TED Prize賞を受賞!『子どもたちに食の教育を』――ジェイミー・オリバー氏の挑戦
小さな食育運動がやがて国を動かすことに
この番組は放送後に大きな反響をもたらし、やがて政府を巻き込んで大規模な「食育キャンペーン」へと発展していきます。ジェイミーは学校給食の改善に賛同する署名27万人分を集め、ブレア首相(当時)に改善の措置を約束させ、次のようなことを着実に実行に移していきました。
・給食施設の建設費用を予算化する
・調理師たちの賃金アップ
・給食内容の充実
・調理実習の導入
また、それまで学校の自動販売機で購入できていたポテトチップスやチョコレートなどの不健康なスナック菓子が禁止されるようになりました。そしてついに2014年には、小学校での食育を義務とすることを政府が発表し、翌2015年にはさらなる給食改革の基準を設けて以下のことを取り決めたのです。
・揚げ物の提供回数の制限(週2日まで)
・ソフトドリンクの禁止
・毎日の献立に最低一種類の野菜かサラダを出す
・最低でも3種類の異なる野菜と果物を毎週給食で出す
日本の給食では当たり前のようにバランスの良い献立が考えられていますが、当時のイギリスにおいてこのような「給食改革」は非常にセンセーショナルなものでした。この運動が社会全体を動かし、ついにはジャンクフードの広告に関する自主規制を制定するまでに至ったのです。
食生活が整うと学力も上がる!
このように、ここ数年で急速に「子どもの食育」への意識が高まっているイギリス。ジェイミーが行なった食育改革によって、子どもたちにも目に見える変化が現れました。
教師たちからは「生徒たちが落ち着いて勉強するようになった」「喘息の子が吸入器を使わなくなった」といった嬉しい声が続出し、ある大学の研究では、給食を改善した地域の子どもたちの学力が向上したという報告も。
生きていくため、そして身体の成長のためには食べなければなりません。しかし、食の知識に乏しく、栄養バランスの整った食事の重要性を誰からも教えてもらえないと、子どもたちは「食べる楽しみ」や「味わう喜び」を知らないまま大人になってしまうでしょう。以前のイギリスの給食は、「食の選択肢がないこと」や「周囲の大人の食への意識が低いこと」が原因で粗末なものにならざるを得ませんでした。子どもにとって「知らないもの」は「怖いもの」であり、本能的に避けてしまいます。まずは、世の中にはこんなにたくさんの食材があり、それぞれに身体に必要な栄養が詰まっていると知ることが大切です。