ASD当事者であり支援者。自身の特性をオープンに「生きやすく生きる」を支援――公認心理師・難波寿和さん【連載】すてきなミドルエイジを目指して
僕も30歳で、他人の感情がわかりにくいと言われるASDの診断が下りましたが、それでも心理士を続けています。僕は周りに「(心理士は)無理じゃない?」と言われ続けてきましたが、結果がどうなるかはわからないことだったとしても、自分がやりたいことには、まずはチャレンジしてほしいなあと思います。
あとは、「いい会社」「いい学校」に入ろうとするのではなく、自分が大切にされる場所を選んでもらいたいですね。理想を掲げるのはいいのですが、居場所がないことも実際はあるので...大切にされない思いをしてまでそこに行くというのはちょっとおすすめできません。これは、すでに働いている人たちにも言えることですが、自分の居場所になりそうな場所を考えて動いていってもらえたらいいなと思います。
就職しても、進学しても、なんとでもなりますよ。ちょっとでも無理だと思ったら、二次障害になって調子が悪くなる前にさっさと辞めてしまったらいいと思います。人生はいろんな選択肢があって、いろんな生き方ができるから、「こうでなくてはいけない」というものはないと伝えたいです。
働くこと、進学することがゴールではなくて、生きやすく生きることがゴールだと思うので。自分なりに納得した生き方をすることを、応援したいと思っています。
――では最後に、今後の目標を教えてください。難波:理想としては、当事者ファーストの支援ができたらと思います。日々、困っている人たちの最前線で寄り添いながら、講演会や啓発活動、カウンセリングなどの活動をしていきたいです。
「ありえへんことが、ありえる」のがこの発達障害じゃないですか。いろいろな当事者さんが社会に出て行って、「別にいいじゃん」「みんな一生懸命生きてるじゃん」「君は君でいいじゃん」と受け入れられて、生きやすく生きることが社会で実現するような流れになったら、僕の出番はなくなるかなあと思います。
僕はこんなぐちゃぐちゃした人生ですが、行き着いたところが心理士なので、なんとかやれるところまでやってみたいなと思っています。
あとは、いつかテレビに出てみたいですね(笑)。
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終始、穏やかな語り口で、時折冗談も交えてお話をしてくれた難波さん。「仕事にやりがいがない」と言われると、「なぜその仕事を続けているの?」と疑問を持つこともあるかと思いますが、難波さんの場合は、やりがいとはまた違う仕事の面白さを感じているとのことでした。