連載記事:新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記
母たちのアンテナを張り巡らせるのにはもう限界がある【新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記 第23話】
ある日息子が「ジェネギャ」と言った。
それは一体なんだ。バンギャの亜種か何かかと思いきや、ジェネレーションギャップの略らしい。今のティーンの言語センスに、母はうなった。
実際このところ、子ども達との“ジェネギャ”を、ひしひしと感じさせられる。何しろ子ども達は、私が知らない歌を、どこからともなく覚えてきては、当然のように口ずさむのだ。世の中の一部の世代が当たり前のように歌う歌を、自分がまるで知らない。そんなことが自分の身に起こるようになろうとは、10代のころは思ってもみなかった。
高校生のころは、特にファンというわけでなくても、モーニング娘。のメンバーの名前を全員言えた。辻ちゃん加護ちゃんの区別もついたし、次々と誕生する小室哲哉プロデュースのグループ名も全部覚えられた。と同時に、私が生まれる前にピンクレディというアイドルがいたことも、山口百恵が引退コンサートでどのようにマイクを置いたのかも知っていた。私が知ったときにはすでに亡き人になっていた尾崎豊にも、高校生のとき一時ハマった。
自分との世代と、それより上の世代のエンタメの知識は10代のころには当たり前に持っていたし、一般教養だろうと思っていたから、言えない大人は一体どこにどんなアンテナ張って生きてるんだ、怠慢が過ぎるんじゃないか、とさえ思っていた。
ところが30歳を過ぎ、ふと気がつけば私も立派に“知らない大人”になってしまっていたのである。自分がそうなってみてようやく、10代のころの疑問に答えが出た。
大人は決してアンテナを張るのを怠っているわけではない。ただ、長年大事に使い続けてきた持ち前のアンテナそのものが時間とともに自然と型遅れになり、世界には、このアンテナで拾えない電波が飛び始めるのだ。