上野千鶴子「人生で初めて女遊び (笑) に夢中に」 女性学に目覚めたきっかけ
自分の無芸無能さを思い知らされた20代後半でした…。
同じ条件の男は就職できるのに、なぜ私はできない?
25歳当時、たまたま見た地方紙の人事募集には、「女性募集、経理事務。珠算3級以上、簿記経験者」とある。私は大学院卒ですが珠算3級の資格も簿記の経験もない。ちなみにホステスの求人も、「23歳まで」。でも、“私と同じくらい無能だな”と思っていた男たちは、どんどん就職が決まる。あいつが就職できるのになんで私ができないの?!と思ったときに頭をよぎったのが、「もしかしてこれは、私が女だからなのかもしれない」ということ。もはや笑うしかありませんでした。
その後私は大学教員の公募に22回落ち、23回目でやっと短大教師の職を得ました。それが30歳のとき。10年ほどの在籍期間中に、関西女のリアリズムに触れることができ、今思うと、そこで私は改めて〈日本の女〉に出会ったのだと思います。ちなみに’80年代、「女の子はクリスマスケーキと同じ。25過ぎたら値崩れ」なんて言われていた時代です。その言葉、今の20代女子にはどう響くのかしら。
うえの・ちづこ社会学者、東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長。