きょうだいげんかが劇的に変わる!
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「どこまで見守るべき?」「いつも上の子を怒ってしまう」など、悩みの尽きない〝きょうだいげんか〞。
今回は、笑いと笑顔をキーワードにした子育てを提唱する、原坂一郎さんが「きょうだいげんかが劇的に変わる方法」を伝授。読者ママ2人に、1週間実践してもらいました。
お話を聞いたのは
原坂一郎さん
はらさか・いちろうKANSAI子ども研究所所長。男性保育士の草分け的存在として長年保育所に勤務。「浪速のスーパー保育士」との異名をとる。現在は全国での講演・講座、執筆活動を行っている。「子どもの本当の気持ちが見えるようになる本」(すばる舎)など著書多数。
チャレンジャーは2組の親子。1週間でママの悩みは解決できるか?
【1組目】5歳差なのにお互い譲らずどちらかが泣くまで続きます
ママ松本由佳さん
長女絆希(きずき)ちゃん[小学5年生]
次女望愛(のあ)ちゃん[年長]
けんかの様子とママの対応
次女が長女のゲーム機を返さなかったり、ちょっかいを出したりして、長女の我慢の限界で、1日何度もけんかが起こる。
次女には、「そんなことしたら、お姉ちゃんはどんな気持ちになる?」と注意するが、反省の色はなし。
なるべく両方の言い分を聞くようにしているがたたき合いになったときは、長女を叱ってしまう。
原坂さんからのアドバイスコレだけやってみて!>
1「何やってるの」「いつまでしてるの」など、疑問形で叱るのをやめましょう。
2仲裁をするときはどちらも叱らない。共感しながら事情を聞きましょう。
3妹には「長い時間借りないで、すぐに返してね」などすべきことを単刀直入に伝えましょう。
4ママはお姉ちゃんと一対一で向き合い、普段の我慢や頑張りを認めましょう。
長女がお姉ちゃんらしくなったことに驚き!
次女も注意を聞くようになりました
チャレンジ2日目、長女に「いつも我慢してるんだよね。おかげで助かってるよ」と伝えてから、長女が劇的に変化。妹に譲ったり、積極的に私の手伝いをしてくれるようになりました。そして次女にも大きな変化が。私の注意を聞くようになったし、長女にすごく甘えるようになったんです。けんかの回数も1日に2回くらいにぐっと減ったし、2人とも気持ちを切り替えるのがうまくなって、すぐ仲直りできるように。お互いに慕い合ういい姉妹になりました。
【2組目】お兄ちゃんが優し過ぎて弟に「イヤ」と言えません
ママ鈴木万葉香さん
長男琉青(りゅうせい)くん[年中]
次男凛斗(りんと)くん[2歳]
けんかの様子とママの対応
長男が次男におもちゃを取られたり、上に乗っかられたりして、いつも泣いてしまう。
次男には「お兄ちゃんがかわいそうでしょ!」と叱るが、言うことを聞かない。
長男がしょんぼりして「弟に貸してあげた」と報告に来たときは、「偉いね。でも我慢しなくていいんだよ」と優しく言えるが、同じことが続くと「強くなりなよ!」とダメ出ししてしまう。
原坂さんからのアドバイスコレだけやってみて!
1お兄ちゃんの褒めどころを言葉で伝えましょう。「残さず食べたね」など、日常の出来事でOK。
2お兄ちゃんが何かをしないときに叱るのではなく、できたときに褒めましょう。
3弟が悪いことをしたときは、ポーズでも弟を叱りましょう。
4弟を叱るとき、「お兄ちゃんがかわいそうでしょ」など兄を引き合いに出すのはやめましょう。
長男の我慢に気付けたことで
いじけず甘えてくれるようになりました
次男がまだ言葉をよく理解できないので、けんか自体はいまだにありますが、私と長男の関係が大きく変化しました。今まで、長男は弟にやられてしまう悔しさも、私に甘えたい気持ちも我慢していたのに、私は「お兄ちゃんだから我慢するのが当たり前」と思っていたんです。私が長男を丸ごと受け入れたことで、「僕が悪いんでしょ」といじけなくなったし、「イヤだ」と次男に言えるように。何より私自身が穏やかに長男と向き合えるようになりました。
原坂さんの解説
プラスの介入なら親はいつだって口出しをしていい
松本さん・鈴木さんの2組とも、期待以上の変化が出て私もうれしいです。
下の読者アンケートを見ると、子どものけんかには「できるだけ口出ししない」という方が多いようです。
でも、結局はそういうわけにはいかず、何らかのかたちで介入せざるを得なくなったり、そのタイミングに悩んだりするおうちのかたは多いのではないでしょうか。
大切なのは「いつ介入するか」ではなく「どのように介入するか」です。たとえばギリギリまで我慢して、堪忍袋の緒が切れたように叱りつける、といったような「マイナスの介入」ならば、いつ介入しても、そのけんかは余計にこじれます。
でも、子どもに満足感を与え、良い方に導く「プラスの介入」ならば、親の都合の良いタイミングでOK。「いつ口を出せばいいの?」と悩む必要はありません。
その「プラスの介入」のポイントを3つお話ししましょう。
Q、子どものきょうだいげんかであなたが取りがちな対応は?
※2016年5月11日~6月7日、WEBアンケート、有効回答数926人
●介入のポイント1両者の言い分を聞く
どんな場合でも、けんかというのはどちらにも「事情」や「言い分」があるものです。まずはお互いの言い分を聞いてあげましょう。
言い分を聞いてもらえるだけでも怒りの興奮は収まり、「まあいいか」と思えるようになるなど、気持ちにも余裕が出てきます。
下の子が小さくて、言い分を上手に言えないときは、まず兄(姉)の方から聞き、そのあと弟(妹)の言い分を「でも、○○なんだって」とママが代弁してあげましょう。
●介入のポイント2その言い分に共感する
それぞれの事情が分かったなら、決して叱らないようにし、その言い分を認め、共感してあげましょう。「そうだったの」「本当!?」という言葉を返すだけでもOKです。
「ママは分かってくれた」という満足感で子どもは落ち着き、相手の言い分や、ママの言葉も聞けるようになっていきます。
●介入のポイント3どちらのことも叱らない
言い分を聞いて事情が見えてきても、決して「どちらが悪い」と決め付けてはいけません。どちらも「正しいのは自分」と思っているので、自分が悪いと決めつけられると違う怒りが生じ、そのけんかはますます大きくなります。一番良くないのは、上の子を「お兄(姉)ちゃんでしょ」と叱り、下の子も「あなたもそれくらいで泣いたらダメ」と、両方を叱ること。お互い、相手のせいで叱られたと、余計にしこりが残ります。
以上の3つのポイントを踏まえた、私のやり方をご紹介しましょう。「お姉ちゃんにたたかれた」と言って、弟が泣いている状況です。
ママ どうしたの?
弟 お姉ちゃんがたたいた〜。
ママ あら、たたかれたの。お姉ちゃん、なんでたたいたの?
姉 私のおもちゃ取るんだもん。
ママ えっ、おもちゃを取られた? それは良くないねえ。(弟に)何で取ったの?
弟 欲しかったから…
ママ そう、欲しかったの。(姉に)欲しかったんだって。
1〜3のポイントを押さえた介入を繰り返していると、けんかの回数もずいぶん減っていくと思います。
1カ月で効果が出るはずですので、ぜひお試しください。
【きょうだいの組み合わせ別親の介入のポイント】
「同じきょうだいげんかでも、その組み合わせによって介入のポイントが違ってくる」と原坂さんは言います。どんな違いがあるか伺ってみました。
■兄VS弟
先に手を出した方が悪いと決めつけない
同性同士のきょうだいは、趣味や好きなものが似ているだけにけんかが起こりやすいもの。特に男の子同士は暴力が伴いやすく、「たたいた」「たたかれた」が多くなりがちです。親は先に手を出した方を怒りがちですが、たたいた方の事情も十分聞いてから、「でもたたくのは良くない」と伝えましょう。頭ごなしに叱っていたときとは、ずいぶん違う反応が出てきますよ。
■男の子VS女の子
どちらかに肩入れせず意識的に公平に接する
異性同士のきょうだいげんかの場合、ママは無意識のうちに、どちらかに肩入れをしていることが多いもの。子どもは敏感なので、「ママはいつも相手の味方をする」と思っています。同じことをしてもつい叱ってしまうのはどちらか、を意識してみてください。それが分かったなら、逆の子の味方をするくらいの気持ちで接しましょう。それでやっと公平になります。
■姉VS妹
裁判をせずにまずは共感を! 言いたいことはその後で
女の子がもっとも嫌がるのは、自分が悪いと決め付けられること、共感してくれないこと。「欲しかったんだね」と、子どもの発した言葉をオウム返しで言ったり、「それは困ったね」と、共感したりするだけで、「自分は理解された」と思い、それでけんかが収まってしまう場合もあります。その後、「だけどね」と言いたいことを言うようにしましょう。
■3人以上
“どの組み合わせがヤバイか”をチェックしておく
きょうだいの数が増えればけんかも増えます。そのすべてに対応していたら、ママが疲れてしまうはず。例えばA・B・Cの3人きょうだいなら、「A-B」「B-C」「A-C」のうち、どの組み合わせが一番こじれるのかをチェックしておきましょう。その2人が一緒にいるときだけ目を光らせるようにすれば、ママの負担も減っていきます。
【言ってはいけない! 禁句例】
「けんかするなら、あっちでしなさい!」
親は自分が見たくないだけで、何の解決にもなりません。子どもは放り出されただけだと思ってしまいます。
「あなたたち、いい加減にしなさい」
これではただの文句。けんかが終わったりはしません。本当に言いたいのは「けんかはやめましょう」のはず。ならばそれをそのまま言えばいいのです。
監修/西東桂子(あんふぁんサポーター)illustrationKAWAZOE Mutsumi