本番に強いか弱いかは価値観で決まる。「緊張を味方につける方法」の教え方
それどころか、「自分の力を試したくてしょうがない」「本番が楽しみでしょうがない」と思うはずです。
普段のコミュニケーションがつくる本番前の「NGワード」
こういった価値観は、子どもと指導者のあいだでつくられていくものです。わたしもペップトークを専門としている立場上、「本番前のNGワードを教えてください」と聞かれるのですが、一概に「これがNG」といえるものはありません。なぜなら、あくまでも子どもと指導者(親も含む)の関係性によって異なるからです。
では、ひとつ例を挙げましょう。モチベーターとして優秀な指導者が、普段から「今日はみんなで『死ぬほど』走り込みをしよう!」「よし、『死ぬほど』腹筋をするぞ!」と子どもに声をかけていたとします。その環境のなかで成長してきた子どもたちに、本番前に「よし、今日こそみんな一緒に死んでこよう!」といったとする。普段の練習の様子を知らない親からすれば、「そんな言葉をかけるのはパワハラだ」と思うかもしれません。
でも、普段から「死ぬほど」という言葉をかけられて練習に没頭してきた子どもたちは、「いよいよ力を発揮するときだ!」と、大きな声で元気に「はい!」と答えて闘志をみなぎらせるかもしれないのです。
もっといえば、子ども個人によってもNGワードはちがってきます。「頑張れ」という言葉は、ふつうに考えればポジティブないい言葉に思えるかもしれません。でも、なかにはその「頑張れ」をプレッシャーに感じてしまう子だっている。そのような子どもの受け取り方のちがいを、指導者や親は把握しておく必要があるでしょう。
緊張は、ポジティブにとらえれば強力な味方になる
また、本番には「緊張」がつきものです。しかし、小学生になる前くらいの小さな子どもの場合は、緊張とは無縁です。というのも、まだ緊張というものを知らないからです。
でも、成長すると、突然、震えるほどの緊張を感じるときがやってきます。そのとき、指導者や親など、まわりの大人がどうかかわるかによって、緊張に対する子どもの認識は大きく変わるのです。
「いい緊張感」という言葉があるように、緊張自体は決してネガティブなものではありません。緊張を「プレッシャー」という名の敵にしてしまえばネガティブなものになります。でも、逆に味方につければポジティブに受け取れるというわけです。
緊張を味方につけられるプロアスリートの場合、汗をかいたり手足が震えたりするといった生理的反応を見て、「いま自分は緊張している」