試合に出してもらえない、進路妨害、トレセンいけない...... 「子どもが人質」だからと暴力暴言指導を黙認する親たち 当事者として子どもを守る方法は?
復帰までに研修や社会奉仕活動が求められるものの「処分が甘いのではないか」という声はあちらこちらから聞こえてきます。
■今春には高校の強豪サッカー部での暴力動画も
大学生やプロだけでなく、高校生も暴力や理不尽な扱いに苦しんでいます。
今年5月、暴力動画を発端に、被害届を出した生徒が中学浪人させられていたことも判明した秀岳館高校サッカー部の騒動。9月には、木更津総合高校サッカー部の3年生が顧問のパワハラによって大量退部していたと報道されました。学校側は一部を認め調査すると発表しました。
日本サッカー協会は他団体とともに2013年4月、暴力根絶宣言をしました。ちょうど10年前、2012年12月23日に大阪市立高校のバスケットボール部員が顧問の暴力や暴言を苦に自死したことなどがきっかけです。指導環境の修復に乗り出して10年目になるというのに、日本最高位の指導者資格を保持するコーチが、子どもたちに暴力をふるう、しかも何ら反省しないという実態があるのです。
なぜ、修正できないのでしょうか。それは、修正できない人を、周囲の人たちが「他人事」と放置しているからだと考えます。
上述した事件のひとつが報じられた際、複数の指導者が私にメッセージをくださいました。「いつかやると思った」「ブラックな指導をしていることは知っていた」
そこで「何故やめろよと言わなかったのですか?」と尋ねると、「仲がいいだけに言いづらい」「(自分との)関係が悪くなるから」と注意するのを控えていました。
数年前に高校サッカー部で暴力が発覚した指導者は、何のお咎めもなくそのまま小中学生のクラブを設立。海外でプレーした実績などが保護者に評価され、クラブは大きくなりました。が、指導者本人のマインドは何も変わっていないため、今度はスタッフへのハラスメントが原因で代表の座を追われたのです。
■当事者たちが声を挙げなければ、被害はなくならない
記事冒頭にお伝えした、S級コーチが暴力をふるうチームにわが子を預け続ける親御さんと恐らく同じでしょう。
問題が起きても、多くの保護者が「子どもは人質なので声をあげられない」とうつむきます。チームメートの親全員が同じ価値観ではないことも要因です。
親御さんにクラブへ被害を訴えるよう勧めた際「ここ(クラブ)にわが子がいるわけでもないのに、私の気持ちがわかりますか?息子も私も仲間外れになるかもしれないのに」