東京の風景をモチーフにした興味深い作品をもうひとつ。
フランス人デザイナーのニコラ・ダミアンが制作した「Tokyo No Ads(広告のない東京)」は、東京のまちから広告などの標識を一掃してしまった。
「世界でも類を見ないほど広告の多いまちとして有名な東京を、逆の視点から切り取ったらどのように見えるかということに興味があった」とダミアン。
もちろん空想上の世界だが、広告が一掃された東京の飲屋街には、白のキャンバスや無機質な看板が不気味に浮かび上がる。
改めて、多過ぎるほどの広告看板に囲まれた都会での生活を認識せずにはいられない。
しかし、スッキリした印象というよりも、変わり果てた全くの別世界に「世界東京化計画」のときと同様、どこかしっくりこない感がついてまわる。
むしろ、喪失感さえ覚えるという方もいるのでは…。
それでも「Tokyo No Ads」は、まちの景観を支配する広告看板を非難するための作品ではない。
「広告の多い東京もまた、魅力的で創造性が刺激される」とダミアン。
“東京に、広告あり!”
そんなことを暗に提示してくれているのかもしれない。