■血糖値=精神状態? 心の落ち着いた子を育てる食材選び
―― 揚げ物以外ではどんなことに気をつけたらいいでしょうか?
伊藤先生:先ほどは「糖化」についてお話ししましたが、もう一つ注目してほしいのが「血糖スパイク」です。血糖スパイクとは、食後のごく短時間で血糖が急上昇して元に戻る、血糖の乱高下状態のこと。
血糖スパイクが起きると、血管が傷ついてしまい、病気のリスクも高まります。血糖と子どもの精神状態は強く結びついているといわれており、例えば、朝食をとらないと低血糖でやる気が出ない状態になります。
さらに、そういった空腹時に血糖値が急上昇するようなものを食べるなどして血糖のハイ&ローを繰り返すと、子どものテンションも急激に上がったり下がったりするので、精神的に不安定になってしまいがちに。本来、食事を始めてゆるやかに血糖が上昇するのが理想です。
―― 朝食抜きは厳禁ですね。理想の食事のために、ママたちは具体的にはどうすればいいでしょうか?
伊藤先生:調理法は先ほどもお伝えしましたので、ここでは食材の選び方に注目してみましょう。
血糖値の上がりにくい食材を選ぶのがポイントです。白米や小麦など精製されているものよりも、雑穀や全粒粉など精製されていないものがいいですね。雑穀ごはんや、アレルギーがなければそば粉をクレープのようにして間食に食べるのも一案です。
野菜を摂取する時は、ジュースなど食物繊維が取り除かれた状態のものではなく、そのまま食べるか、スープなどでいただきましょう。ジュースが完全にダメなわけではないのですが、残念ながら、野菜ジュースは野菜の代わりにはなりません。
―― 離乳食についても何かありますか?
伊藤先生:日本では白米の全かゆから始めるのがスタンダードですが、おすすめは雑穀かゆ。糖質の摂取量を減らせますし、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素と食物繊維もとれます。
日本人は白米でアレルギーを起こす人が少ないと言われていますが、統計上ではひえやきび、あわなど雑穀に対してもアレルギーを起こす頻度は高くないのです。
欧米ではオートミールやほかの雑穀から始める国がほとんどですし、白米だけにこだわらなくてもいいと思います。
血糖値をゆるやかに上げる離乳食
「雑穀のおかゆ」(0歳~1歳半)
<材料 1食分>
もち麦 10g
キアヌ 5g
白米 10g
水 250cc
<作り方>
1.研いだ白米、もち麦、キアヌ、水を茶碗か耐熱容器に入れ、炊飯器の真ん中に置いて、大人のご飯と一緒に炊き上げる。
2.1.でできたお子さん用のおかゆを鍋に移し、水を足してさらにやわらかくなるまでコトコト煮る。
3.乳児用のすり鉢でよくする。
■夕食までの“つなぎおやつ”与えて安心なのは?
―― ママたちの悩みとして聞かれるのが、子どもがおなかを空かせてしまって夕食まで待てない時、何を食べさせたらいいのか? ということ。とりあえず、わが家ではちくわをあげているのですが、どう思われますか?
伊藤先生:うーん、スナック菓子よりはいいですね(笑)。ただ、塩分が多いのであげすぎは注意してください。果物は果糖が多いので、あまりおすすめしません。
きゅうりやにんじん、だいこんなどの野菜スティックがいいですね。食事の邪魔をせず、切るだけですぐあげられます。お好みで減塩みそやマヨネーズにつけても。
これまで話題に出た食べ物のなかでのおすすめ度でいえば、野菜スティック>ちくわ(練り物)>果物>スナック菓子でしょうか。野菜スティック以外だと、ゆで卵や味付けの濃くない焼き鳥(串からほぐして)などがおすすめです。
ちなみに、のりも悪くないのですが、水溶性の食物繊維が多くて胃腸に負担がかかるので、全形1枚以内にとどめておきましょう。
―― 最後に、忙しい朝のおすすめメニューを教えてください。
伊藤先生:私も仕事をしながら2人の子どもを育ててきたので、朝から包丁を使いたくない気持ちはよくわかります。
おすすめは、納豆と卵料理、雑穀ごはん、それにできればみそ汁もプラスできるといいですね。パン派は全粒粉のパンにするのがおすすめです。
参考図書:
「小児科医がすすめる最高の子育て食」1512円(税込)講談社
伊藤明子著。「健康」「免疫力が高い」「頭がいい」「心が安定した」子どもを育てるためにどのような食事を与えたらいいのか、最新の研究に基づいて紹介しています。カラー写真付きでわかりやすい58の簡単レシピも収録されています。
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