ASD当事者であり支援者。自身の特性をオープンに「生きやすく生きる」を支援――公認心理師・難波寿和さん【連載】すてきなミドルエイジを目指して
パートナーシップに関して意識していることがあればお聞きしたいです。
難波:気をつけていることがいくつかあって、一つはギブアンドテイクです。自分がした分の見返りを求めるという姿勢は、経験上ダメになりやすいので(笑)、相手がやってくれたことに関して、自分もできることを探してやろうというスタンスでいます。
もう一つは、それぞれの人生がある個人として考えること。彼女には彼女の人生があり、子どもには子どもの人生があって、僕はその人生に一緒にいるだけなので、相手の考えや意見を尊重する。自分は自分で、まだまだうまくできませんが、自分のしたいことを言葉で伝えるようにしています。「察して」は、どちらにとってもやっぱり難しいですね。
あとは、できないことはできないので、福祉的な支援を借りることでしょうか(笑)。
今は、それぞれが訪問看護、病院、カウンセリングなどから必要な支援を受けています。僕は僕で悩みを話すし、彼女は彼女で話すと思うので、主治医が板挟みにならないよう、主治医はそれぞれ違う人にしています。診断時にプライドを捨てることができたからこそ、今はできないことを「できない」と言って助けてもらったり、適切に声を上げたりすることができていると思います。
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――適切に声を上げるというと、なかなか難しいですよね。何かコツはありますか?
難波:困りごとに応じて、相談相手を変えることですかね。全て同じところに相談したり、相談先を間違えたりすると、適切な支援が受けにくくなってしまうので。問題が出てきたときに、これは福祉の相談支援専門員の人に相談するのか、それとも主治医か、カウンセラーか、親か...などと、妻と話し合って考えるようにしています。
「生きやすく生きること」がゴール
――このインタビューの読者には、進路や人間関係で悩みを抱えている人もいるかと思います。そんな人に向けて、何かアドバイスをお願いしたいです。
難波:僕がいつも発達障害の当事者さんに言うのは「まあ、ほんとによぉ生きとぉわ!」ということです。みなさんがその場に存在していること自体が、僕にとっては嬉しいんです。苦しさや不安を抱えながら生活している人も多いと思うので、そんなときは、藁にもすがる思いで相談したり、しんどさを打ち明けたりしてもいいんだよ、と伝えたいですね。
これから頑張ろうと思っている人たちには、チャレンジをやめないでほしいです。