今月の人。
女優・モデル
菊池亜希子さん
1982年、岐阜県生まれ。数多くの女性誌でモデルとして活躍する一方、女優としても注目を集め、映画、ドラマ、舞台等で活動。主な出演作に映画『ぐるりのこと。』、『森崎書店の人々』、『グッド・ストライプス』、『海のふた』など。また、自身が編集長を務める雑誌『菊池亜希子 ムック マッシュ』、イラストと文章をすべて手がける『みちくさ』シリーズ、大好きな喫茶店の魅力を紹介する『好きよ、喫茶店』、『続・好きよ、喫茶店』など、さまざまな著書で独自の世界観を築き上げている。
お母さんの存在の温かさ
母と私の関係性とすごく近い
きつねの親子の優しい物語
『てぶくろをかいに』
文・新美南吉絵・わかやまけん¥1000/ポプラ社
きつねの親子が住んでいる森に寒い冬がやってきました。
「おててがつめたい」と言う子ぎつねは、手ぶくろを買いに、生まれて初めて町までおつかいに行くことに。母さんぎつねは、人間にきつねだとばれないように、子ぎつねの片手を人間の手に変えて、「こっちの人間の手のほうを差し出すんだよ」と言い聞かせたのですが……。
「新美南吉さんの『てぶくろをかいに』は、さまざまな画家の方の絵で出版されていますよね。でも私は、子どもの頃に家にあった、わかやまけんさんの絵のこの本に一番思い入れがあります。きつねの毛の柔らかいフカフカした感じとか、夜、家の窓からもれる光の描き方とか、いろんなシーンがとても印象的で。この絵本で見た風景は、今も私の心の中にずっと残っています」
母が大好きだった絵本だから、
読むと必ず母のことを思い出す
「物心ついた頃から家にはたくさんの絵本があって、いつもいろんな絵本を母に読んでもらっていました」と話す菊池亜希子さんは、『絵本のはなし』という絵本エッセイ集も出しているほどの絵本好き(読書好き)で知られる。そんな彼女が、「好きな絵本は何か?」と聞かれたとき、最初に思い浮かべる一冊が、新美南吉の名作『てぶくろをかいに』だ。
「母の大好きな絵本で、私に読み聞かせするときは必ず涙ぐんでいたくらい、感情の込め方が特別でした。
内容的には、子ぎつねが初めてのおつかいに行くというシンプルなお話で。母のもとを離れて、心細くてさみしい反面、自分で新しい世界に踏み出していくときの子どもの高揚感がとてもよく表現されているなぁと思いました。