オスカー候補最後の一作に秘められた希望 『ウィンターズ・ボーン』が描く「現実」
なぜか?そこに、この村の「掟」が大きく関わることになる。まさに、出る杭は打たれる、そんな社会の中にもし自分が放り込まれたら…と想像するだけでも打ちのめされそうになるが、その中でたった一人の少女がいかに自分の道を切り開いていくのか、というところに観る者は釘づけとなる。
少女・リーが背負っている使命はあまりに大きすぎ、彼女の行動の代償は彼女自身が想像する以上に大きい。それでも後戻りをすることを選ばず、敢えて危険に挑む彼女の強さはどこから来るのか、何が彼女の原動力となっているのか。彼女が見せる不屈の魂、そしてこの厳しい環境の中で否応なく芽生えていく野生的な生命力に、観る者は衝撃と共にひとつの希望を感じさせられ、それは深い余韻として残っていく。『ブラック・スワン』でナタリー・ポートマン扮する主人公のバレエダンサーが内に秘めたもう一人の自分を追求していくのであれば、リーは外の世界に自らの隠れざる強さを発見していくヒロイン。南部のアクセントを自分のものにし、もちろんノーメイク、撮影前には一週間髪も洗わなかったという役作りで挑んだ20歳の新鋭、ジェニファー・ローレンスが魅せる、等身大の少女と一言では片付けられない「リアル」