「私には才能がない」は努力をしない人の言い訳。スズキ・メソードの人間教育
をめざした3つの基本方針ができたのです。まさに、赤ちゃんが母語を覚える過程と同じではありませんか。
【環境】良い演奏を繰り返し聴く。音楽があふれる環境をつくる。
【能力】演奏を聴いたり、レッスンを見学したりすることで、「お母さんやお友だちのように弾きたい」という意欲を引き出す。
【喜び】「あの曲を弾きたい」など自主的な気持ちで取り組み、達成の喜びを知ることで、次の意欲と向上心を引き出す。
さらに、メソッドの才能教育五訓は、「より早き時期」「より良き環境」「より多き訓練」「より優れたる指導者」「より正しき指導法」。
この鈴木氏の理念の集大成が、「母語教育法」なのです。
「私には才能がない」は努力をしなかった人の言い訳
「自分には才能がないから」
誰もが、一度は思ったことがあるのではないでしょうか。この考え方を鈴木氏は「努力を怠った者の言い訳」だと言っています。耳が痛いです。
「人間は環境の子。“へたな努力”をすれば、へたな才能が育つ。“正しい努力”をすれば、自分を正しく育てることができる。」
つまり、「ただ努力すればいい」わけではないということ。たとえば、音痴のお子さんは、「ファ」の音が半音高くなっていることが多いそうです。それを直す方法に、スズキ・メソードの考え方の基盤を見ることができます。
すでに身についてしまった「ファ」の音を“矯正する”のではなく、正しい「ファ」の音を新たに身につける努力をするのです。過去はもうどうすることもできないので、正しい経験を積み重ねて、過去の上書きをするということ。正しい努力を続ければ、いつか、正しい「ファ」が身につきます。これはとても理にかなっていて、無駄な努力を省けるため、結果を大きく変えるでしょう。
しかし、当然ながら実行するには多くの努力が必要です。その過程に真の教育のヒントがたくさん潜んでいます。そのポイントをさらに見ていきましょう。
我が子の「人間力」を育てるために親ができること3つ
鈴木氏の理念には、多くの気づきと学びがあります。
それは、70年も前に提唱されていたことなのに、今の時代にも響く、人としてとても大切な普遍性を持っています。子どもと一緒に努力をするためのポイントを3つにまとめてみました。
ポイント1:急がず、でも休まない(持続性・忍耐力)
前述の「ファ」の音の例であれば、正しい音を身につけるには、正しい「ファ」