親子喧嘩に発展する会話には “12の型” があった! 「親業」を取り入れて、子どもに伝わるメッセージを。
赤ちゃんのころとは違い、言葉や態度でわが子とコミュニケーションがとれるようになってくると、さまざまな問題が出てくるようになります。そのほとんどは、「どうして親の気持ちをわかってくれないの?」「自分の子どもなのに考えていることがわからない……」といった、お互いのことを理解し合えない悩みなのではないでしょうか。
しかし、たとえ親子であっても、“ひとりひとり違う人間” だということを忘れてはいけません。子どもをひとりの人間として認め、親自身もまた自分の気持ちを正直に見つめ直すことで、親子の関係は劇的に改善されるのです。
今回は、『親業』プログラムをベースにした、すぐに役立つ「親子コミュニケーション」のコツをお伝えします。
“良い親子関係” を作るための「親教育」プログラム
『親業』という言葉を初めて聞く方も多いのではないでしょうか。簡単に言うと、「親としての役割は、ひとりの人間を生み、養い、社会的に一人前になるまで育てる仕事に携わること」という考え方を基にした「親教育プログラム」を意味します。
1960年代、アメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士は、非行少年たちの治療に携わっていました。
治療を進めていくうちに、問題児が出るのは問題親がいるからであるとの視点を明確にし、子への適切な接し方を親に教えることで、問題が起こる芽をつむことができるという結論に達したのです。
そのような経緯で開発されたのが『親業訓練』です。カウンセリング、学習・発達心理学、教育学など、行動科学の研究成果を基礎にしているこのプログラムは、親としての役割を効果的に果たすための具体的な方法を教えてくれる講座として発展していきました。
通常、子育てとは「子どもがいかに育つか」ばかりに重点がおかれています。対して「子どもが育つうえで親がいかに関わるか」と親の側に焦点を当てている『親業訓練』は、今では子育てに悩む世界中の親御さんたちから支持されるようになったのです。
親業訓練は親も子も変える!
親業訓練では、次の「3つの柱」をベースにしてプログラムを進めていきます。
■親業訓練の3つの柱
1. 聞くこと(能動的な聞き方)
子どもが心を開いて本当の気持ちを親に話すように接し、悩みや問題を抱えていたら自分自身で解決できるように手助けをする。
2. 話すこと(わたしメッセージ)
親が子どもに自分の気持ちや考え方を率直に伝える。
3.対立を解く(勝負なし法)
子どもの欲求と親の気持ちがそのままでは折り合わない場合、どのように解決するかを考える。親が一方的に自分の意見を押しつけるのではなく、また子どもの欲求にいつも応じてしまうのでもなく、お互いに納得できるように解決へと導く。
では、親業訓練を経て、親と子それぞれにどのような変化が見られるようになるのでしょう。
■親業訓練による子どもの変化
1. よく勉強するようになった。
2. 親に対してより受容的になり、拒否的でなくなった。
3. 自尊心が高まった。
4. 学業不振であった子どもたちが充分な成績を取るようになった。
■親業訓練による親の変化
1. 親としての自信が高まった。
2. 親と子の相互理解度・相互信頼度が高まった。
3. 自分自身のことがよくわかるようになった。
4. 子どもに対する信頼と自立を許す気持ちが高まった。
アメリカでは親子関係を改善し、青少年犯罪や非行を予防するプログラムとして効果的であることが認められている『親業訓練』。その効果が確かなものであることがうかがえます。
12のパターンに要注意!
子どもが悩んでいたり不安を感じていたりするとき、90%以上の親がしている対応を、ゴードン博士は12の型に分類しました。それらはすべて、子どもの考える力を育てるのに効果がないとされている対応です。
たとえば、子どもが学校から帰ってきて、「隣の席の子に貸した消しゴムが返ってこなかった……」と落ち込んだ様子を見せたとき、どのような言葉をかけてあげますか?おそらく次の12パターンのどれかに当てはまるのではないでしょうか。
1.命令・指示
「明日、そのお友だちに『返して!』って言いなさい!」
2.脅迫・警告
「またなくしたの!?次なくしたらもう買わないからね!」
3.説教
「返し忘れてるだけかもしれないよ。お友だちのことを悪く言うのはよくないんじゃない?」
4.提案・助言・忠告
「明日、『返して』って言ってみて、だめだったら先生に言ってみたら?」
5.講義・論理による説得
「その場で『返して』って言えないのも悪いんじゃない?誰だって後から言われたら嫌でしょう」
6.非難・批判
「なんですぐ物をなくすの!人のせいにしないの!」
7.同意・賞賛・ご機嫌とり
「嫌だったのを我慢したんだね、えらいよ」
8.侮辱・悪口・はずかしめる
「あなたが弱虫だから意地悪したくなったんじゃない?」
9.分析・解釈
「その前に、そのお友だちの嫌がることをしたんじゃないの?」
10.同情・なぐさめ・激励
「そのお友だちひどいね。そんな子のことは気にしなくていいよ!」
11.尋問・質問、原因・動機・理由を探る
「返してって言わなかったの?」
12.ごまかし・皮肉
「その話は後で聞くから、まずは宿題をやろうか」
「え?なんでダメなの!?」と思った方も多いはずです。たしかにこの12パターン以外の言葉はなかなか思いつきませんよね。ではいったい、なにがよくないのでしょうか。
じつは、この12の型、すべて「親の意見」であることに気づきましたか?この型にのっとって発せられた親の言葉によって、子どもは次のようなメッセージを感じ取ってしまうそう。
「私の気持ちはたいしたことないと思ってるんだ」
「私がどんな気持ちでいるか気にしてないんだ」
「問題は隣の子じゃなくて私だと思ってるんだ」
そして、そのようなメッセージを感じ取った子どもは、次のような反応を示すといいます。
・これ以上話しても無駄だと黙り込む
・防衛的で反抗的になる
・自分はだめだ、劣っていると感じる
・自分を変えなければならないと圧力を感じる
・自分では解決できないと思われていると感じる
・自分は信用されていないと感じる
・イライラする
・反撃したくなる
では、親業をベースにした理想的な対応とは、どのようなものなのでしょうか?
理想的な聞き方・伝え方
親業インストラクターとして活動中の松永美佐寿さんによると、「大事なのは、親から命令や提案、忠告、非難などのメッセージを出すのではなく、子どもからのメッセージを聞くこと」だそう。
■「能動的な聞き方」の例
「そうか」「ふーん」「そうだったんだ」と、うなずいたり相槌をうったりして穏やかに聞くように心がけましょう。それだけでも、子どもは話しやすくなり、つらい気持ちを吐き出すことができます。たとえば、子どもが「学校へ行きたくない」と言っているとき、松永さんによると次のような聞き方を心がけるといいそうです。
子「もう学校イヤだ」
親「学校へ行くのがイヤなんだね」
子「だって給食が嫌いなんだもん」
親「給食が嫌いなんだ」
(※子どもの言葉を繰り返す)
子「残すと叱られるから」
親「給食を全部食べないと叱られて、それがイヤなんだね」
(※理解したことを自分の言葉で言い換える)
子「当番の人に減らしてって言えばいいんだけど、○○くんが意地悪して減らしてくれないの」
親「○○くんが減らしてくれないから残すことになって叱られちゃうんだね。それはつらいね」
(※気持ちをくむ)
「学校へ行きたくない」と言われると、反射的に「何言ってるの!そんなこと言わないで早く行きなさい!」と叱ってしまったり、「どうして?なにがあったの!?」と過度に心配して責めるような口調になったりしてしまいがちです。
しかし、まずは子どもの気持ちを肯定的に受け止めてあげることが大事。上のようなやりとりを重ねることによって、子ども自身が自分の気持ちに気づいて自発的に答えを出す力が育まれます。
■「わたしメッセージ」の例
次に、子どもが行動を変える気になる効果的な「わたしメッセージ」をご紹介します。
次の3つの要素を盛り込むことを意識するのがポイントですよ。
1. 子どもの具体的な行動(非難しない)
2. わたしへの影響(行動が与える影響)
3. わたしの感情(率直な気持ち)
たとえば、子どもが脱いだ服や靴下をそのままにしているとします。ついイラっとして強い口調で叱ってしまいそうですが、次のように伝えてみてはいかがでしょうか。
「○○くんが脱いだ洋服や靴下を床に置きっ放しにしていると(←具体的な行動)、すぐに掃除機がかけられなくて(←わたしへの影響)、部屋が片づかなくて困っちゃうな(←わたしの感情)」
相手への非難や命令の要素はいっさい入っていませんが、このメッセージを受け取った子どもは、自分の行動が親にどんな影響を与えてどんな気持ちにさせているのかがはっきりわかるはずです。命令されてイヤイヤ動くのではなく、自分から行動を変えようとするので、子どもにとっても親にとってもストレスなく問題を解決することができるでしょう。
***
『親業講座』とは、悩みながら手探りで育児をしている親御さんたちに、方向性を提示してくれる「コミュニケーション訓練」です。今はインターネットにたくさんの情報があふれています。それらの情報に振り回されているうちに、自分の子育てに自信がなくなってしまうことも。
そんなときは、このプログラムを参考にしたコミュニケーションを意識してみましょう。きっと親子の関係がこれまでとは違うものになるはずです。
(参考)
親業訓練協会|おやぎょうとは
親業 親だって人間!|親業とは?
All About|親子関係に効く!親業を知っていますか?
親の学校プロジェクト|子育てコラム⑨「お決まりの12の型」を知っていますか?
親業・親子コミュニケーション【キッズドアスタイル】|子どもを支援する基本はまず聴くこと
親業・親子コミュニケーション【キッズドアスタイル】|子どもを支援する基本はまず聴くこと
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