上野千鶴子「徹夜で麻雀ができなくなった (笑) 」 年を取って変わったこと・変わらないこと
そんな生き方が、次の世代へのバトンになるでしょう。
年を取っても、“ムカつく”だけはなくなりません。
私は40歳を超えた頃から、自分に限界を感じるようになりました。まず、徹夜で麻雀ができなくなった(笑)。体力も落ち、肌も衰え始め…、まあ老いを感じ始めたわけです。つまり、自分の時間や体力やエネルギーが有限であるとわかって、物事に優先順位を付けられるようになりました。あれもこれも…という欲がなくなり、自分との折り合いの付け方が上手くなる。年を取ることはいいことしかない。
長生きはするものです。
でも怒りという感情だけは、年を取っても収まらない。そもそも〈女性学〉は、“オヤジ~、ムカつく”という怒りから始まったものですからね(笑)。私が女の抑圧の二大原因である家父長制と資本制を研究対象にしたのも、敵の弱点を知るためでした。そうやって一つ一つ怒りの種を解き明かしてきたのに、なぜかまた、安倍国葬とか介護保険改悪とか怒りに油を注ぐ出来事が次々と起こるので、怒りのエネルギーのタネは尽きません(笑)。
うえの・ちづこ社会学者、東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長。日本における女性学、ジェンダー研究のパイオニア。