「○○ファースト」がポイント! アドラー心理学で親子間のコミュニケーションがうまくいく
家庭教育の話題としても耳にすることが増えている「アドラー心理学」。そもそも、アドラー心理学とはどんなもので、子育ての場面ではどのように生かせるのでしょうか。そのポイントを、株式会社子育て支援代表取締役であり、日本アドラー心理学会/日本個人心理学会の正会員でもある熊野英一さんが教えてくれました。熊野さんは、アドラー心理学の考え方を生かすことにより、親子間のコミュニケーションが格段にスムーズになると言います。
構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人
一般人でも実践的に使えるアドラー心理学
アドラー心理学は、心理学の一分野です。その創始者であるオーストリアの心理学者、アルフレッド・アドラーは、フロイト、ユングと並ぶ心理学の3大巨頭ですが、日本ではほかのふたりと比べて少しマイナーな存在でした。それが大きく変わったのが、2013年。アドラーの教えを伝える書籍『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社/岸見一郎・古賀史健 著)が大ヒットしたことで、日本にもアドラーの名が知れわたったのです。
もちろん、アドラー心理学が注目を集めるようになった要因は、書籍のヒットだけではありません。なにより、その使い勝手の良さが大きかったと思います。アドラー心理学は、非常にシンプルでわかりやすい理論のため、子育てのほか、夫婦関係や職場での人間関係など、さまざまな対人関係に適用しやすいのです。
では、アドラー心理学とは具体的にどういうものなのでしょうか。アドラーは、簡単に言うと、「どうすれば人は仲良くできるのか」ということを追求した人です。アドラー以前の心理学は、基本的に、心の問題を抱えている人を精神分析したりトラウマなど心の闇をまさぐったりして、「問題の原因を解明していく」というスタンスでした。
でも、それでは即座に問題を解決することは難しい。いままさにけんかしている目の前の人とどうすれば仲直りできるのか、これから仲良くできるのか――。
アドラーはそこにフォーカスしました。だからこそ、心理学について特別に学んでいない人たちであっても実践的に使える心理学として、アドラー心理学の注目度がどんどん増しているのだと思います。
「子育ての最終目標」とは「子どもを自立させる」こと
そのアドラー心理学の観点から、「子育ての最終目標」とは「子どもを自立させる」ことだと私は考えています。普通に考えると、親は子どもより長く生きることができません。