子育て情報『「厳しいけど、情熱があっていいコーチだ」は本当? 熱血コーチの情熱は子どもを伸ばすか否か問題』

「厳しいけど、情熱があっていいコーチだ」は本当? 熱血コーチの情熱は子どもを伸ばすか否か問題

をイメージできません。しかし、池上さんは「主体的に取り組まなければ、君は何も獲得できないよ」というメッセージを込めた態度を一貫して取ってきました。

私は、それが真の厳しさだと考えます。怒鳴ったり指示を与える言動は、実は甘やかしているのかもしれません。怒って刺激を与えているのですから、それは「世話を焼いている」ことになります。それは時に「過干渉」にもなります。

子どもに対し過度に干渉する言動は、自立と成長を阻む。このことは現在、教育界や幼児教育、保育の世界でも少しずつ認識されています。
この大事なことを、すでに40年近く前から共有していたのが、前述した池上さんと祖母井さんなのです。セミナーで上記の話が出たとき、祖母井さんは「そうだね。池上、フェンス越しに呼びつけられたねえ」と笑みを浮かべながら振り返っていました。

■日本でも池上さんらが40年近く前から自主性を尊重するコーチングに取り組んでいた

さて、さきほど書いた40年近くの話です。ドイツの大学を卒業され、欧州の育成指導に詳しい祖母井さんが、オランダのサッカー協会が育成の指導者用に制作した一本のビデオテープを池上さんに見せてくれました。そこには向こうのクラブのトレーニングの様子が紹介されていました。

池上さんはコーチと選手の姿に大きな衝撃を受けたそうです。コーチが笛を吹いて選手を動かし、指示命令を繰り返すといった日本によくある練習風景はそこにはありませんでした。
選手を煽るのではなく、じっと見守って良いプレーはほめる。何よりコーチと選手が頻繁に対話をしている。子どもが自分の意見をきちんと伝えている。そしてコーチもそれを歓迎している。そのことにとても驚いたそうです。

祖母井さんから、「ほら見て!(指導が)一方的じゃないよ」といわれ、「本当にそうですね」と答えたといいます。池上さんはYMCAで子どもにサッカーを教え始めたてまだ数年でしたが、その際祖母井さんに「おまえのところから育成を変えていけよ」と言われました。池上さんはそれ以前から子どもの自主性を尊重するコーチング法を自分なりに追求していましたが、「このやり方をもっと深めていこう」と再確認したと話されていました。
これが、お二人が「考える力と創造力をひきだす指導」を追求し始めた出発点になったのかもしれません。恐らく、コーチの誰もが子どもをしかり飛ばし、時には暴力もあった時代、しかもこんなに若い頃から、指導のパラダイムシフトに取り組まれていたのです。

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