■子どもの癇癪(かんしゃく)への対処法
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癇癪(かんしゃく)が起こる前にできること
癇癪は一度始まると、子どもの気持ちが高ぶっている間は、何を言っても通じません。きつく怒ったり、無理やり連れて行こうとすると、火に油を注ぐ結果にも。
そうなる前に、先回りして対処し、癇癪を起こさせないようにできると良いですね。
▼環境を整える
子どもがスムーズに気持ちを切り替えられるような声がけを心がけると良いでしょう。
例えば、急いでいる時に子どもが公園で遊びたいと言った場合。「急いでいるからダメ」と言うと、子どもは癇癪を起こしてしまうでしょう。
そんな時は、「急いでいるから、滑り台3回だけね」と声がけすることで、子どもはもっと遊びたい気持ちはあるけれど、急いで移動しなければいけないことも理解し、滑り台3回の間に、気持ちをある程度切り替えられるのです。
この時、注意したいのは「じゃあ、ちょっとだけね」という曖昧(あいまい)な表現を使うこと。子どもには「ちょっと」「少し」の感覚がわかりにくいので、回数や時間で伝えるようにしましょう。
▼子どもに伝わりやすいツールの用意
先に紹介したように、子どもに曖昧な表現は通じません。「ちょっと」「少し」といった大人の表現をわかりやすく伝えるツールを用意しておくと良いでしょう。
例えば、時計を見せて「長い針がここまできたら終わりね」とか、ゲームやテレビなどはタイマーを使って時間の制限をわかりやすく伝えるなどで、子どもにわかりやすいツールを活用するのも一つの方法です。
また、言葉がうまく伝えられない子どものために、気持ちを視覚で表せるツールもあるといいでしょう。例えば、「イライラしている」「怒っている」「落ち着いている」といった感情を表せるイラストを用意して、それを使って子どもが気持ちを伝えられるようにするのも一つの手です。
癇癪を起こすきっかけとなる「気持ちをわかってもらえない」という子どものフラストレーションが解消できるでしょう。同様な効果が期待できるコミュニケーション支援アプリなどもあるので活用してみてください。
▼癇癪(かんしゃく)が起こった時のルールを子どもと決めておく
どんなに予防線を張っても、子どもは何をきっかけに癇癪を起こすかわかりません。いざ癇癪を起こしたら、どう対応すればいいか子どもと話し合っておきましょう。
「イライラしたり怒ったりした時は、どうしたらいいかな?」と子どもに聞いて、子どもに決めさせるのです。
例えば、一人になれる場所へ移動する、気持ちが落ち着くような言葉をつぶやく、好きなアイテム(ぬいぐるみや毛布など)を触るなど決めておくと、その行動=気持ちの切り替えとなって、感情がクールダウンするきっかけとなるかもしれません。
▼食生活を見直す
偏食がひどい子どもに、癇癪を起こしやすい、情緒不安定、不安障害といった症状が出る場合があります。
青魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)や、たんぱく質、鉄分を積極的に取り入れ、糖質、添加物を控えるバランスの良い食生活によって改善する場合もあります。
食生活から見直してみるのもおすすめです。
癇癪(かんしゃく)が起こったら1: クールダウンさせる
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子どもが癇癪を起こした時、落ち着かせるために昔から取り入れられている方法に、「タイムアウト法」があります。
タイムアウト法は、次の手順で進めます。
1.子どもが癇癪を起こして、泣いて暴れたり人に迷惑をかけたりしたら、まずはそれがいけないことだと説明します。
2.一定時間いすに座っているように伝えます(必要ならいすまで連れて行きます)。
3.年齢の数だけの分数、例えば4歳なら4分間、子どもをそこに座らせます(最長5分間)。ただし、途中で子どもが立ち上がったら、時間はリセットして最初から始めます。
4.時間になったら、どうして叱られたのかを子どもに質問します。理由を答えられない場合は、もう一度教えて、思い出させるようにします。
このタイムアウト法は、癇癪を起こすことは悪いことだと理解しているのに感情が抑えられない子どもには有効な方法です。そのため、良い悪いがまだ判断つかない2歳未満の子どもには効果がない場合もあります。
ただし、癇癪を起こしている真っ最中の子どもを、言い聞かせていすに座らせること自体が難しいですよね。そうなる前に、あらかじめ癇癪を起こした時にはどうするといったことを子どもと話し合っておくといいでしょう。
癇癪(かんしゃく)が起こったら2: 感情的に叱らないようにする
子どもが大きな声をあげたり暴れたりすると、お母さんもついつい感情的になってしまいますよね。子どもよりさらに大きな声をあげて、なんとか抑えこもうとしてしまいがちです。
すると、子どもはそのお母さんの声や態度にさらに興奮してしまいます。感情的に叱るのは、子どもの癇癪には逆効果となります。
癇癪(かんしゃく)が起こったら3: ご褒美で釣るのはNG
もし、子どもが「お菓子買って!」とスーパーで床に寝そべって泣いてねだったら…。お母さんは恥ずかしくて早く立ち去りたいから、「まあ、いいか…」と買ってしまいそうですよね。
特に外出先で子どもが癇癪を起こした時は、なんとか早くなだめようといつもはダメと言っていることも「いいよ」とお母さんは許してしまいがちです。
しかし、それを繰り返していると、子どもは「癇癪を起こす=ご褒美がもらえる」と覚えてしまい習慣化します。難しいことではありますが、どんなに癇癪を起こしても、ダメなものはダメと筋の通った態度を見せることは大切です。
■子どもの癇癪(かんしゃく)に引きずられないために
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まずは大人が落ち着けるようにする
子どもが癇癪を起こすと、お母さんも冷静でいるのは難しいですね。
しかし、大人同士でも、お互いが感情的になってしまうと「売り言葉に買い言葉」でケンカがヒートアップしてしまいがちです。逆に片方があくまで冷静な態度を崩さなければ、感情的になっている相手もだんだんとクールダウンするもの。
「子どもの不機嫌と自分の感情は別のもの」と割り切って、子どもの激しい感情に引きずられないのが肝心。お母さんは常に冷静を心がけ、フラットに淡々と対応するのがいいでしょう。
イライラしたらその場を離れるのも◯
癇癪を起こしている子どもを目の前にすると、「自分が何とかしなきゃ」とお母さんは焦りますよね。でも、癇癪が長引いてくると、お母さんもイライラしてしまいます。
お母さん自身がストレスをためないためにも、子どもの安全を確認したうえで、その場から少し離れるのもいいでしょう。
気配は感じられるくらいの距離、例えば隣の部屋やトイレなどに一時避難すると、子どもの姿が見えないだけでも気持ちがリセットできます。
その場を離れられない時は耳栓も有効
まだ小さくて目が離せない、物を投げたり暴れたりして危ないなどの時は、子どもから離れることは難しいですね。
そんな時は、耳栓をするだけでも効果があります。お母さんが一番イライラするのは、子どもが叫んだり大泣きする声ではないでしょうか。それが聞こえないだけで、ずっと気持ちは楽になります。
■大人にも癇癪(かんしゃく)持ちっている?
大人の癇癪(かんしゃく)持ちとは? 子どもとどう違う?
大人でも、子どもほど激しくはありませんが、怒鳴ったり叫んだり、場合によってはつい手が出るなど癇癪を起こしてしまう人はいます。
子どもと大きく違うのは、大人は「癇癪を起こすことは悪いこと」と理解していること。
大人はこれまでの経験値から、コントロールできない感情は周りの人に迷惑をかける、悪いことだと理解しています。それでも、癇癪を起こしてしまうのが、子どもと大きく異なるところでしょう。
大人の癇癪(かんしゃく)への対処法
自分自身が「怒りっぽい」「子どもや夫にきつく当たってしまう」「人前でも怒りが抑えられない」といった癇癪持ちの自覚があるなら、次のことを試してみましょう。
・その場から離れ、刺激の少ない静かな場所へ移動する。
・耳栓をして、耳からの刺激を減らす。
・深呼吸をしたり、瞑想する。
・自分の怒りを数値化する。
・イライラした原因を紙に書き分析する。 など
上記の方法で、怒りをコントロールしましょう。
もし、夫やきょうだい、父母など近い関係の大人が癇癪持ちの場合、自分自身や子どもに被害があることもあるでしょう。
対処法は、子どもの癇癪の場合と似ています。
・イライラしていることを自覚させる。
・一人にしてクールダウンさせる。
・話し合いは落ち着いてから。
上記に加え、大人ならではの対応法は「伝えたいことは紙に書いて伝える」こと。直接話すと感情的になってしまうことも、手紙なら冷静に受け取ってもらえるでしょう。
■子どもの癇癪(かんしゃく)に悩んだら早めに相談しよう
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子どもの癇癪で悩んだら、お母さん一人で抱え込まず、次の機関に相談してみましょう。
子育て支援センター
主に乳幼児の子どもを持つ家庭を対象に、市区町村ごとに公共施設や児童館などで地域に根ざした子育て支援サービスを行っています。
自治体ごとに内容はさまざまですが、育児講座や親子で参加するイベントの開催、遊び場スペースの提供、子育て相談、保育サービスの案内などを行っています。
詳細は、お住いの市区町村のホームページをご確認ください。
児童発達支援事業所・放課後等デイサービス
子どもの特性や、心身の発達の遅れ、障害などに合わせた支援を行う福祉施設です。
児童発達支援は、主に就学前の子どもを対象に、日常生活に必要な動作の指導、知識や技能の教示、集団生活への適応訓練などを行っています。
一方、放課後等デイサービスは、小学生〜高校生が対象。生活訓練や社会交流などの療育プログラムを放課後や夏休みなどの長期休暇を利用して実施しています。
事業所によっては言語聴覚士や理学療法士、作業療法士などの専門家による支援も受けられ、子どもの発達や子育ての相談にも対応しています。
発達障害者支援センター
年齢に関係なく、発達障害を持つ方とその周囲の方(家族や教師など)の支援を行っている施設です。
子どもはもちろん大人の発達障害や、その周囲の悩み、困りごとなどの相談もできます。
■まとめ
心の成長に必要な過程の一つだとわかっていても、子どもの癇癪は、困るし悩むし疲れますよね。あらかじめ、癇癪を予防する方法や、クールダウンの仕方、周囲の適切な関わり方を知っておくと安心ですね。
もし、子どもの癇癪があまりに頻繁であったり、長引いたり、激しいもので心配があるようなら、ご紹介した子育て支援機関に一度、相談してみましょう。
参考資料:
・国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター「かんしゃくを起こすのですが・・・」
・国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「こんなときどうする?」
・日本小児精神神経学会「応用行動分析 ─子どものパニック・癇癪への対応─」
・国立教育政策研究所「非認知的(社会情緒的)能力の発達と科学的検討手法についての研究に関する報告書」
・厚生労働省「障害児支援の強化について」