リスクが多い? 団塊世代より下の世代が“熟年離婚”を避けるべき理由
「わたしも熟年離婚するわよ」と血走ってしまってよいものなのか。前出のA先生はこう言っています。
『わたしたち団塊より一回り下の世代が年金を受給できる年齢を迎えたときには、わが国の社会保障制度の給付内容は間違いなく今よりも大幅に劣化しています。したがって、夫婦二人でなら乗り越えることができたであろう経済問題でも一人では太刀打ちできないというケースが容易に想定できる。
安易に熟年離婚を志向することにはリスクがいっぱい です。ポスト団塊世代であるわたしたちは、今の高齢者たちとは違う熟年期の夫婦関係の理想形を模索し、備えるべきです』(50代女性/前出・精神科医)
●お互いを尊敬して協力し合うライフスタイルで脱・熟年離婚
それでは、夫婦がお互いを尊敬し協力し合って生きる熟年期のライフスタイルは、どうすれば作り上げることができるのでしょうか。
筆者は、「何だかんだいっても、この世界中に、この人以上に自分のことを知っている人など存在しない」ということを、改めて認識することによって可能になると思っています。
熟年離婚して、その後に、自分という人間について一から面倒な説明をしないでも分かってくれている人と出会えるでしょうか。
それは、ありえません。もちろんパートナーの暴力やハラスメントがどうしても治らないといった場合は別です。唯一このケースでは熟年離婚も検討すべきだと思います。
しかし、そうでない限り、そんな大切な人をけっして手放すべきではありません 。
『何年も夫婦をやってこれたということは、二人の間に感性や価値観の共有があったからこそです。その点をよくわきまえて、50代に入ったら、夫婦とは精神的に結びついた存在なのだと思うこと。過度な金銭的充実、身体的充実を志向したところで所詮無理があると割り切ることです。
同じ花を見て和み、同じコントを観て笑い、同じ絵を鑑て美しいと思うこと。
そうすることで、熟年離婚という夫婦にとって最も悲しい結末を、回避することはできるはずです』(50代女性/前出・精神科医)
長年にわたって熟年離婚の相談に乗ってきたA先生もこう言っています。身体的には衰えても精神的にお互いを尊敬して協力し合うこと。
それこそが本当の愛情というものではないでしょうか。熟年離婚をしても経済的に“逃げ切れる”上の世代の人たちのことを格好いいなどと思う必要はありません。
●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)
●モデル/前田彩(桃花ちゃん)