育児の「不要なもの」を捨てるとはの続きです。
子育てをしていると、毎日がいっぱいいっぱい! それは、いちにちの中に「○○しなければならない」が、たくさんあるから。「育児で断捨離を!」と話す「
花まる学習会」代表の高濱正伸さんに、「しない」子育てを選ぶ前に、ママに知っておいてほしいことを伺った。
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■比べたくなる気持ち
育児書を読むと、「『子どもをほかの子と比較してはいけない』という項目が必ず出てきますよね。それは裏を返せば、人とは必ず比べてしまう生きものだということです」(高濱さん)
ママは、子どものことを一番に考えているからこそ、どうしても周りと比べてしまう。だからといって、「ほかの子どもと比較してはいけない」という言葉を真に受けて、「比べてはいけない、比べてはいけない」と唱えながら子育てするのは、とても大変!
「
『比べてみたくなる気持ちは、不安と一緒で自然にこみあげてきてしまうもの』。こう覚えておくことだけで心が軽くなるでしょう」(高濱さん)
つまり、「比べない、ということは非常に難しい技術だ」と知っておくこと。大切なことは、「比べていい」というわけではないと理解し、もしも比べてしまった場合でも、言葉や視線に表さないようにすることだ。
■本当に伸びるタイミングはいつ?
「子育てを一生懸命がんばるママがよく陥りがちなのが、
『子どもにすぐに結果を求めてしまう』ことです」(高濱さん)
たとえば、同じ年長クラスで、字をしっかり書いている子がいると、「うちの子は、まだ字がじょうずに書けない。練習して書けるようにさせなくちゃ!」と、ママが焦って使命感にかられてしまう。
「でも、その結果、これから先の未来に伸びていく可能性があった『文字を書くって楽しいな』という気持ちが摘み取られて、字を書くことが大嫌いになってしまう子もいます」(高濱さん)
その子が本当に伸びるタイミングを見極めることが大切なのだ。
「心配になって、口出してしまいそうになったら、『大人になったとき、
わが子にどうなってほしいか』をイメージして見守りましょう。そうすると、いつもより少しだけ長いスパンの視野を持つことができて、気持ちが楽になりますよ」(高濱さん)。
■「みんなやっていますよ」に流されない
しかし「ほかのみんなは、どうしているのだろう?」と周りが気になってしまう。
「周りと比べて、そちらが気になってしまうのは、
『わが家の方針』がない場合が多いです」(高濱さん)
たとえば、「わが家は、小学校のうちは友達と遊ぶことを大切にする」という方針が固まっていれば、習い事や塾選びも、わりとシンプルに決めることができるのではないだろうか?
「子育てに、『正解』はないのです。それよりも、
何を大切にして育てるか?夫婦の方針や、生き方に対する哲学のようなもののほうが、ずっと重要になってきます。それを何度も、夫婦や親子間で確認しあっておくと、いざというときに流されずにすみますし、その積み重ねが家族の絆になります」(高濱さん)
「する」「しなければ!」にフォーカスするのではなく、
「しない」にフォーカスすることで、生き方の対しての哲学が見えてくるのかもしれない。
次回からは、具体的に、どんなことを「しない」のかを考えていきたい。
■今回取材を受けてくださった高濱正伸さんの著書
『
「しない」子育て」(花まる学習会代表 高濱正伸/KKベストセラーズ)』
(本体1,250円+税)
●高濱正伸
花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。
1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。
保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30,000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」など多数メディア出演もしている。
ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳なぞぺー』など、著書多数。2016年7月からニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカーとして活躍中。
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