美術鑑賞は “ぶらぶら歩きでいい加減に” 。子どもがアートに目覚める瞬間
忙しくて時間がないこともあるのでしょうが、想像以上に日本人にとって “アートはハードルが高い” というイメージがあるのかもしれません。
別の調査では、この1~2年間に子どもと一緒に美術館に「1回以上行った」と答えた人は約4割、「1回も行かなかった」が約6割という結果が(「小学生の親の芸術教育・美術館に対する意識」2007年第一生命調べ)。また、「家庭教育で心がけていること」の中に、「美術館や博物館に連れていく」と答えた人は3割強でした。(文部科学省による平成19年調査)
全ての調査において、「美術館に行った」と答えた人は親自身アートに興味がある人が多く、さらに子ども時代に親が美術館に連れていってくれた経験のある人が多く含まれています。つまり、親がアートに対してハードルが低ければ、子どももそうなる傾向があるのは明らかです。子どもがアートに目覚めるきっかけは親が握っているのです。
美術館鑑賞のコツは “いい加減に” 見ること
なぜ日本人は、アートにハードルの高さを感じてしまうのでしょうか。その原因のひとつとして考えられるのは、鑑賞の仕方に縛られていること。
作品を鑑賞する際、頭でっかちになっていませんか?
作者、作品の時代背景、作風やテクニックに関する知識などなど……。自分の感性ではなく、情報と知識の目を通して見てしまい、真面目になりすぎて、「楽しむ」という観点がどうしても抜け落ちてしまいがちなのです。
美術史家であり岡田美術館館長の小林忠氏は、「美術館はぶらぶら歩きで、いい加減に見るのがコツ!」とおっしゃっています。これ、子どもとの鑑賞にぴったりですね。
本当にあなたがお好きなものは作品のほうから呼びかけてくれるから。そうしたら立ち止まって、ゆっくりと細部までていねいに見てほしい。(中略)じっくり見るのは1点か2点でいいんです、って。心に留めて、目に浮かべることができるようになるまでようくご覧になって、できたらミュージアムショップでその作品のがあったら絵葉書1枚でもいいし、カタログでもいいからお持ち帰りになって、と言いました。
(引用元:和樂 2019.2-3月号『日本美術は自由だ!』, pp42-43, 小学館.)
たくさんの作品を全部真面目に見ていたら疲れてしまう。気に入ったものを集中して見ればそれでいいと。どんな展覧会でも肩の力を抜いて自由に、「自分で見つけて、感じて、考える」