産業技術総合研究所(産総研)は1月26日、有機デバイスに特有のばらつきを利用して偽造を困難にするセキュリティタグ回路を開発したと発表した。同成果は産総研フレキシブルエレクトロニクス研究センター印刷デバイスチームの吉田学 研究チーム長、栗原一徳 研究員、ナノエレクトロニクス研究部門エレクトロインフォマティクスグループの堀洋平 主任研究員、小笠原泰弘 研究員、片下敏宏 主任研究員によるもの。特許庁の報告によれば、2013年度の模倣品による国内総被害額は1100億円にも上る。一部の製品では、個々の製品に固有の番号を付加して、トレーサービリティーを向上させ真贋判定に役立てているが、バーコードやQRコードなどの印刷された情報や、集積回路に電気的に記録された情報は複製が可能であるため、偽造品や海賊版が正規品として流通してしまうリスクがある。そのため、偽造困難なIDタグなどを利用した、真贋を区別できる製品の需要増加が予想されている。研究グループが開発したセキュリティタグは、作製時に有機デバイスに生じるわずかな素子間のばらつきを利用して、同じ設計の回路それぞれが異なった固有の番号を生成する。今回、大気中での安定性が高い有機半導体と、有機材料と無機材料を用いたハイブリット絶縁膜を用いて、わずか2Vで動作するエラー率の低い回路の開発に成功した。この回路はフレキシブル基板上に作成でき、商品パッケージなどにIDタグとして張り付けることで偽造品などの流通防止や回路自体の改ざん困難性の向上への貢献が期待される。なお、同技術の詳細は1月27日~29日に東京ビッグサイトで開催される「プリンタブルエレクトロニクス2016」で発表される。
2016年01月27日SCSKはこのほど、KSKが開発したマルチデバイス対応のWebサイト構築および運用を容易にするミドルウェア「pronel 1.0」を提供開始したことを発表した。「pronel 1.0」は、HTML/CSS/JavaScriptなどで構築されたWebサイトを、スマートデバイスの画面サイズに合わせて表示するミドルウェア。SCSKは国内総代理店として、同製品の取り扱いや導入支援サービスの提供を開始した。Web標準技術であるHTML/CSS/JavaScriptで構成されたWebサイトであれば、スマートフォン用、PC用などすでに運用を行っているサイトを流用した開発が可能であるという。また、高度な機種判別により、OSはもちろんブラウザの種類までも識別を行い、機種ごとに違った操作性を追求することが可能。これによりユーザー・エクスペリエンスをより高めたデザインのWebサイトを構築できる。PC用のWebサイトを元コンテンツとした場合においても、画面サイズが大きく異なるスマートフォンなどへ向けたWebサイト提供が可能だ。そのほか、国内発売機種だけではなく、iOS/Android/WindowsのOSが標準搭載された海外発売端末にも対応させることができる。
2016年01月26日村田製作所は1月26日、サイバーエージェント・クラウドファンディングと連携し、ハードウェア製作支援プログラム「IoTアイデアコンテスト」を開催すると発表した。同プログラムは、村田製作所のセンサと無線通信モジュールを活用したハードウェアの開発を目指す企業・個人を対象としたもので、審査通過者に対して試作品製作段階におけるセンサ、無線通信モジュールなどのサンプル提供や技術サポートを行う。また、審査を通過した対象者は、サイバーエージェント・クラウドファンディングが運営する「Makuake」において、クラウドファンディングプロジェクトを実施することが可能。これにより、クラウドファンディングによって集めた資金を、製品の開発・改良にあてることができるほか、試作品開発段階でプロジェクトに支援をしたサポーターの意見を聞くことができる。募集期間は1月26日~2月29日。その後、書類による一次選考、ヒアリングによる二次選考を経て、4月22日に審査通過者が発表される。審査通過者は5月31日までにプロトタイプの開発を完成させ、6月にクラウドファンディングを開始させる予定となっている。なお、最優秀賞1組には賞金100万円、優秀賞2組には賞金50万円が授与される。
2016年01月26日富士通は1月20日、企業向けIoTパッケージ「Fujitsu IoT Solution UBIQUITOUSWARE」の新製品10種を発表した。発表会では、新製品の披露とともに、昨年5月に発表された同パッケージの実証実験結果と今後の事業展開についても説明が行われた。ユビキタスウェアは、高度なセンシング技術でデータの収集・解析・分析を行い、価値の高いデータとして提供する製品群。人を中心とした情報を価値あるものとしてセンシングと解析を行う「ヒューマンセントリックIoT」を基本コンセプトとする。富士通 ユビキタスビジネス戦略本部長代理の松村孝宏氏は、ユビキタスウェア製品の特徴として、「すぐに現場で使える、高精度なセンシング、ユーザーの環境・戦略に合わせて自由に選択できる製品群」と説明した。ユビキタスウェアは68種類のセンシングアルゴリズムと49種類の特許に基づいている。ユビキタスウェアのアルゴリズムの具体例として挙げられたのは以下の6種類。身体の姿勢…人が座り込んだり、倒れたりしていないかを検出転倒、転落…意図しない転倒や転落を検出熱ストレス…熱に対する一人ひとりの身体ストレスを検出ジオフェンス…特定エリアへの侵入、エリアからの退出を検出生体反応…生活の気配を検出いびき、せき…人体の変調を検出また、実地環境に基づいたさまざまな検証を重ねて高精度化を実現しており、位置精度30cm、遅延時間1秒での追従が可能で、リアルタイムでの高度の検知・追従にも対応する。発表会では3Dのマップを表示したキャッチボールのロケーションデモが行われた。今回、提供が開始されるユビキタスウェアの製品群は以下のとおり。すでに、「パイロットパック」を活用して、情報・通信、化学、輸送用機器、官公庁・自治体、建設、鉄道などの10業種14社の顧客と、工場内の健康管理や従業員の位置把握・転倒検知などについて、検証・準備が行われている。実証実験の例としては、「住宅メーカーによる現場作業員の熱ストレス検知(熱中症予防)」「農作業中の事故防止(一人作業による発見の遅延を予防する)」「製造現場の工程改善シミュレーター(効率化検証)」「住宅メーカーの高齢者見守りサービス(オペレーションセンター経由での健康監視)」が紹介された。また、昨年5月の発表から現時点にかけて、さまざまな企業から470件の引き合いがあるという。製造分野が195件と最多だが、エネルギー分野(37件)物流分野(25件)など、業種は多岐にわたる。「パイロットパック」では、ユーザーの環境に合わせてパッケージ構成の変更や導入サポートにも対応したうえで、ユビキタスウェアを実用導入するためのIoT環境を2カ月間貸与する。価格は、センサーデバイス10個、ゲートウェイ用スマートデバイス2台、IoTプラットフォーム、導入支援サービスの最小パッケージで80万円~130万円ほどの見込み。ユビキタスウェアは今後、グローバルで展開されることも決定している。欧州では2月、北米とアジアでは3月に販売を開始し、2017年には実地導入を目指す。ニーズの高いデジタルマーケティング・見守りソリューション分野や、富士通が得意とする医療・農業・交通分野を中心に、富士通全体の中のユビキタスウェアソリューションとして、2018年までに500億円、2020年までに1000億円の事業規模を目指すとしている。
2016年01月21日○新製品も既存製品もメガネデバイスの体験は大人気1月12日から15日まで東京ビッグサイトで開催されたウェアラブルEXPOでは、いわゆるメガネ型デバイスの体験がかなりの人気となっていた(どこも数十分待ち)。新しい製品に絞って紹介しよう。会場に入ってすぐ右手という好アクセスの場所には、シャープのブース。小型のLCOSデバイスのサンプルデモと、MEMSレーザープロジェクターデモが行われていた。LCOS(Liquid crystal on silicon)は、光の反射をコントロールすることで映像を映し出す反射型の液晶デバイスだ。一方のMEMSレーザープロジェクターは、レーザーダイオードをミラーで走査して映像を映し出すもので、焦点合わせが不要というメリットを持つ。シャープは液晶技術に長けているということで、LCOSを開発。その後、MEMSミラーを使用したレーザープロジェクターユニットを開発し、レーザーダイオードをRGB各1本ずつ使用した標準品と、2本に増やした高輝度タイプを展示。高輝度タイプのデモも見られた。会場をさらに奥に入ると、東芝がWearvueを展示していた。2014年のCEATEC JAPANで「東芝グラス」として参考展示だった機器が、ついに市販される。ただし、Wearvueは視界すべてに映像が表示される没入型デバイスではなく、一部に表示されるシースルー型こともあり、一般向けではなく企業向けだ。体験コーナーは長蛇の列で、内容が以前とほぼ同じということで体験は断念…。ブラザーはAiRScouterのコンセプトモデルを展示。主に建設現場や工場での利用を想定し、防塵・防水性能を持たせた(IP85相当で水没は想定せず)。人間の身体や服に装着するのではなく、「ヘルメットに止める」という、現場では当たり前の装備(ヘルメット)に取り付けることで装着安定性を高めている。メガネスーパーのブースでは、「b.g.」の試作品を体験できるコーナーがあった。今回のウェアラブルEXPOで発表会が予定されていたが、満足できる試作品が完成しなかったということで発表会はキャンセル。b.g.は、これまでのスカウタータイプというか単眼表示ではなく、見やすさを重視した両眼タイプだ。コンテンツの表示面積は狭いが、一般的なメガネにアドオンして使える点がメリット。コンテンツを斜め下から投影することで素通しの視界を確保し、さらに一時的に使わない場合に本体を跳ね上げておける。○プライバシー確保メガネも福井県鯖江市のブースでは、ニッセイがNIIの越前研究室から生まれたPrivacy Visionを展示していた。越前研究室では、インターネット時代で大量の画像が流通し、SNSのような仕組みもあるなかで、プライバシーをどう確保するかという研究を行っている。その成果が、ついに市販されることになった(6月予定)。どのようにプライバシーを守るかだが、最近のデジタルカメラやスマートフォンのカメラ機能で当たり前になっている「顔検出」に着目。顔検出の標準的なアルゴリズム(Viola-Jones法)では検知されないように、ノイズ情報を入れている。研究の初期段階では、目の周りに赤外線LEDを取り付けていたが、撮影カメラに赤外線フィルタを取り付けることで破られてしまい、電源やケーブルが必要だった。その後、白っぽいフィルタを使うことで電源レスを実現し、福井県鯖江市のメガネ会社と共同でデザインや機能性をブラッシュアップ。フレームをチタンで作ることで、かなりスタイリッシュな製品に仕上がっている。
2016年01月19日東京大学は1月19日、IoT機器向けの軽量なHTTPS通信の実証に成功したと発表した。実証に成功したのは同大学 大学院 情報理工学系研究科 講師の落合 秀也氏と富士通研究所、東邦大学 講師の金岡 晃講氏らの研究グループ。落合氏らの研究グループは、IDベース暗号方式による軽量なHTTPS通信技術を使うことで、従来方式と比較して計算量や通信遅延を「5分の1程度」にまで軽減したという。IDベース暗号は、情報システムで使われる識別子(ID)とのひも付けを得意とする公開鍵暗号方式で、過去の海外の論文で提供されつつも実用化されていなかった鍵交換に基づく暗号方式の改良方式を実験では採用した。具体的には、落合氏らが開発した、建物設備をIEEE1888でクラウドに接続させるためのIoT機器「IEEE1888-BACnet/IPゲートウェイ」に、金岡氏らが開発したIDベース暗号で使うペアリング演算エンジンのTEPLA(IDベース暗号に用いるコアとなるライブラリ)を用いて、富士通研究所がIDベース暗号によるTLSで動作するHTTPSを開発・実装した。これに加えて、IEEE1888で接続するクラウドサーバ上のソフトウェア「FIAPStorage2」にもTEPLAを用いてHTTPSを開発・実装し、東京大学内の空調設備の状態データ(オンオフ状態や設定温度、室温温度など)を、IoT機器からクラウドへ送信し、処理にかかる時間などを計測した。結果として、従来のTLS技術スイートと比較して通信時間が22%削減、通信データ量についても16%の削減に成功したという。この研究の詳細は1月19日より熊本県熊本市で開催される「暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2016)」で発表される予定。
2016年01月19日米Microsoftは15日(現地時間)、Windowsサポートポリシーの変更を発表した。この変更により、2017年7月から、Skylake搭載デバイスはWindows 10のみサポートされ、Windows 7 / 8.1ではサポートされなくなる。開発コード名「Skylake」で知られるIntelの最新世代CPUは、Windows 10環境で最もパフォーマンスが高くなり、Windows 7環境と比べ、最大30倍のグラフィックス性能、最大3倍のバッテリ寿命が実現するという。このため、米Microsoftは、主に企業ユーザー向けに、Windows 10への切り替えを推進する目的で、サポートポリシーを更新。今後、最新のCPUでサポートを受けるには、最新のWindowsプラットフォーム(現時点ではWindows 10)が必要になる。これは、SkylakeやIntelの次期プロセッサ「Kaby Lake」に限らず、Qualcommの「8996」、AMDの「Bristol Ridge」なども、同様の扱いだ。2017年7月17日までの18カ月間は、Windows 10への移行期間として、同社がサポート対象とするSkylake搭載デバイスではWindows 7 / 8.1環境でもサポートが継続される。2017年7月17日以降は、Skylake以降のプロセッサを載せたWindows 7 / 8.1デバイスでは、サポート対象外のデバイスで悪影響が無いと判断された場合、セキュリティ更新プログラムが提供される。■最終行について初出時、「2017年7月17日以降は、Skylake以降のプロセッサを載せたWindows 7 / 8.1デバイスは、クリティカルなセキュリティアップデートのみ提供され、互換性や信頼性向上といった通常のアップデートは提供されなくなる」と記述していましたが、あらためて日本マイクロソフトに確認したところ、現時点では、上記本文の表現がより適切であると判断し、記事を更新いたしました。
2016年01月18日テックファームホールディングスは1月15日、IoTサービス事業を強化する目的で、インヴェンティットと資本業務提携したことを発表。今後は両社でIoTのサービスパッケージ「IoTビジネスパッケージ」(仮称)を開発し、今春の提供開始を目指すという。同サービスは、顧客企業のIoTサービスの開発からアプリケーション設計・開発、プラットフォーム提供までをパッケージにしてサポートするというもの。センサーやデバイスは顧客のニーズに合わせて選定し、サーバ開発や端末制御パッケージと組み合わせた提供も行うという。開発から実証実験、サービス提供までのコスト・期間を削減し、独自のIoTサービス開発を検討している企業や地方自治体などへの提供を見込んでいる。同サービスの各機能を制御するインタフェースには、業界別の専用端末プラットフォームである、「Tablet Home Contents Platform(THCP)」が利用されている。コンシューマ向け(BtoC)、企業内業務(BtoB)の双方に対応するため、セミオーダーしたアプリケーションを必要に応じてタブレット端末などにインストールし、提供するとしている。また、パッケージ提供するプラットフォームに対し、在庫管理、音声認識など必要な機能を追加していくことで、顧客の業種に合った業界専用端末を開発するという。端末は専用端末としてOSからカスタムが可能なため、遠隔の操作や盗難対策にも対応できるとしている。さらに、タブレット端末のほかにも、Windowsアプリケーションやウエアラブル端末への対応も可能としている。例えば、専用端末を活用することで、メーカーの製品保守において、製品に劣化を検知し故障前に部品交換するなどして、業務の効率化やコストダウンを実現するとしている。
2016年01月15日ケースレーインスツルメンツ(ケースレー)は1月14日、パワーデバイス/モジュールの特性評価に適したソースメータ(SMU)の新製品「2461型」を発表した。価格は94万8000円(税別)。「2461型」は正確に制御された最大10A/100V、1000Wの大電流パルスを生成する機能を備えており、パワー・デバイスの熱効果を抑え、デバイスのインテグリティを保つことができる。また、18ビットのデュアル・ハイスピード・デジタイザにより、デバイス動作応答の波形を前面パネルに表示し迅速に解析することが可能。同製品は実績のある2450型、2460型ソースメータをベースとしており、クラストップのハイレベルなDCおよびパルスの印加/シンクが可能であり、設計を詳細に調べることが可能となっている。また、「2461型」は他のケースレーのグラフィカル・ソースメータ同様、直感的なTouch、Test、Invent技術を採用しているため、操作方法の習得時間が短縮でき、作業効率の向上に貢献するとしている。さらに、オープン・ソース・スクリプト言語を内蔵し、再利用可能でカスタマイズ可能なテスト・ソフトウェアのライブラリが生成でき、さまざまな測定アプリケーションにも対応する。加えて、新しい高速コンタクト・チェック機能では、金属疲労、プローブ先端の汚れ、接続の緩み、破断、リレー不良などによる測定の誤差、製品不良を最小限に抑制する。同社は「2461型」により、確実なテストが可能になり、設計、エンジニアリングの判断を迅速に行うことができるようになるとしている。
2016年01月14日●大手メーカーはIoTに迷いを持っている世界最大級の家電関連展示会「International CES 2016」が閉幕した。今年目立ったテーマには、自動車やVRなどがあったが、何より盛り上がっていたのがIoTだろう。CESのトレンドから、2016年のIoTの動きについて考えてみたい。CESを主催するのはCEA(Consumer Electronic Association:全米家電協会)だったが、2016年からCTA(Consumer Technology Association:全米民生技術協会)に名称を変えている。家電だけでなく、幅広い技術をカバーするという現状に合わせての変更だろう。CES自体は「Consumer Electronic Show」のままだが、実際には家電の域を超えた幅広い製品や技術が展示される見本市となっている。○モノがインターネットに繋がった先にさて、本稿のテーマであるIoTは、「あらゆるものがインターネットに繋がる」というのが基本的な定義だ。これまでインターネット接続機能が付いていなかった製品、それこそ電球や乾電池から、自動車、カメラ、冷蔵庫、洗濯機といったものまで、とりあえずインターネット接続するための機能が搭載されるようになる。これは「サービスの時代」を意味する。電球がインターネットに接続しただけでは何の進歩もない。「インターネット経由で消灯する、電力消費を確認する」といったサービスと連携して初めて意味を持つのだ。また、単独でインターネットに接続するだけでなく、ほかのIoTデバイスと連携することで、さらなるサービスも考えられるだろう。CESは、開幕前日に主要メーカーによるプレスカンファレンスが実施されるのが常だ。今年もLG、Samsung、Huawei、パナソニック、ソニーといった面々が登場していたが、発表された新製品はインパクトに欠けるものが多かった。もともと、携帯電話は2月・バルセロナのMWC(Mobile World Congress)、カメラは同じく2月・日本のCP+での発表がメインで、CESはタイミング的に新製品を投入しづらい。○大手メーカーは迷っているただ、タイミングだけが問題だとは思えない。世界経済の減速感も否めないが、大手メーカーがIoTに迷いを持っているという印象があるのだ。例えば、Samsungは21.5型フルHDのディスプレイを備えた冷蔵庫を発表。これまで家族との連絡事項や家族写真などを貼り付けていた冷蔵庫のドアにディスプレイを搭載することで、インターネット経由で画像やスケジュールを表示できるようになる。LGの冷蔵庫は、ドアをノックすると透けて中身が見えたり、ドアの下部に足を差し出すとドアが開く、といった機能をアピールしていたが、こういった機能がユーザーに受け入れられるかは未知数である。IoT時代になり、冷蔵庫にインターネット機能が搭載されるとして、それをどう活用すべきか、メーカー側にも見えていないのではないだろうか。LGとSamsungがプレスカンファレンスで冷蔵庫と洗濯機しかIoT製品を紹介できなかったのは象徴的である。IoT時代になり、白物家電によりデジタル的な機能が盛り込まれる。問題は、その機能が望まれるものであるかどうかだ。単独でインターネットに繋がるだけでは、利用は進まないだろう。Samsungはメッセージボードなどの機能を持たせていたが、それがどこまで冷蔵庫に求められている機能かわからない。ドアの開閉時に庫内を撮影して、何を買うべきかを知らせる機能も搭載されていて、やりたいことはわからないでもないが、もう一段階の進化が必要だろう。●日本企業が苦手な「サービスとの連携」○日本企業が苦手な「サービスとの連携」「ハードウェアに独自の機能を載せて進化させる」ことは、日本企業の得意分野ではある。ただ、今回のCESでは、東芝やシャープが出展していないこともあり、白物家電における日本の存在感が薄まった。さらに、日本企業が苦手な「サービスとの連携」が必要になってくると、日本企業がIoT時代を先導するのは、このままでは難しいだろう。ソニーは白物家電を持たないため、今回もIoTに関する言及がほとんどなかった。Life Space UXがそれに近い存在かもしれないが、いまいちサービスとの連携に欠ける。Samsung、LGの韓国勢も、「サービスとの連携」の点で攻めあぐねているように見える。スマートフォンがハブになることから、Google、Appleのプラットフォーマーの動向は気になるし、AppleのHomeKitのようなデバイス連携技術が重要になってくるだろう。ただ、Appleはサービス開発では特別存在感がないし、Googleは冗談を抜きにしても「家庭的」ではない。IoTはあらゆるものがインターネットに繋がる分、サービスが多岐にわたり、そのサービス同士が連携したものになるはずだ。CESは家電を中心とした展示会であるため、サービスも家庭向けのものが望まれるだろう。Netflixがテレビの視聴スタイルを変え、CESの基調講演に立つように、新たな勢力が家庭内のIoT普及の起爆剤になる可能性はある。それが家電メーカーになるのか、新興のサービス企業がその座を奪うのか、それとも新たなメーカーが現れるのか、今回のCESではそれがまだ見えてきていない。今年の9月、ベルリンで開催されるIFAでは、白物家電のIoT化がどう進展しているのか、そして来年のCESでは新たな動きが見られるのか。今年のCESは、IoTの今後を占う以前の段階。まだ混沌としてIoTが無秩序に存在していただけ、そんな印象だった。
2016年01月13日デジタルハリウッド大学大学院は13日、 IoTプロダクトによるスタートアップを支援するために、ファブ工房「LabProto(ラボ・プロト)」を設置し、プロトタイピングから資金調達までを実践指導する「DHGSアクセラレーション・プログラム」を開始することを発表した。「DHGSアクセラレーション・プログラム」は、デジタルハリウッド大学院の在籍生、修了生、入学予定者を対象に、IoT(Internet of Things)プロダクトアイデアレベルから事業化するまでの実践指導を行う8ヶ月間のプログラム。ハードウェアのプロトタイピングが行えるファブ工房「LabProto(ラボ・プロト)」を新たに設置し、そこを拠点に「ファブリケーション」、「プログラミング」、「ファンディング(資金調達)」という3つの実践指導とコラボレーションを行うことで、同学発のスタートアップなどインパクトを与えるアウトプットを支援するという。また、優秀なプランには、同学からの「実装支援金」による助成が検討されるほか、成果発表会などでの企業・投資家向けデモ発表の機会が用意されるという。さらに、有望なスタートアップには、シェアオフィス入居、登記、商標登録、出資などの支援も行われるとのことだ。受講対象者および受講料は、2016年度に在籍している院生については無料。また、同学を修了後に新たなアイデアを持ち、サービス・プロダクトの開発を行うデジタルコンテンツマネジメント修士(専門職)は、半期分の設備費・演習費に相当する10万9,000円での受講が可能となる。なお、1月15日、16日、18日、20日には同学への入学を検討し、「DHGSアクセラレーション・プログラム」の受講希望者向けの説明会が開催される。 場所は東京都・お茶の水のデジタルハリウッド大学大学院 駿河台キャンパス。受講希望者は、申し込みフォームより申請する。説明会の受講費用は無料。
2016年01月13日米GoogleとLenovoは7日(米国時間)、現実世界の空間や動きをデバイス内に取り込むGoogleのプロジェクト「Project Tango」初のコンシューマ向けスマートフォンを開発していると発表した。開発中の製品にはQualcommのSnapdragonを採用。発売は2016年夏で、500ドル(約59,000円)未満での提供を目指す。「Project Tango」は、2014年2月にGoogleが発表したプロジェクト。モバイルデバイスに深度センサーを組み合わせ、リアルタイムで周囲の3Dマップを生成。デバイス内で、実際の空間をベースとした3Dモーショントラッキングをオーバーレイ表示できる。この技術を使うと、例えば、GPSなしで建物内を正確にナビゲートしたり、実際に居る場所をステージにしたゲームをAR(拡張現実)で楽しんだりできる。また、両社は7日から、Project Tangoアプリのエコシステムを成長させるとして、Project Tango対応アプリの開発者やProject Tango関連アイデアなどを募集するページを開設した。募集は、2016年2月15日に締め切られる。
2016年01月08日玄人志向は7日、ボードコンピュータ「Raspberry Pi 2」をベースとした「自作IoT体験キット(KURO-IOTEXP/KIT)」を発売した。価格はオープン、店頭予想価格は15,000円前後(税別)。直販価格は16,200円(税込)で、1月下旬の出荷予定、1月7日時点では予約受付中となっている。Raspberry Pi 2とさまざまなパーツがセットになっており、自宅のPCをスマートフォンからの遠隔操作で電源ONするマニュアル「玄人指南書」が付属。使う工具はドライバーだけだが、Linuxの知識が必要で、ユーザーサポートも初期不良対応のみとなる。キットの内容は以下の通り。付属の玄人指南書では使わないパーツも同梱され、今後の玄人指南書(更新版)で利用していく可能性もある。マイコンボード関連Raspberry Pi 2 Model B ×1USB ACアダプター ×1スイッチ付きUSB電源ケーブル(USB A―MicroB) ×1ケース x1MicroSDメモリ 8GB ×1ヒートシンク ×2(大小計2個)デバイス関連温湿度センサーモジュール ×1リレーモジュール ×15Vブザー ×1GPIO関連GPIOエクステンションボード ×1GPIOケーブル ×1830穴ブレッドボード ×1ジャンパーワイヤ(オス~オス) ×30ジャンパーワイヤ(メス~メス)20cm ×10ジャンパーワイヤ(オス~メス) 20cm ×1010kオーム抵抗 ×101kオーム抵抗 ×10黄色LED ×4赤色LED ×4タクトスイッチ ×2書籍玄人志向指南書 自作IoT編
2016年01月07日ドスパラは6日、microUSB端子(オス)を両端に備え、接続した2台のデバイス同士で電力をシェアできる充電ケーブル「DN-13424」を、同社運営の「上海問屋」にて販売開始した。価格は699円(税込)。充電ケーブルは一端が充電用、もう一端が給電用になっており、microUSB搭載のスマートフォンやタブレットなどを両端に接続すると、一方からもう一方へ電力を供給可能。外出先などでどうしても充電が必要な時、一緒にいる家族や友人から電力を分けてもらえるアイテムだ。なお、同製品の利用には、給電側の機器がUSB OTG(USB On-The-Go)機能に対応している必要がある。インタフェースはmicroUSB。付属の変換アダプタを使用すると、通常サイズのUSBにも対応する。
2016年01月07日カシオ計算機は6日、OSとしてAndroid Wearを採用したリストデバイス「Smart Outdoor Watch」(WSD-F10)を発表した。オレンジ、グリーン、ブラック、レッドの4色で展開する。3月下旬の発売を予定し、税別価格は70,000円。なお、米国ラスベガスで開催の「2016 International CES」(CES 2016)において、カシオブースおよびプレスカンファレンスで披露されている。Smart Outdoor Watchという名前の通り、アウトドアユースにフォーカスしたリストデバイス。5気圧の防水性能に加えて、米軍の調達規格「MIL-STD-810G」準拠のタフネス性能を持つ。大型の操作ボタン類にはすべり止め加工を施し、本体の右サイドに集中させることで、グローブを装着した手でも操作性が落ちないようにした。ディスプレイ部は、静電容量式タッチパネルの1.32型カラーTFT液晶(320×300ピクセル)かつ、モノクロ液晶の2層構造となっている。モノクロ液晶だけを用いる「タイムピース」モードを備え、時刻表示のみとすることで、内蔵バッテリーの寿命を延ばすことが可能だ。タイムピースモードだけを使った場合、約1カ月以上の駆動時間となっている。通常使用時の駆動時間は1日以上。内蔵のセンサー類は、圧力(気圧/高度)、加速度、ジャイロ、方位(磁気)だ。GPSを持たないのは残念だが、これは本体サイズやバッテリー寿命を重視した判断とのこと。位置情報の取得には、スマートフォンのGPS機能を利用する(Bluetoothでペアリング)。WSD-F10の通信機能は、Bluetooth 4.1(Low Energy対応)とIEEE802.11b/g/n準拠の無線LAN(Wi-Fi)だ。対応OSおよび端末は、Android 4.3以上のスマートフォン、iOS 8.2以上のiPhone 5 / 5s / 5c / iPhone 6 / 6 Plusとなっている(iOSでは一部の機能に制限あり)。WSD-F10の本体サイズ(ボディ部分)はおよそ、縦61.7×横56.4×厚さ15.7mm、バンドを含む重量は約93gだ。機能面では、右上のTOOLボタンから、コンパス、気圧・高度、日の出・日の入り時刻、タイドグラフ、活動グラフなどの各機能を呼び出し、自然環境の変化や活動量をリアルタイムで把握。スマートフォンアプリ「CASIO MOMENT SETTER+」と連携させると、トレッキング、サイクリング、釣りといった各アクティビティ中に、知りたいタイミングやチャンスの通知を受け取れる。速度、距離、日の出の時刻、休憩のタイミング、魚の動きが活発になるフィッシングタイムなど、あらかじめ設定した条件で必要な情報を自動で知らせてくれる。カシオの離合体・防水防塵アウトドアカメラ「EXILIM Outdoor Recorder EX-FR100」とも連携。WSD-F10を操作して、EX-FR100のシャッターを切ったりできる。また、上記のセンサー類を活用する各種アプリをプリセットしているほか、Android Wear用アプリも追加可能。Gmail、Google音声検索、Google Maps、Google Fit、天気予報など、Googleが提供する各種アプリやサービスにも対応している。プリセットアプリは以下の通り。■トレッキング用GPSアプリ「YAMAP」スマートフォンが圏外でも、トレッキング専用の地図を呼び出し表示できるGPSアプリ。■トレッキング用GPSアプリ「ViewRanger」ルート情報、ナビガイド、気圧グラフ、位置情報、次のポイント地点までの距離といったデータを提供するGPSアプリ。■お天気アプリ「Go 雨! 探知機」現在地付近の雨の様子が一目で分かるお天気アプリ。最新型の気象レーダー(X バンド MPレーダー)を利用し、リアルタイムの雨量情報をもとに現在地周囲の雨量を瞬時に表示。アウトドアシーンにおける天気の急変への対策に役立つ。■フィットネス用アプリ「Runkeeper」5,000万人以上のユーザーが利用するランニングやサイクリング向けアプリ。ランニング、 サイクリング、ウォーキング、ハイキングなどのルートを追跡・記録ができる。
2016年01月06日Windows 10を搭載するデバイスの月間アクティブ台数が2億台を突破した。Windows ExperienceブログでYusuf Mehdi氏(Windows&デバイスグループ担当CVP)が公表した。昨年7月末に登場したWindows 10は、約2カ月で搭載デバイス数が1億1000万台を突破、さらに約3カ月で2億台に到達したことになる。Mehdi氏によると、昨年のホリデーシーズンにWindows 10デバイスは好調に販売を積み重ね、新しいWindows 10デバイスの40%以上がブラックフライデー(2015年11月27日)以降にアクティベートされた。ブラックフライデー以降のWindows 10の米小売PCシェア(NPD Group調べ)は、ブラックフライデー前の4週間から16ポイント増加し、62%に拡大した。Windows 10は、Windows 7の140%近く、またWindows 8の400%近い、Windowsの過去最速ペースで伸び続けている。MicrosoftはWindows 10のリリースから2~3年で、Windows初の10億デバイス突破を目指している。Mehdi氏は、搭載デバイス数以外にもWindows 10プラットフォームのホリデーシーズンのデータをいくつか公表した。たとえば、12月だけでWindows 10の使用時間数が110億時間を超え、月間最長記録を更新した。これはWindows 10になってユーザーがより長くWindowsデバイスと関わるようになっていることを意味する。またブラウザMicrosoft Edgeの12月の使用時間が445億分に達し、提供開始以来のCortanaへの質問数が25億を超えるなど、Windows 10の新機能・サービスが着実にユーザーに浸透している。Windows Storeは、昨年のホリデーシーズンにPCおよびタブレットからの有料トランザクション数が倍増した。昨年12月のデバイスごとの売上高はWindows 10がWindows 8の4.5倍以上と、特にWindows 10ユーザーが好んで使用している。また12月だけで、有料製品を購入したユーザーの60%が同ストアの新規ユーザーだった。ハードウエア製品は米国やカナダでSurfaceシリーズの新製品が好調だった。これらはまだグローバル展開が完了していない。中国や香港に続いて、5日にはオーストリア、オーストラリア、英国、フランス、ドイツ、スイス、ニュージーランドでSuraface Bookの予約受付が始まり、まもなく日本にも投入される。また、数週間中にインドでSurface Proの販売が始まる。
2016年01月05日ドスパラは23日、新型MacBookやNexus6P、Nexus5XといったUSB Type-Cコネクタを搭載したデバイスと接続できるUSB 3.0ハブ「DN-13478」を同社が運営する「上海問屋」で発売した。価格は税込1,799円。USB Typ-Cポートに接続するタイプの4ポートUSBハブで、最大5Gbps(理論値)でのデータ転送が可能。ポートに対して個別のスイッチを搭載し、複数のUSBメモリやカードリーダを接続した際にスイッチのON/OFFだけで、どれをUSB Type-Cデバイスに接続するかを選択できる。
2015年12月24日●コーヒーが無料で飲めますソフトバンクは18日午後1時、最新のIoT製品などを体験できるスペース「TECH CAFE」を、東京都港区六本木の「ワイモバイル六本木 Internet Park」の2階にオープンした。すでに一般向けにオープンしているが、事前にプレス向けの内覧会があったので、これから向かわれる方のために内部を紹介しよう。○IoTを体験するための自由空間TECH CAFEはワイモバイル六本木店脇の階段を上ってすぐの2階部分にある。カフェの名前通り、入り口側にコーヒーメーカーがあり、1人1杯まで無料で飲める。入って右側にはiMacとSurfaceが並び、フリーの作業スペースとして利用可能だ。場所はワイモバイルの2階なのだが、ソフトバンクやワイモバイル製品の情報発信ではなく、純粋にIoT機器に触れたり、一服しながらユーザー同士が情報交換するなどの場所として展開したいとのこと。全体的な雰囲気はこれから作られるのだろうが、まずは緩やかな自由空間といった塩梅で、変に商売っ気が感じられないところがいい感じだ。コーヒーメーカーの隣には3Dプリンタ(機種はda Vinci 1.0 AiO)が設置してあり、希望者は材料費だけで自由に使えるそうだ。ただし、トラブルが発生した場合のサポートは一切行われないため、ある程度3Dプリンタの利用経験があるユーザーが利用することが前提になる。●ユニークな製品を展示○資金調達中のガジェットに触れるチャンス入って左側と正面奥には、ソフトバンクが販売しているIoTガジェットが並んでいる。今回はワイモバイル心斎橋でしか扱っていないという超小型完全セパレートBluetoothヘッドフォン「EARIN」や、片手での撮影が簡単に行えるアクションカメラ「HTC Re Diplo」、ロボットカメラ「appbot LINK」、ファーウェイ製のAndroid Wear搭載スマートウォッチ、Bluetooth接続のタグ、Jawbone社のヘルスケア機器「UP」シリーズなどが展示されており、実際に触ってみることもできる。各展示の隣には「いいね」ボタンが設置されており、押された回数がすぐ上に展示中のスマートフォンの中に表示されている。こうして展示の中で評価が高かったものが取り扱いを増やされたり、急遽販売が決定するといったこともありそうだ。面白いのは、クラウドファンディングなどで資金調達中のプロジェクトだったり、ハッカソンやmake系イベントに出店されたものが展示されているコーナーだ。クラウドファンディングではコンセプトはいいものの、実際に触ってみると思っていたのとは違いがある場合も多く、資金投資前に実際に見られる機会はなかなかないため、いい試みだ。このコーナーは1カ月程度でどんどん展示内容を変えていきたいとのことだったので、期待しておきたい。六本木というと、今や日本のIT業界でも一流どころが集まる街になったが、一方で泥臭い開発話などとはやや離れた感のある場所でもある。そんな六本木の中心で、IoTのスタートアップなどがユーザーと触れ合い、製品を育てていける場所となれば実に痛快だ。夜20時までの営業とのことなので、会社帰りなどに少し立ち寄って、IoT製品の今と未来に触れてみてはいかがだろうか。
2015年12月18日NTTドコモは12月16日、日本システムウエアが提供する「Toami」を活用した新たなIoTクラウドサービス「Toami for DOCOMO」を、12月21日より全国の法人に販売開始すると発表した。Toamiは、IoT機器の稼働情報などの管理を必要とする法人向けに、用途にあったメニューを用いて、クラウド上に簡易にシステムを構築することができるIoTクラウドプラットフォーム。新サービスは、PCなどの管理画面で利用できる「Toami」の各種メニューから、主要なメニューを選定してパッケージ化したもの。管理に必要な機能は、顧客が管理画面で設定するだけですぐに利用可能。機器から出力された情報はPCなどの画面上に表示されるが、リアルタイムデータを表示する「メーター」や、時系列データを表示する「棒グラフ」や「折れ線グラフ」など、11種類の表示メニューから選択できる。また、機器から受信した情報に対し、設定した数値を超えると管理画面上で顧客の設定に合わせた通知メッセージを表示するほか、クラウド上に蓄積したデータをCSV形式で出力する。提供プランは、複数社でサーバを共有する「共有プラン」と専用のサーバを構築する「専有プラン」がある。
2015年12月17日IDC Japanは12月16日、国内モバイルデバイス市場(スマートフォン市場、タブレット市場
2015年12月17日警察庁は15日、ルータやWebカメラ、NAS、レコーダーなど、インターネットに接続されたLinux OS搭載のIoT機器を狙った攻撃に注意を喚起した。利用者が知らない間に機器が攻撃者に乗っ取られ、攻撃の踏み台に悪用されているという。IoT機器を狙った攻撃では、ルータやWebカメラ、NAS、レコーダーなどのIoT機器に不正プログラムがダウンロードされ、攻撃者の命令でサーバ攻撃などを行なう"bot"となる。不正プログラムに感染した機器は、感染拡大のため、インターネットに接続されたテレビやスイッチングハブといった他の機器を探索したり、DDoS攻撃やスパムメールの送信などに悪用されたりする恐れがある。この不正プログラムは、一般的なPCで使われるx86系CPUでは感染せず、IoT機器で多く利用されるARMやMIPS、PowerPC、SuperHなど、特定のCPUで動作するLinuxに感染することが確認されているという。IoT機器では処理能力の低下など、機器の異常に利用者が気付きにくいため、不正プログラムの感染や攻撃を受けている状況を把握しにくい。このため警察庁では、利用中のIoT機器について、最新のセキュリティ情報を確認すること、脆弱性対策がなされないサポート終了製品を使い続けないことなどを推奨している。
2015年12月16日IoT時代の到来により、PCやスマートフォンではない、いわゆる組込機器がネットワークに接続されようとしている。そうした中、OSという立場から存在感を増しつつあるのがWind Riverだ。「10年以上にわたって稼動し続ける機器を作ろうとする際に、我々のOSは採用されてきた。すでに我々の提供するなんらかのソフトウェアを搭載した機器は20億台を超えており、30億台に迫ろうとしている。こうして長年の取り組みによって得られた知見が今後のIoTに向けて生きてくることになる」と語るのは、同社のPresidentであるBarry Mainz氏。同社の主な顧客となる産業は大きく分けて「航空宇宙(防含む)」、「自動車」、「ネットワークインフラ」、「産業機器/医療機器」、「モバイル/コンシューマ」の5つ。これら5つの分野は、それぞれの分野で得た知見を他の分野に応用展開が可能であり、それがビジネスの成功につながっていると同氏は語る。そんな同社の現在のビジョンは「Transform our customer’s business to deliver the promise of a software-defined world」であり、そうしたカスタマの変化に向けて現在、組織体制などの変革を進めているという。具体的には、「これまで組み込みソフトの領域が中心であったが、ビジネスの機会がsoftware-definedへと移りつつあり、組織をそちらに注力できるようにすることを進めている」とする。そうした変革によって注目するのは以下の4つの分野となる。IoT(Internet of Things)Transformation of Data into InfoemationNetwork TransformationSafety and Securityここでの肝はやはりIoTの存在だ。エッジノードで生み出された膨大なデータは、セキュアな回線を経て、ビッグデータとして解析が行われ、その結果、目に見える情報へと変化する。上記4つは、この一連の流れを網羅するものとなる。「もちろん、旧来からのRTOSやオープンソースなどのコアビジネスも重要であり、そこに新たに『クラウド』という領域が別個に加わることとなる。クラウド分野としては、ネットワーク、IoT、自動車、システムシミュレーションといった分野に成長性があると見ている」(同)とのことで、IoTにそうした新たなビジネスの課題を解決する力を与えてくれるものとなるとした。ただし、IoTの実現そのものにもさまざまな課題がある。エッジノードとしても、センサの制御、それを搭載した機器の制御、そしてそれらからデータを収集するゲートウェイの制御といったことを行う必要がある。また、組み込みソフトウェアの開発も、従来のように、開発を終え、カスタマに納品したら終わり、というわけではなく、都度アップデートを行う必要性が生じることとなり、そのための開発体制へと変更する必要がでてくる。さらに、各所より集められたさまざまなデータをBI(Business Intelligence)へと接続する必要も出てくる。こうしたニーズを踏まえ、同社はこれまでのRTOS「VxWorks」や「Wind River Linux」に加え、新たにセンサノードなどに向けた4KBからの省フットプリントRTOS「Wind River Rocket」ならびに、ゲートウェイなどに向けた「Pulsar Linux」の無償提供を開始した。また、IoT機器の開発から、製品テスト、アプリ開発、デバイス管理といったライフサイクルの管理を実現する「Helix App Cloud」「Helix Lab Cloud」「Helix Device Cloud」といったソリューションも用意。ちなみに同氏はこうした新規OSやソリューションの提供について、「IT分野では仮想化が進んできたが、産業界でも仮想化の検討が進められており、こうした動きは、IT分野の仮想化の黎明期と似ている。ビジネスモデルは変化してきている。こうした動きはまさにその象徴であり、組み込みの世界もクラウドへの対応が必須となってきた」としており、変化に対応するために必然であったことを強調する。なお、新OSにはRocketとPulsarといった宇宙にちなんだ名称がつけられているが、これについて同氏に確認したところ、「社内でネーミングコンテストを実施して、ロケットや天体の話題が好きなスタッフが多かったこと、ならびに人の記憶に残る、多言語に渡ってイメージしてもらいやすい名称であったことから採用決定となった」としたほか、ブランドとして、デベロッパが覚えやすいものという意味もあるという。また、OSそのものは無償提供し、ソリューションビジネス収益を上げるビジネスモデルを採用するが、このソリューションビジネスに親会社であるIntelやIntel Security(McAfee)も含まれてくるのか、ということについては、「セキュリティは必須だ。バンドルして提供するパターンや、サーバ側に付加価値サービスとして提供するといったことも考えられる」とした。ちなみに、Rocketは32ビットMCUをサポートとうたっており、そのメインはARMとx86。それ以外にも組み込み向けの32ビットコアや16ビットコアも存在しているが、そうした他のプロセッサコアについては、カスタマのニーズ次第で対応を検討していくという答えであった。
2015年12月15日NXPセミコンダクターズ(NXP)は12月15日、IoT製品の設計所要時間を短縮する「LPC43S67-A70CMクラウド・コネクティビティ・キット」を発表した。同キットは、「NXP LPC43S67マイクロコントローラ」、「A7001CMセキュア・エレメント」、「NTAG I2C NFC」、「Murata SN8000 802.11b/g/n」モジュールと、Zentriのセキュア・コネクテッド・プロダクト・プラットフォームを組み合わせたもの。非接続型組み込み製品とクラウド接続製品間のギャップを埋め、製品設計の際に、セキュリティ、Wi-Fiスタック、デバイス・コミッショニング、クラウド・サービス用APIなどに関する専門的な知識が不要になるという。同社によると自動販売機、個人用ヘルスケア機器、双方向ディスプレイ、FA用産業機器、産業用ゲートウェイ、診断機器や、洗濯機やサーモスタットといった家庭用消費者製品などのセキュアなコネクテッド製品の設計時間を短縮するとしている。
2015年12月15日豆蔵ホールディングスは12月15日、事業会社のメノックスが、IoT対応デバイス・サービスの監視効率を目的としたシステム導入を検討している中小企業、団体向けに、IoTデータ監視ソリューションを2016年1月から提供することを発表した。同システムは、さまざまなIoT対応デバイスから収集したデータを、時系列にクラウド上で一元的に蓄積・管理し、リアルタイムで分析・解析、顧客が保有するPCやスマートデバイスに、トレンドやイベントログとして可視化する機能が提供される。例えば、倉庫や資材置き場にセンサーを設置し、センサーからのデータを収集することで、資材や品質の管理、倉庫の温度や湿度管理を可能としている。また、作業担当者からの報告データをもとに、稼働管理や進捗状況を一元管理することも可能としている。IoT対応デバイスまたはスマートデバイスからの通信プロトコルは、MQTTやHTTPおよびTCP/IPなどのプロトコルに準拠したデバイスに対応。データベースはNoSQLデータベースを構築し、テキスト・画像・音声・動画などのさまざまなデータを時系列に蓄積・検索でき、リアルタイムにデータの活用や幅広い分析・解析が可能だという。データの格納先は商用クラウドとオンプレミスに対応。
2015年12月15日ソフトバンクは12月14日、最新のIoT(Internet of Things)製品などを体験するスペース「TECH CAFE(テックカフェ)」を18日にオープンすると発表した。「ワイモバイル六本木 Internet Park」「ワイモバイル心斎橋筋」の2店舗内に開設する。「TECH CAFE」では、片手で気軽に静止画(1,600万画素)や動画(フルHD)の撮影ができるアクションカメラ「HTC Re Diplo」(HTC製)や、Wi-Fiで遠隔操作が可能なロボットカメラ「appbot LINK」(VARRAM SYSTEM製)、超軽量、超小型のBluetoothイヤホン「EARIN」(EARIN製)などの最新のIoT製品を体験できる。一部の製品は店舗で販売も行う。また、タッチパネルを使ってコーヒーを入れる「ネスカフェ ドルチェ グスト ドロップ」を設置し、来場者に無料でコーヒーを提供する。さらに、「ワイモバイル六本木Internet Park」では、最新のパソコンや3Dプリンタ、複合機などを自由に利用でき、コーヒーを飲みながら快適に作業できる。同社は今後、「TECH CAFE」設置店舗数の拡大を検討している。
2015年12月15日近年IoT(Internet of Things)という言葉を聞くようになりました。日本政府が出す「日本再興戦略」改訂2015でも、ビッグデータやAI(人工知能)と並び、ビジネスや社会そのもののあり方を根底から揺るがす改革の要因として扱われています。最終回は、IoT/WoTの現在と未来、発展するための課題について解説いただきます。○現在の技術動向IoT/WoTの実現には多くの技術的要素が必要であり、これらはまだ発展途上にあります。IoT機器やクラウドをつなぐ"通信"は、携帯網や光回線、Wi-Fiが使われており、より省電力な環境を志向した通信では、ゲートウェイを介したBluetooth LowEnergy(BLE)やZigbeeが用いられています。今後は、このどちらもカバーする通信、つまり、より多くの機器をつなげつつ、低消費電力で広い範囲をカバーする通信手段が検討されています。2015年に3GPP Rel.12で策定された「LTE Category 0」では、通信速度が上下ともに1Mbpsと制限されるものの、通信不要な場合に"スリープ"する低消費電力モードが用意されました。また、3GPP Rel.13で策定を目指す「LTE-M」では、さらに上下200kbpsまで速度が低下するものの、屋内や地下でも接続性が保たれるような、より広範囲のカバリッジを目指しています。また、4Gの次、5Gでも「IoT」は技術革新を目指す要素の1つとして注目されており、より高速な通信に加えて、大量の機器を接続できることを目標にして、2020年に向けて技術の実用化を進めることが期待されています。技術革新は、通信のや省電力化や接続性の向上だけではありません。IoT機器向けのチップも、小型化や低消費電力化が進んでいます。これまでの小型機器向けチップは8/16ビットが主流でしたが、現在は2.0mm角未満のサイズのものでも32ビットを実現したマイコンが登場しており、ボタン型電池で数年間の稼働が可能な時代となりつつあります。もちろんチップだけでなく、IoT機器でキーパーツとなる"センサー"なども省電力化されており、加速度センサーもボタン型電池で半年~数年の駆動を実現しています。IoTに必要なものは、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアも重要なコンポーネントです。センサ制御や通信を制御するためのOSも、これまでは汎用的なRTOSなどが用いられてきましたが、「IoT向けのOS」として機器管理、通信、省電力制御、暗号化などのセキュリティをカバーするOSが登場しています。2014年にはARMがmbed OSを発表し、IoTデバイスの開発がより行いやすくなっています。また少し高性能なCPU向けにはAndroidをベースとしたBrilloや、WebをベースとしたFirefox OSがIoT向けとして発表されています。OS以外にも重要な存在が「プラットフォーム」です。例えば、機器間の相互接続を行うAllJoynやThread、日本国内のHEMS用標準規格となったECHONET Lite、スマートフォンを中心にウェアラブルなどの小型機器を接続するHomeKit、機器やスマートフォン、そしてクラウド間をつなぐWeaveが発表されています。ほかにも、通信関連団体を中心として機器を管理・接続する共通プラットフォーム「oneM2M」規格の標準化も行われています。ただし、これらは対象範囲や参加している団体、主な業界が異なるケースも多く、規格のフラグメント化が懸念されています。そのため今後は、oneM2MとAllJoynが協力関係を築いたように、連携や統一も今後必要になると考えられますが、これはWoTが目指すところであり、解決できる問題の1つだと考えています。これ以外にも、相互接続のための規格だけでなく、機器を組み合わせて動作させることを目的にしてIFTTTやYahoo! JAPANのmyThings、Gluinといったサービスが提供・提唱されています。これらの機器や情報を接続・集約した後のビッグデータ解析などについて、注目を集めているのがAI分野で、特にディープラーニングが今"ホット"なキーワードとなっています。これまで人が介入していた学習プロセスが自動化されるようになり、抽象的な判断も可能になることで、人と同様の動きが実現できたり、人では抽出が難しい結果を膨大なデータから導き出したりすることが期待されています。身近なところではスマートフォンの音声認識機能がありますが、今後は人々の生活をアシストしたり、自動運転や医療、工場、農業と幅広い分野へ広がったりすることが期待されています。○IoT/WoTの課題ビジネス/コンシューマーの双方で多くの期待を集める「IoT/WoT」ですが、一方で課題も山積しています。前述の「プラットフォームのフラグメンテーション」もその1つですが、特に懸念されているのが「セキュリティ」です。Web上の不正アクセスやマルウェア、ウイルスのニュースが頻繁に報道されていますが、IoT/WoTにおいてもこれらの悪質行為が起きる可能性は高いと考えられています。特に、情報だけでなく、自宅の鍵などの機器制御が可能になることを考えると、これまで以上に厳密なセキュリティが必要とされます。そのためには、暗号化通信や、機器・利用者の認証、機器の"耐タンパー性"が重要になります。一方でセキュリティとコスト、操作の手間はトレードオフの関係にあるため、スマートフォンを用いて個人認証を行うなど、安全性と簡便性の両方を満たす方法が求められています。セキュリティ以外にも、機器が増えることによるメンテナンスの複雑化も課題でしょう。初期設定や充電、電池交換などの操作、故障対応、ソフトウェア更新などは、一つ一つの機器で見るとあまり発生しませんが、数が増えることでその管理は煩雑になります。これらの管理を行うには、「遠隔での一括自動操作」や「低消費電力や室内無線給電」によるメンテナンスフリーへの取り組みが必要となります。厳密には「課題」ではありませんが、ビックデータ処理やAI技術のさらなる高度化は必要不可欠な要素でしょう。クラウドサービスの技術革新によって処理能力は向上していますが、現状は「情報の見える化」や「遠隔操作」にとどまっています。人の動きを学習して処理を自動化したり、"見える化"にとどまらず、それらのデータに基づいて、病気の予兆をとらえられようになったり、より価値のあるデータを自動的に抽出したりといった機能が、今後のIoT/WoTの普及に向けて必要になるでしょう。著者プロフィール○小森田 賢史(こもりた さとし)KDDI 商品・CS統括本部 商品企画部モバイル通信(SIP, IMS)の高度化に関する研究開発、IEEE標準化活動を経て、オープンソース系OSを活用したスマートフォン端末の企画開発、IoT機器・プラットフォームの企画開発、新規商品企画を担当する。
2015年12月15日近年IoT(Internet of Things)という言葉を聞くようになりました。日本政府が出す「日本再興戦略」改訂2015でも、ビッグデータやAI(人工知能)と並び、ビジネスや社会そのもののあり方を根底から揺るがす改革の要因として扱われています。今回は、IoTのその先にある「WoT」について解説していただきます。○Webがインターネットにもたらしたもの「インターネット」が世界に浸透し始めたのは1980年代です。当時はさまざまな通信規格が存在していましたが、徐々にTCP/IPという通信規格の採用が広がり、世界中に散らばっていたネットワークが1つに繋がりだしました。しかしながら、ネットワークが繋がったといえ、情報は世界各地に散らばっている状況でした。例えるならば、世界中に手紙が届くようになったものの、人々はどこに手紙を送ればいいか分からず、手紙の文面の言語が目的ごとに異なったのです。ニュースを見たり、メールを送ったり、テキストを送ったり、ファイルを送ったり……etc。それぞれのサービスごとに言語があり、専用アプリケーションがありました。「Web」が登場したのは1990年代です。世界中にばらばらに存在していた情報を、テキストや画像で表現してドキュメント化し、「ハイパーテキスト」という方法でつなぎ合わせる仕組みと、その言語であるHTML(HyperText Markup Language)、通信規格のHTTP(HyperText Transfer Protocol) が生み出されました。その後、必要な情報を探すための「検索エンジン」も登場したことで、世界中の情報へ素早く、簡単にアクセスできるようになり、Webの求心力がさらに高まっていったのです。これらの技術を下支えしたテクノロジーが、「HTML/HTTP」を解釈し、PCやスマートフォン上で表示するアプリケーション「Webブラウザ」です。Webブラウザは、"基本的"にはOSやWebブラウザの種類などの環境に依存せず、同じように情報を利用できます。このように膨大な情報を容易に利用できる基盤ができたことで、ネット上の情報提供やビジネスが容易になり、その後の爆発的な普及の要因となりました。現在では、国際的な標準を定めるW3C (World Wide Web Consortium)で、さまざまなWeb技術の標準化作業が行われています。より多彩な表現ができる「HTML5」や、高性能化した「HTTP/2」への進化、「JavaScript」というスクリプト言語などを組み合わせて、今までOSごとに作成されていたアプリケーションが、Webブラウザ上で簡単に表現されるような世界になりつつあります。Webは多くのPCやスマートフォン上で動作します。つまり、単なる"情報"から、アプリケーション実行環境まで提供する巨大なプラットフォームへと成長したわけです。○WebがもたらすIoTの進化Webの存在や成り立ちは、IoTにも応用できます。今までのIoTは、個別のサービスごとに適した独自の通信規格や動作環境を用いて、独立したシステムを構築することが大半でした。それぞれのシステムが中に閉じてしまい、個別に情報が存在している状況です。それぞれのシステムとしての価値を生み出すことはできますが、"個"を超えて膨大な情報に基づいた、より付加価値のあるサービスを生み出すためには共通に利用できる基盤が必要です。そのために、最近ではIoT機器を共通に繋げるための規格や枠組みを議論したり、手を組んで広げていくコンソーシアムやアライアンスが組まれています。しかし、これらはIoT機器が繋がる通信規格のみや提唱するベンダーに依存したものとなってしまいます。一方で、このIoTの共通基盤をWebのプラットフォームを活用して実現する考え方が「WoT (Web of Things)」です。WoTの強みは、すでに広く普及している相互接続可能な通信規格と、ハードウェアやOSに依存しない「HTML5/JavaScript」による動作環境、さらにこれらは「IETF」や「W3C」という特定の組織に依存しないオープンな標準化組織による規格、取り組みという点です。オープンであることで、さまざまな環境に対して強靭に鍛えられ、自由に幅広く使えるものになります。これに加えて、通常のIoT開発では、ネットワークやソフトウェア、ハードウェアごとに幅広い知識が必要になりますが、WoTではHTML5/JavaScriptという広く普及した言語で開発でき、多くの技術者や情報が存在しています。また、繰り返しにはなりますが、基本的にハードウェアやOSへ依存しないため、さまざまなネットワークやデバイスで動作することができます。このIoTとWoTの枠組みの比較を下図に示します。WoTは、さまざまなデバイスで動作し、容易に開発できる共通のIoT基盤を志向するものです。これまでも相互接続という部分では、Web APIという形で、多くのサービスが外部に情報を公開する取り組みを行っています。例えば地図や天気、ニュース、特定の機器情報などはWeb API経由で取得可能です。また、情報にアクセスしやすいように「Linked Open Data」という"データのWeb"と呼ばれる情報ネットワークが提唱されています。WoTはこれらとも親和性が高く、既存の膨大な情報の活用も容易になるのです。動作環境も、Webブラウザ上で動くだけでなく、Webアプリケーションが各OS用のアプリケーションと同様に実行できる環境もスマートフォンを中心に整ってきました。さらに、「Web OS」という、ハードウェア上で直接Webアプリケーションが実行できる軽量なOSも登場しています。代表的なものは、PC向けのChrome OSやスマートフォン向けのFirefox OSです。すでに日本国内でもこれらの製品として「Chromebook」や「Fx0」が発売されています。さらに小型の機器向けには、JavaScriptが直接実行できるマイコンボードなどが発売されています。このようにWoTは幅広く発展してきたWebのプラットフォームを活用し、IoTをより加速、発展させる取り組みなのです。著者プロフィール○小森田 賢史(こもりた さとし)KDDI 商品・CS統括本部 商品企画部モバイル通信(SIP, IMS)の高度化に関する研究開発、IEEE標準化活動を経て、オープンソース系OSを活用したスマートフォン端末の企画開発、IoT機器・プラットフォームの企画開発、新規商品企画を担当する。
2015年12月11日●IoT分野に注力サムスン電子ジャパンは8日、新製品発表会を開催。KDDI向けに、“au史上最薄“を謳う薄さ約6.0mmの「Galaxy A8」を提供すると発表した。発売は12月中旬以降を予定。このほか、ウェアラブル端末なども発表された。本稿では、発表会の模様をお伝えする。○IoTの活性化を予想説明会の冒頭、サムスン電子ジャパンの代表取締役最高執行責任者である堤浩幸氏が登壇し、新製品の概要を話した。モバイル市場では、スマートフォンの総販売台数が減少していることが報じられている。これについて、堤氏は「まだフィーチャーフォンを利用している方も多い。また最近ではMVNOも人気がある」と分析。市場は今後も変化を繰り返しながらも成長していく、というのが同氏の見方だ。そんな昨今、サムスン電子ではIoT分野に注力していく。この日に発表されたのは、約5.7インチのAndroid端末「Galaxy A8」、スマートウォッチ「Gear S2」「Gear S2 classic」、ヘッドマウントディスプレイ「Gear VR」、18.4インチフルHDタッチスクリーン搭載タブレット「Galaxy View」。IoT分野の活性化により“インターネットにつながる端末の数が飛躍的に伸びる”と見込む同社が、このタイミングで自信をもって投入する製品群だ。「NEXT IS NOW。いま、ここがIoTの起点となる」と堤氏。今後とも積極的に事業創造をしていく、と宣言した。●5つのSがテーマ○新製品は5つのS製品の詳細については、プロダクトグループの糸櫻幹推氏が説明した。同社では、11月12日からNTTドコモで発売中の「Galaxy Active neo SC-01H」を含めた5つの新製品の特徴を“5S”としてアピールする。Galaxy Active neoは耐衝撃性能に優れた「Strong」。またGalaxy A8は、薄さ約6.0mmの「Slim」な端末として訴求する。約5.7インチのディスプレイ(1,920×1,080ピクセル)を備えながらも、「片手操作モード」を搭載するなどして持ちやすさに配慮したGalaxy A8。フルメタルボディにより「負荷がかかっても、折れ曲がってしまうようなことがない」(糸櫻氏)という。ちなみにGalaxy A8をこのタイミングで投入する狙いについては「ユーザーのニーズが多様化している現在、新しいシリーズの投入が必要と考えた。いま市場では画面の大型化、個性的なデザインに注目が集まっている。そこで、大画面だけれど薄くて持ちやすいA8が親和性があると感じた」とアピールした。○円形デザインのGear S2Gear S2、Gear S2 classicは円形デザインを採用した「Stylish」なデザインが特徴。同社では2013年から時計型のウェアラブル端末を販売してきた。今回の製品は第4世代に当たるもので、糸櫻氏は「これまで培ってきた技術と、お客様からのフィードバックを反映している」と説明する。電池持ちは最大4日間のロングライフで、Android 4.4以上のスマートフォンで利用できるなど、対応端末が多いのも特徴のひとつとなっている。時計型の端末の場合、ディスプレイが小さいので操作しようにも指で隠れてしまう。また指で何度も触ると指紋で汚れてしまう。このような利用者の不満を解消するため、画面のタッチが最小限で済むようにベゼルを回すことで操作できる「サークルUX」を採用した。糸櫻氏は「お客様のリアルな声をもとに開発した。細かいチューニングが施されている。製品のこだわりを皆さんにも体験してほしい」と胸を張った。●Gear VRとGalaxy View○Gear VR×Facebook×THETAヘッドマウントディスプレイ「Gear VR」は「Spectacle」な体験が期待できる製品。糸櫻氏は「巷の製品は映像がディレイするので脳が混乱して、結果としてVR酔いを起こしてしまうが、本製品は9軸センサーにより追随性を向上させた」と解説。本製品ならVRを長時間楽しめるという。また着け心地に関しても、現行モデルのフィードバックを活かして改善。メガネをつけたままでも快適に利用できるようにした。ゲーム、映画、スポーツ、アーティストのライブ映像など、現状で100を超えるコンテンツを用意。またリコーの「THETA」シリーズのような全天球カメラで撮影した動画をFacebookに投稿すると、Gear VRで楽しめるようになっている。糸櫻氏は「皆さん自身がVRコンテンツをつくり、披露して楽しめる時代になった」と話した。○Galaxy Viewは驚きの大画面一般消費者の間では、オンラインによる動画の視聴機会が増える一方で、テレビの大画面化も進んでいる。こうした背景を踏まえて開発されたのが、18.4インチのフルHDタッチスクリーンを搭載した「Galaxy View」。まさに「Surprise」級の大きなディスプレイが特徴となっている。コンシューマーが動画の視聴に利用できるほか、ビジネス用途も想定されている。例えば小会議室ならプロジェクターの代わりとしてプレゼンを行える。ショップではデジタルサイネージとしても利用可能だ。背面には持ち手がついており、持ち運びやすさにも配慮されたGalaxy View。糸櫻氏は「映像体験を全く新しいステージに連れて行く製品」と紹介している。***先に登壇した堤氏は「2020年の東京オリンピックの頃には、技術の発展により次世代のスマホでバーチャルリアリティの新たな世界が体験できるかも知れない。新しいライフスタイル、ビジネスモデルが生まれるのは間違いない」と話した。また、糸櫻氏は「新しい価値を提供する5つのSを、多くの人に体験していただければ」とし、製品の展開に期待を寄せていた。
2015年12月09日日立キャピタルと日立ハイテクソリューションズは12月8日、IoTを活用した事業開発に関する業務協定を締結し、IoTプラットフォームと金融サービス機能を融合させた、IoT活用型ファイナンスサービスの提供を、2016年1月より本格的に開始すると発表した。日立キャピタルはこれまでも、装置メーカーと連携し、エンドユーザーの経営サポートをめざした従量課金ファイナンスサービスを提供してきた。また日立ハイテクソリューションズは、従来さまざまな装置やセンサー、デバイスをインターネットに安全に接続し、遠隔監視と管理を行うIoTに関するビジネスを展開してきた。このような背景のもと、両社はリースやアセットマネジメント、保険などの金融サービス機能と、IoTプラットフォームを組み合わせ、産業・工作機械や医療機器、省エネ設備、理化学・検査装置、半導体製造装置などの機械・設備を対象とするIoT活用型従量課金ファイナンスサービスを構築した。本サービスでは、IoTクラウドサービスによって取得した客観的な装置データを活用することで、装置のエンドユーザーに対し、稼働状況に応じたコストの最適化やキャッシュフローの軽減を実現するとともに、機械・設備などに関するリモートや予防保全などを可能とするとしている。これにより、装置メーカーからエンドユーザーに向けて、設備入れ替え時期の最適化といった付加価値サービスが提供される。本サービスは、日立キャピタルがIoTクラウドサービスと従量課金ファイナンスサービスをパッケージ化し、ソリューションとして一括提供する。また、IoT稼働情報に基づく従量課金などフレキシブルなサービス体系を可能とし、機器の代金や保守料の一本化など、顧客のニーズにあったサービスが提供される。定期点検や定期部品交換、ファイナンスをパッケージ化してソリューションとして提供し、IoT活用により、リモートや予防保全といったきめ細かい付加価値サービスを提供するとともに、製品ライフサイクルをサポートするとしている。両社は、装置メーカーおよび装置のエンドユーザーをはじめとした多くのステークホルダーとの協業を進めるとともに、IoTと金融の融合を追求し、課題解決に向けたトータルソリューションの提供を目指す。
2015年12月09日筆者は「Continuum for Phoneに対応するデバイスが本命」という視点でWindows 10 Mobile搭載デバイス(以下、Windows Phone)を論じてきたが、ここに来てMicrosoftのLumia 950以外の有力な購入候補が現れた。それは11月30日に発表され、Continuum for Phoneに暫定対応する「NuAns NEO」だ。筆者はMicrosoftのLumia 950を本命と捉えていたが、現時点では国内で正規に購入できない。総務省の技適マークが付与されていないため、国内で使用すると電波法違反になる恐れもある。そこで、あらためて国内で購入できるコンシューマー向けWindows Phoneデバイスの一覧をまとめてみた(2015年12月4日時点)。こうして並べてみると、Snapdragon 617を搭載するなどNuAns NEOのスペックの高さが目立つ。トリニティ代表取締役の星川哲視氏は「ライフスタイルに浸透するスマートフォンを目指した」とNuAns NEOが単なるガジェットではないと説明している。また、冒頭で述べたように暫定対応としながらもContinuum for Phoneが使える点も興味深い。NuAns NEOでContinuum for Phone環境を構築するには、MiracastデバイスとBluetooth対応キーボードおよびマウスを所持すればよいはずだ。日本マイクロソフトは「Wireless Display Adapter」がContinuum for Phoneのハードウェア要件であるWindows 10 Miracast extensionsに対応していると説明しているので、後日実機検証を行った上でレポートを寄稿したい。筆者はこれまでMADOSMA Q501(Windows Phone 8.1搭載モデル)やKATANA 01、NuAns NEOに触れてきたが、やはりSnapdragon 210では僅かな遅延を感じる場面があった。Windows 10 Mobileの可能性は、オフィスや自宅のWindows 10搭載PCと連携してのシームレスなワークスタイルにあるが、現時点ではMDM(Mobile Device Management)などエンタープライズ環境が整っておらず、その利便性を享受できるとは言い難い。その意味ではお試し価格のKATANA 01や一定のスペックを備えるMADOSMA Q501Aの存在も魅力的だ。このように求める用途によって、ベストなデバイスが異なるのはWindows Phoneでも同じだ。この他にもサードウェーブデジノスの「Diginnos Mobile DG-W10M」や、Acerの「Jade Primo」、VAIOのWindows Phoneなどが控えている。筆者はまだ検討を重ねているが、Windows Phone購入予定の読者には納得できるデバイスを選んでいただきたい。後はiOSやAndroidと同じだけのアプリケーション環境が整うのを願うばかりだ。阿久津良和(Cactus)
2015年12月07日