2019年10月2日 11:00
よりよく生きるは無理 緩和ケア医ががんになり気づいたこと
「どんな形でも生きたいと思いました。緩和ケア医だから患者さんのためと言いたいけど、家族との時間を少しでも過ごしたいというのが、最大の目標でした」
あきらめが早い性格も結果的によかったという。
「いろいろ夢を持っていました。妻と東京五輪に行くこと、定年を迎えたら日本中を妻とドライブすること、でも、今の自分には無理です。現実と夢にギャップがありすぎるとつらい。だから、すっぱりあきらめました。体重が100キロを超えるほど、食べることが大好きでしたが、嫁さんのコンソメスープで十分だと考えたら、気持ちが楽になったんですね。あきらめる。
そのうえで、生きることを頑張るという考え方に変えていきました」
30センチもおなかを切り、胃を全摘出する大手術を乗り越えた。
「念願の帰宅を果たして、1日5個は何かやると決めていましたが、実際にできたのは1個程度。それも新聞を読むという小さなものでしたが、十分、満足でした」
しかし、今年4月8日、厳しい現実が立ちはだかる。
「肝臓への転移が判明して。がん発覚のときよりも、ショックでした。これまでの抗がん剤が効いていないことの証明でしたし、自分の体のどこにがんがあってもおかしくないわけですから……」