ピュアな自閉スペクトラム症、ピュアなADHDは少ない!?意外に多い「重複する発達障害」を紐解く
の差がみられます。「不注意」と「対人関係が苦手」は強く現れていますが、「多動性・衝動性」と「こだわりが強い」ことは、弱いようです。
ただし、本人が「自分には趣味がなく、こだわりは弱い」と感じている場合でも、実際にはこだわりが強いというケースがあります。人は誰でも、自分を基準にしてものごとを考えます。この人にとっては当たり前のことでも、ほかの人がみれば、こだわりとしか考えられないようなことがあるかもしれません。
両親でも、わが子の見立てがそれぞれ違うことも
次に、発達障害の特性を持つ、こんな男の子のケースを紹介します。
その子のお父さんは「うちの子はほかの子にあまり関心を持たないし、こだわりが強いし、自閉スペクトラム症に違いない」と考えていました。いっぽう、お母さんのほうは「うちの子は落ち着きがなくて、いつもバタバタしていて、これはADHDね」と思っていたとします。
同じお子さんなのに、お父さんとお母さんで見立てが違うのはなぜでしょう?それは、人は自分を基準にして相手を見るからです。
この子のお父さんは、小学校のときの通信簿によく「落ち着きがない」と書かれていたそうです。お父さんからしてみると、自分を基準に考えれば、わが子は問題視するほど「落ち着きがない」ようにはみえないのでしょう。わが子の落ち着きのなさよりも、「対人関係が苦手」「こだわりが強い」という自閉スペクトラム症の側面のほうが浮き彫りになってみえたのです。
いっぽう、お母さんは小さい頃から、落ち着きのあるお子さんだったそうです。そんなお母さんからしてみると、わが子はじっとしていられないし、常に関心ごとが移り変わって、十分に「落ち着きがない子」にみえたのでしょう。
「自分」を基準にして考えると、同じ子どもの同じ親という立場でも、わが子への見立てが違ってきてしまうのです。この子の場合、医師に相談したところ、「自閉スペクトラム症」という診断を受けたそうです。
ただし、「ピュアな自閉スペクトラム症」というよりは、ADHDの「多動性」の重複も考えたほうがいいかもしれません。
発達障害の特性があって困っている人たち
先にあげた成人女性のケースも、「自閉スペクトラム症」と診断された男の子のケースも、発達障害の特性に重複があって困っている人たちです。そして、 そうした重複例はかなり多いにもかかわらず、適切に理解・対応されていないケースが多くみられるのです。