ASD当事者であり支援者。自身の特性をオープンに「生きやすく生きる」を支援――公認心理師・難波寿和さん【連載】すてきなミドルエイジを目指して
それでも、スキルとして話の聴き方や声のかけ方は身につけましたし、耳からの情報なら相手の感情が若干読み取れるので、徹底的に聴いて理解するトレーニングをしました。30歳以降もずっと続けた結果、今はわりとうまくカウンセリングで寄り添えるようになったように思います。
そして、僕はクライエントさんやその保護者にも、「発達障害があります」「コミュニケーションに難があります」と開示していますが、それによってカウンセリングをやめていく方はいないですね。僕の本を読んでくださっていて、「知ってますよ」と答える方もいます(笑)。守秘義務等も含む約束事や支援方針について、最初にきちっと話し、了解を得てから仕事に取り組んでいます。
――反対に、ご自身も発達障害の当事者であることが役立つこともあるのでしょうか。
難波: 忘れ物対策や、怒りの感情のコントロールを支援するときは、すごく役に立っています。また、僕自身が服薬していると話しているので、薬への抵抗感が強い人にも、試してみるという選択肢を増やすことができているかなとは思います。
療育を受けているお子さんの保護者さんからすると、僕自身が「こうやって乗り切ってきた大人がいる」という一つの希望にもなるかもしれないですね。
――たしかにそうですね。どんなときに仕事のやりがいは感じますか?
難波: えーっと、「やりがい」っていうのは正直あまりなくて、基本的にはプレッシャーばかりです。相手の人生を背負っているわけですし、大学院生のときからこの道一本で、他の仕事は多分就けないだろうと思っているので、1回1回が勝負という気持ちでやっています。でも、僕は発達障害や障害のある人たちの療育・カウンセリングに、パズルを解くような楽しさを感じるんです。何か困りごとがあってクライエントさんは来るわけなので、その問題をどうすればその人たちが面白く、楽しくできるか、パズルを解くように考えていく。それで、うまく支援を組み立てて実行できると楽しいんです。そうやって、どんどん来るパズルのピースを解きまくっているような感覚で...。
それが、やりがいと言えばやりがいなのかもしれません。
できないことはできないから、福祉的な支援を借りる
――毎回真剣に仕事に取り組みつつ、そういった楽しさも味わっているのですね。少しプライベートな話になってしまいますが、現在難波さんはご結婚されていて、パートナーの方もASDの診断を受けていると著書で書かれていますよね。