早大、攻撃性を抑制させるための脳内の仕組みの一端を解明
このオスの攻撃性に関わるのが、精巣が作る男性ホルモンの「テストステロン(Testosterone)」だ。攻撃性が発現する仕組みは、精巣がテストステロンを大量に分泌して脳に届き、そこで酵素「アロマターゼ(Aromatase)」の作用で女性ホルモン「エストラジオール(E2)」に変換され(つまり、E2はテストステロンがベースである)、攻撃行動につながるのである(画像9)。つまり、このE2こそが攻撃行動の発現に不可欠というわけだ。
ただし、どんな動物もオスは精巣を取られてしまうと、一気に大人しくなってしまうことから、まずテストステロンが作られることも攻撃性には重要なことはわかっている。またこうした仕組みは、現在の研究においては、すべての動物にとって共通の仕組みである。
そこで筒井教授らは、GnIHがアロマターゼの活性を抑えることで、E2の合成(テストステロンからの変換)が抑えられ、E2が少ししか作られず、その結果として攻撃行動が抑制されるのではないかと、最初は考察したという。
ところが、事実はまったく逆だったのである。画像10と11のグラフからわかるように、GnIHは女性ホルモン合成酵素の活性を高め、女性ホルモンの合成を促進していたというわけだ。