「私には才能がない」は努力をしない人の言い訳。スズキ・メソードの人間教育
■親子で同じ目標に向かって努力する
スズキ・メソードでは、「親子で学ぶ」が基本で、親も子どもと同じ曲を練習してもらうそう。同じ目標に向かって努力することで、苦労も喜びもシェアできますよね。お母さんと一緒だったら毎日の練習を乗り越える力も倍増しそうです。
家庭では、サッカーでもバスケットでもお習字の練習でも、どんなテーマでもかまいませんので、親子で一緒に頑張る目標を作ってみましょう。お互い楽しく努力することで、行動力、持続力、忍耐力を育みやすい土壌を作ることができます。
■親子で毎日ひとつ覚えよう
鈴木氏が「もっとも大切な能力のひとつ」とあげるのが記憶力です。スズキ・メソード初期の頃、いかに早く覚えて長く忘れないかの訓練をさせたそうです。その方法のひとつが、子どもたちにも親しみやすい小林一茶の句を毎日一句ずつ覚えさせること。
最初は苦戦していても、だんだん早く覚えられるようになり、最後には自分流の俳句を作ることを楽しむまでに。記憶力の訓練から感受性や想像力も育まれていったのです。
家庭でもまねできそうですよね。興味のあるものをテーマにして、毎日ひとつずつ親子で覚えて、成果を披露し合えば、共通の話題もでき、親子のコミュニケーション効果も得られて一石二鳥です。
■何度も繰り返して質を高める
鈴木氏のバイオリンの指導は次のような手順で進められました。
課題曲が与えられたら、まずその曲を毎日聴く。弾き方を丁寧に指導し、丁寧に稽古する。一通り弾けるようになったら、“さらに立派に”弾けるように練習を繰り返す。十分弾けるようになったら、その曲を演奏しているときに、全く関係ない質問を投げかけて、演奏しながら答えてもらう。同時にふたつのことをこなせることが確認できたら、しっかり能力が育ったと確認できる。つまり、広く浅くではなく、「ひとつのことを深く掘り下げること」が大事だということ。ひとつを極めることが、能力を育む最適な方法なのです。たとえば、問題集を一冊を何度も何度も繰り返し、書いてあることを全部覚えてしまうほどやる。これは、東大を主席で卒業したNY州弁護士・山口真由さんも「7回読み勉強法」として推奨しています。
このときのプロセスを、いかに苦痛ではなく「楽しい」と思わせられるかも大事です。鈴木氏も実践していましたが、前述の「同時にふたつのことをこなす」訓練も、質問を楽しいクイズにするなど、ゲーム感覚で遊ぶように行なうことが、継続の鍵となりそうです。