「自閉スペクトラム症の人が見ている世界」の疑似体験で、行動の意味や困難さを理解する取り組みとは?
これからの課題は、学術的な知見を社会実装につなげること
Upload By K2U関川香織
鈴木 今後の展望を教えてください。家庭や支援者だけでなく、企業や教育現場へと広げていくことで、どんな課題がありますか?
長井 これまでは、「ASD知覚体験ワークショップ」の対象は、保護者や支援者など、自閉スペクトラム症当事者への理解がある人たちでした。これからは企業や教育現場へ広げて、自閉スペクトラム症とかかわりが今までなかった人にも体験してもらいたいと思っています。
鈴木 そうですね。今後は、もっと広く社会に向けて、このシミュレータやワークショップを広げていきたいですね。実際に企業や学校の現場に導入する際、このシミュレーションシステムは、どういう役割を担っていくことになるでしょうか。
長井 ものの見え方の「翻訳機」なんだと思います。たとえば言語の違う人たちの間で、同じ思いがあったときに、言葉の通訳や翻訳があれば、相互理解する一歩となりますよね。
それと同じように、「こう見えている」ということを翻訳するのが、このシミュレータの役割だと思っています。相互理解に、科学的根拠を加えるのが技術の力です。
今、CRESTのシミュレータの研究は、学術的なところにとどまっているけれど、これを社会に役立てていこうとするときに、熊谷先生やLITALICOさんの力が、より必要となるはずなんです。大学の研究と当事者の間をつなげる役割を、LITALICOさんにぜひ担っていただきたいと思っています。
鈴木 対話や試行錯誤が、ここから始まっていくんだと思います。これからのワークショップも、一緒につくっていきましょう。どうぞよろしくお願いします。
撮影:鈴木江実子
山梨県上野原市「地域住人主導型の共助コミュニティ創生事業」開始~リアルとDXのハイブリッドによる子育て・暮らしのシェアタウンを推進~