連載記事:新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記
子どものやる気スイッチはそう都合よく見つからない【新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記 第14話】
先日、息子モーの高校受験がなんとか終わった。
思い返せば、中高一貫私立校出身の私は、“女子校”とか“カトリックの学校”への漠然とした憧れがあって、そこで繰り広げられるであろう少女漫画的な生活に夢を見て、小学4年のときに、受験をしたいと自分から親に申し出た。だから、息子の場合もそんな風に、時期が来れば、そのときの自分にとって自然な形の、憧れの進学先が見えてくるのだろうとばかり思っていたのだ。
ところが、中学3年の夏休みが終わるまで待っても、志望校はまるで決まらなかった。私は当然焦る。本人も焦っているのかもしれないが、なかなかのポーカーフェイスなので全然焦っていないようにも見える。そんな態度に、こちらが余計に焦る。
先生や先輩ママ友達に相談すると「男の子はそんなもんよ、だから親が動かないと」と皆口々に言う。
「でも、自分で決めないと結局はやる気スイッチが入らないんじゃ?」と尋ねると、衝撃の答えが返ってきた。
「最近はね、入らないまま大人になる子も多いよ」
そ、そうなのか……! これはまずい、ということで結局は私が先導して、いくつか学校を見に行くことになった。行く先々で「おお、いいね、ここに行きたい」とそれなりに意欲を見せるモー。けれども、「絶対にここに行きたい!」という偏愛ではなく、むしろ博愛。どこも可もなく不可もないといった様子なのである。みんな違って、みんないい、なんて言ってる場合か。
「学校説明会に行って、先生や生徒のカラーを見れば自ずと、合いそう、合わなそうが見えてきます」とも言われていたが、たとえばダンスミュージックもボカロもJpopも全部いける口、純文学もラノベも人文書も漫画もアニメも、全部いける口であるモー。「俺、どこに行ってもそれなりに馴染むと思うんだよね」と言い、その点、確かに私も納得せざるを得なかった。
彼は確かに、あらゆる個性に偏見がない、寛容な人間なのだ。
とはいえいつまでも決められない訳にもいかない。都内には公立、私立と無数の高校があり、最後には、その中からたった一つの進学先を選ばなくてはならない。話し合いの末、最終的には、学校説明会に参加した数校の中で、最も部活の種類が多く、生徒数が多い学校を第一志望とした。一番の理由は、これから先、彼が何らかの偏愛を見せたときにも受け皿がありそうだったから。二番目の理由は、校舎がかっこよかったからだ。
受験直前ともなると、私のような手抜き親でも、受験した学校全て不合格になって途方にくれる夢、学校説明会で私が派手な失態をやらかして絶望する夢など、不穏な夢を見たりして、それなりに不安になったりもした。