[前編]憲法学者・木村草太さんの子育て論「家庭においては妻がボスで夫が部下。そのくらいのほうがいいと思う」
日々、大学で教壇に立ちながら、憲法の研究をしている木村草太さん。時間の際限なく研究業務に携わる一方、私生活では一男一女の父として、保育園の送り迎えから、炊事、洗濯など、できるかぎりの家事・育児を担当する。
自分の好きなペースで研究に没頭できていた頃と比べると、かなり生活スタイルが変わったのではないかと思うのだが、木村さん自身は「仕事に関しては、子どもが生まれる前とさほど意識は変わらないですね」とあっさり。むしろ変わったのは「妻との関係ではないかなと思います」。
奥様もフルタイムで仕事をしている共働き家庭。もちろん夫婦ともに、仕事と家事・育児をバランスよく両立させるのが理想なのだが……。
子どもに対する心配の度合いは
お父さんはお母さんにかなわない
「我が家も、最初からうまくいっていたということはないですよね。
まぁ、基本的に夫婦で分担をすると、たいていの場合、男に有利な分担になるので。奥さんがキレて、夫が反省をして……という形で調整がおこなわれていくのが一般的ではないでしょうか」
今でこそ、積極的に家事・育児に関わっている木村さんだが、新米パパの頃はほとんど何もできず、奥様に離婚を切り出されるなど、夫婦の危機もあったという。
「家事・育児の分担もそうですけど、精神面のほうが大きかったんでしょうね。子どもへの配慮とか、心配っていうのは、夫が妻の水準に追いつくのはなかなか難しい。たとえば、子どもが40度の熱を出したときに『この子、もしかしたら重病で、このまま死んでしまうんじゃないか』って心配する割合は、お父さんより、お母さんのほうが大きい。
この間もね、下の男の子が『足が痛くて歩けない』って言い出したことがあって。ちょっとふざけた感じの口調で言うので、私は冗談だと思っていたら、妻は『筋肉の病気かもしれない、という可能性は疑わないの?』と。病気以外にも、世の中には心配なことがたくさんありますよね。
たとえば、壁紙の化学物質が子どもにどう影響するか、みたいなことを、実際にお父さんがどれくらい悩んでいるか。平均的に、お母さんとお父さんとでは、子どもに対する心配の度合いがずいぶん違うと思いますね」
この話、共感するママは多いのではないだろうか。こちらが子どものことを本気で心配しているのに、夫はどうも軽く考えているように見える。そんなことが何度も続くと、夫は子どもへの愛情が薄い人間なのでは?という怒りに似た思いがフツフツとわいてくる。