2016年2月10日 20:00
【インタビュー】鬼才ジャック・オディアール、『ディーパンの闘い』は「家族のラブストーリー」
この描写があったからこそ、ディーパンたちの持つ美しさというものが生まれたと思う」。
――この映画はラブストーリーでありながら、バイオレンスもかなり強烈です。その配分を計算されたのでしょうか?
「事前に暴力をこれくらい入れていこう、とバランスを考えて作ったわけではないんだ。『ディーパンの闘い』は、疑似家族が本当の家族になっていくという意味では、家族のラブストーリーだ。ここに出てくる暴力は、愛の裏返しとしての存在であり、同時に愛の不在を表すものでもある。彼らはどう愛を表現していいのか、わからない人たちなんだよ。だから暴力はメタファーとして存在している。ディーパンと偽の妻・ヤリニが喧嘩をするシーンで、ディーパンは『平和を求めるために闘っている』という発言をするのが、その象徴なんだ」。
――ディーパンとヤリニの偽の娘となるラーヤの存在も重要ですね。
「彼女はとても繊細な子供で、素っ気ない態度を取り続ける母役のヤリニに『なぜ私を愛してくれないの?』と問いつめる。ヤリニは『私はあなたの本当の母親ではないし、家族でもないわ』と突っぱねるが、ラーヤは『じゃあ、妹だと思って』と、さらに詰め寄る。彼女の存在が、ディーパンたちに絆を生むきっかけとなるんだ」。
(text:Ayako Ishizu)
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