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新年度。進級や進学を迎え、子どもが新しい環境にうまくなじめるか心配しているママもいるのではないでしょうか。
とくに子どもが
人見知りだったり、友だちとケンカしがちだったりすると、
「新しい環境でお友だちとうまくやっていけるかな」となおさら不安になってしまいますよね。
そこで、日本財団で「子ども第三の居場所」(*)プロジェクトを推進し、プライベートでも
5児のパパとして、子どものコミュニケーション力を伸ばすことに取り組んでいる
本山勝寛さんにインタビュー。
子どものコミュニケーション力の育み方を教えてもらいました。
日本財団 子どもサポートチーム チームリーダー 本山勝寛さん
“地域の子どもたちのもうひとつの家”となる場所を目指す「子ども第三の居場所」の運営を統括。5児の父親で、これまで育児休業を4回取得。東京大学工学部システム創成学科知能社会システムコース卒業、ハーバード教育大学院国際教育政策修士課程修了。独自の子育て論、教育論が話題で『16倍速勉強法』(光文社)や『自力でできる子になる好奇心を伸ばす子育て』 (大和書房)など著書も多数。
*子ども第三の居場所とは…
さまざまな困難に直面する子どもたちが安心して過ごせる環境で、自己肯定感、人や社会と関わる力、生活習慣、学習習慣など、将来の自立に向けて生き抜く力を育む放課後の居場所。学習支援や生活習慣支援のほか、キャンプ・音楽・プログラミング等の教室を通して、自己肯定感やコミュニケーション力など非認知能力を育むことにも力を入れています。
■人見知りは悩まずOK! 友だちづくりにはコツがある
子どもの性格は人それぞれ。人見知りもその子の個性だとはわかっていても、親としては友だちと仲良く遊んでいる姿を見るとほっとするし、どこかでそういう姿を望んでしまいがちです。
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でも「子どもが小さいうちの人見知りはそこまで気にしなくていいと思います」と本山さん。本山さん自身も人見知りで口数は少ないほうだといい、5人のお子さんのなかにも人見知りの子がいるそうです。
「友だちをつくるには、結構きっかけが必要なんですよね。きっかけのひとつになるのが、相手との共通点を見つけること。
私は
『オンナジ』ところを見つけるといっているのですが、たとえばスポーツならサッカーが好きとか、野球が好きとか。ほかにも遊びでなわとびをよくやるとか、流行りのアニメにハマっているとか。
何でもよいので何か共通点が見つかると、それをきっかけに会話ができたり、わかりあえたりします」
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親がサポートできるのは、
子どもをよく観察して、興味や関心のあるものを見つけ出し、同じ仲間のいるところへ連れていってあげること。たとえば習い事もそのひとつ。習い事はスキルそのものを高める目的もありますが、共通点のある友だちをつくるきっかけにもなります。
新しいクラスでの友だちづくりなら、子どもとよく話をして、園や学校の様子、どんな子がいるかなどいろいろ聞き出してあげれば、共通点のある子との交流も促してあげられそうです。
■コミュニケーション力が人生を左右する!?
友だちがとさらに仲を深めていくには、コミュニケーション力が必要だといいます。
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「コミュニケーション力とは、
『相手の話や考えをしっかり聞いて理解する力』と
『自分の気持ちや考え方、伝えたいことを伝える力』。家族や友人と良好な人間関係を築くために必要な力です。それが発展していくと、他の人と協調して何かを生み出すコラボレーション力にもつながっていきます」
コミュニケーション力は、最近注目を集めている
「非認知能力」のひとつ。一般的にIQなど学力テストで測れるものを「認知能力」といいますが、「非認知能力」はテストではなかなか測れません。たとえば、
物事を最後までやり抜く力、物事への意欲、協調性、社会性、創造性、好奇心などがそうです。
「近ごろ、非認知能力は認知能力と同じくらい、もしくはそれ以上に、人生全般において非常に大切な力だといわれています。将来の学力や仕事へ影響するという研究結果も出てきました。私がサポートをしている『子ども第三の居場所』では、学習ももちろん大事にしていますが、非認知能力を伸ばしていくことにもかなり力を入れています」
■育み方のヒント1:会話に関心をもつ
具体的な子どものコミュニケーション力の育み方のヒントを
4つ教えてもらいました。
「まずは親子の会話のなかで、子どもが関心のあることに
親も関心をよせる。子どもの話にしっかり耳を傾けて一緒に会話をふくらませていく、ということがベースになると思います。基本的なことですが、実はあまりできていません。これは
自己肯定感を育むことにもつながります」
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忙しいときは、つい「ちょっと待って」「あとでね」なんて声をかけてしまい、子どもの話をちゃんと聞けないことも多いもの。けれど子どもにとっては「自分自身が話したいときに、しっかり聞いてもらった」「注目してもらえた」といった経験一つ一つがとても大事。それらを積み重ねていくことで、自己肯定感を育んでいけるのだといいます。
親子の会話によって、
語彙力や好奇心も育まれます。生後9か月から3歳の子どもを対象にした調査では、子どもに話しかける言葉が多いほど、語彙力も増え、3歳およびその後のIQも高くなる傾向があるという海外の研究結果もあるそうです。
■育み方のヒント2:ごっこ遊びを工夫
幼児期なら、ごっこ遊び、カードゲーム、ボードゲームなど、遊びのなかで育まれるコミュニケーションの機会をたくさん設けるのもおすすめだそう。とくに、ごっこ遊びは
コミュニケーション力や社会性を育むよいトレーニングになるといいます。
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「子どもがよりごっこ遊びに没頭できるよう、いろいろな工夫をするとよいでしょう。子どもが興味のある人形やぬいぐるみを用意するのも一案。子どもは秘密基地のような場所が好きなので、段ボールや布で家のようなものをつくってあげても喜びます」
大人がごっこ遊びにずっとつきあうのは大変なので、
必要に応じて参加し、大人なりの視点や観点、語彙を入れて刺激を与えることもできます。たとえば、お医者さんごっこで患者役ならかなり辛そうな顔をしてみたり、おままごとでご飯を持ってきてくれたらとってもおいしそうに食べてみたり、少し大げさに表現すると子どもたちも盛り上がります。
■育み方のヒント3:絵や写真を飾る
子どもが書いた絵や習字、工作などの作品を
見える場所に飾るのもおすすめだそうです。
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「わが家の壁には子どもたちの作品をぺたぺた貼っています。『子ども第三の居場所』でも子どもたちの作品やお互いのよいところを書きあった紙などを貼っています。
小さいときの写真や親子の写真でもいいですね。そうしたものを普段の生活のなかで
見えるかたちにしておくことで、愛していることや承認していることを表示でき、子どもの自己肯定感を育むことにつながります。また、そこから会話が生まれ、コミュニケーションのきっかけにもなります」
■育み方のヒント4:他の子との「チガイ」を見つける
友だちをつくるときには
「オンナジ」を見つけることが大切だと先ほど説明しましたが、そこからさらに一歩、関係を深めていくには
「チガイ」を見つけてあげることも大切だそうです。
たとえば習い事やスポーツをしていたら、「どこが好きなのか?」「どんなポジションをやりたいのか?」などを突っ込んで聞き出し、自分の個性や友だちとの違いを認めて、ほめて伸ばします。
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「自分と相手の『チガイ』、つまり
個性や強みを認められるようになれば、友だちと協力して何かをする
“コラボレーション力”へつながっていきます。個性と個性、強みと強みをかけあわせて新しいものをつくったり、チームワークを発揮して共同作業をしたりすることは、これからの時代さらに重要になってきます」
■親が子どもの安全基地になる
進級や進学をはじめ、子どもが新たな社会や環境へ向かっていくことを、大海原への航海にたとえるなら、親はいつでも安全に帰ってこられる
「港」であるべきだと本山さんはいいます。
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「親や家庭が子どもにとって、
安全基地になっていれば、子どもは不安なく社会へ出ていき、他者と交わることができます。安全基地は“港”という言い方をすることもあるのですが、社会という大海原で失敗したり傷ついたりすることがあっても、帰れる港があれば、船を修繕してまた旅立てます。
ですから、親としては子どもの安全基地・港になれるよう、どんなことがあっても
存在そのものを認めて愛してあげてほしいと思います」
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子どもには、「勉強ができるから」など条件付きではない
絶対的な愛情が必要です。とくにいまはコロナ禍で、進学や進級など新しい環境への船出は親子ともに不安を抱きがち。そんなときだからこそ親は子どもの絶対的な安全基地となり、自己肯定感やコミュニケーション力を育む手助けをしながら、新しい船出を見守ってあげたいですね。
『自力でできる子になる好奇心を伸ばす子育て』(本山勝寛 著/大和書房)今回、お話を伺った本山さんの著書。公立校から独学で東大、そしてハーバードで学んだ本山さんの合格の原動力は「好奇心」でした。本書では子どもの好奇心を伸ばすヒントを、国語・理科・保健体育・算数・社会のカテゴリにわけて紹介。自分の教育方針に自信がもてない人や世界の最新教育事情を知りたい人にもおすすめの一冊です。
「子ども第三の居場所」とは
自己肯定感を育むには家庭環境が重要となりますが、現代は孤立や生活面などさまざまな困難に直面している子どもも少なくありません。本山さんが携わる「子ども第三の居場所」は、そうした子どもたちに温かい家庭のような“第三の居場所”を提供する施設。現在までに全国に39拠点が開設されています。
「おもに小学校低学年の子どもたちが放課後に通い、信頼できる大人や友だちと安心して過ごせる場所です。さまざまなプログラムや食事を一緒に食べることなど、活動全般を通して、自己肯定感や社会と関わる力など、将来の自立に向けた生き抜く力を育んでいくことを目指しています」(本山さん)
人見知りは才能の証? 科学が明かす内向的な子どもの可能性