子どもの「知ってるけど、解けない」を防ぐ、家庭での勉強の教え方。
「1当たりの数が先」ということまでわかっていない子は、正しい問題を作ることができません。誤った作問の例がこちらです。
【間違い例】5人に3こずつあめをくばります。あめはぜんぶでいくつになるでしょう。
この問題だと、「1当たり(1人ぶん)の数」は3ですから、かけ算の式は「3×5」になってしまいますね。正しい問題は、次のようなものになります。
【正解例】5こずつ3人にあめをくばります。あめはぜんぶでいくつあればいいでしょう。
これは、かけ算に出てくる最初の数字(「かけられる数」ともいいます)が1当たりの数を意味していることをちゃんとわかっていないとできない学習の例です。かけ算では、「できる(九九が言える)」だけでなく、「意味がわかる」こともゴールにしないといけない、というわけなのです。
現実社会では「できる」がゴールになることが多い
先に書いたように、小学校の学習では、意味がわかっていないとできない問題があることは確かです。となると、子どもには常に意味までわからせなければいけないようにも思えてきますよね。ですが、はたして本当にそうなのでしょうか。
「わかる」と「できる」には次のような違いがあります。
「わかる」:理由や理屈などを納得して理解していること
「できる」:自分の力で何かを成し遂げられること
このどちらを目指すべきなのか考えるために、まずは現実社会での例をあげてみましょう。
私にはかつて、「話し方教室」に通い、3分間スピーチの組み立て方や話し方などを勉強していた時期があります。
授業時間は日曜日の朝から夕方まで。午前中には「話をどう組み立てればいいのか、そうするのはどうしてなのか」の理論を勉強しました。そして午後は、ほかの学生と講師の前で実際に3分間スピーチをするという実習の時間。「話し方教室」では、話し方の理論が「わかる」ようになるための勉強もしましたが、ゴールは3分間スピーチが「できる」ようになることでした。
私の経験を、もうひとつ。一時期ミュージカル鑑賞に熱中していた私は、音痴で歌もダンスも全くできないのに、観るだけでは飽き足らず、実際に舞台の上に立ってみたくなりました。そこで、ミュージカル学校の面接を受けてどうにか入学許可をもらい、ミュージカルの歌と演技を学ぶことに。ここでも、やはりゴールは「できる(歌える・踊れる・演技ができる)」でした。
「こうして歌えばいい」