが増えています。同じように、これまでモバイルアプリ開発に携わってきたエンジニアから、IoTサービスを作りたいがどのようにすればいいかといった問い合わせも増えています。こういった背景から、非常に大きなうねりになっていることを実感しています」石塚氏がそう語るように、IoTとMBaaSは、いまダイナミックな動きを見せている。そのような中、石塚氏が今後ますます重要になると指摘するのは、アプリやUI、デザインといったフロントの部分だという。逆説的ながら、IoTのようにモノの存在にフォーカスがあたると、ユーザービリティやデザイン性といった面の重要性が増す。たとえば、ウェアラブルデバイスなどは、テクノロジーというよりもデザインがものをいう商品だ。「UIやアプリデザインといったフロントの部分が得意なモバイルアプリ開発者の重要性が増しています。そもそも、MBaaSは開発者がバックエンド開発の負担を減らし、フロント部分に集中できるようにすることに力を注いでいます。IoTが進展し、デザイン性が重視されるようになると、ますますフロント側の負担は増えていくことになるでしょう。逆にいうと、我々がMBaaSとしてIoTを支えることができれば、より多くの開発者の負担を減らすことにつながります」(石塚氏)実際にいま、急増するニーズに対応すべくIoT関連の機能を急ピッチで開発しているという。「まずは、デバイス管理やデバイス向けのプッシュ通知をSDKやCのライブラリを含めて提供します。その後、デバイス向けAPIは徐々にMQTTなど軽いプロトコルに移行する予定です。Kii Cloudは現在REST APIベースですが、IoTデバイスにはHTTPは重いので、それらの負担を軽減する必要があります。また、将来的にはデバイスからのデータの集計機能なども提供しようと思っています」(石塚氏)このように書くと将来の話に聞こえるが、実は、MBaaSを活用したIoTの事例は続々と登場している。むしろユーザーのニーズが先行し、それに応えるようにKii Cloudの機能開発を急ピッチで進めているというのが現状のようだ。では、どんな事例があるのか。次回は、そうした事例を詳しく紹介しながら、KiiがIoTに対して、どんな取り組みを行っているかなどにも触れていく予定だ。
2014年10月07日米Intelの日本法人であるインテルは9月29日、都内で会見を開き、同社のIoTに向けた取り組みの現況の説明を行った。既報の通り、同日付で同社は三菱電機と次世代FAシステムの開発で協業を進めていること、ならびにぷらっとホームがAtomベースの「Edison」を採用した超小型マイクロサーバの提供をアナウンスしているが、同会見はこうした動きを補完するものとなる。IoTの活用の土台に「セキュリティ」が存在するというのは、これまでも同社がIoT分野への考え方として提示してきた話で、そこから発展し、OSや仮想化、WebAPIの提供といった分野までカバー範囲を広げることで、「それらをシリコン(CPU)とパッケージ化することでライセンス管理を簡略化できる」(米Intelのセールス&マーケティング事業部 副社長 兼 エンベデッドセールスグループ ゼネラルマネージャーのリック・ドワイヤー氏)ようになり、顧客は容易に新デザインの開発をさまざまな市場向けにできるようになるというのが同社の主張するところだ。具体的には、それらを統合したIoTゲートウェイとしてリファレンスが提供されていることから、そうした検証済みのソリューション上でソフトウェアの開発を行うことで、適用分野に最適なデータを選択して、効率よく開発を行っていくことが可能になるとしている。また、そうしたIoTのエッジデバイス向けに22nmプロセスのAtomベース(Silvermontアーキテクチャベースのデュアルコア、500MHz)のSoC「Edison」を10月より国内でも提供していくことを発表。従来のIoT向けSoCやマイコンに比べてハイパフォーマンスを実現できるため、さまざまな機能を統合することが可能であり、「ワークロードのコンソリデーションが可能となり、1つのプラットフォームでさまざまなことを実現することが可能になる」(インテルの常務執行役員 事業開発本部長の平野浩介氏)とする。すでに上述した三菱電機では、Intelと協力して次世代FAシステム向けPLCの開発を進めており、Intelの後工程工場にて予測メンテナンスとして展開。2013年からの1年間で約900万ドルのコスト削減と歩留まりの改善を実現できることを確認したとしており、今後、2015年の「予防保全ソリューション」のビジネス化を図っていくほか、今後、さらなる連携を行っていくことで、製造業への付加価値の提供を強化していくとしている。
2014年09月30日ぷらっとホームは9月29日、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)向けに特化した小型Linuxマイクロサーバ「OpenBlocks IoTファミリ」を発表した。同製品ファミリは、同社の小型Linuxマイクロサーバ「OpenBlocksシリーズ」で培った信頼性などをそのままに、無線や有線のインタフェースを搭載することで、あらゆるセンサへのコネクティビティを実現するM2M/IoTのゲートウェイとして開発された。フォームファクタのサイズは41.6mm×96mm×11.3mmで、設置レイアウトを悩むことなく利用が可能。小型ながら、Wi-FiやBluetoothなどの無線通信を搭載しているほか、RS-485や RS-232C、GPIO、Ethernetなどの有線インタフェースにもオプションケーブルをつなぐことで接続可能となっている。また、3G(W-CDMA:NTTドコモFOMA網に対応予定)通信機能も搭載しており、さまざまな場所からの通信が可能となっている。プロセッサにはIntelの22nmプロセスのAtomベース(Silvermontアーキテクチャベースのデュアルコア、500MHz)のSoC「Edison」を採用しているほか、1GBのLPDDR3、4GBのeMMCを搭載。OSにはDebian GNU/Linuxを採用しているため、アプリケーションの実装も容易だ。なお価格はオープンで、2015年2月の出荷開始を予定している。
2014年09月29日ぷらっとホームは9月29日、M2Mやモノのインターネット(IoT:Internet of Things)通信向けに特化した小型マイクロサーバ「OpenBlocks IoTファミリ」を発表した。2015年2月に出荷予定。価格はオープンだが、実勢価格は3万円台半ば~4万円台になる見込み。同製品は、累計出荷7万台の実績がある小型Linuxマイクロサーバ「OpenBlocksシリーズ」のコンピュータ性能はそのままに、Wi-FiやBluetoothなどの無線に加え、RS-485、RS-232C、GPIO、Ethernetなどの有線のインタフェースを搭載することで、M2M/IoTのゲートウェイに最適なものとなっている。22nmプロセス技術に基づくインテルのSoCを搭載し、メモリ1Gバイト、フラッシュROM 4Gバイトで、外形寸法はW41.6×D96×H11.3mm。アンテナ内蔵の3G通信機能を搭載し、あらゆる場所から上位ネットワークとの通信が可能だ。OSには、汎用のDebian GNU/Linuxを採用。さまざまなアプリケーションを少ない時間で実装でき、スピーディーなIoTシステムの構築が可能としている。
2014年09月29日