W杯、代表の躍進は喜ばしいが、日本がもっと強くなるために育成年代で必要な事は?
と子どもたちに尋ねます。こちらが気になることを言った子には「それってどういうこと?」と聞き返します。そこで対話が生まれ「コーチに自分の考えを言っていいんだ」という信頼と安心が生まれます。
子どもに「物事を批判的に捉え判断する」クリティカルシンキング(批判的思考)を植え付けることも重要です。指導者が言ったことに「それってどういうこと?」と言える子を増やしてください。反抗している、生意気などととらえてはいけません。批判ではなく、確認をして納得しなくては前に進めないことに大人も気づく必要があります。
オランダでのコーチ留学の経験があるサッカー指導者によると、同国でライセンスを取得するための指導実践で、インストラクターが言ったことに対し「僕はこう思う」ときちんと主張しディスカッションができるコーチがいたとします。
すると、そのコーチに対しインストラクターは「この人、OKです」と合格点を与えるそうです。
ところが、そのサッカー指導者がオランダから日本に帰って来て「ディスカッションしましょう」とコーチたちに話しかけても、誰も発言しないそうです。これは現場の選手の傾向と同じです。皆さん何も考えていないわけではありません。これは子どもも同じです。自分の発言が他の人に何と思われるかを非常に気にするのでしょう。
■斬新なトレーニングができる指導者が少年サッカーのカテゴリーに来なくてはいけない
三つめ。若い指導者がもっと海外に出る必要があると思います。
オシムさんも同じことをおっしゃっていました。
海外で教育を受けてくる、もしくは教育を見てくることが重要だと説いていました。例えばスペインで指導を学んでいる人が帰国時に、九州産業大学の練習を見て「(他の日本人指導者と)全く違う練習ですごく興味深かった」と話していました。同大学を率いるのは、オーストリアのプロリーグで監督経験がありスロベニア代表に帯同した経験も持つ濵吉正則監督です。
そんなふうに斬新なトレーニングができる指導者が、少年サッカーのカテゴリーに来なくてはいけないと思っています。オシムさんやクラマーさんが、私の師匠である祖母井秀隆さん(仏グルノーブルGMなどを歴任)に「おまえは(日本の)子どものことをやれ」と言われたと聞きます。名伯楽たちは日本が重点的に取り組まなくてはいけないところを知っていたのです。
■進化するサッカーの理解を深めるため、学び、議論し続けなければならない
試合後勝利を喜びお互いをたたえあう選手たち(C)