オノマトペで作文の表現力を伸ばす――「富士山が“ジョジョッ”とあらわれた」でも間違いではない!?
【1】おともだちが、ぼくの手をひっぱりました。
【2】おともだちが、ぼくの手をグイッとひっぱりました。
いずれの文例も、「絵」としてイメージしやすいのは、【1】よりも【2】ではないでしょうか。もっと言えば、【2】には【1】にはない「躍動感」や「リアリティ」が感じられます。どちらが表現力のある文章かは言わずもがなでしょう。
子どもたちが大好きな漫画でもオノマトペは効果的に使われています。主人公の顔の横に「ビクっ」と書かれていると、驚いた顔の表情と相まって、主人公の驚きがより増幅して伝わります。ものによっては、いっさい吹き出し(台詞)がなく、オノマトペだけで、場面説明するようなページも少なくありません。
ときにオノマトペは、文章による説明以上に、読む人にリアルな情報を届けてくれるのです。
漫画を例にあげるまでもなく、子どもたちは感覚的にオノマトペが大好きです。たとえば、男の子であれば、ヒーローに変装して登場するときに「ジャーン」などと言うのではないでしょうか。あるいは、アクセサリーが好きな女の子であれば、「この宝石はキラキラしていてかわいいでしょ?」などと言うのではないでしょうか。子どもが日常のなかで自然と使っているオノマトペを、作文のなかに取り入れない手はありません。
オノマトペに正解はない
「あしたはクリスマスだからワクワクする」「さむくてブルブルふるえました」など、オノマトペには、お約束的な表現も少なくありませんが、子どもにオノマトペを書かせるときは、できるだけ子どもの自由な発想・感性に任せましょう。
めのまえに、ふじ山が、ドーンとあらわれたのです。
先ほど紹介した文例のひとつです。
この場合のオノマトペも「ドーン」が正解というわけではありません。
・めのまえに、ふじ山が、バキューンとあらわれたのです。・めのまえに、ふじ山が、バコッとあらわれたのです。
・めのまえに、ふじ山が、ジョジョッとあらわれたのです。
・めのまえに、ふじ山が、ブゥオーンとあらわれたのです。
・めのまえに、ふじ山が、ニョロッとあらわれたのです。
・めのまえに、ふじ山が、ジジッとあらわれたのです。
・めのまえに、ふじ山が、ブ~~~ンとあらわれたのです。
オノマトペに間違いはありません。くれぐれも「『ジョジョ』なんておかしいでしょ?」などと無粋なことは言わないでください。大事なのは、その子が自分でその言葉を選んだという事実です。