「読ませたい本」は本棚にさしておくだけでいい。書店員さんに聞いた「絵本選びの極意」
そんなある日、一人の少年が「この本が欲しい!」とレジに持ってきたのは、非売品の『あまがえるのかくれんぼ』。
「『この本は売り物じゃないのよ』彼のお母様と一緒に説得しようとしましたが、少年は本を離しません。ふと見ると、その子のTシャツにも靴にもかえるの絵。『本当にかえるの絵本が欲しかったのだな』と感じた私は、かわしまさんから自分用にと頂いていた1冊を、彼にプレゼントすることにしました」
その後、彼を皮切りに、子どもたちから、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんまで、何人ものお客様がひっきりなしに「この本が欲しい」と言いに来るようになったのだそう。福島さんは「この本は非売品で……」と断り続けることにやるせなさを感じていたと言います。そこで、出版のために行動を起こすことを決めたのだとか。
「こんなにもたくさんの人に求められる本なのだからと、署名活動をし、ハードカバー化してもらえるようお願いすることにしました。その結果、なんと、たった1ヶ月の間に419人もの署名が集まったんです。
署名を世界文化社さんにお送りしたところ、すぐに会議にかけてくださり、この本の出版が決まりました」
署名活動を始めた際、「うまくいくか、いかないかは考えなかった」と福島さんは語ります。こんなにもたくさんの人の心を動かす本を、多くの人の手に届けたい一心だったそう。
「きっかけがどうであれ、本自身の持っていた力だと思っています」
非売品でありながら、多くの人の心を動かし、惹きつけた『あまがえるのかくれんぼ』。ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。
『あまがえるのかくれんぼ』 舘野 鴻 作/ かわしま はるこ 絵(世界文化社)⠀
小さなあまがえるのラッタ、チモ、アルノーは今日もかくれんぼをして遊んでいます。すると、ラッタの体の色が変わってしまい……。生物画家のかわしまはるこさんは、約10年間もあまがえるを飼育・観察していらっしゃるそう。繊細で美しく、愛にあふれた絵は、見る者の目を楽しませてくれます。
さらに小学館児童出版文化賞受賞作家の舘野鴻さんによる文章はあたたかく、不安を乗りこえ成長していく小さな3匹の心の変化を鮮やかに描き出します。豊かな物語を楽しみながら、カエルの生態についても学べる貴重な一冊です。⠀
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お子さんを本好きにするために大切なのは、無理強いをしないこと、そして、お子さんの興味にとことん付き合うことです。