アセチルコリンが海馬に記憶が形成される引き金だった - 山口大が解明
その結果、アセチルコリンは学習中から分泌量が増加し、学習後にも高く維持されることが判明したという。
そこで、個々の海馬神経細胞について興奮性シナプスと抑制性シナプスの機能解析を行ったところ、回避学習は興奮性シナプスを多様に強化するだけでなく、抑制性シナプスも多様に強化することを確認。
その結果、個々の海馬細胞が複雑かつ多様なシナプスを保持することで、エピソードを学習できることを解明すしたとする。
さらに、興奮と抑制、どちらのシナプスの多様性が、回避学習に関わるかの検討を実施。その結果、学習過程に、海馬がアセチルコリンを受容するアセチルコリン受容体の一種である「ムスカリン性M1受容体」を阻害して興奮性シナプスの多様性を抑えた場合、また「ニコチン性α7受容体」を阻害して抑制性シナプスの多様性を抑えた場合のいずれの場合も回避学習ができなくなることを確認。この結果から、興奮と抑制、どちらのシナプスの多様性も学習には必要であることを突き止めた。なお研究グループでは、正常な老化でもアセチルコリン分泌量は徐々に低下するが、アルツハイマー型認知症ではエピソードの記憶障害が著しく、海馬アセチルコリンの減少が特に顕著であることが知られており、今回のニコチン性α7受容体が学習依存的な抑制性品プルの可塑性を維持する役割を持っているという成果は、神経毒性の高いAmyloidβ1-42がニコチン性α7受容体に選択的に結合して伝達を障害するという既知の知見と合わせ、今後のアルツハイマー型認知症に対する新薬の開発につながる作用点を明確化することに役立っていくことが期待されるとコメントしている。