【インタビュー】永瀬正敏 映画を愛し、映画に愛された男の30年
その現場で永瀬さんは、若き俳優陣に30年前の自らの姿を重ね、強い感慨を覚えたという。
「忘れられない作品になりました」――。これまでも数々の大作、海外の名匠の作品に出演してきた男は、決して予算も公開規模も大きいとは言えない本作への特別な思いを口にする。
日本統治時代に台湾代表として日本人、台湾人(漢人)、台湾原住民の混合チームで甲子園に出場し、決勝まで勝ち上がった「嘉義農林学校」の実話を映画化した本作。永瀬さんは野球部の“鬼監督”近藤を演じたが「脚本を読んでみると全てが初めて知ることばかりでした。嘉農というチームの存在、甲子園に台湾代表チームが出場していたこと、民族の壁を越え三民族混合で決勝まで進んだこと――僕らの先人にこんな素晴らしいことを成し遂げた方がいたことを知ってもらいたいと思った」と出演を決めたという。
野球部員を演じた俳優たちは、野球の名門大学に在籍する現役プレイヤーをはじめ、あくまで迫真の野球シーンを撮るべく身体能力を優先して選ばれており、多くが30年前の永瀬さん同様に演技未経験者だった。
「年齢的にも当時の自分と近いです。
ただ、30年前の僕よりも彼らの方がずっと大変だったと思います。